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理学療法の臨床と研究第 25 号 2016 年 総説 若手理学療法士のための症例報告と原著の書き方 * 對東俊介 1,2) 石田 勝 1,3) 崎元直樹 1,4) 久保高行 5,6) 要旨本稿では 論文投稿の経験が比較的少ない若手理学療法士のために どのような手順で症例報告や原著を作成し 投稿を行う

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1.はじめに

私たちは普段、理学療法を実施する中で疑問が生 じることがある。生じた疑問のうち、その答えが過 去に明らかにされてない疑問に対して私たちは研究 を実施することで問題を自ら解決しようとする。研 究によって疑問に対する答えを得たとき、その答え を公表することは理学療法の発展につながり、社会 へ貢献することができる。これら一連の活動は、公 益社団法人日本理学療法士協会倫理規定1 )の中にあ る「理学療法士は、専門職として常に研鑽を積み、 理学療法の発展に努めなければならない」という項 目を満たすためにも必須である。 研究成果の公表方法として学会発表と論文投稿と いう 2 つの方法がある。多くの若手理学療法士がま ず学会発表を目標として研究活動を行っている現状 がある。学会発表は、情報の さと研究者同士の意 総説

若手理学療法士のための症例報告と原著の書き方

*

對東 俊介

1,2)

  石田  勝

1,3)

  崎元 直樹

1,4)

  久保 高行

5,6) 要旨  本稿では、論文投稿の経験が比較的少ない若手理学療法士のために、どのような手順で症例報 告や原著を作成し、投稿を行うかを解説する。症例報告や原著は、研究活動を公表する文書であり、 議論することができる文書であることが重要である。議論を行うためには、まず執筆した症例報 告や原著で何を訴えたいのか論旨を明確にする必要がある。次に、結果の提示や引用文献の出典 などを含め、情報は正確にかつ投稿規定に従って執筆する。論文を書き上げた後は、必ず共著者 のチェックを受ける。若手理学療法士は本稿の内容に沿って症例報告や原著を作成し、指導する 側の理学療法士には論文執筆指導を行う際の参考資料として活用していただきたい。 (理学療法の臨床と研究 25:3-10, 2016) キーワード 症例報告、原著、執筆 見交換の場としては効率の良い発表手段である。直 接その分野の専門家と交流することができるので、 自身の研究の方向性を確かめるのには最適である。 ただし、学会発表はその学会に参加した人間に情報 が公表されるのみで、学会に参加していないその他 多くの人間には抄録という情報量が非常に限られた ものでしか自身の研究を伝えることができない。一 方で論文投稿という方法は、査読者によって批評を 受け、必要に応じて修正を行うため投稿から掲載ま でに一定の期間を要する。また、査読の結果によっ ては掲載不可という判断が出されることもあり、一 般的に学会発表よりも論文掲載に要する労力は大き い。しかし、学術誌に論文が掲載されると、多くの 人間に自身の研究を詳細に伝えることが可能とな る。公益社団法人広島県理学療法士会の学術誌【理 学療法の臨床と研究】も、国内の医学、歯学、薬学 およびその周辺分野の論文情報の検索サービスであ る医学中央雑誌 Web に掲載されており、現在は総合 電子ジャーナルプラットフォームである科学技術 情報発信・流通総合システム( Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic: J-STAGE )に掲載されている2 )。学会発表と比べ学術 誌に掲載されることで症例報告や研究の閲覧性が向 上し、多くの理学療法士、患者や利用者の利益にな ると同時に、著者が議論を行う機会も増えることが 予想される。 論文執筆は、理学療法の発展のためにという大義 とは別に、自分自身への投資という側面もあわせ持 つ。論文を書くことによって、自身の患者や疾患に 対する考え方や見方が変わる可能性がある。症例報

* A guide to writing case reports/original articles for junior physical therapists

1) 公益社団法人 広島県理学療法士会 学術局

Department of Academic, Hiroshima Physical Therapy Association

2) 広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門

Division of Rehabilitation, Department of Clinical Practice and Support, Hiroshima University Hospital 3) 興生総合病院 リハビリテーション科

