• 検索結果がありません。

宮城県製材企業の現況と問題点(3)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "宮城県製材企業の現況と問題点(3)"

Copied!
48
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

宮城県製材企業の現況と問題点(3)

著者 仁昌寺 正一

雑誌名 東北学院大学論集. 経済学

号 85

ページ 1‑47

発行年 1981‑03‑20

URL http://id.nii.ac.jp/1204/00024462/

(2)

宮城県製材企業の現況と問題点(3)

仁昌寺正一

はしがき

宮城県製材企業の動向分析 一統計資料を中心として−

(11 製材業をめぐる需給動向

①製材品の需要動向

②製材用素材の供給状況 121 製材企業の企業規模動向 (3)木材流通機構の特質

①素材入荷経路について (i)系列化の問題 (ii) 素材入荷経路の特徴

②製材品の販売経路について

(4) ・… …・……・以上本誌83号 宮城県製材企業の変容の諸類型

(1) 諸類型の検出 (21 諸類型の検討

(31 ′」、 括 …・ ・ ・ ・…・…以上本誌84号 宮城県製材企業の経営状況

(11 『宮城県中'」、企業経営指標』

(2)実態調査から (3) ケース・スタディ

・ ・ ・ ・ ・ ・…・…・ ・以上本号

ロ1

4

5

4. 宮城県製材企業の経営状況

これまでの考察を踏まえ, 当該業穂の置かれている実情に更に接近する ためにここでは企業経営内容を分析・検討する。

(1) 『宮城県中小企築経営指標」

まず,宮城県の製材企業の(イ)収益性, (ロ)安全性, ヤリ流動性について,宮 城県商工労働部経営課が毎年作成している『宮城県中'」、企業経営指標』を 用いて分析・検討する。そのさい,全国の製造業と製材業,宮城県の製造 業と対照させその特徴を把握する。

−1− 1

(3)

('f)収繼性についてみよう。企業の収釜性は,資本利益性すなわち蕊で

あらわされる。 しかしその場合,企業の経営に直接利用される資本とそれ が生みだした利益(営業利益) との比較が基本となろう。経営資本対営業

利蓋率は,資本効率篭壺票上売上利益率 蕊'蕎) との税 鑑慧‑審壷皇×饗'誉である。

それ以外に,営業外の利蓋をも老恩した収盤性,すなわち鶚も堂た

企業の収益力を総合的に示す指標として重要である。

図−1 製材企業の収益性に関する指標 ①経営資本対営業利益率

パ,

ハ I

j

9・0、 / メ

/ 、 、

× ,

ILL̲̲〜̲ '一‑一c7.8盆圓製適麓

、/ X, ヌ,

7.7 1

9

8

言ハ

6.9

6ヘ

− 3

︐ 8 塁

︑ 6 世

6

5.7宮城県製造案 5.6宮域県製材乗 5.5全国製材業 5.2

5

4

2.9 3.2

3 I

2.5

昭43 47 50 51 52 53 54(年)

資料:f賊県商工労働部経営課『宮城県1 1'小企粟経営橘標』各年版より作成

−ワー

(4)

宮城県製材企業の現況と問題点(3)

これら四つの指標についてみていこう。図‑1の①でみるように,宮城 県の製材業は昭和53‑54年を別とすれば, それ以前の10年間の経営資本対 営業利益率は他者と比較して終始低位にあり, その年次別推移をみても特 異な動きが注目される。すなわち昭和50年をみれば他者は上昇傾向にある のに対し,宮城県製材業のみが引き続き下向傾向にある。そして上昇に転 ずるのは51年から52年にかけてであり,他者とのタイム・ラグがみられる。

上述のことは図‑1の③売上高対営業利益率についても全く同様にあては まる。こうした傾向を図‑1の②経営資本回転率の動きを勘案して推測す れば次のことがいえるであろう。すでに述べたように,宮城県の製材業は 全国の製材業,あるいは宮城県の製造業と比較して著い、企業規模零細性 をその特徴としているが, そのことは不況の影響を大きく受け,回復が他 者よりも遅れることを示している。図−1の①,③の昭和53年の数値がこ のことをものがたっている。 ところが,図‑1の②は,不況による営業資 本の減少が,他者が回復に転じた時点でもなお回復の遅れを示している。

②経営資本回転率

1% 2 I ウ︾︑

8全国製遣藁 8全国製材藁 7宮城県製造業 I

宮城県製材粟

P

昭43 47 50 51 52 53 54 (年)

資料:宮城県商工労働部繩営瓢『宙堆県中小企藁淫鴬桁開』各年版上り作成

−3− 3

(5)

