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<資料>EU司法裁判所民事手続規則関係判例概観(2016年)

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EU 司法裁判所民事手続規則関係判例概観(2016年)

EU 司法裁判所民事手続規則関係判例概観(2017年)…………専修法学論集136号 EU 司法裁判所民事手続規則関係判例概観(2018年)…………専修ロージャーナル15号

# ブリュッセル#a 規則

ブリュッセル!a 規則の適用範囲 第1条! 本規則は,裁判権の種類にかかわらず,民事及び商事事件におい て適用される。本規則は,特に租税及び関税事件並びに行政法上の事件又 は主権の行使の枠内における作為若しくは不作為に関する国家の責任(主 権的行為)には適用されない。 " 省 略 $ 罰金の返還を原因とする不当利得返還請求訴訟とブリュッセル#(a)規則 (EU 司法裁判所2016年7月28日判決―Gazdasági Versenyhivatal, Case C−102/

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【事実の概要】 ハンガリー・カルテル庁が,オーストリアに本拠を置く S 社に対して,競争 法違反を理由に罰金を課した。S 社がこの罰金を支払う一方で,その賦課決定に 対して行政裁判所に不服申立てをしたところ,その第1審,第2審は罰金を減額 した。そこで,S 社に減額された分の差額が返還されたが,その際,カルテル庁 は過払いされた分に対する利息も支払った。ところが,ハンガリー最高裁は,破 毀抗告に基づいて,第2審判決を破棄し,当初の賦課決定を是認した。S 社は返 還を受けた差額を再度支払ったが,その際,利息を付することをしなかった。そ こで,2013年7月12日,カルテル庁は,ブタペスト(ハンガリー)首都裁判所に, 民法の規定による不当利得に基づき,当該利息とそれに付されるべき遅延利息の 支払を求めて,S 社に対する訴えを提起した。 カルテル庁は,不当利得は不法行為に等しい行為であるとして,ブリュッセル !規則5条3号の不法行為地の特別管轄を根拠に,ハンガリー裁判所のこの訴え に関する国際裁判管轄権を導いている。これに対し,S 社はこれを争い,むしろ 被告住所地の原則管轄を定めるブリュッセル!規則2条1項が適用されるべきで あり,管轄はオーストリア裁判所にあると主張した。第1審は訴えを却下したが, 第2審が管轄に関する問題を EU 司法裁判所に付託した。 【解 説】 EU 司法裁判所は付託問題には回答せず,そもそも本件のような事案は「民商 事事件」に該当しないからブリュッセル!規則の適用範囲に入らないとした。 このような結論を導くために,本判決は,まず,「民商事事件」の概念にとり 重要であるのは,紛争の当事者間の法律関係の性質とその対象を特徴付ける視点 であると指摘した上で,官庁と私人間の紛争がブリュッセル!規則の対象となる ことはありうるが,官庁が高権的権能を行使する場合はそうではないとする(本 判決理由第31節・第32節)。そして,競争法の貫徹のために提起される私的な訴 訟はブリュッセル!規則の対象となるが,国内法により委ねられた規制権能を行 使して行われる罰金の賦課は,ブリュッセル!規則1条1項によってその適用範

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囲から排除される「行政法上の事件」に入るとする(本判決理由第34節)。もっ とも,本件事案の紛争は,直接には,カルテル庁が競争法違反を理由に S 社に 対して課した罰金に関わるものではない。しかし,本判決は,この点について, その紛争はこの罰金と,その適法性に関する基本手続の当事者間の紛争と分かち がたく結び付いているとし,本件事案の事実関係を指摘する(本判決理由第35節)。 裁判管轄 " 国際裁判管轄と土地管轄の決定方法(EU 司法裁判所2016年3月10日判決― Flight Refund, Case C−94/14, ECLI : EU : C : 2016 : 1483

