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変わる高校教育第 14 回カリキュラム マネジメント Par t 1 概説 カリキュラム マネジメントが教育課程を軸にした学校教育の改善 充実の好循環を生み出す 甲南女子大学 村川雅弘教授 次期学習指導要領では 教育課程を通じて 子供たちが変化の激しい社会を生きるために必要な力の育成をめざしていくこ

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カリキュラム・マネジメント

第14 回

変わる高校教育

 このコーナーでは高校教育の変化を、高校での取 り組みや工夫、高校に対する教育委員会等の支援な どについて、それらの背景にある社会の変化などを 踏まえて紹介していく。  今回のテーマは、次期学習指導要領のキーワード の1つに挙げられている「カリキュラム・マネジメ ント」である。  カリキュラム・マネジメントとは、「学習指導要 領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等 を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現する ために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、 それを実施・評価し改善していくこと」である。  各学校では、学校の教育目標を立て、生徒に身に 付けさせたい資質・能力などを明確にし、それを意 識しながら教育課程を編成し、教員や予算などの資 源配分をして、実施・評価していくことになる。  では、そうした取り組みを進めるにあたって、各 学校ではどこから始めるとよいのか。今回は、カリ キュラム・マネジメントのポイントである、「教育 目標や育成したい資質・能力の設定」「教員間での 目標の共有」「教科等の教育活動を相互に関連付け た編成」などに注目して、4つの高校の取り組みと、 県教育センターにおける調査研究事業・支援事業に ついて取材した。 CONTENTS Part 1 概説 ●甲南女子大学 村川雅弘教授

··· ·p19

カリキュラム・マネジメントが教育課程を軸にした 学校教育の改善・充実の好循環を生み出す ➡学習指導要領の大綱化・弾力化が進む中で「カリキュ ラム・マネジメント」が求められる ➡5つのレベルで求められる「カリキュラム・マネジメ ント」 ➡児童・生徒一人ひとりに「カリキュラム・マネジメン ト」の意識をもたせることが重要 Part 2 都道府県の取り組み ●新潟県立教育センター

··· ·p23

➡カリキュラム・マネジメント導入の手順を伝えるワー クショップを実施 ➡ 年間を通じてリーフレットを作成・公開し、幅広い情 報を提供 Part 3 高校の取り組み ●福島県立ふたば未来学園高等学校

··· ·p26

➡ 全教員が議論し学校全体のルーブリックを作成 ➡探究活動をカリキュラムの中心に据えた「未来創造型 教育」を実践 ●島根県立出雲高等学校

··· ·p30

➡ SSH・SGHの指定をきっかけに「出雲高校の学びのス タイル」の確立をめざす ➡全教員が課題研究の指導を担当するなど、校内の指導 体制を整える ●工学院大学附属中学校・高等学校

··· ·p34

➡「思考コード」を基軸に全ての教育活動をマネジメント ➡研修を重ねることで、「21世紀型教育」の実現に向け た教育改革の方向性を共有 ●広島女学院中学高等学校

··· ·p37

➡SGH指定を機に、伝統に基づく「特色教育」のカリ キュラムを再検討 ➡高校3年で育成をめざす人材像から逆算して各学年の 教育目標を設定

(2)

Par t

1

概 説

カリキュラム・マネジメントが教育課程を軸にした

学校教育の改善・充実の好循環を生み出す

学習指導要領の大綱化・弾力化が進む中で

「カリキュラム・マネジメント」が求められる

 中央教育審議会(以下、中教審)が2016年12月に公 表した「幼稚園、小学校、 中学校、高等学校及び特別支 援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等につい て(答申)」(以下、答申)では、次期学習指導要領のポ イントとして「社会に開かれた教育課程」「主体的・対話 的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」とともに、「カ リキュラム・マネジメント」の重要性が強調されている。  答申によると、カリキュラム・マネジメントとは、「学 習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実 状等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を実現 するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、 それを実施・評価し改善していくこと」である。  カリキュラム・マネジメントの考え方は、近年、学習 指導要領の大綱化・弾力化が進められる中で、重要性が 高まってきた。例えば、1998年改訂の学習指導要領で は、基本方針として「各学校が創意工夫を生かし特色あ る教育活動を展開する」ことを掲げ、総合的な学習の時 間が創設された。そこで、各学校は教育目標の設定、そ の達成に向けた教育課程の開発、教育目標の達成状況の 評価などに取り組むことが本格的に求められるようにな った。  これからの時代に求められる資質・能力を育むために は、何を育成するのかを明確にして教育目標を設定する 必要がある。教育課程の編成にあたっては、各教科等の 学習を充実させるだけでなく、教科等の内容を相互に関 連付けるとともに、必要な教育内容を組織的に配列し、 各教科等の内容と教育課程全体とを往還させるような教 育課程の編成が求められる。また、人材や予算、時間、情 報、教育内容といった資源を適切に配分する必要がある。 そして、学校評価等を通じて、教育課程や資源配分を見 直していく。こうしたサイクルを、各学校で回していく ことが求められているのだ。  答申によると、カリキュラム・マネジメントには、<図 表1>の3つの側面がある。これまでは、②のPDCAサ イクルの側面からカリキュラム・マネジメントの必要性 が指摘されてきたが、これからは、「社会に開かれた教育 課程」を実現するため、①や③にも配慮して教育課程を 構築することが求められている。  ②の視点からのカリキュラム・マネジメントについて は、(1)学校が行っていること、行うべきことを整理す る、(2)できている点や強み、問題点や要改善点を明ら かにする、(3)それらの要因を明らかにする、(4)改 善することで効果が見込めそうな要素を明らかにする、と いった段階を踏み、学校全体で取り組んでいくこととな

甲南女子大学

 次期学習指導要領では、教育課程を通じて、子供たちが変化の激しい社会を生きるために必要な力の育成をめざしていく こと、社会との連携・協働を重視しながら学校の特色づくりを図っていくこと、現実の社会との関わりの中で豊かな学びを実 現していくことなどが求められている。そして、その理念の実現のためには「カリキュラム・マネジメント」が重要であるとされ ている。この概念は、管理職等に限らず、今後は全ての教職員に必要になる。そこで、カリキュラム・マネジメントについて 村川雅弘教授にうかがった。

村川 雅弘

教授

<図表1>カリキュラム・マネジメントの3つの側面 ①各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育 目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成 に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。 ②教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の 現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課 程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPD CAサイクルを確立すること。 ③教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、 地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組 み合わせること。

(3)

る。この点については、村川教授も著者の一人である 『カリキュラムマネジメントハンドブック』(ぎょうせい、 2016年)に詳しくまとめられているので、参照いただき たい。