③売上高対営業利益率

(回)

a4

A

j

/ 1

1

茅 I

a71

×/ 1

,、/

4.9

1.−,

4 8

上7全国製遺棄

4.3

、夢〆‐

A ノI 6

E qj

4 4.1

宮城県製材粟 3.5

&3 全国製材紫

宮魂県製造藁

2

1.7

1

昭43 47 50 51 52 53 54 (年)

寅料: 寓堆県而工労働祁径世課r樹峨臥 │ '小企寵鞭付術標」各fl蛾よ'〕ィ1戒

−4−

4

(6)

④売上高対総利益率

24.5 24.6

24・l..−f へ、X /‑ 、 ,A、

ぺ ' 、、翌竺‑壁 ̲尋0全国製遣典 iV'

"51

b

X

I

24

23

22

10

21

20‘0 20

19

18

17.4宮城県製造粟 17,3全国製材粟 17

16

宮城県製材粟

5 15

14

13●4 13

二二

昭43 47 50 51 52 53 54 (年)

資料:宵城県澗工労働部径営課『宵域県中小企粟経営桁標』各年版より作成

−5− 5

(7)

昭和53年から54年の特異な動きをどのように説明すべきであろうか。図 一 の②でみるように資本効率は落ち,①,③でみるように収益性は上昇 している。それは製材品生産量の増大による収益というよりは製材品価格 の上昇により得られた収益と考えられる。図−2の仙台市場における製材 品価格の53‑54年の動きがそのことを裏付けている。それは「史上最高の 高値を記録する狂乱価格となった。この高価格は,かつて48年の狂乱価格 に比較しても可成りの高騰振りであ(1)」ったといわれている。 この価格高 騰は外材原木の高値によって誘発されたものだといわれているが(2), 宮城 県においては, この機に乗じてそれまで大量に抱えられていた製材品の在

図−2 仙台市場における製材品価格の推移(㎡当)

(円)

9,蝿

8,噸

7,噸

6,噸

5,噸 杉 4,m

3.噸

呂蠅

昭46 47 48 49 50 51 52 53 54 (年)

性)溌雛│:::長綴捌(m):厚幅i::":::(m)

杉タルキ・…。.… 4.00 , 4.5×4.5 杉ヌキ…・・・… 3,65 , 1.5×9.0 松平ブリ・……,・ 4.0 , 12 O×27.0

資料: 『宮城県木材同友公三l州年記念誌』 (1980イト) 21‑22IIより仲成 111(2) 『宮城県木材同友会三十周年記念誌』 , 18頁。

6 −6−

(8)

庫が高騰する外材製品の価格水準に引き上げられながら一気に売却された ものと思われる(31.

これまで述べたように当該業種の複合経営が圧倒的な点を考慮すれば,

企業の総合的収益力は,図‑1の④売上高対総利益率が最もよく示す。こ こでも上述の宮城県製材業の特異性がみられる。昭和53‑54年では製材業 それ自体は好調なものの,副業としている業種の不振が大きく,企業の総 合的収益力の低下をもたらしている。

次に, (ロ)安定性についてみよう。企業の安全性は返済する必要のない自 己資本(資本金十利益準備金十資本準備金十その他の剰余金) と金融機関 や取引先など外部者から調達された他人資本との比率によって示される。

そしてそれは前者が債務に対する保証となることから50%以上にあること が望まい、と考えられる(図−3の①)。また,固定資産に投下される資金 は長期間にわたって固定され, したがってこの投下資本は返済の必要のな

い自己資本で調達寸萄ことが安全性の目安となる。すなわち,澤蕊;

1以上にならないことが理想とされる(図−3の②)。 さらに,他人資本に 多くを依存する場合でも,短期に返済する必要のない資金が, 自己資本と ともに固定資産にどれだけ充てられているかの指標, すなわち両者の比,

胃己資嘉+長:借入豊も企業の安全性を点検す…でみの力;して'…

ないものである。それは常に1以下にあることが望まい、(図−3の③)。

一般にわが国の企業では自己賀本の不足により総資本対自己資本比率が 50%以上あるものはぼとんどない。その中でも製材業はこの傾向大であ り, さらに宮城県全体の製造業の他人資本依存度は極めて大きく,それと 比較しても宮城県の製材業の自己資本の不足は明白である。過去10年間の 動向をみれば,全国の製造業・製材業が低下傾向を示してはいないのとは

(3) 木材価格の変動による収益回収のメカニズムは複雑であり, さらに立ち入 った実態解明が必要とされる。木材価格の変勤要因については,北田和夫著

『木材業界』 (教育社) 71‑73頁参照。

7

(9)

対照的に,宮城県のそれらが低下傾向を示していることが特徴的である。

それは一度不況等により慣用不安が生ずれば,ただちに企業の存立が脅か される状態にあることを示している。

図−3 製材企業の安全性に関する指標

①総賢本対自己資本比率

調

32.1 31.9全国製造業 〆凸一坤一

31.2

,ノー。、30.4〃/

/ ‐、/

30.1

鱒か洪""/¥。

2a9全国製材業

1 謡 /'、、、塚 露 ‑‑‑‑.