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$ 突然の取引関係の終了と不法行為地または契約上の義務履行地の国際裁判管 轄(EU 司法裁判所2016年7月14日判決―Granarolo, Case C−196/15, ECLI : EU : C : 2016 : 5596 【判 旨】 !ブリュッセル#規則5条3号は以下のように解釈される。基本手続の訴訟の ような,長期の取引関係の突然の中止を理由とする損害賠償請求訴訟は,当事者 間に黙示の契約関係が存在したとき――この点を審理するのは付託裁判所の役割 である――は,当該規則の意味における「不法行為若しくは不法行為に等しい行 為,又はそのような行為に起因する請求」に関わるものではない。そのような黙 示の契約関係の存在の証明は,一致する徴表の束に基づくことがありうるが,そ の徴表としては,とりわけ長期の取引関係の存在,当事者間の信義誠実,当該商 取引の適法性,量と価値が明示されたその長期の展開,考慮に入れられた価格と /又は行われた割引きについての取り決めがあればその取り決め,並びに交わさ れた通信がありうる。 "ブリュッセル#規則5条1号 b は以下のように解釈される。基本手続にお けるそれのような長期の取引関係は,当該契約の特徴的な義務が目的物の引渡し であるときは「動産の売買に関する契約」と,その義務が役務提供の用意である ときは「役務提供に関する契約」と――これらのいずれかに該当するかを確定す ることは付託裁判所の役割である――評価されるべきである。 【事実の概要】 ニース(フランス)に営業所のある A 社は,ボローニャ(イタリア)に営業 所のある G 社のために,枠(基本)契約や専属(独占販売)契約もないまま約 25年来,フランスで(G 社の製造した)食料品を販売してきた。2012年12月10日 付けの書面でもって,G 社は,A 社に対して,その商品は,フランスとベルギー 6 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Hartge, GPR 2016, 304 ; Mankowski, EWiR 2016, 747 ; Landbrecht, EuZW 2016, 750 ; Huber, IPRax 2017, 356 ; Klöpfer/Wendelstein, JZ 2017, 79 ; Hübner/Pika, ZEuP 2018, 32 ; Kutscher/ Puis, ZVertirebsR 2017, 60 ; Stade, ZVertriebsR 2018, 9 ; Cranschaw, jurisPR− HaGesR 3/2017 Anm.5 ; Fabig, jurisPR−IWR 3/2017 Anm.1. なお,本件事案におい て問題となっているブリュッセル#規則5条1号・3号は,現在,ブリュッセル# a 規則7条1号・2号となっているが,それらの間に文言の変更はない。

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買か役務提供契約か,あるいはその他の契約かは,当該契約の特徴的な給付を基 準にして判断されるべき旨を,先例(Judgment of 25 Feburary 2010, Car Trim, C−381/08, EU : C : 2010 : 90, para. 317)を引用しつつ確認している(本判決理由

第32節∼第43節)。

" 私的複製補償金の支払を求める訴えと不法行為地の国際裁判管轄(EU 司法 裁判所2016年4月21日判決―Austro−Mechana, Case C−572/14, ECLI : EU : C : 2016 : 2868,9 【判 旨】 ブリュッセル!規則5条3号は,以下のように解釈される。基本手続において 問題となっている,情報社会指令5条2項 b に規定された「公正な補償」とい う規律の国内法化のための規定に従って負担される補償金の支払を求める訴えの 場合,ブリュッセル!規則5条3号の意味における「不法行為もしくは不法行為 に等しい行為またはそのような行為に起因する請求」が問題となっている。 【事実の概要】 A−M(Austro−Mechana)はオーストリアにおける音楽著作権の管理団体であ り,私的複製に係る補償金を著作権者のために取り立てることをその役割の1つ としている。他方,ルクセンブルクとドイツに本拠を有する A(Amazon)はイ ンターネットを通じて商品を販売する国際的なコンツェルンの1つであるが(被 告はこのコンツェルンに属する5社である),その取扱い商品にはオーストリア において補償金支払義務を生ぜしめる複製媒体が含まれている。A−M は,A は そのような複製媒体をオーストリアで最初に流通に置いた者であり,それ故,補 償金支払義務を負うと主張して,2010年10月1日以降に流通に置いた複製媒体に 7 この判決については,野村秀敏「製作物供給契約と義務履行地の裁判籍」野村= 安達編著・前掲注(4)174頁以下参照。 8 本判決の詳細については,野村秀敏「私的複製補償金の支払を求める訴えと不法 行為地の国際裁判管轄」専修ロージャーナル13号51頁以下(2017年)参照。 9 本判決の判例研究ないし本判決を契機とする論文として,Heinzl, EuZW 2016,

