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既存郊外戸建住宅地における住宅・宅地需要動向の分析 [ PDF

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44-1 永瀬 秀格 1.研究の背景と目的  我が国において 1960 年代に開発された郊外戸建住 宅地では、世帯の一斉の高齢化と住宅の老朽化が進行 しており、今後 10 年のうちに住民の世代交代や空家・ 空宅地が急増する時期を迎えることが懸念される。  良好な住宅地環境を維持・管理していくためには既 存の住宅ストックの管理・活用の支援が求めらる。そ のような支援を効果的に行うためには住宅地における 宅地利用と世帯変化の実態を把握し、今後の需要動向 を推測することが重要となる。  そこで本研究では、既往研究において構築された住 宅管理 GIS データベースを用いて住宅・宅地利用の経 年変化から空家・空宅地の発生と居住世帯の変容を把 握し、将来発生するであろう問題に対して持続可能な 解決策を考察することを目的としている。 2.研究の方法 2ー1.調査対象地の概要  調査対象地である M 市 J 団地※ 1 は、民間企業による 開発分譲の住宅地で 1960 年代から郊外戸建住宅地と して開発が行われてきており、M 市を代表する大規模 住宅地として位置づけられる。開発当初からの居住者 の高齢化による問題が深刻になっている(図1)。 2ー2.研究の方法  既往研究において構築された住宅管理 GIS データ ベース※ 2 を用いて(1)1997、2008 年における住宅・ 宅地利用と世帯における経年変化の実態から住宅・宅 地の需要を明らかにする。(2)これらの分析をもと に世帯の高齢化と住宅の老朽化に伴う今後の住宅・宅 地の変容を予測し、(3)仮定条件のもとでのケース スタディを行うことで、急激な変化の時期を迎える郊 外戸建住宅地の今後の動向と課題について考察する。 2ー3.経年分析用データの整理  本研究では戸建住宅における経年変化を目的とする ため共同住宅や非住宅用途の宅地は分析対象外とす る。また分筆、合筆などによる筆単位が変化した宅地 も対象外とした。中古入居、建替入居、世帯の入れ替 わりは居住年数と築年数から判別し、世帯の入れ替り がないものを居住継続とみなす。

既存郊外戸建住宅地における住宅・宅地需要動向の分析

3.経年変化からみる住宅・宅地需要 3ー1.住宅・宅地利用の経年変化  1997-2008 年の経年変化による宅地変化の詳細を把 握する(図2)。総数の変化をみると居住住宅、空家 は増加し空宅地は減少している。1997 年と 2008 年に おいてどちらも宅地用途は居住住宅であるが、世帯の 入れ替わりがおこったものを居住年数と築年数の変化 から判別すると、全体の 2211 件に対して 216 件、9.8% の世帯で世帯変化が起きている。また空家 102 件に対 し 40 件の中古入居と 19 件の建替入居、空宅地 414 件 に対し 105 件の新規入居が発生しており、一定の世帯 の入れ替わりがなされている。  以上より 2 時点間においては急激な空家・空宅地化 が進んでいるという現状はないが、今後の高齢化、人 口減少や住宅の老朽化の進行を考えると住宅地への需 要が縮小していくことが予想される。 図2 1997-2008 年経年変化フロー図 図1 調査対象地概要 居住 空家 空宅地 N=2211 3.7% 81.1% 83.3% 4.7% 12.0% 15.2% 1997 J 団地 11years flow 2008 N=102 N=414 居住 居住継続 建替 建替入居 中古入居 新規入居 空家 空宅地 N=2272 N=129 N=326 転居・転出 入居 入居 転居・転出 1832 275 41 19 235 87 38 38 40 105 60 129 305 146 48 1784 21 109 335 276 59 4 379 建替 建替 no no no no no no no yes yes yes yes yes yes yes ※ 1 都合上イニシャル表記とする。 ※ 2 住宅管理 GIS データベースは地籍図における筆を単位としたデータベースである。 1丁目 2丁目 3丁目 4丁目 5丁目 6丁目 7丁目 8丁目 9丁目 11丁目 10丁目 (ha) 2010.1 現在 (%) M市統計データより ※1. 65歳以上を高齢者としている。 ※2. 6丁目の一部はH12に新規開発された。 ※2 ※1 1丁目 2丁目 3丁目 4丁目 5丁目 6丁目 7丁目 8丁目 9丁目 10丁目 11丁目 9.1 14.4 20.4 14.0 15.7 13.6 18.9 12.6 8.6 13.9 16.2 面積 38.2 15.6 37.1 41.2 34.1 12.3 30.8 31.3 36.9 44.6 38.3 高齢 化率 442 1,111 518 534 703 1,053 1,075 681 442 895 807 人口 国道 主要道路