J 、、一一一一二−一

1

'

/

25.61 /

24

16.6宮城県製造業

11 6宮城県製材業

昭43 47 50 51 52 53 54 (年)

済料:寓城県商工労働部軽営肌『御柑臥 │ ' ,l、企集経営揃標J行;卜収上り作ht

8 −8−

(10)

②自己資本対固定資産比率

(%)

240

幻25 230

220

210

205.6宮城県製材業 2

190

181.7宮城県製造粟 18()

170 1

160 1

150

140

131.2全国製造粟 130

1

21浬F5 」286 一.。−年一一一一口凸÷−−−−−...,、 」29.5 」28.4

127,9 128.6 129.5 128.4全国製材業

120

昭43 47 50 51 52 53 SI (年)

質料F 1:「蜷県涌工労働部糀営課『宮峨臥' '1小企業禅鴬描標』各年版よ11作成

−9− 9

(11)

そうした状態をさらに図−3の②,③でみてみると,上述と同樵に固定 資産への資本投下の仕方に問題があることを示している。宮城県の場合,

製造業・製材業とも, この10年間で非常に大きな高下を繰り返し, 自己資 本による安定した設傭投資が行われていないことが窺われる。52年以降を みると,全国の製造業及び製材業の動向に変動力:みられないにもかかわら ず,宮城県のそれらは, とりわけ製材業は著しい上昇を示し,固定資本へ の自己資本投下が不足していることを示し,相対的な零細性の進化が予想 される。昭和54年のこの比率は宮城県の製材業の場合, 205.6%にも達し ている。 「宮城県中小企業経営指標』 (昭和54年)の掲げたこの比率の安 全性数値が「100%以内」となっていることに鑑みれば如何に「危険」な 状態にあるかが理解できよう。こうした自己資本不足をカバーする長期借 入金の固定資産への投下は,図−3の③でみるように,昭和52‑53年には 前年に比して大きく落ち込み, 53‑54年でそれに若干歯止めをかけた状態 となっている。従って, 自己資本の極度の不足により, 自己資本によって

③固定長期適合率 (%)

120 11ユ2

110

■Ⅱ几中 l“

95 8宮城県製適薬 95.7宮城県製材粟

91.6 90

80

『a#:鰕擬

73.8 、、73.6

V

70 72.3

69. 1

昭43 47 50 51 52 53 54 (年)

資料:悔城県而工労働部縄営課? 脚城熈'' 1,企龍経蝉H桶』升; │樅よ」】仲成 10 −10−

(12)

も長期借入金によっても固定設備への資金を確保できないでいる状態が宮 城県の製材業の最近の特徴であるということができる(4)。

さて, たとえ企業の安全性が確保され収益力が十分で黒字であったとし ても, もし資金の収入と支払いが均衡していないならば企業にとっては問 題が生じる。そのため,資金操りすなわち短期流動性の検討がなされなけ ればならない。それをみたものが図−4である。

これによると,宮城県の製造業は全国のそれを大きく下回っており,中 でも宮城県の製材業は支払能力の脆弱な状態,すなわち流動資産と流動負 債が1対1になるといった状態に近接しており,極めて問題の多いことを ものがたっている。過去10年間の状態をみると,全国の製造業・製材業は 上昇傾向の中で流動比率の高度化に向かっているが,宮城県のそれらは,

それとは逆に, 流動比率の低下に終始しており, 危険な状態が続いてい る。

全国と宮城県の流動比率の動きを具体的にみると対照的な動きを示して いることに気づく。すなわち,昭和50‑51年では前者は短期資金繰りが良 好な状態に向かっているにもかかわらず,後者は悪化に向かっている。52

−53年も前者は良好傾向,後者は悪化傾向と逆の動きを示している。この 理由は何であろうか。

以上, (イ)収益性, (ロ)安全性, レツ流動性の観点から,宮城県の製材業の経 営状況を全国の製造業・製材業,宮城県の製造業と対照させてみてきた が,宮城県の製材業は, (イ)については零細性を反映して, また兼業業種の 不振を反映して安定的な収益回収力がそなわっていないこと, (ロ)について ば過少資本, とりわけ自己資本の不足により信用不安の影響を受けやすい I41 農林水産省は昭和55年4月に新たな目標を掲げた『一般製材業の中'」、企業