550 ; Rassmann−Bonne/Servatius, EWS 2016, 275 ; Lutzi, IPRax 2016, 550. なお,

本件事案において問題となっているブリュッセル!規則2条1項,5条1号・3号

は,現在,ブリュッセル!a 規則4条1項,7条1号・2号となっているが,それ らの間に文言の変更はない。

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係る補償金の支払を求めて,2013年9月30日に,オーストリアの裁判所に訴えを 提起した。A はオーストリアに本拠を有しないから,A−M は,オーストリアの 裁判所の国際裁判管轄を根拠付けるためにブリュッセル#規則2条1項(被告住 所地の原則的裁判管轄)を援用することはできず,その5条3号の不法行為地の 特別管轄に依拠した。しかし,第1審のウィーン商事裁判所も抗告審のウィーン 高裁も,国際裁判管轄の欠缺を理由に訴えを却下した。すなわち,補償金請求権 は私的複製という許された行為に基づいており,それ故,不法行為とは関係がな いというのである。再抗告審のオーストリア最高裁は,不法行為地管轄に関する 問題を EU 司法裁判所に付託した。 【解 説】

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$ 純粋な財産損害と不法行為地の国際裁判管轄(EU 司法裁判所2016年6月16 日判決―Universal Music International Holding, Case C−12/15, ECLI : EU : C : 2016 : 44911,12 【判 旨】 !ブリュッセル#規則5条3号は,以下のように解釈される。基本手続のよう な事情の下において,他の連結点が欠けており,当該損害が専ら,直接原告の銀 行口座で現実化し,他の加盟国で生じた不法な行動の直接的な結果である財務上 の損失にあるときは,その損害が発生した加盟国の地は「損害をもたらす出来事 が発生した地」とは見做されえない。 "訴訟と取り組む裁判所は,ブリュッセル#規則の管轄審理に際して,手許に 存在するあらゆる情報を評価しなければならず,そのことには,被告によって申 し出られた異議があれば,それも含まれる。 【事実の概要】 UM 社は UM グループに属するレコード会社であり,UM International Ltd.は UM 社の親会社である。1998年に,UM International は,グループ内の会社がチュ コの B&M 社とその株主との間で,B&M 社の株式の70%を購入し,2003年に残 りの30%の株式も購入する旨の合意をし,その価格は当該売買契約の時点に決定 されるとされた。続いて,当事者は後者に係る株式オプション契約についての交 渉を行ったが,この交渉に際して UM グループ側を代理したのは,その法務部 門からの委任を受けたチェコのある法律事務所であった。株式オプション契約で は UM 社が問題の株式の買主とされ,1998年11月5日にチェコで UM 社,B&M 社とその株主との間でサインがなされた。しかし,上記の交渉に際して UM グ ループの法務部門によってなされた当初の契約書案に対する変更提案は,上記法 律事務所の担当弁護士 B 氏が作成に関与した最終的な契約書には完全には反映 11 本判決の詳細については,野村秀敏「純粋な財産損害と不法行為地の国際裁判管 轄」国際商事法務46巻11号1596頁以下(2018年)参照。

12 本判決の判例研究として,Mankowski, EuZW 2016, 585 ; Müller, NJW 2016, 2169 ; Bach, NZG 2016, 794 ; Huber/Geier−Thieme, IPRax 2018, 155. なお,本件

事案において問題となっているブリュッセル#規則5条1号・3号は,現在,ブ

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ことを否定した。 本判決は,直接原告の銀行口座に生じた財産損害は,それ自体として捉えれば, ブリュッセル!規則5条3号の「相当な連結点」とは言いえないとしつつ,その 実質的な理由として,原告は和解金額を送金する銀行口座を選択しうるから,任 意に管轄を操作しうることになる旨を指摘する(本判決理由第38節)。また,本 判決は,さらに進んで,積極的にどこが損害(結果)発生地と見られるべきかも 確定している(本判決理由第30節)。すなわち,1998年の当初の株式オプション 契約によって UM 社は同社が元々考えていたのよりも高額の売買代金債務を負 担することとなったのであるから,その債務負担を損害(不法行為の結果)と捉 えることもできたと思われ,実際,本判決もこれに言及している。しかし,本判 決はそのような結論をとらず,2005年の仲裁委員会の面前での和解による債務負 担を,これによって原告にとっての損害が確実に発生することとなったとの理由 で,損害(不法行為の結果)と捉えている(本判決理由第31節・第32節)。そし て,こう考えることが,ブリュッセル!規則が要求する管轄の予見可能性と法的 安定性の観点からも適切であるとする(本判決理由第33節)。 判旨第2点は,いわゆる請求原因事実と管轄原因事実の符合の問題に関して, 理由付けも含めて,EU 司法裁判所が Kolassa 事件判決(Judgment of 28 January 2015, Kolassa, C−375/13, EU : C : 2015 : 3713)において明らかにしていた立場を 確認したものである(本判決理由第41節・第45節と Klassa 事件判決第62節・第 64節を対比)。ただし,Kolassa 事件判決では,「あらゆる情報に照らして審理す ることは,……裁判所の自 " 由 " に " 委 " ね " ら " れ " て " い " る " (steht……frei, zu prüfen)」となっ ているのに対し,本判決では「裁判所は,……あらゆる情報を評価し " な " け " れ " ば " な " ら " ず " (hat……zu würdigen)」となっており,この差異が何を意味するかは不明 である。 # 選択的流通合意違反と不法行為地の国際裁判管轄(EU 司法裁判所2016年12 月21日判決―Concurrence SARL, Case C−618/15, ECLI : EU : C : 2016 : 97614,15