現代的な諸課題を各教科等から

横断的に理解する取り組み例

 村川教授は、カリキュラム・マネジメントの3つの側 面のうち、①の「教科横断的な視点で教育内容を組織的 に配列すること」の重要性を強調する。この側面からの カリキュラム・マネジメントについて、村川教授が実践 している事例を元に見ていこう。  <図表2>は、ある小学校の教科等の目標のうち、「防 災教育」に関する項目を抽出したものである。表中の各 教科等の目標を見ると、災害のメカニズムの理解や日頃 の対策、避難所生活を営む上で必要と考えられるものが 並べられている。  例えば「的確に話す、相手の意図をつかみながら聞く」 (国語)は災害時の誤情報やデマによるパニックを引き起 こさないために必要な力であり、「日常生活に必要な基礎 的・基本的な知識及び技能を身に付け、身近な生活に活 用する」(家庭)は、避難所生活で発揮される力と考える ことができる。また、「外国語によるコミュニケーショ ン」(外国語活動)は、地域に住む外国人に対して、避難 を誘導したり、避難所でお互いの習慣や慣習を理解し合 って共同生活を営んだりしていく上で役に立つ力といえ る。  「現代的な諸課題の解決には、各教科等で学ぶ内容など を横断的に活用する必要があります。各教科等には関連 するさまざまな内容が散りばめられていますから、教職 員の側がまずそのような意識を持ち、教科の目標や内容 の理解だけにとどまらず、さまざまな課題を理解したり、 問題を解決したりする上で役立つ知識や技能であること を、児童・生徒に具体的に伝えることや気付かせること が重要です」(村川教授)  そして、こうした取り組みは、既にさまざまな学校で 実践されていることを指摘する。  「『カリキュラム・マネジメント』は、聞き慣れない言 葉かもしれませんが、特別なことではありません。例え ば、総合的な学習の時間のカリキュラムを作ることなど は、まさにカリキュラム・マネジメントに当たります。 児童・生徒や地域の実態に即して題材を選び、教科横断 的に取り組む活動だからです。これまで総合的な学習の 時間をきちんと実践してきた学校であれば十分に対応が 可能です」(村川教授)

5つのレベルで求められる

「カリキュラム・マネジメント」

 「カリキュラム・マネジメント」は、学校経営と教育課 程編成および実施に関わる概念であるため、各教科や学 年の教職員には直接関係はしないものと捉えられがちだ が、村川教授は「カリキュラム・マネジメントは、学校 長や管理職だけに求められるものではありません。カリ キュラム・マネジメントには、5つのレベルがあり、全て の教職員が持つべき考え方です」と説明する<図表3>。  1つ目は、教育課程つまり学校レベルである。次期学 習指導要領が求めているのは、このレベルに当たり、学 校経営計画やグランドデザインが該当する。  2つ目は、各教科等のレベルである。各教科の学習活 動を通して、どのような資質・能力を育むのか、そのた めの授業づくりの基本方針をどう策定し、教員組織や環 境整備、研修をどう進めていくかを考え、実践し、見直 していくことである。  3つ目は、学年レベルである。学年団として、児童・ <図表2>「防災教育」に関する教科等の目標例 ●的確に話す、相手の意図をつかみながら聞く(国語) ●環境の保全や自然災害の防止(社会) ●流水の様子、天気の変化、自然災害等に目を向ける。 生命を尊重する態度(理科) ●音楽を生かして、生活を明るく潤いあるものに(音楽) ●日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を 身に付け、身近な生活に活用する(家庭) ●心の健康、けがの防止及び病気の予防(体育) ●外国語によるコミュニケーション(外国語活動) ●支え合いや助け合い。働くことの意義理解(道徳) ●諸課題を解決しようとする自主的・実践的態度(特活) <図表3>カリキュラム・マネジメントのレベル ①教育課程のカリキュラム・マネジメント ②教科・領域のカリキュラム・マネジメント ③学年のカリキュラム・マネジメント ④学級のカリキュラム・マネジメント ⑤自己の学びのカリキュラム・マネジメント

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生徒をどう育てていくかの基本方針を考え、実践し、見 直していくことである。  4つ目は学級レベルである。学級担任が児童・生徒の 実態を踏まえ1年間かけてどのような力を付けていきた いのか、学級経営や授業づくり、環境構成等をどう進め ていくかを構想し実践していくことである。  そして、5つ目は、児童・生徒一人ひとりの学びのレ ベルである。  「これからの子供達には、自分自身で将来像を思い描 き、身に付けたい資質・能力などの目標を設定し、その 実現をめざして生活したり、学んだりしていくことが求 められます。5つ目のレベルでめざしているのは、そう した習慣を子供たちに身に付けさせることです。カリキ ュラム・マネジメントは、この5つ目のレベルを意識し て回していく必要があります。そしてそのためには、児 童・生徒自身を動かさなくてはなりません」(村川教授)  児童・生徒一人ひとりのカリキュラム・マネジメント の概念をまとめたものが<図表4>である。ここでは、 「p:学習課題の設定と学習活動の見通し」から始まる、 いわゆるPDCAサイクルに基づいた形になってはいるが、 必ずしも順序性にこだわる必要はないと村川教授は説明 する。  「学習課題や学習活動の内容や質により、振り返りの中 心となるプロセスは変わってきます。大切なことは、振 り返りによって、新たな気付きを得て次の学びにつなげ ることです。場合によっては『c:振り返り』から始める など、調整するとよいでしょう。また、児童・生徒のカ リキュラム・マネジメントは、児童・生徒の力だけで機 能するものではありません。教職員が単元・授業ごとの PDCAサイクルを回し続けるとともに、『自己の学びのカ リキュラム・マネジメント』のPDCAを回していること を、児童・生徒に意識させていくことが必要です」(村川 教授)  そして、<図表4>のモデルは、学級、学年、教科・ 領域、教育課程のどのレベルのカリキュラム・マネジメ ントにも適用できるものである。  「いずれの場合も、目標を設定し、実施し、振り返るサ イクルを回していくことになります。振り返りは、でき るだけ短期間に繰り返し行うこととさまざまな視点から じっくりと時間をかけて行うことと両方が必要です。ま た、可能な限りデータに基づいた改善策を考えることが 求められます」(村川教授)

入学後の初期指導、

高校におけるスタート・カリキュラムの取り組み

 また、村川教授は、カリキュラム・マネジメントが特 に重要となる教育活動として、「スタート・カリキュラ ム」を挙げる。  スタート・カリキュラムとは、入学からおおよそ1カ 月から1カ月半程度を対象とした初期指導である。高校 の先生方にはあまり馴染みがないかもしれないが、小学 校教育では、幼稚園・保育所・認定こども園での生活や 遊びから小学校での学びへと円滑に移行させるためのカ リキュラム作りにおいて、広く用いられている概念であ <図表4>自己の学びのカリキュラム・マネジメント (八釼・村川・三田、2016) a:振り返りによる新たな気付きと学びへの意欲・期待 ③学びを人生や社会に生かそうとする 学びに向かう力・人間性の涵養 ①生きて働く 知識・技能の習得 d:学習活動 p:学習課題の設定と学習活動への見通し ②未知の状況にも対応できる 思考力・判断力・表現力等の育成 c:振り返り② アクティブ・ラーニングを通して、思考・判断・表現したこと c:振り返り① 学習課題に対して、理解したこと・できたこと c:振り返り③ 学習によって得た新たな考え方や自分自身のよさや生き方に関わること 育成を目指す資質・能力の三つの柱 育成を目指す資質・能力の三つの柱