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44-2  丁目別に住宅・宅地利用の経年変化をみていくとい くつかの丁目に特徴的な数値がみられた(図3)。居 住住宅は 1 丁目を除くすべての丁目において微少なが ら増加している。空家増加率では 10 丁目が比較的高 い増加率であるのに対し 9 丁目は唯一減少している。  2008 年における居住住宅の築年数と延べ床面積の平 均値を丁目別にみると延べ床面積は多少のばらつきが みられた。しかし築年数はすべての丁目において 25 年から 30 年あたりに集中している。このことから開 発初期に大量供給された住宅によって一斉に発生する 深刻な住宅の老朽化問題に対する課題として、住宅・ 宅地需要の動向を把握することが重要である。 3ー2.世帯の経年変化  1997 年と 2008 年における居住世帯の属性変化を比 較する(表1)。1997 年時点では世帯人数3人以上か つ世帯主年齢が 45 歳以上 65 歳未満の世帯が全体の 33.8% を占めている。これは開発年初期に入居した典 型的核家族世帯層であることが予想される。世帯主年 齢別に世帯人数を比較すると 65 歳未満では 3 人以上 世帯が最も多いが、65 歳以上になると夫婦世帯の占め る割合が最も大きくなる。このことから 65 歳を期に 大きな世帯変化の波が訪れることがわかる。 3ー3.住宅・宅地利用と世帯変化の相関  次に世帯主年齢別に転居・転出、入居のそれぞれの 発生数をみていく(図4)。まず転居・転出からみて いくと空家化・空宅地化は高齢になるにつれその数も 増加していき、転居・転出と世帯主年齢には強い相関 関係がみられる。45 歳以上 55 歳未満における数値が 高いのは子どもの独立や転勤などが考えられるが転居 後入居しているケースが多いため二世帯同居化が想定 される。入居については以下詳しく分析する。 3ー4.入居世帯からみる住宅・宅地需要  入居の発生は世帯主年齢別にみると 35 歳から 75 歳 までに一定の住宅需要がうかがえ、75 歳以上世帯の入 居も少数ながら存在する。続いて年齢について 65 歳 を区切りとし、世帯数・世帯人数によって世帯型の分 類を行う(表2)と 65 歳未満の 3 人以上世帯の入居 が圧倒的に多い。そのなかで 2 人世帯や二世帯入居な どの入居にも特徴がみられる。   次に入居世帯の求める住宅を把握するために入居住 宅の規模をみていく(図5)。中古入居に比べ建替入居、 新規入居では延べ床面積 150 ㎡以上 200 ㎡未満の住宅 に対する需要が高い。これは開発初期に一斉供給され た住宅に比べ現在は規模の大きな住宅に対する需要の 高まりを示している。 居住住宅 空家 空宅地 築年数 延べ床 1 丁目 2 丁目 3 丁目 4 丁目 5 丁目 6 丁目 7 丁目 8 丁目 9 丁目 10 丁目 11 丁目 ( 平均値 ) ( 平均値 ) ( 増加率 ) ( 増加率 ) ( 増加率 ) 08 08 0 0.50 -0.50 0 0.50 -0.50 0 0.50 -0.50 30 年 25 年 20 年 15 年 130 ㎡ 125 ㎡ 120 ㎡ 115 ㎡ 110 ㎡ -0.03 0.12 0.03 0.01 0.04 0.02 0.07 0.05 0.04 0.00 0.00 0.00 -0.04 125 -0.33 -0.07 125 0.17 