近代化計画』を発表した。それによれば「設備の近代化は,過剰設捕の発生 防止に配慮しつつ,老朽設備の更新,省力化機械,高度加工施設及び新商品 の生産に必要な機械の導入等に努める」 (2頁) とされ,昭和60年に向けて 行政サイドから新機種製材機械,運搬機等の導入促進がはたらきかけられる ことになっている。 自己資本,借入金ともに不足がちな宮城県の製材業界は こうした状況にどのように対応していくのであろうか。

−11−

(13)

図−4 製材企業の流動性に関する指標

①流 動 比 率

152・0 ‑P一153.2全国製造業

150 5 150.7 −鐸一一一

/、‑ .一‐

(%)

150

r

143,

r

ノ / 、、// 、≦…職

135.

,30シ×

/ ]蝋

140

130

126

121 120

110

106 0滴城県製瞳鷺

l()2.6宮城リ,{製材藁 100 lOL3

││343 47 50 51 52 53 5,1 (年)

箭料:薊峨U1L耐L労働部維営課『内城艸' 1小企紫経営端標』廿年散より伽jk

12 −12−

(14)

こと, したがって早急に自己資本の増資がはかられるべき状態にあるこ と,例については運転資金に余裕がなく,原価構成の7〜8割を占める原 料(丸太)の安定的確保を常に危険なものとしていること等々,極めて弱 体な経営体質であることが明きらかにされた。

さて,本「指標」では「健全企業」のみをとりあげてそれらの数値を対 照させてきたが,最後に,昭和50年版『指標』がとりあげている宮城県製 材業の「健全企業」と「欠損企業」との経営諸指標の比較を行い,後者の

どのような点に問題があったのかを検討しておきたい(5)。

表−1により, まず安全性についての諸指標をみると, 「欠損企業」は 総資本対自己資本比率が7.3に過ぎない。これは全国よりも10ポイントも 低い「健全企業」のその比率の半分である。自己資本が固定資産にすら達 していない状態を, 自己資本対固定資産比率が「健全企業」 174.1 , 「欠 損企業」 465.0という数値が示している。 しかも長期借入金も,固定長期 適合率が前者93.9,後者154̲9となっているように設備投資には向けられ ていない。次に流動性についてみる と,流動比率は「欠損企業」86.0であ り, また流動資産より棚卸資産を除きヨリ確実な支払手段の流動負債に対 する割合をみた当座比率も56.0と異常に低く,手持ち資金の澗渇状態を示 している。 さらに生産性についてみると,本「指標」が集計した製材企業 の平均従業員数「健全企業」25.0人, 「欠損企業」30.9人に照らし合せれ ば,従業員1人当り年間生産高が前者では10,309千円,後者では6,744千 円,同じく年間加工高が前者では4,735千円,後者では3,060千円となって いる。

つまり 「欠損企業」では従業員当りの生産性が低く,他人資本への依存 率が高い結果売上高対支払利息比率が異常に高く, かつ兼業業種の経営も 不振では欠損を計上するのも当然であり, これらの点についての改善がな

されなければ経営の強化ばありえないだろう。

(51 この年以後, 『指標』は「欠損企業」をとりあげていない。

−13− 13

(15)

表−1 宮城県製材企業の「健全企業」と「欠損企業」の経営指標比較

分 健全企業 | 欠損企業

21 10

(人) 25.0 30.9

集 計 企 業 数

平 均 従 業 員 数(人)

収益性

経営資本対営業利益率(粥)

経営資本回転率(回)

売上高対営業利益率(彫)

加 工 高 比 率(粥)

売上高対総利益率(%)

売上高対支払利息比率(粥)

生産性

従業員1人当り年間生産高(千円)

従業員1人当り年間加工高(千円)

機械投資効率(回)

従業員1人当り機械装備額(千円)

従業員1人当り月平均人件喪(千円)

加工高対人件費比率(鰯)

流動性

率(%)

当 座 比 率(粥)

受取勘定回転率(回)

支払勘定回転率(回)

原材料 回 転率(回)

仕掛品 回 転率(回)

製 品 回 転 率(回)

固定資産回転率(回)

978991■F■も■凸211532

047420号十F■F■513523

4 1

955028

0 3 2 1 2 3 7 9 1

04

4046且8

4 6 4 9 3 7 0 6

63

106.8 69.3 4.8 3.2 24.4 14.1 6.5

6643鳩一u485

安全性

総資本対自己涜本比率(影)

自己資本対固定資産比率(%)

固定長期適合率(%)