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る。2015年に国立教育政策研究所が『スタートカリキュ ラム スタートブック』を発行するなど、国としても力 を入れている<図表5>。  初期指導は、高校でも重要な指導だが、あまり体系だ った取り組みができていない。健康診断、生活指導、校 歌指導など、どの高校でも共通に取り組むべき項目があ る一方で、それが共有されていない。また、クラスの仲 間づくりやルールづくり、高校生としての心構えを考え る時間など、小中学校では当たり前に行われ、成果を上 げている取り組みが、高校ではあまり行われていない。実 施している場合も、学校全体で取り組むべきところ、個々 の教職員や学年での取り組みになりがちである。  そうした問題意識から、2016年度には鳴門教育大学教 職大学院(注)9期生の、高校の現職教員学生が発起人と なり、「スタカリ部」という勉強会を立ち上げた。小中高 と特別支援学校の教員11名からなるメンバーが集まり、 各学校種で児童・生徒に身に付けさせたい学習項目と、 実際に行う具体的な学習内容をワークショップ形式で検 討していった。  まず、各学校種の初期指導で取り組むべき項目を「ピ ース」としてまとめた。高校の場合は、「エンカウンター (仲間作りを目的とした、協働作業・ゲームなどを用いた グループワーク)」「校歌指導」「クラス目標づくり」「学 習ルールの確認」「生活指導」「身体測定」など、さまざ まな項目が挙がった。これら「ピース」を組み合わせ、 さらに学校の実態に合わせてアレンジすることで、カリ キュラムを作り上げる。こうした取り組みを行うことに より、「学年で統一した内容にできる」「振り返りがすぐ にできる」「学年間で引き継ぎができる」など、学校全体 で共有ができることになる。  実際に勤務校でスタート・カリキュラムに取り組んだ 大学院生(現職の高校教職員)は、「全てをゼロから作り 上げるのではなく、既になされていることを意識して体 系化することで、これまでと内容は同じかもしれません が効果は全く異なります」とその有効性を説く。  「スタート・カリキュラムは、学校として新1年生をど のように迎えるかという大切なものです。各学校や地域 の特性に合わせ、自分の学校には、これが必要だと思え ることを、第1学年の教職員だけでなく、学校全体で作 り上げることが大切です」(村川教授)  これまで見てきたように、カリキュラム・マネジメン トは、児童・生徒一人ひとりが、自分の学びをマネジメ ントできるよう、学校、各教科、学年そして各教職員が 支える仕組みを作ることでもある。全く新しいことを始 めるのではなく、これまでの取り組みに対して、目的や 目標を意識し、体系化することでも効果を得ることがで きる。学校の方向性を教職員間で共有し、それを意識し ながら日々の教育活動に取り組んでいくことが重要なの である。 (注)村川教授は 2016 年度まで鳴門教育大学に勤務していた。 <図表5>スタートカリキュラムの考え方(小学校) (国立教育政策研究所「スタートカリキュラム スタートブック」より) 教科等を中心とした学習 一人一人が安心感をもち, 新しい人間関係を 築いていくことを ねらいとした学習 合科的・関連的な指導による 生活科を中心とした学習 例えば 例えば,以下の視点で学習を3類型に分類し,重点の置 き方を考えて単元や学習活動を配列します。 基本的な考え方を踏まえ,例えば①∼③を通してス タートカリキュラムを編成することが考えられます。 スタートカリキュラム編成の手順 ・心をほぐす ・学校に対する安心感 ・先生や友達と仲良く 4月第1週 ∼第2週 ・自分にできることは 自分で ・新しい集団のルールを 考える ・関わりを広げる ・自己発揮・主体性の発揮 4月第3週 ∼4月末頃まで 5 月頃 6 月頃 7 月頃 入学から夏休みまでのカリキュラム 期 時 い ら ね た し 類 分 に 型 類 3 分 配 間 時 の 習 学 ③スタートカリキュラムを編成する ①幼児期の子供を理解する ②期待する成長の姿を共有する 学びの芽生え (幼児期) 自覚的な学び (児童期) □ 成長の姿を週や月の単位で明らかにする □ 成長の姿に適合した単元(合科・関連など)を構成し配列する □ 単元計画に基づいた学習活動を週の計画として時間配分する

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山碕孝幸先生 田澤晃先生

次期学習指導要領の方向性を踏まえて発足した

「カリキュラム・マネジメント推進プロジェクト」

 新潟県立教育センターは、最新の教育課題について調 査研究し、学校現場に情報提供することをミッションとし ている。2015年8月の中央教育審議会教育課程企画特別 部会が取りまとめた「論点整理」では、次期学習指導要 領におけるキーワードとして「アクティブ・ラーニング」 (2016年12月の答申では、「主体的・対話的で深い学び」 へと変更)と「カリキュラム・マネジメント」が示された。 このうち、前者については、以前から「言語活動の充実」 をテーマにした研修会を実施してきた。そこで、新たな教 育課題として、2016年度からカリキュラム・マネジメン トに注目したプロジェクトを立ち上げることとなった。  また、カリキュラム・マネジメントはどの学校種でも取 り組むべき課題である。そこで、義務教育担当と高等学校 教育担当が連携し、学校種を問わずに必要となる情報の 発信を行うこととした。  カリキュラム・マネジメント推進プロジェクトは、(1) 研究指定校による調査研究事業、(2)センターからの情 報提供などによる支援事業の2つの柱から構成されている。 まずは、(1)調査研究事業について見ていこう。  研究指定校としては小・中・高校それぞれ1校ずつが指 定され、教育センターからの情報提供を得ながら、1年間 を通してカリキュラム・マネジメントに取り組み、成果や 課題などを抽出した。  小・中学校については、十日町市立松之山小学校と十 日町市立松之山中学校に調査・研究を依頼した。両校は、 2017年度から併設型小中一貫校である「まつのやま学 園」へと移行することが決定している。指定されたのは、 教員の相互交流や研修を行うとともに、育成をめざす子ど も像を校内だけでなく地域とも共有し、PTAの協力も得て、 9年間を通した充実した学びを実現するためのカリキュラ ム設計に取り組んでいたからである。

カリキュラム・マネジメントは

普通科高校でこそ取り組む必要がある

 山碕先生は、カリキュラム・マネジメントは高校でこそ 必要になると話す。  「どの高校にも教育目標はありますが、大局的すぎて、教 員はその目標を実現するために具体的に何をどうすればよ いかわからないことがあります。教育目標の下にいくつか 項目が掲げられていても、一貫性がなく、各項目の取り組 みがバラバラに行われている場合もあります。また高校は、 小学校、中学校に比べると教科間の壁が厚いのが現状で す。カリキュラム・マネジメントの視点に立ち、学校とし てめざす方向をはっきりさせ、全教員が同じ方向を向いて、 教科の授業、総合的な学習の時間、特別活動、地域連携 など全ての教育活動を連携させながら生徒を育てるように 意識することで、生徒の力がより良く伸びることが期待さ れます」(山碕先生)  高校の指定校は、新潟県立十日町高等学校とした。  「十日町高校は、生徒の進路が多様な普通科高校です。 専門高校の生徒は卒業後の進路を明確に意識しています。 また、普通科でも大学進学者の多い高校は大学進学とい う目標があります。スーパーサイエンスハイスクールな どに指定されている高校も、学校の特色を打ち出した教育 をしやすい環境にあります。ところが、進路が多様な普通

Par t

2

都道府県の取り組み

新潟県立教育センター

カリキュラム・マネジメントによって、

育成したい生徒像の確認と教育改善を推進

 新潟県立教育センターは、新潟県の教育の向上・発展に寄与するため、国や県 の教育施策と一体となった研修、教育課程や教育課題に関する調査研究、学校現 場への情報提供などによる相談・支援などを担ってきた。2016年度からは、カリキュ ラム・マネジメント推進プロジェクトを立ち上げて、調査研究を推進している。こ の内容について、教育研修班副参事の田澤晃先生(高校教育担当)と教育支援課 教育企画班副参事の山碕孝幸先生(義務教育担当)にうかがった。