13 この判決の詳細については,野村秀敏「無記名債券の発行者に対する損害賠償請

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【判 旨】 ブリュッセル!規則5条3号は,流通網の対象である製品が様々な加盟国にお いて運用されているウェブサイト上で提供されているということに基づく,選択 的流通網の外での再販売の禁止違反を理由とする責任追及訴訟についての,この 規定による裁判所の管轄の根拠付けに関して,以下のように解釈される。損害が 発生した地と見做されるのは,この販売禁止を問題となっている訴えによって保 護し,その領域内で原告が損害を被ったと主張する加盟国の領域である。 【事実の概要】 C 社(本拠・フランス)は,パリの店舗とオンラインショップ concurrence fr. によって,一般消費者向けの家電製品の小売業を営んでいる。2012年3月16日, C 社は S 社(Samsung. 本拠・フランス)と,シリーズ物の製品(シリーズ名 「エリート」)からなる S 社の高額の製品のために,「エリート専門店」との名称 の下に選択的流通合意をした。この合意は問題の製品のインターネットによる販 売の禁止を定めていた。 その後,両者の間に争いが発生し,S 社は C 社を,ウェブサイトを通じてのエ リート製品の販売によって,選択的流通合意に違反したと非難した。C 社は自己 に対する関係でのこの合意条項の適法性を争い,とりわけ,これはすべての商人 に統一的に適用されておらず,そのうちの若干の者は,S 社からの反対を受ける ことなく,アマゾンの様々なウェブサイト上で,問題の製品を販売していると主 張した。2012年3月20日付けの書面で,S 社は,C 社に対して,2013年6月30日 をもっての取引関係の終了を通告した。 2012年12月3日,C 社は,仮の権利保護について管轄のあるパリ商事裁判所の 裁判官に S 社に対する申立てをし,選択的流通合意が C 社との関係では無効で あり,したがって,S 社はなお,C 社に対してこの合意の下に入る製品を引き渡 す義務を負っている旨の確認を求めた。さらに C 社は,同日,A 社(Amazon. 14 本判決の詳細については,野村秀敏「選択的流通合意違反と不法行為地の国際裁 判管轄」国際商事法務47巻7号906頁以下(2019年)参照。

15 本判決の判例研究として,Fabig, jurisPR−IWR 4/2017 Anm.3 ; Landbrecht, EuZW 2017, 100 ; Lutzi, IPRax 2017, 552. なお,本件事案において問題となっているブ リュッセル!規則5条3号は,現在,ブリュッセル!a 規則7条2号となっている が,それらの間に文言の変更はない。

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of 3 October 2013, Pinckney, C−170/12, EU : C : 2013 : 635, para. 4518)と Hejduk

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1. 複数の者がまとめて訴えられるときは,別々の手続において矛盾した裁 判がなされうることを回避するために,共通の弁論と裁判が命ぜられてい るように見える程に訴えの間に密接な関係がある限りで,被告の1が住所 を有する地の加盟国の裁判所 2. 担保請求の訴え〔フランス法等にある担保義務者に対する強制参加の申 立て――野村〕が問題であるとき又は参加の訴えが問題であるときは,本 案訴訟の裁判所。ただし,訴えが,この者について管轄権を有する裁判所 の管轄を妨げるためにのみ提起されたときは,この限りではない。 3. 本訴自体と同一の契約又は事実関係に基づく反訴が問題であるときは, 本訴自体が係属する裁判所 4. 契約又は契約に起因する請求が手続の対象であり,訴えが同一の被告に 対する不動産についての物権を原因とする訴えと併合されうるときは,そ の領域内に当該不動産が所在する加盟国の裁判所 " 第三者による任意参加とブリュッセル!a 規則8条2号(EU 司法裁判所2016 年1月21日判決―SOVAG, Case C−521/14, ECLI : EU : C : 2016 : 4120