14 5 174.1 93.9

7.3 465"0 154.0 その他

販売 管理巽比率(%) 12. 1 15.9

喪料:宮城県商工労働部経営課『宮城県中'」、企業経営指標』昭和50年版

(2)実態調査から

次に,宮城県水産林業部林政課『宮城県木材業者・製材業者登録名簿』

(昭和54年版)に記載されているものの中から若干の製材企業を任意抽出 し,収益上にあらわれたそれらの経営上の問題を探ってみたい。すでにみ

14 −14−

(16)

たように,昭和48年オイル・ショック以降の長期的不況は,宮城県製材業 界では主として零細企業と超大型企業を襲っている。 したがって前節の如 く経営規模を一括して扱う方法ではこれらの経営上の問題は明確にされな

いo

ここでは前節とは若干異なった観点から経営内容に立ち入ってみる。す なわち,収益性,経営の多角化・多様化,使用原材料の内容,保有労働力 等に着目し分析される。収益性は企業体質の強弱さを端的に表現すると考 えられる。 しかしまた, それはその他のさまざまな要因が総合的に作用し た結果であるから,上述のさまざまな項目を収益性の観点から分析するこ とが適切である。

まず,調査対象となった宮城県の製材企業90社(付表‑1)を1611従業員 数で6階層に区分し,売上高と純利益(7)をみたのが図−5である。これに よれば,従業員規模で最下層と最上層に位置するものを別とすれば, それ 以外の中間階層についてば売上高と純利益の相関関係はみられない。それ は純利益が同じであるにもかかわらず,売上高の格差が大きいことにあら われている。逆にいえば,同じ売上高を示しな力くらも,純利益が著しく大 きいものからゼロに近いものまで様々ある。図−5では諸企業の特定箇所 への集中がみられず,規模別の特色は把握されない。

(61 調査ば帥社を対象にし,間取調査を中心に行った。ただし,収益性に関す る数値の確定は, この調査結果とともに,各種公表資料(例えば,聯合調査 株式会社東北支社「東北木材建材業レコード』,東北経済調査研究所r年鑑・

仙台市場』等)を参考にした。それら90社の概要ば次の通りである。企業形 態別にみれば,個人企業=27社,会社企業=63社であり,後者の内訳は株式 会社=50社,有限会社=11社,合資会社‑1社,合名会社=1社となってい る。従業員数を約11)人単位で区分した企業数は. 1〜9人=35社. 1O〜19人

=29社, 2()〜29人=9社, 30〜39人=7社, 40〜50人=2社, 50人以上=8 社である。資本金を次のような任意に設定した基率で区分してみると, 0−

500万円未満=28社, 50()万〜1,(Xm万円未満=12社, 1,0IIO万〜2,(XgX)万円未 満=10it、 2,ooo万〜5,O()()万円未満=7ft, 5,O00万円以上=2社となって いる (個人企業はすべて不明) 。また創業年をみると,明治=4社,大正=

14社 昭和20年まで=19社.昭和21年以降=53社である。

(7) ここでいう純利益とは税引前利益。

15− 15

(17)

図−5 従業員規模別売上高及純利益

(円)

80fg

50" ▲日 ▲4 ▲ 6

単2

q,

売 10Ig

★7

▲ 刮 轆 鞠 窪 露 鯲 超 巧

5徳

l I 70

1億

●配

5千万

50万 百万 5百万1千万 5千万 億

純利益 (円)

資料:実態現査

そこで次に,従業員規模と売上高の相関関係をみてみると,図−6の① が示すように,それらのおおよその比例関係はみてとれる。 しかしながら 売上高那高くなるにつれて相関関係が弱くなっていることがわかる。すな わち従業員の増加力t即売上高の増加につながるのはせいぜい3億円程度ま でであり,それ以上になると従業員の増加が売上高の増大とはなっていな い。同じ売上高を示す企業でもその従業員数については大きな格差がみら れる。次に図−6の②によって,従業員数と売上高利益率をみると,図一

6の①ではみられなかった関係が明白になる。すなわち,従業員数が多く なっても利益率が大きくなることはない。それどころか両者の反比例関係 すらみてとれる。そして圧倒的多数の企業が従業員20人未満で利益率が 2.5%以下に集中している。利益率最大階層の企業の従業員数は10人前後

16 ‑16‑

(18)

図−6の①従業員規模別上高 (lil)

100IC

b6 4

50瞳 ・6

9

。?