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科高校は、学校も生徒たちも、高校でどのような学びをし て将来どのように社会で活躍していくかというイメージを もちづらいものです。そうした高校にこそ、カリキュラ ム・マネジメントが重要であり、同様の高校の参考になる と考えたのです」(田澤先生)

十日町高校では、全教員への調査により課題を抽出

目標とする力を生徒に身につけさせるしかけを導入

 十日町高校では、カリキュラム・マネジメントを推進す るにあたり、中心となる教員を校長が指名し、方向性や具 体的な方策を検討した。そして5月には、校内の現状を把 握するため、全教員を対象に「現在の十日町高校の生徒 に足りない力、または身に付けてほしい力は何か」「その 力をつけるためにどのような指導・活動をすればよいと思 うか」といった内容のアンケート調査を実施した。  調査の結果、十日町高校では以前に比べ進学実績が低 下し、進路希望の実現が難しくなっていることに課題を感 じる教員が多いことがわかった。そして、希望する進路の 実現のためには、生徒の学力や積極性を向上させる必要 があるという指摘も多く挙がった。  そこで、めざす生徒像を「進路希望が実現できる生徒」 とし、「2つのねらい」として「学力の向上」と「積極性 の向上」を設定した。さらに、夏季休業中に、課題の解決 に向けた方策を各教科等で検討し、①学年間連携の深化、 ②きめ細かい指導・授業、③言語運用能力の向上、④質 問する力の育成、⑤堂々とした態度の涵養の「5つの柱」 にまとめた<図表1>。  具体的には、例えば③「言語運用能力の向上」であれ ば、地歴公民科、理科(物理)、芸術(書道)、英語科、家 庭科、小論文指導などで、自分の意見を文章で書く、調 べ学習を行う、グループやクラスでの発表・話し合いなど を行い、言語活動を行う機会を増加させた。  ④「質問する力の育成」については、教務室近くの廊 下に椅子・机・蛍光灯を置き、質問スペースを設けること で、生徒が教員に質問しやすい環境を整えた。わからな かったことは質問して解決するという習慣を身に付けるこ とで、授業中も臆せずに質問や発言をできるようになり、 学力向上や積極性の向上につなげていくことを狙っている。  ⑤「堂々とした態度」に関しては、地域の小学生を高校 に招き、生徒が講師役となって、理科の実験や数学、英語、 美術、書道、家庭などの講座を行う「サイエンスフェス ティバル」の開催、吹奏楽部の地域での演奏など、生徒が 人前に出て活動する機会を多く設けた。これらに参加し、 達成感や自信を持たせることで、積極性の向上につなげる。  これらの取り組みの結果、質問スペースは3年生を中心 に利用する生徒が増え、1・2年生も3年生の姿を見て質 問に来る生徒が増加するという効果があり、校外でのさま ざまな活動を通して達成感を得て自信をつけた生徒もいる など、徐々に成果が現れている。  研究指定は2016年度の1年間だが、今後はカリキュラ ム・マネジメント委員会(仮称)を発足させ、担当教員に とどまらず学校全体で組織的に取り組んでいく予定だ。

年間を通じてリーフレットを配付し情報提供

 (2)支援事業については、年間を通じてリーフレット の作成・配付による情報提供を行っている。  2016年度は、A4用紙4ページ前後のリーフレットを 年7回と、さらにダイジェスト版を発行した。各号の内容 は、<図表2>である。中央教育審議会の会議資料や審 議まとめなどの解説、新潟県立教育センターが主催する研 修会の報告など、時期に応じて必要な内容を発信した。  「プロジェクトの発足当初は、メンバーである私たちも、 カリキュラム・マネジメントについてわからないことがた くさんありました。そこでまずは、中央教育審議会の審議 まとめや関連する書籍を通じて勉強することから始めまし た。昨年度のリーフレットは、それらを通じて得られた知 見を中心にまとめています。発信にあたっては、全校種に 共通する基本的な内容を現場の先生に紹介すること、校 内研修の資料として使えるものにすることを心掛けまし た」(山碕先生)

教育フォーラムで、カリキュラム・マネジメント

導入手順のワークショップを実施

 さらに、2017年2月に実施した「第10回 教育フォー ラム」(注)においても、カリキュラム・マネジメント推進 <図表1>新潟県立十日町高校の「5つの柱」 (注)2007 年度から、新潟県立教育センターが年度末に開催しているフォーラム。講演会や分科会のテーマは、センターが行っている調査研究の内容に応 じて変えている。 ねらい2 積極性の向上 めざす姿・ビジョン(ベクトルの向き)

進路希望を実現できる生徒

ねらい1 学力の向上 学年間連携 きめ 細 か い 指 導 言語運用能力 質問する力 と し た 態 度 厳しい指導による基礎学力の向上と生徒の自己鍛錬の徹底

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プロジェクトの研究成果を発信 した。  フォーラムでは、全員が文部 科学省初等中等教育局視学官 (当時)の田村学氏による講演会 「学習指導要領改訂の方向性〜ア クティブ・ラーニングの視点とカ リキュラム・マネジメント」を聴 いた後、8つの分科会に分かれて、センターで推進してい る研究成果の発表やワークショップなどを行った。  分科会「カリキュラム・マネジメントを自校で推進する には」は、以下の3つの内容による構成である。  (1)「学校教育の改善・充実の好循環を生み出すカリ キュラム・マネジメントについて」(山碕先生によ る提案発表)  (2)「カリキュラム・マネジメントの実際」(研究指定 校3校による実践発表)  (3)「カリキュラム・マネジメントを自校で推進するに は」(調査報告と、参加者による協議)  このうち(1)では、茨城県つくば市の教育研修セン ターで行われた「カリキュラム・マネジメント指導者養成 研修」等の内容を踏まえ、目標設定や現状把握などに役 立つツールを紹介しながら、カリキュラム・マネジメント を学校内で推進する際の手順や手法について提案した。  「ツールは、対話しながら、付箋を使って、良い点や問 題点を挙げて分類する『概念化シート』や、付箋を使っ て効果性や着手容易性を分析する『フレーム分析』、年間 計画の立案手順や、年間計画の活用法、振り返りの手法 などを紹介しました」(山碕先生)  (3)では、グループに分かれ、(1)で紹介したツール も使いながら、カリキュラム・マネジメントに関する自校 の取り組み状況を振り返り、学校が抱える課題や、次に取 り組むべき内容などについてまとめていった。  「今回は、岐阜大学の田村知子先生が提唱する『CAP-Doモデル』(まずは自校の課題などを教員間で共有した上 でPDCAサイクルを回していくマネジメントモデル)を踏 まえて、どこから・何から・どのように始めたらよいのか、 付箋とマトリクス表を用いて整理するワークを行いました。 このワークを選んだのは、それぞれの教員が抱える思いを ぶつけあう機会が少ないことが、どの学校種でも共通の課 題だと感じたからです。ワークショップの参加者は、行政 関係者、管理職、教諭がほぼ同数で、学校種も、小学校・ 中学校・高校からバランスよく集まりました。そこで、さ まざまな立場の先生を混在させたグループを構成したとこ ろ、高校の先生からは、小学校・中学校の、高校とは違う カリキュラムの柔軟さを実感したといった感想がありまし た。ほか、児童・生徒に本当に必要な力は何かを、それ ぞれの学校で再確認しなければならないという声が挙がり ました」(山碕先生)