Department of Rehabilitation, Kousei General Hospital 4) 市立三次中央病院 リハビリテーション科

Department of Rehabilitation, Miyoshi Central Hospital 5) 公益社団法人 広島県理学療法士会

Hiroshima Physical Therapy Association 6) 日域整形外科クリニック リハビリテーション科

Department of Rehabilitation, Jitsuiki Orthopeadic Clinic

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図1.パラグラフライティング 論文は論理性の求められる文書であり、論理の流れを図示 できる。論理の構成単位と論文のレイアウトの固まりを一 致させる。論理の構成単位が 1 つのパラグラフとなるため、 一つのパラグラフに一つのトピックを書く。パラグラフの 最初が強調のポジションとなり、重要な文章が配置される ことが多い。 告を執筆することで、症例についてより詳しく調べ、 学び考える機会が生まれる。また原著を執筆するこ とで、論理的に「 なぜなのか?」、「 これが最適か?」 ということを自らに問う姿勢が養われる。これらを 繰り返すことにより、理学療法を行う上で批判的に、 そして科学的に現象をとらえ理解しようとする資質 が向上する。 本稿では、論文投稿の経験が比較的少ない若手 理学療法士のために、どのような手順で症例報告や 原著を作成し、投稿を行うかを解説する。若手理学 療法士は本稿の内容を参考に症例報告や原著を作成 し、指導する側の理学療法士には論文執筆指導を行 う際の参考資料として活用していただきたい。

2.症例報告・原著を書くにあたっての注

意事項

投稿原稿を書くときは、「原稿を読む人」のことを 考えながら、分かりやすい文章を書くことを常に意 識する必要がある。著者は原稿に書いていない内容 も含め症例や研究について全て知っているが、査読 者や読み手は何も知らない状態から、原稿に書いて ある文章を書いてある順番に内容を理解しながら読 み進めているという事実を、私たちは忘れがちであ る。分かりやすい文章の条件として以下の二つが挙 げられる。一つは、メンタルモデルが活用されてい る文章であり、もう一つは、論理がありパラグラフ ライティングができている文章である。 メンタルモデルとはある人が頭の中で作っている 人物やものごとに関する前提、つまりその人なりの 理解である。分かりやすい文章を書くには、読み手 にメンタルモデルを明確に作らせることが重要にな る3 )。認知心理学によると、人は入力情報を、短期 メモリと長期メモリを使いながら、メンタルモデル を作って高 に処理しようとする。短期メモリは机 の上、長期メモリは巨大な書庫として例えられ、人 は情報処理をできるだけ早くするために、ある情報 を入手すると関連する長期メモリを活性化し、書庫 を前の方に移動させ理解しやすいように準備する。 人は予測しながら読み進める過程で予測したものが 次に出て来れば理解が早いが、予測していないこと が出て来てしまうと、理解するために後ろの方の書 庫から情報を引っ張り出さないといけない状況と同 じで時間を要し、非常にストレスを感じる。そのた め論文を書くときには、一般的に予想されている症 例報告や原著の形式に沿う必要があり、各項目を記 載する順番もまず概略を述べることで査読者や読み 手に明確なメンタルモデルを作っておき、次に読み 手に作らせたメンタルモデル通りに細部を展開する と理解がしやすい文章となる。たとえば考察部分で は、「本研究では A と B と C を明らかにした。」と最 初のパラグラフで概略を述べておき、次のパラグラ フで A について、その次に B について、最後に C に ついて各パラグラフに細部を展開していけば非常に 分かりやすい文章になる。反対に、「本研究では A と B と C を明らかにした。まず B について述べる。 次に A について述べる。」というような考察を記載し てしまうと、順番が前後していることや C について 述べられていないことから、初めに読み手が作った メンタルモデル通りに展開しておらず非常に読みづ らい、分かりにくい文章となる。 症例報告も原著も論理性を求められる文章であ り、当然論理の流れを図示できる文章でなければな らない。パラグラフライティングとは、論理の構成 単位とレイアウトの固まりを一致させる書き方であ り、1 つのパラグラフに 1 つのトピックを書くこと を原則とする( 図1 )。またパラグラフの最初の文章 が読み手にとって強調される位置になっており、重 要な文章を記載することが多い。もし、このパラグ ラフライティングが守られておらず、全く別のパラ グラフに同じ内容について記載がされていると、読 み手は理解するのに余分な時間を要してしまう。ま ず原稿を書く前に論理の流れを考え、パラグラフの 構成を検討してから原稿を書くことを強く勧める。