10(@

錘浬刷

﹄ 繩 率

ニョゲ

ッじ ・湖 ・17

5姫 ・錨

1蝿

5千万

(注)数字ば企蔑番母

10 20 30 40 50 60 70 80 " 1" 150 (人)

fr料E実睡到在

であり,逆に従業員が100人をこえる企業では利益率ゼロの企業も存在す る。ここでも,従業員数に関する企業規模と経営内容とが単純に照応しな いことが如実に示されている。

従業員数と生産性(1人当り売上高) との関係をみても (図−7) ,生 産性の高い企業は大規模企業というよりも'j、規模企業にみられ, また生産

17

−17−

(19)

図−6の②従業員別売上高利益率

売上高利益率 雷、閉

3.14

1

窪門

bt319か露 ・雷 4 I守山ロ 6 (注)赴字は企璽番号8

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 150 (人)

従業員数 資料ェ実態調査

性は単純に従業員規模と相関関係を示さず,同じ従業員規模にありながら も,生産性の著しく低いものから高いものまである。

次に,企業の規模を売上高から捉え,それと利益率との関係をみても,

大規模企業が即利益率大とはいえず,図−8から窺えるように,利益率に 関して適正な企業規模があり,規模と経営内容との照応関係はさらに別の 角度からの検討が必要とされる。

以上,図−5〜8に示されるように,企業の規模(従業員数及び売上 高) と企業経営内容(純利益及び利益率) との関係は一般に言われている ほど単純明快ではないことが明きらかにされた。

それでは企業経営内容を規定する他の要因は一体如何なるものであろう か。すでに述べたように, ここでは「一般製材業」すなわち木材(丸太)

を原料としそれを建築・土木・木箱・梱包・建具・家具・造船・車両等の ための用材に加工し供給するものと,それらの用材を用いて合単板・チッ プ・集成材等2次的加工を施す特殊な業種との両者を合せて製材業として いるのであり, さらにまたそのほかにも経営体としては, それらの用材

−18−

18

(20)

宮城県製材企業の現況と問題点(8) 図−7 従業員1人当り売上高

(円)

5,000万

守田

ザユ

●・的

1,0㈹万 1 ・6

申霜 g野 田18 . . 9画,曲

・釦

・騨

奄。z】 ・ 】1 .7J自由調 ・45

・蹄・途,&

髄智・呵錘

・謁

蕊蕊。

碑,判 舎2,24

。③

・40

・Z6

:爵

・4

・鵠

.】5

・13

.樫

・9 ・国

1人当り売上商 合田

心17

16 。=

41

卜浬

。T5

10

10万

(由杜字は企禽番冊

″.

pa

lO 20 30 40 50 60 70 80 90 100 ilO M 1h0

従業員数 (人)

資料:実態鋼在

19

−19−

(21)

図−8売上高企業規模からみた利益率

・曲.閲

・的

(唾〕粒字l』企狂昏号 14 。。

J琿叫

.堂.轄 甲 l」

・45

・l5 E5 32 b記q69

47コ 。5 q21 ・79

p9

廿

、6

7 2 4 8

50if 1001$

(円)

1値 10IE

売上商別企業規模 資料上実態,卿企

や2次的加工品の仕入・販売,原木卸売,新建材販売,建設,不動産,加 えて農業などの生業を合せ活動しており,それらから生じる収益をも合せ 総合されて企業の収益とされている。 したがって上述のような企業規模か

らの分析はこの観点から見直されなくてはならない。

図−9の①は,他の業種との複合経営の度合(以下,専業率と称す) と 売上高との関係をみたものである。これをみると,一般製材業の比重と売 上高とが相関関係の度合はさほど強くばないものの,おおよその反比例的 傾向はみてとれるであろう。同じ専業率をもちながら売上高に上下の差が でてくるのは,従業員規模と, さらに兼業業種の内容の相違によって規定 される。一般製材業それ自体であっても,従業員規模に比例して大きくな っているので,兼業と企業経営とのヨリ立ち入った分析は売上高利益率を みなければならない。

図−9の②は専業率と利益率をみたものである。図−9の両図を総合し てみると,すでにみたように売上高の大きいものが利益が大きいという傾 向は全くみられない。①の専業率が低くて売上高が巨額の企業は,利益率 は概して低い(企業番号4, 7, 8, 9) 。これらに共通する特徴は,営

20 −20−

(22)

宮城県製材企業の現況と問題点(3)

業活勤の大部分が原木卸売業に向けられており,そのための用員を多数抱 えざるをえず, したがって利益率が上がっていないということである。ま た,利益率の高い企業は専業率の高いところにみられる(企業番号29, 68, 89) 。これらに共通する特徴は,従業員は10人前後であり,販売部門 はなく,製材業オンリーの堅実な経営をしているものとみられる。

図−9の①専業率別売上高

(円)

l"億

8

・4 中6

争毎

9

光 上 10値

。I

調

已卑■

廿

l地

唯)飲宇唯企劇岳1)

IO 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 一般製材業専業化率

贋料:実態,叫査

−21− 21

(23)

