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第23号 ① 呼吸器疾患診療について はじめに 平素大変御世話になり ありがとうございます 高齢化社会の中で呼吸器疾患を発症する患者さんは増加しています 現在 当院では常勤呼吸器内科医師1名 非常勤呼吸器内科医師 木曜日 禁煙外来 山口大学 で主に担当していますが 呼吸器疾患 患者

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Academic year: 2021

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呼吸器疾患診療について

地域ともっとクロス!する山口赤十字病院

はじめに

平素大変御世話になり、ありがとうございます。 高齢化社会の中で呼吸器疾患を発症する患者さんは増加しています。 現在、当院では常勤呼吸器内科医師1名、非常勤呼吸器内科医師 (木曜日・禁煙外来・山口大学)で主に担当していますが、呼吸器疾患 患者数に対して、呼吸器内科医師が少ないため、内科医師全員で肺炎などの 呼吸器疾患の加療を担当させて頂いています。 当院で多く対応している呼吸器疾患・症候について御紹介致します。

COPD (慢性閉塞性肺疾患)

2018年に「COPDの診断と治療のためのガイドライン第5版」に改訂されました。 COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより 生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。 気流閉塞は 末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。 臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが、 これらの症状に乏しいこともある。」と定義されています。 【今回の担当医師】 第二内科部長

國近 尚美

(くにちか なおみ) 【資 格】 ・日本内科学会認定内科医、専門医、指導医 ・日本呼吸器学会専門医、指導医 ・日本呼吸器内視鏡学会専門医 ・日本結核病学会専門医、指導医 ・日本感染症学会ICD ・日本医師会認定産業医 ・日本プライマリ・ケア認定医、指導医 ・日本呼吸ケアリハビリテーション学会 呼吸ケア指導士 【専 門】 呼吸器

第23号

2019.5・6 COPDは長期の喫煙歴がある中・高年者に発症するため、喫煙や加齢に 伴う併存症が多くみられます。COPDによる全身への影響として全身性炎症、 栄養障害、骨格筋機能障害、心・血管疾患、骨粗鬆症、不安・抑うつ、 糖尿病などの併存症があり、医師会の先生方の御施設で他の疾患で 通院中の方にも多く潜在している可能性があります。以下に示すような特徴の ある方がおられましたら、肺機能検査や胸部XP,CTなどの検査を進めて下さい ますようお願い致します。肺機能検査などが御施設にない場合には、当院に御紹介下さい。 a. 喫煙歴あり(特に40歳以上) b. 咳(特に湿性)、痰、喘鳴 c. 労作時(階段や坂道の登り、など)の息切れ d. 風邪(上気道)症状時の b.または c.(風邪で顕在化することあり) e. 風邪(上気道)症状を繰り返す、または回復に時間がかかる f. 左記疾患(COPDに多い併存症)患者 - 心血管系疾患、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、など

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安定期治療は、まずは禁煙を行い、長時間作用性抗コリン吸入薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激吸入薬(LABA)、 LABA/LAMA配合薬による治療を行います。呼吸リハビリテーションやワクチン接種など非薬物治療も重要です。気管支 喘息との合併症例には吸入ステロイド(ICS)を追加します。

トピックス ACO(Asthma and COPD Overlap)について

2018年日本呼吸器学会から「喘息とCOPDオーバーラップ 診断と治療の手引き」が発刊され、慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDの それぞれの特徴を併せもつ疾患と定義されました。ACOは喘息あるいはCOPD単独の場合と比べて増悪しやすく、また、呼吸機能低下も 著しいことがわかっています。安定期の長期管理のためにACOの病態を評価し、危険因子を回避するとともに適切な長期管理を心がける 必要があります。治療は中用量の吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激吸入薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)、 あるいは中用量のICSと長時間作用性抗コリン吸入薬(LAMA)で開始します。

気管支喘息

2018年に「喘息予防・管理ガイドライン」の改訂が3年ぶりに行われました。気管支喘息(以下、喘息)は「気道の 慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴付けられる疾患」であると 定義されています。 喘息の管理目標は以下の2つに分けられます。 Ⅰ. 症状のコントロール(発作や喘息症状がない状態を保つ) ①気道炎症を制御する。 ②正常な呼吸機能を保つ。 Ⅱ. 将来のリスク回避 ①呼吸機能の経年低下を抑制する。 ②喘息死を回避する。 ③治療薬の副作用発現を回避する。 治療ステップの変更点は、ステップ2に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を加えたこと、ステップ4に抗IL-5抗体製剤、 抗IL-5受容体α鎖抗体製剤、気管支熱形成術を加えたことです。 図① 喘息の治療ステップ (出典:『喘息予防・管理ガイドライン2018』より) 治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4 長 期 管 理 薬 基 本 治 療 ICS(低用量) ICS(低~中用量) ICS(中~高用量) ICS(高用量) 上記が使用できない場 合、以下のいずれかを 用いる LTRA テオフィリン徐放製剤 ※症状がまれなら必要 なし 上記で不十分な場合に 以下のいずれか1剤を併 用 LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン徐放製剤 上記に下記のいずれか一 剤、あるいは複数を併用 LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン徐放製剤 上記に下記の複数を併用 LABA(配合剤使用可) LAMA LTRA テオフィリン徐放製剤 抗IgE抗体 抗IL-5抗体 抗IL-5Ra抗体 経口ステロイド薬 気管支熱形成術 追加 治療 LTRA以外の抗アレルギー薬