【判 旨】 ブリュッセル!規則6条2号は以下のように解釈される。同号は,第三者が国 内法によって適法である方法によって本訴訟の被告に対して提起した,本訴訟と 密接な関連性のある,第三者が当該本訴訟の原告に支払った補償給付の償還に向 けられた請求を主張するための訴えを含む。ただし,その訴えが,被告について 管轄権を有する裁判所の管轄を妨げるためにのみ提起されたものではないことを 前提とする。 【事実の概要】 ドイツにおいて交通事故に遭った A は,加害車両がその保険に付されていた S

20 本判決の判例研究として,Philine, jurisPR−IWR 3/2016 Anm.2 ; Staudinger, DAR 2016, 81 ; Witwer, European Law Reporter 2016, 67. なお,本件事案において問題

となっているブリュッセル!規則4条・5条3号・6条2号・8条は,現在,ブ

リュッセル!a 規則6条・7条5号・8条2号・10条となっているが,それらの間 に内容的な変更はない。

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社に対して,ウーシマー県(フィンランド)裁判所に訴えを提起し,事故後に継 続的に労働能力を喪失している旨の確認等を求めた。当該交通事故は同時に事故 保険法による労働災害でもあったので,フィンランドに所在する保険会社である If 社は,A に,この事故を理由に補償金を支払った。A の S 社に対する訴えの係 属後,If 社も S 社を同一の裁判所に訴え,A は事故による障害の結果,継続的に 労働能力を喪失している旨と,S 社は,If 社が A に対して既に支払いまたは将来 支払うべき補償金全額を償還する義務を負う旨の確認を求めた。また,If 社は自 己の訴えと A の訴えの併合を求めた。第1審裁判所は,If 社の訴えを,フィン ランド裁判所の管轄権の欠缺を理由に却下したが,第2審裁判所は,ブリュッセ ル!規則6条2号の適用を認めて第1審の決定を取り消した。S 社からの上訴を 受けたフィンランド最高裁は,同号の解釈に関わる問題を EU 司法裁判所に付託 した。 【解 説】 本件の基本手続においてはブリュッセル!規則6条2号の適用の可否が問題と なっているが,同規則第2章第3節中の8条は,4条・5条5号を除いては,保 険事件の訴えの管轄については第3節の規定によるとしているから,保険金の支 払に起因する基本手続では6条2号は適用にならないのではないかが問題となる。 また,以前から,6条2号が第三者から既存の本訴訟の当事者の一方に対して提 起された訴訟にも適用になるかについては,争いがあるところであった。本判決 は,双方の問題点のいずれとの関係でも6条2号の適用を肯定したものである。 本判決は,まず,第2章第3節は弱者保護を目的としているが,基本手続では 弱者とはいえない2つの保険会社の間の訴訟が問題となっているから,それには 第2章第3節の規定は適用にならず,6条2項の問題となるとする(本判決理由 第29節∼第31節)。次に,6条2号のドイツ語やフランス語等の正文は第三者か らの積極的な参加を排除していないが(上記の条文訳は,ドイツ語,フランス語 の正文によっている),英語の正文では,その射程が第三者に対して提起された 訴えに限定されているように見える(「加盟国に居住する者は,……においても,

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続の回避という目的(本判決理由第38節)と,第三者からの任意の参加にも言及

しているブリュッセル条約(ブリュッセル!規則の前身)に関するジュナール報

告書中の説明(本判決理由第41節・第42節)を指摘して,6条2号は第三者から の任意の参加の場合にも適用になりうるとの結論に達する。

" 不当利得法に基づく反訴と反訴のための併合管轄(EU 司法裁判所2016年10 月12日判決―Kostanjevec, Case C−185/15, ECLI : EU : C : 2016 : 76321

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起されるのか抗弁の方法で提起されるのかにかかわりなく,その領域内で 寄託又は登録が申請若しくは受理された,又は EU の法行為若しくは国際 条約の規定に基づいて受理されたとみなされる加盟国の裁判所 第2段落 省 略 5. 省 略 " 不動産の贈与契約の取消しを求める訴え等と各種の特別管轄(EU 司法裁判 所2016年11月16日判決―Schmidt, Case C−417/15, ECLI : EU : C : 2016 : 88122