以上の2点は明瞭に指摘されるところであるが,その他の企業について いえば,売上高が中規模のものは概して利益率3%以下から1%の間であ

図−9の②専業率別売上高純利益率

翻館

・鯛

勺14

‑3

(注)数字陣全面番丹

・恥

、聾 ・記

鉛興

641

・型

4

凸11

.5

・4コ

中21 竃75

■79

3

睡 髄 沌 鶚 勝 記 仙

1

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (%)

一般製トイ菜LI」唯化半 資特F実態綱従

−1)イフー

。ワ ーー ーー

(24)

り,専業率が5割から8割までの間にあることがみてとれる。このグルー プは従業員規模でいえば10人から20人の間に集中している(図‑6の②参 照) 。

以上のことから,宮城県製材企業の最も平均的なものをとりだせば, そ れは売上高9千万円から2億円までの間にあり,製材業への専業率が6割 から8割までの間にあり,従業員の数が10人から20人までの間にある企業 である。

使用原料を国産材と外材のどちらに多く依存しているかによる経営への 影響はどうであろうか(図‑10の①②)。資料の制約により特徴的な傾向

図一10の①外材依存率別売上高

(円)

10ie

d42

* I

や型

・ユヨ

・45

¥ 畷

BOP

凸曲

・畷

・12

.67 凸39

・44

.41

1瞳

塑訂申ら

(注)救字は企蔑番号

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 外材依存率

壷料堂実蝮凋jff

−23− 23

(25)

をとりだすことは困難であるものの,次の点ば注目に値する。すなわち専 業率が極めて高く,売上高はさぼど大きくないものの利益率が極端に高い 企業(企業番号29, 68)は,国産材と外材をちょうど半分づつ使用してい

るということである。

以上のことから次のことがいえるであろう。すなわち, これまでの高度 成長期においては急激な需要の増大に対応し,製材業から木材販売業へ営 業主力を移行し,当時5兆円産業ともいわれた住宅産業の好景気に支えら れ,営業規模を拡大してきた大規模製材企業は, 48年オイル・ショック以 後の長期的不況の中で過剰人員を抱え経営不振に陥っていることが営業高 利益率の低さにあらわれている。

他方,弱小零細企業は売上高に対して比較的高い利益を確保している。

これらの企業は高度成長時の激しい下層淘汰作用の中で生き残ったもので 図一10の②外材依存率別売上高利益率

rl︑ 錦調

(注) 散 字は企業畠弓

4 1

勺う り苫

﹃︒

』ー tJ

21

、78 4J ・36

467 ロワ 3m −42 11 *23

曲曲 ⑩|錦色白

1

ロ>ワ と竺

76

10 20 30 40 5() 60 70 80 90 100(%) 外材依存卒

資料:実態州盃

24 −24−

(26)

あるが,経営を堅実に行っているというよりはむしろ,木材販売業やその 他の兼業業種に進出する自己資本もそれを補足する借入金に対する信用力 もなく, したがってそれ以上の企業規模の拡大を行う見込みがなく,従来 のやり方に従って細々と営業をしているといった方が適切であろう。結果 的に, これらの企業ば投機的な部門に営業主体を移し景気変動のたびに大 きな動揺をくり返す企業よりは堅実な経営を行い安定していることは確か である。 しかし一度素材入荷や製品出荷の面で問題が生ずれば,資金の絶 対的不足の故に, ただちに倒産の危機に襲われるのばやばりこれらであ

り,その意味で,前節でみた脆弱な経営体質の企業である。

これらの外に全体の3分の1を占める企業は,製材業と木材販売業に経 営主力を2分し,堅実な利益率をあげている、企業と, また国産材不足に上 手に対応しながら外材をとり入れ,売上高利益率を最高水準にもっていく

ことに成功した企業とが存在する。これらの企業は,今後,一般的な需要 減と外材入荷量の減少傾向の中でどのような経営戦略に転ずるべきかを厳

しく問われている企業でもある。

(3) ケーススタディ

さらに, これまでとりあげた諸企業の中で特徴的な動きを示しているも のを3社を選び出し現況をみる。 3社はそれぞれ第3章でみた変容の諸タ イプI, n,Ⅲにあたる。A社は製材業の哀退が著い、タイプⅡに属し,

現在百人以上の従業員を有し,原木卸売をはじめいくつかの複合経営を行 っている超大型製材企業である。企業形態は株式会社である。B社は製材 業の発展が顕著なタイプIに属し,形態は有限会社であり,製材業以外の 営業は行っていない。従業員は7名である。C社は宮城県の製材業の動き と同様の傾向をもつタイプⅢに属し,製材業のみの営業を行っている,従 業員5名の個人企業である。