3.症例報告・原著の構成について

記載する内容はもちろんであるが、文章を書く順 番も重要となる。当会学術誌【理学療法の臨床と研 究】の投稿規定4 )には、症例報告はタイトル、要旨、 はじめに、症例、考察、結論の順に、原著はタイト ル、要旨、はじめに、対象および方法、結果、考察、 結論の順に記載することと決められている。しかし、

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最初に「 はじめに」から書き始めると筆が重くなり、 なかなかはかどらないという経験をする人も多いだ ろう。投稿規定に記載されているのはあくまで最終 的な順番であり、若手理学療法士が投稿原稿を書き 進めるときには、はじめに今回の研究で明らかと なった新知見となる結論を一文で書くと良い。結論 の一文を決めた後に、結論の一文を導き出すように 後述するようにその他の部分を記載すると一貫した 論旨展開の原稿となりやすく、筆を進めやすくなる。 私たちの多くが論文を読む時には、まず「タイトル」 を読み、タイトルに興味がわけば「要旨」に目を通す。 要旨を見て詳しい内容を知りたいと思えば、本文中 の「結果の図表」を見て、その結果に興味があれば その結果を導き出した「方法」を詳しく読み、結果 に対応する「考察」部分を読むことで論文を理解し ようとする。そのため、「タイトル」「要旨」「方法」「結 果の図表」「考察」については特に細心の注意を払っ て記載する必要がある。

4.症例報告の書き方

症例報告の書き方の順番の一例を表1に記載す る。以下に各項目の書き方について説明する。 表1.症例報告の書き方の順番の一例 症例報告の構成 症例報告の書き方の順番例 1.タイトル 1.結論 2.要旨 2.図表 3.はじめに 3.症例 4.症例 4.はじめにと考察のおおよ そのパラグラフ構成 5.考察 5.考察 6.結論 6.はじめに 7.文献 7.タイトルと要旨 8.図表 8.文献 4-1.結論 まず結論について、症例報告の内容を端的に示す 文章となるような一文で記載する。この結論を述べ るためにその他の部分を作成すると、必要な文章の みを記載しやすくなる。 4-2.図表 症例の経過など、結論と密接に関係するような重 要な結果のみを図表とする。読み手が理解しやすい よう、図表は必要最小限のものを分かりやすく記載 する。学会発表では、短時間に聴衆に理解しやすい ようにするために図を多用し実測値を図の中に記載 することもあるが、投稿論文の場合は図の枚数は必 要最小限とし本当に重要な結果が何なのかを読み手 に分かりやすくする。図の中に実測値を記載すると 煩雑になるので避ける。一般的に図よりも表の方が 情報量が多くなるため、実測値を記載したいのであ れば表にまとめて提示するか、本文中に記載する方 が望ましい。表は必要がない限り縦線を使用せず、 必要最小限の横線のみとする。表題は表の上に記載 する。図と写真はあわせて通し番号とし、表題およ び説明はそれぞれの下に記載する。図はカラーでは なく白黒印刷して分かりやすい図となっているか確 認する。 4-3.症例 まず症例の情報として、年齢、性別、身長、体重 等の基本情報、既往歴、現病歴を簡潔に記載する。 症例の部分に、対象者には研究内容についてあらか じめ十分に説明し、自由意思に基づき文書により同 意を得たことを明記する。研究対象が未成年者また は意識障害などがある場合には、その親権者等の同 意を得る。当会学術誌に投稿する場合は、当会の「論 文および学会・研究会・検討会等での発表における 患者プライバシー保護に関する指針」を遵守する。 症例紹介後に、本症例の理学療法介入方法、治療経 過を結論と対応するように記載する。症例の経過は 事実のみを記載し、著者の感情や考察は記載しない。 4-4.考察とはじめにのパラグラフ構成 考察とはじめにのおおよその論理構成を作成し、 パラグラフのレイアウトを決定する。 4-5.考察 考察は、著者の考えのみを述べる部分ではない。 今回の症例報告で初めて明らかとなったことを、今 回の症例報告と先行研究を比較して導き出される著 者の考えとして記載する。考察は段落分けが重要で ある。各段落に一つのまとまった内容について書く ようにする。考察の段落構成例としては、まず 1 つ 目の段落で本症例報告の新知見の概要( 総論 )につ いて述べ、次に症例経過と先行研究を提示しながら 各論を 2 から 3 段落ほどに分けて述べるというのが 読みやすい構成になる。 4-6.はじめに はじめにの部分には、何が問題となっているのか、 何が解明されていないのか、なぜこの症例報告が行 われる必要があったのかを記載する。これらを記載 するためには、先行研究を十分に調査し、適切に引 用しながら記載する。特に、何が分かっていて、何 が分かっていないか、その分かっていないことを明 らかにすることにどのような意義があるのかという ことが明確に分かるよう文章を記載する。はじめに の最後に、症例報告の目的を記載する。目的は、症

