葉山層の地すべり地帯における深礎掘削時の地山挙動について
神奈川県横須賀土木事務所 道路都市課 嶋村健一郎 熊谷・ガイアート・田中石材土木JV 正会員 中山猛 正会員 ○山口哲司
㈱熊谷組 土木事業本部 正会員 中出剛 正会員 片山政弘 1.はじめに
本工事は開削工法による道路築造工事であるが、工事対象地盤が地すべり多発地域である葉山層となる。
葉山層を対象とした土木工事は難工事となるケースがあり
1)
、当該工事も地すべりを抑止しながらの道路築 造工事となることから対策工として深礎杭を計画した(図-1)。本工事では、地すべりの挙動をリアルタ イムに把握することを目的として深礎掘削時より動態観測を駆使して地山評価を実施した。本稿では、動態 観測結果や掘削時の地山状況から、深礎掘削時における葉山層での地山挙動を報告する。2.工事概要
都市計画道路安浦下浦線は、横須賀市安浦町を起点として国道16号及び国道134号を経て、根岸町から下 浦に至る約11.5kmの幹線道路となる。このうち、本工事は、一部に「長沢地すべり防止地区」を含む住宅 地に隣接した箇所で、深礎擁壁による最大深さ16mの大規模な掘削を行うものである。
3.深礎掘削時の課題
本工事箇所周辺の地質は、脆弱な葉山層の泥岩 であり、周辺にも多くの地すべり防止区域が設定 されている。本工事では調査設計段階において、
原位置での試掘(深礎掘削,φ3.5m×L=15.5m)
が実施され、その際、掘削時の緩みが周辺に悪影響を及ぼし、周辺の地盤に変状をきたした。このような事 象から、本工事では小規模な掘削でも地山の変状が懸念されることから、深礎掘削段階よりリアルタイムで 綿密な動態観測が必要と考え、図-2に示す動態観測システムを配置した。
4.深礎掘削手順
深礎掘削手順を図-3に示す。掘削は1サイクルあた り2リング(50cm/リング)ずつ実施した。掘削工法 は深さ15mまではパイプクラムによる機械掘削を採用 し、その後は坑内バックホウおよび人力掘削を実施し た。掘削時には掘削開放による地山の緩みを極力抑え るために1サイクルごとモルタルを充填し、必ずグラ ウト充填で1日のサイクルを終えるよう進捗管理を実 施しながら施工を進めた。
キーワード:葉山層、泥岩、先行変位、深礎工事
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繰り返し ライナープレート設置
グラウト充填(即日)
掘削完了
孔口ライナープレート設置、孔口コン打設
機械掘削
人力掘削
図-3 深礎施工フロー 図-2 工事箇所平面図 地すべり
断面位置
試験杭(NO.17)
試掘箇所 図-1 地質断面図
地すべり面
表土・埋土 強風化泥岩
挿入式傾斜計
山側 谷側
中風化泥岩
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)
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5.掘削結果
ここでは試験杭と位置づけたNO.17の結果について示す。
・地山状況
深礎掘削時に現れた地質は、泥岩を主体とし一部、砂岩、凝灰 岩が分布する。その岩質は上位より強風化岩、中風化岩が概ね図- 1に示すように分布した。尚、主たる分布地質となる泥岩は変形係 数E=18000kN/m
2
(中風化)を示す。また、一般的な葉山層泥岩と 同様に簡易浸水崩壊度試験では著しいスレーキング傾向を示し、X 線回折では膨潤性粘土鉱物であるスメクタイト多く含有している。掘削は、地すべり面より上位では粘土質であることで、比較的側 壁の安定性は良好であったが、想定された地すべり面(G.L.-13m) 付近では破砕した泥岩ならびに砂岩が突発湧水を伴い現れ、側壁 の崩壊が見られた。
・計測結果
図 -4 に N0.17 深 礎 背 面 に 設 置 し た 挿入式傾斜計の 計測結果を示す。掘削とともに鋭敏に変位が現れる 傾向が認められるが、地すべり面より上位では変位 量(相対的傾斜角)は小さい。一方、地すべり面よ り下位のG.L.-18mで谷側への最も大きな変位が認め られたが、変位量は一次管理値として定めた10mm以 内 に 収 ま っ た 。 図 -5 に 最 も 大 き な 変 位 を 示 し た G.L.-18mでの変位量と掘削に関する経時変化図を示 す 。 変 位 は 側 壁 が 崩 壊 し た G.L.-13m 付 近 ( 約 5m 上 位)の掘削時に先行して現れ始め、掘削の進捗とと もに変位は増大する。但し、裏込めを実施すること で、変位は即時停止し、掘削を再開してもその変位
速度は低下する。また、今回、特徴的事象としてG.L.-18mより深部での掘削に伴い傾斜が山側へ反転した。
6.地山の挙動に関わる考察
葉山層での深礎掘削にて、掘削に伴う地すべり直下での先行変位が見られた。これは、掘削の進捗に伴う 上位地山の緩み、及び底盤のリバウンドによる変位が傾斜計に現れた結果と考える。また、掘削直後に充分 なグラウトを実施し、地山を拘束状態にしておけば緩みの進展に伴う変位抑制は可能と考える。尚、掘削の 進捗に伴う山側への変位反転は、葉山層特有の地盤条件(断層近傍での複雑な地山応力状態、膨張性地山)
も考えられるが判然としない。今後、本格的な開削工事を実施していく際に留意点として見極めて行きたい。
7.まとめ 1)本工事では深礎掘削ににおける緩みの波及が懸念され、リアルタイムの動態計測を実施した。
2)地すべり面近傍では湧水に伴い側壁の崩壊が認められた。
3)掘削に伴い底盤のリバウンドなどに伴う先行変位が発現するが、最終変位量は10mm以内に収まった。
4)掘削直後に充分なグラウトを実施し、地山を拘束状態にしておけば変位抑制は可能である。
5)掘削に伴い山側に変位が反転するが、原因は判然としない。今後、留意し施工を進める。
【参考文献】
1)上南ら:膨張性泥岩層における土留め壁の変状と対策工について(その1)土木学会第56回年次学術講 演会 平成13年10月
図-5 G.L.-18m 変位量経時変化図
【変形測定/杭No.17】
-35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
変形量 (mm) [-:背面側、+:掘削側]
深度 (m)
2012/4/10 2012/4/16 2012/4/20 2012/4/26 2012/4/28 2012/5/7 2012/5/9 2012/5/15 2012/5/17 2012/5/25 2012/6/5 2012/6/15
GL-7.0m (4/16)
GL-13.0m (4/20)
GL-15.0m (4/26)
GL-21.0m (5/9)
GL-24.0m (5/15) GL-19.0m (5/7) GL-17.0m (4/28)
GL-25.6m (5/17)
地すべり面周辺 脆弱ゾーン
山側 谷側
図-4 NO.17 挿入式傾斜計測定結果 G.L.-18m
-15 -10 -5 0 5 10 15
H24.4.10 H24.4.15 H24.4.20 H24.4.25 H24.4.30 H24.5.5 H24.5.10 H24.5.15 H24.5.20
時間(年月日)
変形量 (mm)
-30.0 -20.0 -10.0 0.0
掘削深度 (m)
-18.0
G.L.-18mの変位量 掘削深度
5m
変位の反転 G.W.
谷 側 山 側
G.L.-18m に到達
土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月)