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る。ただし,合意が当該加盟国の法によって実体的に無効であるときは, この限りではない。当該加盟国の当該裁判所の管轄は,当事者が別段の合 意をしない限り,専属とする。管轄の合意は,以下のいずれかの方式で締 結されなければならない。 a) 書面又は書面による確認を伴った合意 b) 省 略 又は c) 国際取引においては,当該当事者が知っていた又は知らなければなら なかった商慣習であり,かつ,当該業務分野におけるこの種の契約の当 事者であれば一般に知っており,通常遵守するものに沿う方式 !" 省 略 # 管轄の合意及び信託の条項中のその趣旨の定めは,第15条,第19条若し くは第23条に反するとき,又はその管轄が排除される裁判所が第24条に基 づいて専属的な管轄権を有するときは,法的な効力を有しない。 $ 省 略 & 約款による管轄の合意と管轄裁判所の特定(EU 司法裁判所2016年7月7日 判決―Höszig, Case C−222/15, ECLI : EU : C : 2016 : 52523

【判 旨】 ブリュッセル%規則23条1項は以下のように解釈される。注文者の普通調達約 款――当事者間の契約が書かれている書面中で言及され,契約の締結に際して伝 達されたそれ――中で規律されており,管轄裁判所として,ある加盟国のある都 市の裁判所を指定している,基本手続において問題となっているような管轄条項 は,当事者の合意とそのような条項の内容的な正確性に関する当該規定の要求を 満たしている。

23 本判決の判例研究として,Backhaus, jurisPR−HaGesR 5/2017 Anm.4. なお,本

件事案において問題となっているブリュッセル%規則考慮事由第第11節・第14

節,23条1項 a は,現在,ブリュッセル%a 規則考慮事由第15節・第19節,25条1 項 a となっているが,それらの間に本件事案に影響を及ぼすような内容的な変更は ない。

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観的基準をあげていれば十分であり,この基準は,提訴を受けた裁判所が自らが 管轄権を有するかを確定しうる程に正確でなければならないが,各個別事件の特 有の事情を通じて具体化できればよいとした先例(Judgment of 9 November 2000, Coreck, C−387/98, EU : C : 2000 : 606, para. 15)を確認する(本判決理由第43節)。 そして,この解釈は,ブリュッセル"規則考慮事由第11節・第14節でも認められ ている,管轄の合意についての私的自治の承認ということにより正当化されると する(本判決理由第44節)。 その上で,本判決は,本件の合意管轄条項は,その裁判所が当事者の合意によっ て管轄権を有することとなる国を明示的にはあげていないが,その法が当事者に よって準拠法として指定されている加盟国の首都の裁判所があげられているから, この条項でもって,専属管轄がこの加盟国の権利保護のシステムの裁判所に委ね られるべきことになるのに疑問はないと結論付ける(本判決理由第46節)。加え て,本判決は,加盟国のある都市の「裁判所(複数)」を指示している合意管轄 条項は,黙示的にではあるが必然的に,その面前に訴えが提起されるべき裁判所 を具体的に特定するために,当該加盟国に妥当する管轄規定を指示することにな ると付言する(本判決理由第48節)。 % 目論見書中の合意管轄条項の有効性とその主観的範囲等(EU 司法裁判所 2016年4月20日判決―Profit Investment SIM, Case C−222/15, ECLI : EU : C :

2016 : 35724 【判 旨】 !ブリュッセル"規則23条は以下のように解釈される。 ――23条1項 a の書面要件は,債券の発行目論見書中に管轄条項を取り入れると きには,第1次市場において有価証券が発行される際に当事者が署名した契 約書において,この条項の引受けに言及されているか,明示的に目論見書が 援用されている場合にのみ,満たされている。

24 本判決の判例研究として,Mankowski, EWiR 2016, 547 ; Müller, EuZW 2016, 419. なお,本件事案において問題となっているブリュッセル"規則5条1項 a・6条1 号・23条1項 a 及び c は,現在,ブリュッセル"a 規則7条1項 a(#の前に既出) ・8条1号($の前に既出)・25条1項 a 及び c となっているが,それらの間に本 件事案に影響を及ぼすような内容的な変更はない。