リーフレットを配付し情報を提供

県全体への導入推進に活用

 最後に、1年間の取り組みを通じて見えてきたカリキュ ラム・マネジメントのポイントについて聞いた。  「カリキュラム・マネジメントを推進するにあたっては、 まずは教科の学習目標に加え、学校の教育活動全体を通 じた目標を意識することが大切です。次期学習指導要領 改訂に向けて、カリキュラム・マネジメントが大きく打ち 出されたことは、自分たちの学校を良くしていくための取 り組みを重ねていく良いきっかけ、チャンスだと思います。 学校全体でどんな生徒を育成したいかという根本的な目標 に立ち返って、教育内容や教え方の改善を続けていただ きたいと思います」(山碕先生)  「高校で有効なカリキュラム・マネジメントを行うには、 まず校長先生がリーダーシップを発揮することが必要だと 考えます。また、学校全体で実践しやすい、総合的な学 習の時間をどう活かすかが重要だと思います」(田澤先生)  2017年度も、カリキュラム・マネジメント推進プロ ジェクトは継続している。研究指定校は新たな学校を小 学校・中学校・高校それぞれ1校指定した。リーフレット は、今後も、答申が出された際など、時機に応じて発行し ていく予定である。さらに、新たな取り組みとして、中堅 の教員を対象とした「ミドルリーダー養成講座」にカリ キュラム・マネジメントに関する講座を置き、研修にも力 を入れていく予定だ。 <図表2>リーフレット掲載内容 号 発行日 タイトル Vol.1 4/28 新しい時代に求められる資質・能力を育成する カリキュラム・マネジメント Vol.2 9/9 学校教育の改善・充実の好循環を生み出す カリキュラム・マネジメント Vol.3 9/20 カリキュラム・マネジメントの実践と自校化に向けた取組 Vol.4 11/22 授業改善につなぐカリキュラム・マネジメント Vol.5 1/30 中教審答申を自校の教育課程・授業改善に生かす 2/14 (教育フォーラムにおいて、vol.5 までの「ダイジェスト版」を配布) Vol.6 3/1 教育フォーラム分科会の報告と今後の方向性 Vol.7 3/17 カリキュラム・マネジメントで一歩を踏み出す

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Par t

3

高校の取り組み

福島が直面するさまざまな課題に向き合い

学校教育目標を設定

 ふたば未来学園高校で「未来創造型教育」を構想する 背景には、日本の社会が直面し、福島県で顕在化している さまざまな課題がある。  第一に、震災と原発事故によって、双葉郡では、過疎化、 地域産業の疲弊、少子・高齢化などが加速した。これらは 全国の地域が直面する課題でもある。  第二に、原発事故特有の課題がある。同校の1期生は 80%が福島県双葉郡出身で、震災と原子力災害を経験し、 避難生活などで不自由な思いをしたり、避難先を転々とす ることで転校を繰り返したりするなど、困難な生活背景を 背負った生徒も少なくない。また、避難した人としなかっ た人が存在することや、補償の有無を巡る地域内での対 立・分断、風評被害など、さまざまな課題がある。  第三に、グローバルな課題がある。「貧困をなくす」「安 全な水を確保する」「エネルギーをみんなにそしてクリー ンに」といったグローバルな課題が、双葉郡、福島県では、 眼前の危機となっている。  こうした地域の状況を受け、ふたば未来学園高校では、 「新しい生き方、新しい社会の建設をめざし、地域や世界 を舞台にして、これまでの価値観、社会のあり方を根本か ら見直し、自らを変革し、地域を変革し、社会を変革して いく『変革者』を育成する」を教育目標として設定した。  「まず、震災と原子力災害から学ぶこと、その教訓をバ ネとして、直面している困難な課題解決の方法について考 察し、理想とする未来の創造に向けて、対立を乗り越え、力 を合わせることが私たちに課せられた使命だと考え、これ らを踏まえて学校の教育目標を策定しました」(丹野校長)  「本校の特徴は、地域の実態や日本社会が直面する課題 を把握し、さらに将来像を描いた上で、教育目標を立てて いることにあります。本来、教育目標はそのように設定す るものですが、そこまでできている学校はあまりないと思 います」(南郷副校長)

開校直後に全教員が議論し

学校全体のルーブリックを作成

 ふたば未来学園高校のカリキュラム・マネジメントの特 徴の1つは、学校のカリキュラム全体で育成する汎用的能 力をルーブリックで示し、全教員で意識を統一している点 である。  ルーブリックの作成にあたっては、2015年の開校直後 に、全教員が集まり、教育目標を踏まえて「生徒たちが3 年後にどのような姿になっていてほしいか」をワーク ショップ形式で議論した。その結果、育成する資質・能力 について、「知識」「技術(スキル・コンピテンシー)」「人 格(キャラクター・センス)」「自らを振り返り変えていく 力(メタ認知)」という4つの学力概念、A〜Jの10の資 質・能力・態度にまとめた<図表1>。  資質・能力・態度については、OECDのキー・コンピテ ンシーなどを参考にしつつも、先生方の感覚や思いをでき るだけ反映させて設定した。その特徴的な項目が「H 寛 容さ:異文化や考えの違う他者を受け入れ、思いやるあた たかさを持ち、協調して共に高めようとすることができる」 という項目である。前述のように、各々の考え方の違いか ら、同じ地域内でも対立や分断がある。しかし、考え方の 違う人を排除しても地域復興はままならない。異なる考え 南郷市兵副校長 丹野純一校長

福島県立ふたば未来学園高等学校

ルーブリックに基づくマネジメントサイクルで

未来の「変革者」たちの育成をめざす

 福島県立ふたば未来学園高校は、震災と原子力災害からの復興という課題を持つ 地域で、先進的な新しい教育の創造をめざして2015年4月に設置された中高一貫校 である(中学校の開校は2019年度予定)。「自らを変革し、地域を改革し、社会を変 革する“変革者たれ”」を建学の精神とし、育成する資質・能力を全教員で共有した上で、 「未来創造型教育」を展開している。探究活動を中心としたカリキュラム・マネジメント について、丹野純一校長と南郷市兵副校長にうかがった。

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教科学習 <図表1>ふたば未来学園 人材育成要件・ルーブリック (7 July 2015 Ver.) 方も受け入れ、包み込んでいく「あたたかさ」が必要であ ると考えたのだ。このように、全教員が議論に参加し、育 成をめざす資質・能力を、自分たちの視点・言葉で明確化 したことが、校内の意思統一につながったという。  その後、10の資質・能力・態度それぞれについて、企 画研究開発部(後述)が中心となり、5つずつのレベルを 設け、2015年7月までにルーブリックを完成させていった。 そして、ルーブリックと関連付けながら、各教科や総合的 な学習の時間の指導の重点、授業の展開、学習評価、さら に学校評価なども検討することとした。