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表2.原著の書き方の順番の一例 原著の構成 原著の書き方の順番例 1.タイトル 1.結論 2.要旨 2.図表 3.はじめに 3.結果 4.対象および方法 4.対象および方法 5.結果 5.はじめにと考察のおお よそのパラグラフ構成 6.考察 6.考察 7.結論 7.はじめに 8.文献 8.タイトルと要旨 9.図表 9.文献 例報告で最も述べたい新知見( 結論 )と対応するよ うな文章にする。 4-7.タイトルと要旨 本文のすべての項目を一通り書き終わってからタ イトルと要旨を作成すると、本文と対応するタイト ルや要旨となりやすい。タイトルは症例報告の症例、 考察、結論が分かるよう具体的かつ可能な限り簡潔 に記載する。要旨は、「症例」と「結論」に項を分けて、 本文と対応するように簡潔に記載する。

5.原著の書き方

原著の書き方の順番の一例を表2に記載する。以 下に各項目の書き方について説明する。   5-1.結論 論文が成立するためには、言いたいことが小さ くても世界で初めての新しい結論がなくてはならな い。他の誰かが過去に報告している結論と全く同じ 内容であるのであれば、わざわざ論文にするために 労力をかける必要はない。論文の結論は「新しいこ と」かつ「意義のあること」が重要で有り、既に誰 かが似たような報告をしている場合でも、似ている 点と違う点を整理して、違う点に意義があるのであ れば論文として公表する必要がある。何がこの研究 で新しく意義があるのかという点を意識しながら、 原著の研究内容を端的に示す文章となるような結論 を一文で記載する。この結論を述べるためにその他 の部分を作成すると、必要な文章のみを記載しやす い。原著の中でできるだけ多くのことを述べたいと 思う人が多いが、最も重要な新知見を 1 つ、多くて も 2 つに絞ってから論文を執筆すると、理解しやす い論文となる。 5-2.図表 本研究の新知見など、結論と密接に関係するよう な重要な結果のみを図表とする。読み手が理解しや すいよう、図表は必要最小限のものを分かりやすく 記載する。学会発表では、短時間に聴衆に理解しや すいようにするために図を多用し実測値を図の中に 記載することもあるが、投稿論文の場合は図の枚数 は必要最小限とし本当に重要な結果が何なのかを読 み手に分かりやすくする。図の中に実測値を記載す ると煩雑になるので避ける。一般的に図よりも表の 方が情報量が多くなるため、実測値を記載したいの であれば表にまとめて提示するか、本文中に記載す る方が望ましい。表は必要がない限り縦線を使用せ ず、必要最小限の横線のみとする。表題は表の上に 記載する。図と写真はあわせて通し番号とし、表題 および説明はそれぞれの下に記載する。図はカラー ではなく白黒印刷して分かりやすい図となっている か確認する。 5-3.結果 本研究の結論を導き出すため、新知見を示すの に必要な結果を記載する。前提条件など結論を支持 するために必要なものを過不足なく記載する。結論 を述べるのに不必要な結果を書くと分かりにくくな り、読み手を混乱させるので避ける。結果の中に時 に事実以外の文言が記載されていることがあるが、 著者の感情、解釈や考察は結果の部分に記載しない。 5-4.対象および方法 対象および方法の部分には、対象、倫理的配慮、 方法、統計処理について記載する。結果を導き出し た方法を、漏れなく、結果を提示する順番に方法を 記載すると読み手は理解しやすい。倫理的配慮とし て、ヒトを対象とした研究では世界医師会のヘルシ ンキ宣言5 )に準拠しなければならない。対象者には 研究内容についてあらかじめ十分に説明し、自由意 思に基づき文書により同意を得たことを明記する。 研究対象が未成年者または意識障害がある場合に は、その親権者等の同意を得る。また、所属機関の 倫理委員会またはこれに準拠したものの承認を得た ことを明記する。当会学術誌に投稿する場合は、当 会の「論文および学会・研究会・検討会等での発表 における患者プライバシー保護に関する指針」を遵 守する。 第三者が追試できるよう、機器名は、「 一般名( 会 社名、製品名 )」、統計ソフトは 「 製品名、バージョ ン番号 」、薬品名は、「一般名( 製品名 )」で表記し、 先行研究を適切に引用しながら客観的に記載する。 方法部分は事実のみ記載し、著者の感情、解釈や考 察は記載しない。適切な統計手法を用い、どの測定 項目にどの種類の検定を用いたかを記載する。数量