①A社

はじめにA社の沿革・概要をみよう。当社は昭和31年に資本金3百万円

25

−25−

(27)

をもって設立された。その後数回にわたって増資を行い,現在8千万円と なっている。昭和46年に一度経営不振に陥り,その際総合商社N社の資本 参加と役員派遮を受け,系列下にはいった。現在この商社がA社の株を6 割以上保有し, また役員も9人のうち2人を派遣している。

昭和47年, 48年と利益率を急速に高めたが, オイル・ショックを契機と する不況により大きく落ち込み, 48年水準には程遠い現況である(表−2 参照) 。不況突入後,従業員数が昭和49年182名, 54年134名と削減され ていることが示すように,企業体質改善の努力力t続けられている。

営業内容は,新建材販売45%,製材27%,原木卸売23%,不動産取扱2

%,建築3%である。

表‑2 A社の営業業績 単位:万円

:‑(馬)

年 度 (a流 上 高 (b)純 利 益 昭和46年

47 48 49 50 51 52 53 54

209,116 354,837 539,310 616,894 583,000 707,220 675,759 594,909 664,129

69 7,167 19,605 4,661 33 45 132 128 205

0 0 6 7 脚 蛇

凸4心厚︒■■いり

0 2 3 0 0 0 0 0 0

(注)純利益は税引前利益。

原木購入はN商社からのものが8割以上を占め, その他は原木取扱業 者, 木材協同組合から購入している。入荷原木の大半は米材(米栂, 米 松, スプルース)である。購入した原木のうち約半分は自社製材用にまわ

し,他の半分は製材業者,木材小売業者へ販売している。

決済方法をみると,入荷時の支払いは現金20%, 支払手形80%(150サ イト)で行ない, また販売時の決済は現金40%,手形60%という割合であ る。取引金融機関は都市銀行,地方銀行をはじめ各種金融機関(公庫等)

26 −26−

(28)

である。

また多数の製材機を有し,その設備動力総馬力数は900馬力, 月間製材 能力4,200㎡,年間取扱量10,000㎡である。その他フォークリフト, トラ

ック等運搬車輌48台を保有している。

今日,宮城県に本社をおき,他に東北他県にわたって8つの営業所・出 張所・製材工場を有している。そのことからもわかるように,営業区域は 宮城,福島,山形を中心に東北6県に広く及んでいる。宮城県では一流の 原木問屋・建材販売店である。

次にA社の財務諸表からみた特徴を2, 3指摘してみよう。まずA社の 昭和48年と54年の損益計算書を比較してみる。付表−2より算出すれば,

売上高総利益率は48年13.7%, 54年10.6%となる。また営業利益率は48年 6.8%, 54年2.6%で半分以下に低下している。一般管理費及び販売費が 極端に大きくなったからである。さらに経常利益率も営業外費用のうちの 支払利息割引料,雑損失の増大によって, 48年4.4%, 54年0.4%と10分 の1に低下している。 さらに加えて特別損失の増大も利益を一層低下させ ている。かくして表−2でもみたように純利益率は48年3.6%, 54年0.03

%となっている。つまり54年のA社の純利益は48年に比してわずか1%に 過ぎないという状態にある。

ところで営業利益率への貢献の度合を営業業稲毎にみると, 54年では最 も高L、のは不動産部門と製材部門であり,次いで素材販売部門である。こ れを48年でみると,最大の貢献を示していた不動産部門が大きな赤字を出 し, さらに加えて製材部門の利益減がこれに拍車をかけ,営業利益率の急 激な低下をもたらした。

次に財務内容をみよう。表−3の数値はA社の貸借対照表(付表−3)

から導出されたものである。 これによれば同社の自己資本比率は48年, 54 年ともわずか4%台である。 また固定比率も両年とも200%をこえてい る。すなわち自己資本の不足が顕著である。 しかし同社は時価十数億円に も及ぶ不動産を所有し,総合商社N社からも資本参加をえている。それ故

−27− 27

参照

関連したドキュメント

― 84 ―

年金支給にあたり仮想勘定を年金除数で割ることに  

内部留保分析によって,わが国製造業を規模別にまたトヨタ,目立について分析を進めてき

それぞれにおける労働分配率の定義は以下のとおり。

  団体定期保険は専ら死差損益のみで、それ以外は費差損益がわずかにあるだけである。一方、毎

表1 日本におけるCSRと企業業績に言及した先行研究 CSR指標 業績指標 結果 CSR 指標を被説明変数として分析 眞崎[2006]

図表7−4 鉄鋼業の有利子負債と金融費用の対比   小企業  中企業  中堅企業  大企業   

2019 で得られたデータを追加し,各調査年での,第 1