0.20 0.33 0.33 0.25 0.38 0.50 0.80 0.57 -0.35 125 0.15 124 -0.20 132 -0.28 116 -0.20 117 -0.26 126 -0.25 127 -0.33 112 -0.24 113 30.5 26.3 26.9 27.5 30.2 26.3 24.5 25.2 24.2 27.6 28.1 75-65-74 55-64 45-54 35-44 -34 転居・転出 入居 0 20 20 40 40 60 60 80 80 100 100 120 120 入れ替わり世帯 空宅地化 空家化 中古入居 建替入居 新規入居 15 4 8 38 18 31 50 14 26 90 10 16 55 11 18 27 3 6 1 1 16 7 30 11 83 9 2 46 23 4 53 36 5 48 2 図3 丁目別にみる宅地用途別増加率と住宅規模 図4 世帯主年齢別転居・転出数と入居数 表1 居住世帯経年変化 表2 世帯型別入居需要 図5 入居パターン別延べ床面積比較  1997 1 2 3以上 二世帯 総計 2008 1 2 -44 18 25 150 2 195 -44 18 45-54 15 61 385 10 471 45-54 13 55-64 40 184 362 20 606 55-64 55 65-74 74 334 159 63 630 65-74 88 75- 58 150 47 54 309 75- 218 総計 205 754 1103 149 2211 総計 392 1997 1 2 3以上 二世帯 総計 2008 1 2 3以上 二世帯 総計 -44 18 25 150 2 195 -44 18 23 107 1 149 45-54 15 61 385 10 471 45-54 13 31 158 7 209 55-64 40 184 362 20 606 55-64 55 159 219 36 469 65-74 74 334 159 63 630 65-74 88 339 204 52 683 75- 58 150 47 54 309 75- 218 320 81 143 762 総計 205 754 1103 149 2211 総計 392 872 769 239 2272 Ⅰ.世帯数 Ⅱ.世帯主年齢 Ⅲ.世帯人数 1 2 3以上 1 2 3以上 中古入居 275 建替え入居 60 新規入居 105 総計 440 総計 二世帯 一世帯 65歳以上 65歳未満 17 43 13 16 39 129 18 1 4 4 1 8 37 5 1 10 5 8 8 63 10 19 57 22 25 55 229 33 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 中古入居 新規入居 建替入居 中古入居 建替入居 8 58 36 3 5 30 22 3 73 156 39 7 -100 (㎡) 100-150 (㎡) 150-200 (㎡) 200- (㎡) -10(年) 10-20(年) 20-30(年) 30-(年) N=631 N=1365 N=357 N=48 N=414 N=632 N=1046 N=221 築年数 1997 延べ床 2008 12 42 15 1.7% 2.3% 26.1% 53.6% 75.9% 82.9% 52.7% 22.8% 58 85 119 13