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の単位は原則として国際単位系( SI 単位 )を用いて 記載する。 5-5.考察とはじめにのパラグラフ構成 考察とはじめにのおおよその論理構成を作成し、 パラグラフのレイアウトを決定する。 5-6.考察 考察は、著者の考えのみを述べる部分ではない。 今回の研究を行うことで初めて明らかとなったこと を、今回の研究結果と先行研究を比較して導き出さ れる著者の考えとして記載する。当然、結果に記載 されていないことを考察の部分に新しく出すことは やってはいけないことである。もし著者が考察で述 べたいのであれば、必ず結果の部分に考察を導き出 す結果を記載すべきである。考察には適切な先行研 究の引用が必須である。研究分野の代表的な論文と 最近の論文を引用して考察していなければ、査読者 は著者らが十分に考察を行っていないと判断する。 著者が論文を執筆している最中にも新しい研究は行 われ論文は掲載され続けている。定期的に文献検索 を行い、関連する研究が掲載されていないか情報収 集を続け、新しい情報があれば考察に必ず反映させ る。 考察はパラグラフ分けが重要である。先に作成し た考察のパラグラフレイアウトに沿って、各パラグ ラフに一つのまとまった内容について書くようにす る。考察のパラグラフ構成例として、まず 1 つ目の パラグラフで本研究の新知見の概要( 総論 )につい て述べ、次に研究結果と先行研究を提示しながら各 論を 2 から 3 パラグラフに分けて述べて、最後に本 研究の限界について述べるという形式が一つの読み やすい形となる。 5-7.はじめに はじめにの部分には、何が問題となっているのか、 何が解明されていないのか、なぜこの研究が行われ る必要があったのかを記載する。これらの内容を記 載するためには、先行研究を十分に調査し、適切に 引用しながら記載をする。特に、何が分かっていて、 何が分かっていないか、その分かっていないことを 明らかにすることにどのような意義があるのかとい うことが明確に分かるよう文章を記載する。歴史的 な背景をあまり詳しく書き過ぎる必要はなく、一部 の重要な論文を除いて、古すぎる論文は引用を控え るべきである。研究は過去の研究に積み重ねる形で 発展していく。最近 5 年以内の論文を適切に引用し、 現在どこまでのことが分かっているのか、どこまで が分かっていないのかを明らかにしながら、本研究 の結果や考察を理解するために必要な基礎知識や研 究背景を記述する。はじめにの最後に、研究の目的 を記載する。研究の目的は、本研究で最も述べたい 新知見( 結論 )と対応するような文章とする。 5-8.タイトルと要旨 本文のすべての項目を一通り書き終わってからタ イトルと要旨を作成すると、本文と対応するタイト ルや要旨となりやすい。タイトルは研究の対象、方 法、結論が分かるよう、具体的かつ可能な限り簡潔 に記載する。要旨は「目的」、「方法」、「結果」、「結論」 と項を分けて、本文と対応するように簡潔に記載す る。要旨には字数制限があり、少ない文字数で論文 の概要を表現するのはなかなか難しいが、要旨を見 て本文を読むかどうかを決める読み手がほとんどで あるから、何度も推敲して明快な要旨となるよう心 がける。