発作治療 SABA SABA SABA SABA

ICS:吸入ステロイド薬、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬、LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬、SABA:

短時間作用性吸入β2刺激薬、抗IL-5Ra抗体:抗IL-5受容体α鎖抗体

(3)

当院では、難治性喘息に対して、抗IgE抗体、抗IL-5抗体などの抗体療法を行っておりますので御紹介下さい。 気管支喘息、COPDの薬物治療において、吸入薬はその中心となる有用な治療薬です。しかし、正しい手技により確実に 吸入できなければ、期待される効果を得ることはできません。患者さんが正しく吸入できるためには、適切な吸入指導・吸入支援が 必要であり、アドヒアランスの維持は特に重要と考えます。現在、吸入薬の種類は多くなり、それに伴い多くの種類のデバイスが 存在します。デバイスごとに操作方法が異なり、注意する事項も多く、吸入指導を行う医療従事者にとっても、すべてのデバイスに 精通することは難しいです。また、単にデバイスの説明をするだけでなく、気管支喘息やCOPDの病態や、吸入療法継続の 必要性などを患者や家族に理解してもらうことも重要であると考えます。 2008年から山口市喘息死ゼロ作戦研究会を立ち上げ、市民公開講座、病診薬連携の学術講演会、薬剤師会における 吸入指導勉強会を毎年定期的に行っております。是非御参加下さいますようお願い致します。

慢性咳嗽

わが国の一般人口における咳の罹患率は約10%です。さらに8週間以上持続する慢性咳嗽(長引く咳)の罹患率は 2%です。一般内科の診療所を受診する理由として、咳嗽は最も多い症状の一つです。慢性咳嗽とは、「問診,身体所見, 胸部単純X線写真やスパイログラフィーなどの一般検査では原因を特定できない8週間以上持続する咳嗽が唯一の症状で あるもの」と定義されています。慢性咳嗽の鑑別が必要な方がおられましたら御相談下さい。

抗酸菌感染症

抗酸菌とは、結核菌、非結核性抗酸菌、らい菌のことです。 ①肺結核 結核菌による呼吸器感染症で、現在減少傾向ではありますが、年間2万人の発症患者数があります。山口県内では、 排菌のある肺結核患者さんは、感染症法37条に則り山口宇部医療センターに入院されますが、排菌のない患者さんは それぞれの医療施設で治療することになっています。INH, RFP, EB(SM),PZAの4剤で6か月間治療します。 ②非結核性抗酸菌症(NTM感染症) 非結核性抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌が感染を起こした疾患です。肺や皮膚に感染を起こし、主な症状は咳嗽・ 喀痰・倦怠感・体重減少・血痰などです。近年、世界的にも増加傾向で、わが国においては結核感染症数を超えて増加 傾向です。症状と画像検査で非結核性抗酸菌症を疑い、喀痰抗酸菌検査で非結核性抗酸菌が存在することを証明し 診断します。わが国においては、MAC(Mycobacterium Avium Complex)菌(マイコバクテリウム・アビウムとイントラ セルラーレを含む)の感染が約80%、M.kansasii(カンサシー)が約10%を占めています。MAC症の治療はRFP, EB, CAMの3剤を約2年間内服しますが完治は困難であり、高齢者に対しては副作用も鑑み経過観察や対症療法になることも あります。 抗酸菌感染症を疑われて御紹介頂く際には、胃液検査を行いますので、絶飲食の御指導をお願い致します。

肺がん

(やまクロcross 第12号(2018年5月発行)を御参照下さい。) 2020年におけるがん患者数の推計によると、男性では肺がんの新患者数が約91000人、女性では約34000人になり 今後も増加すると予測されています。胸部異常陰影や血痰、胸痛など自覚症状のある患者さんがおられましたら御紹介下さい。 気管支内視鏡検査を施行し、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの組織診断を行います。病期(ステージ)や 患者さんの状態を総合的に考え、外科的治療が可能でしたら当院外科にて手術を行います。

(4)

間質性肺炎を含むびまん性肺疾患

びまん性肺疾患には、間質性肺炎や過敏性肺炎、薬剤性肺炎、膠原病に伴う肺疾患、好酸球性肺炎、サルコイドーシスや、 ニューモシスティス肺炎などの日和見感染症など様々な疾患があります。 鑑別診断目的に気管支内視鏡検査を行い、気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支肺生検(TBLB)を施行しています。 疾患によりステロイドパルス療法など行い、特発性肺線維症に対しては、抗線維化薬による治療を行っています。