3年間の教育課程を貫く未来創造型教育

 ふたば未来学園高校のカリキュラム・マネジメントのも う一つの特徴は、探究活動をカリキュラムの中心に据えた ことだ。「産業社会と人間」の授業として1年次に「ふる さと創造学」(2単位)、学校設定科目で2年次に「未来創 造学」(2単位)、「総合的な学習の時間」の授業として2・ 3年次に「未来創造探究」(2年次2単位、3年次3単位) と、3年間で合計9単位を配当している。  また、探究活動と各教科のつながりを意図的に設定して おり、生徒は各教科で身に付けた個別の知識や技能を生か し、地域など実社会のフィールドでさまざまな探究活動を 行う。そして、探究活動が各教科の学習意欲を喚起し、各 教科の学習が深められるという往還を重視したカリキュラ ムとしている<図表2>。  「実社会のさまざまな場面で活用できる汎用的な能力を 育むには、実社会における横断的・総合的な問題解決に主 体的に取り組み、さまざまな挑戦や失敗の経験も積まなけ れば身に付きません。そのためカリキュラム全体で汎用的 能力を高めるための軸が必要になると考えました。このカ リキュラムを本校では、『未来創造型教育』と名付け、教 育目標の実現に向けて、学校全体で取り組んでいます」(丹 野校長)

1年次で演劇を通じて課題を発見し

2・3年次の活動で探究を深める

 各学年の具体的な取り組み内容を見ていこう。  1年次の「ふるさと創造学」では、これからの時代に求 められる「多様な価値観を多様なまま理解する力」と「多 様な価値観の共存」に向けて思考を深めることを狙いとし て、演劇づくりの授業を行う。  授業では「ふたばの教育復興応援団」の一人である劇 作家・演出家の平田オリザ先生を講師として招聘し、指導 を受けながら演劇の台本を作成し対話劇を作り上げる。 <図表2>ふたば未来学園におけるカリキュラム・マネ ジメント 学力概念 No 資質・能力・態度(まとめると) 協 働 創造 知識 Knowledge "What we know" A 社会的課題に関する知識・理解 一般常識や基礎学力をつけながら、世界・ 社会の状況の変化やその課題を理解する ための知識を身に付ける。 B 英語活用力英語を使ってのコミュニケーションができ るようになる。 技能(スキル・コ ンピテンシー) Skills "How we use what we know" C 思考・創造力物事を論理的に考え、批判的思考で掘り 下げ、スケールの大きな考え方ができる。 D 表現・発信力どのような場でも臆することなく自分の考 えを発信でき、他者の共感を引き出せる。 E 他者との協働力 異文化・異なる感覚の人・異年齢等を乗 り越え、仲間と協力・協働しながら互いに 高めあえる行動が取れる。 F マネージメント力自分や組織での取り組みを計画性を持っ て進めることができる。 自 立 人格(キャラクタ ー・センス) Character "How we engage in the world"

G 前向き・責任感・チャレンジ 自分を意味のある存在として考え自信を持ち、 課題解決のために自分の役割を見つけ、全 力で取り組み、決してあきらめず遂行できる。 H 寛容さ 異文化や考えの違う他者を受け入れ、思 いやるあたたかさを持ち、協調して共に高 めようとすることができる。 I 能動的市民性 社会を支える当事者としての意識を持ち、 地域や国内外の未来を真剣に考えること ができる。 自らを振り返り変え ていく力(メタ認知) Metacognition "How we reflect and learn" J 自分を変える力 自分の言動や行動を俯瞰して見つめ直し、 常に改善しようとする意識を持ち、次の行 動に繋げることができる。 1年次【2単位】※ 2年次【2単位】 3年次【3単位】 総合 学習等 ルーブリックで定義した様々な力の育成 (実社会の様々な場面で活用できる汎用的能力に高めていく) 探究③ 探究② 探究① 各教科で培われた知識・ 技能を生かす 各教科の学びを下支え 個別の知識・ 技能 思考力・判断力・表現力等 主体性・多様性・ 協働性 学びに向かう力 人間性など 各教科等の本質に根ざした見方・考え方 *「産業社会と人間」 ルーブリックを 起点に カリキュラムを 構築 取り組み全体 を振り返り ルーブリックの 妥当性も検討 【生徒】 半年ごとに 成長を自己評価 【教員】 ポートフォリオ等を 参考に 観点別に評価

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 生徒たちは演劇の台本制作にあたり、地域の復興の課題 を発見するために、事前に調べ学習をした後、地元公共機 関や商店、病院、企業などを訪問してインタビューを行う。 その際、「こういう課題の解決のために大人がこのように 頑張っています」で終わることなく、「皆が善意で一生懸 命頑張っているのにそれでもうまくいかないことがある。そ ういう解決困難な課題を見つけてくる」という目的の フィールドワークを行っている。  その後、訪問先で見聞きした事実や悩みを元に、復興の ための核心的な課題を見つけ、班ごとにテーマを設定し、 台本を制作していく。2016年度を例にとると、「東京電力 と被災者との対立」「除染作業員と住民とのあつれき」「風 評被害」など、立場の違いから生じる課題やさまざまな事 象が複雑に絡み合うテーマが多く見られた。そのため台本 も、現実的ではない和解や安易な解決にならないようにし ており、学年末の演劇発表会も答えが見つからないままの 葛藤の場で終わる。  2年次以降の「未来創造探究」では、1年次での探究内 容も踏まえて、福島県や双葉郡復興への課題を解決するた めの課題研究(探究活動)に取り組む。生徒は「原子力防 災探究」「メディア・コミュニケーション探究」「再生可能 エネルギー探究」「アグリ・ビジネス探究」「スポーツと健 康探究」「健康と福祉探究」の6つの探究班のいずれかに 属する。各探究班では、まず福島県、双葉郡の課題を分析 し、それらの課題を解決するために研究テーマを設定する。 その後、課題解決のための仮説を立て、実践・実証実験、 検証を繰り返しながら考察等を深める。  そして、3年次9月の「未来創造探究発表会」や12月 の「SGH研究成果発表会」で研究成果を発表するととも に、12月までに個人論文としてまとめていく。なお、代表 生徒には「地方創生イノベーションスクール2030」(注1) での国際ラウンドテーブルなど学外での研究成果の発表や 提言の機会が設けられている。

各教科や海外研修での学習も通じて

「未来創造探究」を深める

 2年次の「未来創造学」は、「未来創造探究」を進める 上で必要となる知識のインプットを目的とした学校設定科 目であり、地理歴史・公民、理科、英語などの教科横断型 の授業が行われている。2016年度の場合は、「放射線」を 共通テーマにしながら、理科の教員が国際線搭乗時や健康 診断時など日常生活の中での放射線量などについての知識 を扱うほか、世界各地の放射線量を比較し、福島県の放射 線量の危険性などをエビデンスベースで考えさせる。一方 で、地歴科の教員が、風評被害が伝搬するメカニズムなど、 異なる視点から「放射線」について授業をするなどして、 探究活動で必要となる知識や実践力、多面的なものの見方 を身に付けさせていく。  こうした取り組みは各教科の授業にも影響を与え、探究 活動に必要な知識を適宜扱ったり、ルーブリックに示され たような汎用的な資質・能力を育成することをめざし、主 体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)を意 識した授業を行ったりするなど、各教科でさまざまなチャ レンジがなされている。  また、海外研修においても探究活動の成果を発表した り現地の人々と交流したりして探究を深める機会を設けて いる。例えば、1年次には希望者をチェルノブイリ原発事 故を経験したベラルーシ、ドイツの環境先進都市であるフ ライブルグやミュンヘンに派遣し、視察や地元高校生との 交流学習を行った。2年次のアメリカ研修では、先述の6 つの探究班それぞれから代表者1名を派遣し、国連国際学 校で多国籍の高校生と議論や意見交換を行い、国連本部 では発表等を行なった。  「生徒たちは海外研修を通じて、相手の心を動かすため には、福島のことだけを話していても伝わらないことなど、 コミュニケーションの難しさを実感したようです。復興の ための解を探すための海外研修でしたが、生徒はさまざま な課題を持ち帰ることとなりました。参加したのは代表者 だけですが、彼らが経験した内容を他の生徒に伝え、各研 究班の探究をさらに深めていきます」(南郷副校長)