6.文献

文献は投稿規定に沿って作成する。この部分は多 くの著者が記載ミスを指摘される部分である。私が 投稿論文を査読するときには必ず文献のところから チェックする。正確に投稿規定に沿って書かれた引 用された論文であれば、著者がしっかりしており、 校正をした指導者もきちんと確認し、適切に指導し ていると判断する。出典や記載の間違いを見つける と、論文の論旨展開を支える文献記載の部分が不 十分であるため査読者の心証が悪くなる可能性があ る。当会学術誌に投稿する場合には文献は必ず本文 の引用順に並べる。論文を修正する過程で、引用の 順番が前後している投稿論文が多く見受けられる。 学会抄録は文献ではないので、可能な限り抄録の引 用を避けるか、引用するとしても 2 年以内のものと することが望ましい。文献まで総文字数にカウント される場合が大半であり、文字数を超過しないよう に、引用する文献は必要不可欠なもののみに絞って 記載する。

7.原稿を一通り書き終えたら

原稿の文字数を確認する。当会学術誌に投稿する 場合、症例報告は本文、文献、図表と図表の説明文 を含めて文字数 5000 字以内、原著は文字数 8000 字 以内を原則とする。図表は 1 個を 400 字に換算する。 原稿を書き終えたら、記載漏れがないかどうか必ず 読み直す。症例報告の場合には「 はじめに」、「症例」、 「考察」、「結論」の順に、原著の場合には「 はじめに」、 「対象および方法」、「結果」、「考察」、「結論」の順に 対応しているかどうか読み直す。次に後ろから、症 例報告の場合には「結論」、「考察」、「症例」、「 はじ めに」の順に、原著の場合には、「結論」、「考察」、「結 果」、「対象と方法」、「 はじめに」の順に逆から読み

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直すことで記載漏れや順番の違いに気づきやすくな る。誤字脱字は、査読者の心証を悪くする可能性が ある。誤字脱字に気づくには、文章を目で追うだけ でなく、音読することも効果的である。症例報告や 原著の原稿を書き上げたら、必ず共著者のチェック を受ける必要がある。投稿する前に共著者が確認す ることで著者が気づかなかった点に気づくことがで き、論文の質を高めることが可能となる。チェック を受けた後、論文内容に責任を持つことと投稿に同 意していることを確認した上で、共著者に投稿承諾 書6 )に自筆署名を依頼する。当会学術誌に投稿する 場合には、投稿にあたってのチェック表7 )を用いて 投稿論文に不備がないかどうかを最終確認する。

8.投稿方法

当会学術誌の場合、投稿原稿は電子媒体( CD-R ) で投稿する。別紙「理学療法の臨床と研究」投稿承 諾書と、チェック表を同封し、簡易書留で郵送する。 投稿受付の連絡や査読結果は、編集委員長から著者 宛にメールで届くため、投稿後は定期的にメールを 確認する。投稿して 2 週間以上経過しても投稿受付 の連絡がない場合は、編集委員会に問い合わせし、 確認をする。

9.査読のやりとりについて

投稿論文が修正なしで掲載となることは極めて稀 である。重要なのは投稿後の対応である。査読者は、 論文をより良くするための建設的な意見を与える人 である。査読者はボランティアであり、時間をかけ て査読されたコメントであるので、修正点を提示し たものに対しては、著者は真摯に回答する必要があ る。時に理不尽とも思える要求があったりするが、 それに対しても可能な限り真摯に回答する必要があ る。査読結果が「修正後再査読」の場合には、査読 者の指摘に 1 つ 1 つきちんと答えると、査読者は掲 載不可とできないので、最終的に掲載となる。どう しても査読者のコメントが間違っていると考えられ る場合には、その理由と必要に応じて根拠となる先 行研究を引用しながらコメントに応じられない旨を 詳細に回答することも可能である。 査読回答を書くときは、査読者のことを考えなが ら、査読者の意図をくみ取りつつ分かりやすい文章 を書くことを意識する。たとえば、査読者から、「1. 文献の記載方法を確認し、修正して下さい。」とい う指摘があった場合の査読回答例は以下の通りであ る。 文献の記載方法を確認し、修正して下さい。 :ご指摘いただきましたように、文献の記載方法 を再度確認し、文献 1、5、7、8 の記載方法を修 正致しました。修正原稿中の修正箇所には全て下 線を記載しています(p.7 の 20 行目~ p.8 の 2 行目) このようにまず、査読者からのコメントをそのま まの文章で記載し、次にそれに対する自身の回答を 記載し、本文中の修正箇所をページと行数で明示す ると査読者は修正箇所を理解しやすい。この手順で 回答を記載したものを査読者のコメントごとに作成 し、修正原稿中の修正箇所に全て下線を引くことで、 査読者は著者からの修正原稿と査読回答を見るだけ でどの箇所をどのように修正されたかすぐに理解す ることができる。通常、査読は複数回行われること が多い。査読の修正期日を過ぎると新たな投稿原稿 として扱われ、別の査読者が再度査読をはじめから やり直す。これは著者のみならず査読者にとっても 負担であるため、そうならないためにも査読結果が 届いたらすぐに原稿の修正に取り掛かり、編集委員 会から提示された修正期日を必ず守って修正原稿を 提出する。