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44-3 4.住宅・宅地需要にもとづく将来予測   本研究の将来予測は住宅市場の流れと若年・高齢世 帯の推移の把握を目的としているため丁目単位での予 測・分析を行う。丁目単位で予測することにより、画 地単位の予測より精度を上げることができ、年齢層別 に居住世帯の特徴をある程度まとまった分布として把 握することができる。 4ー1.予測の方法  1997 年と 2008 年の 11 年間において居住住宅、空家、 空宅地の 3 つの用途変化に注目し、2 点間における変 化の割合をそれぞれ掛け合わせて集計する(図6)。  全体のフローの流れはそれぞれの宅地用途変化に加 え 11 年間の間に転居と転入が起こった宅地と世帯主 の変更が起こった世帯を考慮する。居住住宅・空家・ 空宅地の 3 つ各々の用途変化に対し丁目別に変化の割 合を掛け合わせることで予測を行う。なお転居・転出 世帯においては世帯主年齢別の変化の割合、空家への 入居においては築年数別の変化の割合により変化数を 算出する。居住継続世帯は世帯主年齢が 11 年後に次 の年齢層へ移ると簡易に想定する。 4ー1ー1. 世帯主の高齢化に起因する変化の割合  空家化した世帯については世帯主年齢 75 歳以上の 割合が非常に高く、入居に関しては丁目ごとにばらつ きがみられる(図7)。高齢ほど空家化しやすい傾向 にあり、一方入居世帯は世帯主年齢 55 歳未満のいわ ゆる子育て世帯の割合が高い。 4−1−2.老朽化に起因する変化予測  次に建物属性として築年数の違いによる中古住宅入 居の変化の割合を考慮した予測を行う。転居・転出 は高齢化による影響が強いが中古住宅入居に関しては 今後住宅の老朽化の進行により需要が減少することが 予想される。そこで入居に対する変化を築年数別の変 化の割合によって算出する(図8)。なお 2 時点間に おいての用途変化ではどちらも居住であるが、世帯の 入れ替わりがなされているものを居住年数から判別す る。今後住宅の老朽化による空家への中古住宅入居減 少にともない、そのまま空家として放置される可能性 が考えられる。  まず 1997 年時点での居住住宅と空家の築年数別割 合をみると開発当初に一斉供給された住宅が 20 年以 上 30 年未満に固まっている。中古入居需要は築年数 20 年未満の割合が高く、今後入居可能性の極めて低い 空家が大量に発生することが懸念される。  以上の手法をもとに行った 2041 年までの予測の結 果を示す(表3、図9)。 図8 築年数別変化の割合 表3 予測結果 図9 宅地用途変化予測結果 図6 予測の流れ  図7 世帯主年齢別変化の割合 居住 空家 空宅地