企画研究開発部を中心にカリキュラムを構築

昨年度は生徒も交えてカリキュラム改善を議論

 カリキュラム・マネジメントを推進するため校務分掌と して「企画研究開発部」を置いている。開校当初は、ルー ブリックの設定や探究学習のカリキュラム設計、環境整備 などを中心的に推進してきた。現在では、探究活動のスケ ジュール調整や、外部講師等との連絡調整のサポート、毎 月の「未来研究会」(教員研修)の開催など、各教員が探 究の指導をするための下支えをする役割を担っている。  「当初は企画研究開発部がカリキュラムの牽引役となっ ていましたが、徐々に下支えの役割に変わり、各教員が中 (注1)地方創生イノベーションスクール 2030:OECD が主催の、2030 年の地域社会の課題の解決をめざして、世界各国の生徒や学生が協働して取り組 むプロジェクト

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福島県立ふたば未来学園高等学校(全日制) ◇所在地:福島県双葉郡広野町大字下浅見川字築地12(本校舎) ◇沿革:2013(平成25)年 「福島県双葉郡教育復興に関する協議 会」において、県立中高一貫校の設 置を柱とする「福島県双葉郡教育復 興ビジョン」を決定 ・ 公表。 2015(平成27)年 開校 ◇学級編成:各学年総合学科6クラス ◇生徒数:422名(男子254 名、女子168 名)2017年 4月10日現在 ◇特色:「自らを変革し、地域を変革し、社会を変革する『変革者た れ』」を建学の精神、「自立」「協働」「創造」を校訓として、「未来創 造型教育」を展開している。「アカデミック系列」「トップアスリー ト系列」「スペシャリスト系列」の3つの系列をもち、進路希望に 合わせて多様な学習を可能としている。 心となる望ましい体制になりつつあると感じています。一 方で、企画研究開発部は、各教員が熱い思いを持ち続ける ため、さまざまな工夫をしています」(丹野校長)  また、半年に1回、全教員が参加してカリキュラム改善 の議論を行っているが、2016年度は実験的に生徒も議論 に参画させた。生徒たちからは、好意的な意見だけでなく、 演劇や探究活動に取り組むことへの疑問、生徒たちの中に ある探究に取り組む「温度差」をどう埋めていくかなど、 批判的な意見も挙がった。さらに授業を担当する教員から も多数の意見が提起され、改善のための課題を数多く抽出 することにつながった。

ルーブリックで教育成果を評価

学びをさらに深めることが今後の課題

 これら未来創造型教育の成果は、ルーブリックを使って 評価している。  生徒たちは半年に1回、<図表1>の10項目の資質・能 力について自己評価を行っている。そして、相互に自己評 価結果を見せ合い、ピアレビューを行い、自己評価の修正 を行う。こうした生徒の自己評価結果の推移を確認するこ とで、個々人の成長とともに、カリキュラム全体の成果検 証と課題の抽出・改善につなげている。  1期生の自己評価結果を見ると、成長幅が大きい項目と して「H 寛容さ」が挙げられる。これは、教員が特に育 成したいと感じていた資質・能力であり、学校の姿勢が如 実に反映されていると考えられている。  一方で「B 英語活用力」については、海外研修に参加 した生徒の自己評価は伸びている一方で、他の生徒はあま り伸びていない。  「英語活用力については、5段階のルーブリックのうち、 レベル3をCEFR(注2)のB1、レベル4をB2、レベル5を C1と、非常に高い目標を設定しました。それがかえって 生徒の自己評価を下げることになったかもしれません。ま た、他の項目についても実態に即していない面が見えてき ました。ルーブリックは運用しながら改善していくもので すから、今後、生徒の様子も見ながら調整していきたいと 考えています」(南郷副校長)  今後の課題としては、丹野校長は次のように語る。  「震災と原子力災害を経験した私たち、地域だからこそ、 何を教訓とするか、何が固有の問題かを言葉にすることは 重要です。そのためにはさらに課題を掘り下げて考えなけ ればなりませんが、生徒の様子を見ると、それが不十分な ままにアウトプットばかりに力点が置かれているものも見 られます。今後はさらに、生徒たちに探究活動の意味や課 題設定の理由について考えさせるとともに、グローバルな 課題と結び付けた探究を進めさせることで、学びの深さや 広がりを追求していきたいと考えています。  また、福島を生きる私たちに求められる力として『対立 を乗り越え共存を図る力やコミュニケーション力』があり ますが、カリキュラムの中で体系的、組織的に育むことが できていません。その課題を克服するためには、多様な利 害や価値観が対立するような事態に出会わせ、現実社会の 中で鍛えていくことが必要と感じています」  最後に、丹野校長にカリキュラム・マネジメントを各高 校で進めるポイントを聞いたところ、「まず、学校のミッ ションを考えることが基本となります。社会の動静は常に 変化しているため、古い価値観に捉われることなく、社会 の変化や時代からの要請に応えるミッションを定めること が大切です。そしてそれらを踏まえて、生徒が卒業後にど のように生きていくのか、そのためにはどのような資質・ 能力を身に付けていくのかを考えるべきです。学校の方針 について懐疑的な見方をする先生がいたとしても、そうし た議論を全教員でするとともに、何より生徒の成長を見る ことで、取り組みの意義を必ず理解してくれます」と言葉 に力を込めた。  全ての起点となるルーブリックを全教員参加で作り上 げ、それに基づいてカリキュラムのみならず、学校全体の マネジメントにつなげている同校の取り組みは、多くの高 校の参考になるだろう。

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岩田史樹先生 竹﨑修次先生

SSH・SGHの指定をきっかけに

「出雲高校の学びのスタイル」の確立をめざす

 島根県立出雲高等学校は、2013(平成25)年度から スーパーサイエンハイスクール(SSH)に、2014(平成 26)年度からスーパーグローバルハイスクール(SGH) に指定され、どちらも2年生で行う課題研究を核とした カリキュラム・マネジメントを通じて、教育活動の改善・ 充実を図っている。  出雲高校は、県内外で活躍する多数の卒業生を輩出し てきた進学校で、育成をめざす人材像として「地域・社 会のリーダーとして貢献できる人材」を掲げている。そ の目標を達成するため、SSHおよびSGHの申請をきっか けとして、「出雲高校の学びのスタイル」の確立に向けた 取り組みを推進していくこととした。  具体的には、「教え合い、学び合いによる『新たな価値 あるもの』の創造」「地域、国際社会への発信」からなる 「協働的な学習」と、「論理的に考える(Logical Thinking)」 「多角的・多面的に考える(Critical Thinking)」「事実に基 づいて考える(Data-based Thinking)」からなる「客観 的根拠に基づく思考」を意識しながらさまざまな活動に 取り組ませ、リーダーに必要な資質・能力を段階的に育 成できるよう、3年間の体系的なカリキュラムを構築し ている。