10.最後に

日本理学療法士協会では 2009 年度より新たな専 門・認定理学療法士制度が始まり、学術誌【理学療 法の臨床と研究】に論文掲載された場合、履修ポイ ントとして 40 ポイントが付与される。専門・認定 理学療法士取得を目指し、忙しい臨床業務の合間を ぬって論文作成が行われている現状も事実である が、学術論文として世間に公表する以上、筆頭著者 のみならず共著者も責任を持って投稿する必要があ ると考える。症例報告や原著は、研究活動を公表す る文書であり、議論することができる文書であるこ とが重要である。議論を行うためには、まず執筆し た症例報告や原著で何を訴えたいのか論旨を明確に する必要がある。何が今までの報告と異なるのか、 何が新知見なのかを先行研究の調査を十分に行って から執筆を開始すべきである。次に、結果の提示や 引用文献の出典などを含め、情報は正確にかつ必ず 投稿規定に従って執筆する。論文を書き上げた後は、 必ず共著者のチェックを受ける。指導する側の理学 療法士には論文執筆指導を行う際の参考資料として 活用していただきたい。

【文献】

1) 公益社団法人日本理学療法士会倫理規定. http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/ fi les/about/0432.pdf(2015 年 11 月 29 日引用) 2) J-STAGE 理学療法の臨床と研究. https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jptpr/-char/

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ja/(2015 年 11 月 29 日引用) 3) 倉島保美.なぜ伝わらない、どうすればいい.論理が 伝わる世界標準の「書く技術」.「パラグラフライティ ング」入門.講談社,東京,pp.13-44,2012 4) 広島県理学療法士会ホームページ 理学療法の臨床と 研究 投稿規定. http://hpta.or.jp/modules/downloads/index. php?cid=23(2015 年 11 月 29 日引用) 5) ヘルシンキ宣言 日本医師会和訳. http://dl.med.or.jp/dl-med/wma/helsinki2013j.pdf (2015 年 11 月 29 日引用閲覧) 6) 広島県理学療法士会ホームページ 理学療法の臨床と 研究 投稿承諾書. http://hpta.or.jp/modules/downloads/index. php?cid=23(2015 年 11 月 29 日引用) 7) 広島県理学療法士会ホームページ 理学療法の臨床と 研究 チェック表. http://hpta.or.jp/modules/downloads/index. php?cid=23(2015 年 11 月 29 日引用)

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Review

A guide to writing case reports/original articles for junior physical therapists

Shunsuke Taito

1,2)

, Masaru Ishida

1,3)

, Naoki Sakimoto

1,4)

, Takayuki Kubo

5,6)

1) Department of Academic, Hiroshima Physical Therapy Association

2) Division of Rehabilitation, Department of Clinical Practice and Support,     Hiroshima University Hospital

3) Department of Rehabilitation, Kousei General Hospital 4) Department of Rehabilitation, Miyoshi Central Hospital 5) Hiroshima Physical Therapy Association

6) Department of Rehabilitation, Jitsuiki Orthopeadic Clinic

Abstract:

This article describes the process of writing and submitting a case report/original article for junior physical therapists, who are relatively inexperienced in submitting academic papers for publication. Case reports/original articles are documents that make one’s research accessible to others, and it is therefore important that they provide materials for discussion. To achieve this goal, the author must fi rst clarify the point(s) he or she would like to make in the case report/original article. Next, a manuscript must be written using accurate information, including research fi ndings and sources cited in the report, in accordance with the guidelines for authors. Once the manuscript is complete, it must be checked by all co-authors. We ask that junior physical therapists follow the process described in this article when preparing case reports/original articles, and also that senior physical therapists use it as a reference guide when teaching junior physical therapists how to write an academic paper.

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