n%

変化の割合

×

x 年用途 居住 空家 空宅地 x+11 年用途 x+22 年 97-08 経年変化より算出 世帯主年齢 +11 歳 居住 空家 空宅地 空家化 87 件 転居・転出後 中古 or 建替入居 276 件 新規入居 105 件 新築後未入居 4 件 建替入居 59 件 空宅地化 16 件 空家除却5 件 97 年 -2211 件 08 年 -2272 件 97 年 -102 件 08 年 -129 件 97 年 -414 件 08 年 -326 件 中古入居 or 建築中 or ※1 ※1=4.9% ※2=1.0% 発生割合を丁目別に算出するには絶対数が少なく有効な数字を 得ることが不可能なため総数から算定した数値を適用する。 ※2 1997-2008 年における 住宅・宅地経年変化 -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75- 総計 新規入居 ×08 世帯主年齢 世帯主年齢別 新築入居 7.6% 29.5% 24.8% 15.2% 17.1% 5.7% 100.0%8 31 26 16 18 6 105 -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75- 総計 転居・転出 ×97 年世帯主年齢 世帯主年齢別 2.1% 1 2.1% 1 4.5% 7 1.4% 2 2.3% 11 0.4% 2 1.5% 9 0.3% 2 3.7% 23 0.6% 4 1.6%5 11.7% 36 3.9%87 0.7% 16 空家化 97 居住住宅 空宅地化 47 148 471 606 630 309 2211 新規入居 × 丁目 184 宅地 総数 空宅地総数 新築入居 丁目別 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 総計 25.0% 11 11.5% 3 32.5% 13 28.0% 7 25.5% 25 26.3% 15 16.7% 7 41.7% 5 29.4% 5 25.4% 105 7.7% 1 32.5% 13 154 231 235 254 164 403 260 195 366 277 2727 13 40 44 26 40 25 98 57 42 12 17 414 -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75- 総計 空家入居 ×08 年世帯主年齢 世帯主年齢別 中古入居 建替入居 0 4 5 11 9 11 40 0 8 4 2 3 2 19 0.0% 10.0% 12.5% 27.5% 22.5% 27.5% 100.0% 0.0% 42.1% 21.1%10.5% 15.8% 10.5% 100.0% 世帯入れ替わり ×97 築年数 -10 築年数 ( 年 ) 97 居住住宅 中古入居 建替入居 10-20 20-30 30- 総計 49 71 104 11 235 0 2 28 11 41 399 610 998 204 2211 12.3% 11.6% 10.4% 5.4% 10.6% 0.0% 0.3% 2.8% 5.4% 1.9% ※空家化した 宅地に対する 入居の割合 ※中古入居、建替入居は空家総数に対する入居の割合、  新規入居は空宅地総数に対する入居の割合を示す。 居住住宅 /空家/空宅地 2272 129 326 2248 208 271 2193 295 239 2145 360 222 2008 2019 2030 2041 -34 35-44 45-55 55-64 65-74 75-2008 2019 2030 2041 居住住宅 空家 空宅地 28 121 209 469 683 762 2272 129 326 26 103 175 271 503 1169 2248 208 271 27 112 168 249 330 1305 2193 295 239 27 121 180 248 315 1255 2145 360 222 空家 97 年 -102 件 08 年 -129 件 居住 97 年 -2211 件 08 年 -2272 件 転居・転出 中古入居 建替入居 中古入居 空家化 建替入居 居住住宅築年数推移 97 -10 10-20 20-30 30-08 -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75- 総計 転居・転出 ×97 年世帯主年齢 世帯主年齢別 97 居住住宅 転居・転出 47 148 471 606 630 309 2211 16 30 83 46 53 48 276 34.0% 20.3% 17.6% 7.6% 8.4% 15.5% 12.5% -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75- 総計 世帯入れ替わり ×08 年世帯主年齢 世帯主年齢別 中古入居 建替入居 15 34 45 79 46 16 235 10 4 10 8 8 1 41 6.4% 14.5% 19.1% 33.6% 19.6% 6.8% 100.0% 9.8% 24.4% 24.4% 19.5% 19.5% 2.4% 100.0% 空家入居 ×97 築年数 -10 築年数 ( 年 ) 97 空家 中古入居 建替入居 10-20 20-30 30- 総計 15 22 48 17 102 9 14 15 2 40 1 0 14 4 19 60.0% 63.6% 31.3% 11.8% 39.2% 6.7% 0.0% 29.2% 23.5% 18.6%

(4)