2年次のグループでの課題研究を核に

SSH・SGH 3年間のカリキュラムを構築

 出雲高校は普通科7クラスと理数科1クラスからなり、 さらに普通科は2年次から文系・理系に分かれる。SSH は1年生全員と、普通科理系クラスと理数科の2・3年 生が対象で、SGHは普通科の1年生と普通科文系クラス の2・3年生が対象である。そのため、1年次の「SS基 礎」、2・3年次普通科文系クラスの「SG探究」、理系ク ラスの「SS探究A」、理数科の「SS探究B」と、異なる 学校設定科目が設定されている<表1>。   「科目は『SS』『SG』に分かれていますが、大きな違い は2年生で行う課題研究のテーマが『SS』は自然科学、 『SG』は人文・社会科学という点で、学習の流れは基本 的に共通です」(竹﨑先生)  各年次の学習の流れを見ていこう。 <1年次>  「科学的リテラシー」および「論理的に思考し、表現 する力」を身につけることをめざし、週に1時間の「SS 基礎」に取り組む。  1学期の「基礎力養成演習」では、主として以下の活 動を行う。「Logical Thinking演習」では、国語科の教員 が作成したテキストを使い、文章を論理的に読解し、自 己の考えを論理的に文章で表現する力を養う。「情報検索 演習」では、図書館やパソコン教室で文献やウェブサイ ト検索の手法や情報リテラシーを学習する。「情報整序 演習」では、収集した情報や意見を整理し、KJ法を用い てまとめる演習を行う。  2・3学期の「調査・探究活動」では、5人のグルー プで探究学習に取り組む。全グループに共通する「統一 テーマ」を与え、そこからテーマ設定、調査、考察、発

島根県立出雲高等学校

SSH・SGHの課題研究に全教員が関わり

各教科の授業も変化

 島根県立出雲高等学校は、スーパーグローバルハイスクール (2014 年度指定)の中間評価において、「教員全体の意識改革」 「カリキュラムの継承」「緻密な計画」「各活動の有機的な連携」 などの点で高い評価を受けた。これらは、今回のテーマである「カ リキュラム・マネジメント」において重要な要素である。  そこで、課題研究を中心とした体系的なカリキュラム構築や、教員組織の構築などについて、前・教育開発部長竹 﨑修次先生、現部長の大賀学先生、SGH 担当の岩田史樹先生に聞いた。 大賀学先生

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表という探究のサイクルを経験していく。  「2・3年次以降の『SS探究』と『SG探究』につなげ るため、統一テーマは、地域社会・国際社会と科学技術 の両方に関わるようなテーマを設定しています。2016年 度のテーマは『日本の科学技術を活かして、私たちの生 活を豊かにするには』でした」(大賀先生)  「1年次の調査・探究活動の主な目的は、『協働的な学 習』に慣れることです。そのため、個人研究ではなく、グ ループでの活動にこだわっています。週1時間のため本 格的な研究はできませんが、2年次以降の課題研究の練 習になればと考えています」(竹﨑先生)  さらに、10月には1年生(普通科・理数科)を対象と して、関西地区の大学や企業を訪問する「関西SS・SG 研修」を実施するほか、普通科は島根大学やJICA(国際 協力機構)などから講師を招いて国際社会などに関する 講義を聴いたりフィールドワークを行ったりする「SG ベーシックセミナー」、理数科は島根大学で自然科学や 生命科学・工学分野に関する講義や討論を体験する「島 根大学研修」を実施し、そこで得た知見を調査・探究活 動にも生かしている。 <2年次>  「自ら課題を発見して意欲的に学んでいく姿勢」を身に 付けるため、毎週2時間(連続授業)で、課題研究に取 り組む。普通科文系クラスが「SG探究」、理系クラスが 「SS探究A」、理数科が「SS探究B」と分かれるが、学習 の流れは基本的に共通である。  4・5月はディベートを行う。各クラスの生徒を5名 ずつのグループに分け、肯定側・否定側それぞれの立論 の原稿等を作成してディベートを行う。例年、科学技術 や国際社会・地域社会に関する論題を設定しており、例 えば2014年度は「島根県は、県内すべての学校に、太 陽電池パネルの設置を義務づけるべきである」であり、 2016年度は「日本は、すべての車を自動運転化すべきで ある」であった。  「協働的な学習と、文献集め、資料整理、根拠をもとに 意見を述べる練習、多角的なものの見方を養い、6月以 降の課題研究につなげていくことが目的です」(竹﨑先 生)  6月からは、それぞれのグループで研究テーマを設定 し、課題研究を進める。まず、初回の授業で、島根大学 等の外部指導教員から、研究テーマに関する「ゼミ別講 義」を受け、毎週の授業で研究活動を進め、ゼミ別の中 間発表および研究成果発表会を経て、年度末には校内研 究成果発表会でグループごとに発表する。また、各グ ループがA4用紙10枚程度の研究レポートをまとめる。  普通科文系クラスは「国際政治・経済」「環境・エネル ギー・食農」「地域文化・多文化共生」の3つのゼミに分 かれ、「地域創生」や「グローバル社会」の視点を盛り 込んだテーマを設定する。  普通科理系クラスは「数理情報」「自然科学」「医療・ 健康・生活科学」の3つのゼミに、理数科は「物理・材 料科学」「物質化学」「地球資源環境学」「情報システム 学」「薬理学」「免疫学」「法医学」「生化学」の8講座に 分かれ、課題研究を進めていく。 <3年次>  「成果を積極的に発信していく力」を身に付けることを めざし、2年次での課題研究の成果を校外で発表する。  普通科文系クラスは取り組んだテーマによって2つに 分かれる。「地域創生」に関する課題探究のグループは、 出雲市役所において、関連する部署の職員のアドバイス を得ながら資料を作成し、地域創生に向けた提言を市長 にプレゼンテーションする。「グローバル社会」のグ ループは、島根大学の教員からグローバルな課題につい ての講義を受けるほか、外国人留学生に対して研究内容 を英語で発表し、意見交換をする。  普通科理系クラスと理数科は、7月に出雲科学館にて 開催される「キッズのためのスーパーサイエンス」で、 地域の小・中学生に、研究内容をわかりやすく説明する。 <表1>教科『SS』『SG』の概要 教科名 科目名 対象学年・学科 単位数 ねらい SS SS基礎 第1学年 全学科 1 次代を担う人材に不可欠である科学的リテラシーを備え、論理的に 思考し、表現できる基礎的な能力の養成をめざす。 SS探究A 第2・3学年 普通科理系 2年:2 3年:1 生徒自らが課題を設定し、グループの協働的な学習を通じて論理的 に思考し、表現する力を養うとともに、その成果を校内のみならず、 地域や国際社会に積極的に発信できる実践力の育成をめざす。 SS探究B 第2・3学年 理数科 2年:2 3年:1 SG SG探究 第2・3学年 普通科文系 2年:2 3年:1

参照

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