禁煙外来

わが国の喫煙率は、2018年度の喫煙率は、男女合わせて17.7%で約1400万人が喫煙しています。 禁煙治療は、初回診察、2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の合計5回の診察を受けて頂きます。費用は約2万円 程度です。禁煙希望の方がおられましたら、禁煙外来(毎週木曜日午後・予約制)を御紹介下さい。

教育

① 呼吸器セミナー 2010年6月~毎月1時間、呼吸器領域の基礎知識や疾患について勉強会を院内で行っています。医師だけでなく、臨床 検査技師、理学療法士、臨床工学技士などメディカルスタッフが講師を務めています。院外の方も自由参加ですので、地域 連携室にお尋ねください。お陰様で2019年5月16日に第100回を迎えました。 ② RST活動(呼吸ケアサポートチーム) 毎週金曜日に、人工呼吸器が装着されている患者さんを対象に、 医師、歯科口腔外科医師、集中ケア認定看護師、理学療法士、 臨床工学技士、歯科衛生士によるカンファレンスとラウンドを行って います。多職種が関わることで、人工呼吸器の管理やウィーニングの サポートが手厚くなり、安全性を高めています。

ご案内

2019年11月23日(祝・土)、24日(日)に山口県健康づくりセンターにおいて、第62回日本呼吸器学会中国・四国 地方会、第28回日本呼吸器内視鏡学会中国・四国支部会、第70回日本結核病学会中国・四国支部会の3学会合同 地方会が開催されます。國近が結核病学会の会長を務めさせて頂きます。御高名な先生方の教育講演やランチョンセミナーなど 予定しておりますので、御都合がよろしければ、御参加頂きますようお願い申し上げます。

おわりに

2015年に山口大学に呼吸器・感染症内科が設立されましたが、まだまだ呼吸器内科医師が充足できる状況にはないのが 現状です。呼吸器内科医師の少ない地域ならではの連携・協力体制で、患者さんに適切で安全な医療を提供できるよう 尽力したいと思っております。 今後とも御指導御協力頂きますようお願い致します。 【発行元】綜合病院 山口赤十字病院 地域医療連携室・総務企画課

〒753-8519 山口市八幡馬場53-1 Tel 083-923-0390 Fax 083-923-0391 http://www.yamaguchi-redcross.jp/ 地域ともっとクロス!する山口赤十字病院

RSTラウンドの様子

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今回から当院の医師以外のスペシャリストもご紹介いたします。 何かございましたらお声掛けください。

集中ケア認定看護師とRSTのご紹介

集中ケア認定看護師とは、重症かつ集中治療を必要とする患者、家族への看護、 いわゆる生命現象の危機状態にある患者に対処する看護を行っています。院内では 主に、呼吸ケアサポートチーム(以下RST)の一員として活動しています。 RSTとは、医師(呼吸器内科【國近医師です!】、歯科口腔外科、麻酔科)、 看護師、臨床工学技士、理学療法士、 歯科衛生士の多職種からなるチームです。 人工呼吸器を装着している患者様に、それぞれの分野の視点で、適切な人工呼吸器 管理や早期の人工呼吸器離脱を目的に、週1回チームでラウンドを行っています。 当院RSTでは、人工呼吸器装着患者様だけでなく、呼吸リハビリテーションを行っている患者様についてもカンファレンスを行い、 呼吸器機能の改善・維持、息切れの少ない日常生活の獲得を目指しています。当院退院後も増悪のないように、呼吸体操や パンフレットなどで指導も行っています。しかし、最も大事なのはこれらを 続けていくことです。退院後地域に戻ってからも継続して行えるように、 地域と連携していきたいと考えています。 また、当院では、院内の呼吸ケアの質の向上を目標とし、平成29年度 より呼吸ケアリンクナース会も発足しています。今後も、RST、呼吸ケア リンクナース会を中心に、院内の呼吸ケアの向上に努めていくのと同時に、 地域の呼吸ケアの向上にも関わっていきたいと思っていますので、何か ございましたらどうぞよろしくお願いします。

新病棟建設のお知らせ

当院はこのたび、老朽化した南病棟および厚生棟等を取り壊し、新たに北病棟を建設することになりました。 今月から工事を開始し、完成は2022年9月頃の予定です。工事中の診療は現病棟で継続いたします。

やまクロInformation

5月12日(日)に起工式を執り行ないました 新病棟の完成イメージ図 【発行元】綜合病院 山口赤十字病院 地域医療連携室・総務企画課

〒753-8519 山口市八幡馬場53-1 Tel 083-923-0390 Fax 083-923-0391 http://www.yamaguchi-redcross.jp/ 地域ともっとクロス!する山口赤十字病院 RSTのメンバー。前列中央左側が國近医師、 後列中央右側が弘中看護師 集中ケア認定看護師

弘中 祐介

(ひろなか ゆうすけ)

第23号

2019.5・6

参照

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