44-4 4ー2.予測の結果及び分析 世帯主年齢の推移をみると(図10)、1997 年から急 激に増加してきた 65 歳以上の高齢層は 2019 年を過ぎ たあたりから横ばい状態となる。65 歳以上 74 歳未満 の世帯層は 1997 年から 2008 年の間では増加している が 2019 年までの 11 年間において減少し、その後は大 きな変動はみられない。これらのことから 2019 年付 近から急激な世帯変化の波が訪れると推測される。な んらかの施策を行わなければ住宅の世代継承が行われ ずに空家が増加する可能性が極めて高く、住宅地の資 産価値の低下を招く危険性がある。   次に住宅の築年数推移をみていくと(図11)、2030 年まで築年数 30 年以上の住宅の占める割合は増加し ていくが、その後若干の減少がみられる。世帯の高齢 化と住宅の老朽化が同時進行し、入居需要の少ない築 年数 30 年以上の空家が大量に発生することが懸念さ れ、早期の段階での対策が求められる。 4ー3.住宅・宅地需要にもとづくケーススタディ  異なる仮定条件にもとづく予測結果の比較から住 宅・宅地の活用支援の課題について考察を行うことを 目的としたケーススタディを行う(表4、図12)。 前節の変化の割合から算出した予測をベースとして各 仮定条件のもとに計算し、結果を比較する。 case1. 全ての空家への入居が発生しないと仮定した場 合  空家への入居がおこる変化の割合を0とした場合、 2041 年までに空家は約 10 倍に増加し、居住住宅が 44%の 812 件減少している。このことから空家の活用 を推進することが重要であることが確認できる。 case2. 全ての空家を除却し空宅地化した場合  発生した空家を全て除却し空宅地化した場合、2041 年における居住住宅が 62 件少なく、条件設定前の予 測と比較すると居住住宅の減少がより顕著にみられ る。空宅地への新築入居より中古住宅への入居の需要 の方が高いという結果となった。 case3. 老朽化した空家を新築した場合  築年数 10 年以上の空家を全て除却後、建売住宅と して新築した場合を想定すると 2041 年における居住 住宅が 111 件増加し、入居の促進がみられた。このこ とから中古住宅のリフォーム等による居住促進が期待 できる。  以上の結果より中古住宅への入居や更新の支援によ る世帯減少の抑制の可能性を把握できた。今後 10 年 ほどで大量に発生することが懸念される老朽化した空 家への対策を行うことが課題である。 謝辞 本研究を行なうにあたり、M 市役所のご協力を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。 参考文献 1) 友枝竜一他:統合型公簿資料 GIS データベースの更新課題 - 都市収縮期における郊外戸建 住宅地および住環境の管理システムに関する研究 その 11- 日本建築学会大会学術講演梗概集 p203-204 2009 年 7.1% 21.3% 27.4% 28.5% 14.0% 5.3% 9.2% 20.6% 30.1% 33.5% 4.6% 7.8% 12.1% 22.4% 52.0% 5.1% 5.6% 7.7% 8.4% 11.4% 11.6% 15.1% 14.7% 59.5% 58.5% 1.7% 1.2% 1.2% 1.2% 1.3% 0 500 1000 1500 2000 2500 1997年 2008年 2019年 2030年 2041年 -34 35-44 45-54 55-64 65-74 75-図10 世帯主年齢推移予測  図11 築年数推移予測 表4 ケーススタディの結果 図12  ケーススタディによる居住住宅の推移比較 5.まとめ  本研究では経年変化の分析より住宅・宅地需要につ いての分析を行い、将来予測とケーススタディにより 今後の動向についての考察を行った。世帯の高齢化に よる転居・転出は 2030 年までは増加していくが、一 定の世帯の入れ替わりと空家への入居がおこなわれ る。なかでも中古住宅への入居の需要があり、それを 活かすことで世帯減少を抑止する可能性があることを 明らかにした。 2000 2050 2100 2150 2200 2250 2300 2008年 2019年 2030年 2041年 case3 case2 base 居住住宅の推移 居住 空家 空宅地 居住 空家 空宅地 居住 空家 空宅地 居住 空家 空宅地 2008 2272 129 326 2272 129 326 2272 129 326 2272 129 326 2019 2248 208 271 1916 540 271 2225 142 361 2279 177 271 2030 2193 295 239 1544 930 253 2149 178 400 2262 228 238 2041 2145 360 222 1210 1260 257 2083 187 457 2256 253 218

bace. 予測 case1. 空家入居なし case2. 空家除却 case3. 空家の更新 9.6% 50.9% 66.7% 73.8% 45.2% 23.7% 17.0% 8.2% 27.3% 17.1% 8.2% 8.2% 17.9% 8.2% 8.1% 9.8% 71.2% 8.2% 9.8% 10.8% 1997年 2008年 2019年 2030年 2041年 0 500 1000 1500 2000 2500 30-20-30 10-20 -10

参照

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