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求める訴え――それらの結論は相互に独立している――の間における事実および 法律状態の差異を考慮する義務が課せられている。その際,無効および返還の訴 えの枠内において償還されるべき金額が,責任追及の訴えの枠内における損害の 評価に影響を与えることがありうるというだけの事情では,両手続の枠内におい てなされる裁判がブリュッセル#規則6条1号の意味において「矛盾」している とするためには不十分である(本判決理由第65節・第66節)。そして,本判決は, 判旨第3点のような結論を述べる。 第26条! 加盟国の裁判所は,既に本規則の他の規定によって管轄権を有し ない限り,被告がその面前で応訴するときに管轄権を有する。ただし,被 告が管轄権の欠缺を主張するために応訴するとき,又は他の裁判所が第24 条の規定に基づいて専属的な管轄権を有するときは,この限りではない。 " 省 略 $ 第三国の裁判所を管轄裁判所とする管轄の合意と応訴管轄(EU 司法裁判所 2016年3月17日判決―Taser International, Case C−175/15, ECLI : EU : C :

2016 : 17625 【判 旨】 !ブリュッセル#規則23条5項・24条は以下のように解釈される。原告が被告 の本拠の地の加盟国の裁判所に提訴した,契約上の義務の不履行に関する訴訟の 枠内において,この裁判所の管轄は,以下の場合,同規則から出て来うる。すな わち,それは,両当事者間で締結された契約が第三国の裁判所のための管轄条項 を含むにもかかわらず,管轄の欠缺を主張しない場合である。 "同規則24条は以下のように解釈される。同条は,第三国の裁判所のための管 轄条項を含む契約の当事者間の訴訟の枠内において,被告の本拠の地の加盟国の

25 本判決の判例研究として,Friesen, jurisPR−IWR 3/2016anm.1 ; Koechel, GPR 2016, 204 ; Müller, informaciones 2017, 97. なお,本件事案において問題となって いるブリュッセル#規則22条・23条1項及び5項・24条は,現在,ブリュッセル# a 規則24条・25条1項及び4項・26条1項となっているが,それらの間に本件事案 に影響を及ぼすような内容的な変更はない。

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なわち,現在妥当しているブリュッセル#a 規則39条は執行宣言の制度を廃止し, その41条1項2文は,他の加盟国の執行力を有する裁判は,別の加盟国において 当然に執行しうるとし,46条は,執行の拒絶事由があると主張する第三者は,そ の申立てにより執行を阻止しなければならないとしている(ブリュッセル#a 規 則46条)。すなわち,後者の規則の下では,加盟国の司法制度に対する相互の信 頼は益々強調されるべきことになったし,公序違反はやはり執行・承認の拒絶事 由の1つである(ブリュッセル#a 規則45条1項 a・46条)からである。 $ 原状回復の申立てがない場合と承認拒絶事由の有無(EU 司法裁判所2016年 7月7日判決―Lebek, Case C−70/15, ECLI : EU : C : 2016 : 52427

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第2段落 省 略

# ブリュッセル!規則と知的財産権に関するベネルクス条約の管轄規定の関係 (EU 司法裁判所2016年7月14日判決―Brite Strike Tecnologies, Case C−230/15,

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有するままにしておくことを認めるものであるとする。さらに,別の先例(Judg-ment of 11 August 1995, Roders and Others, C−367/93 to C−377/93, EU : C : 1995 : 261, paras. 25 and 40)を引用しつつ,"そのような違いが正当であるため には,それがベネルクスの規律が適切に機能するために不可欠でなければならな いともする(本判決理由第57節)。 上記!に関しては,EU での商標,意匠およびモデルの領域での域内市場の設 立は,EU 商標規則と EU 意匠規則30による統一的な制度と並んで若干の指令に よって行われており,ベネルクス各国の商標,意匠およびモデルの制度は(ブ リュッセル#規則よりも古い)統一的制度によって完全に置き換えられている旨 を指摘する。そして,後者は共通の制度的規律と手続的規律を含む完全に統一的 な規律に服するから,EU レベルでの規律よりも進んでいるとする。ベネルクス 条約4.6条は,そのような進んだ規律の1つであるのである(本判決理由第58節 ・第59節)。 次に,上記"に関しては,違いがあるのは,ベネルクス条約4.6条とブリュッ セル#規則22条4号であることを確認した上で,ベネルクス商標,意匠およびモ デルは進んだ規律に服していること,ベネルクス連合の裁判所の構造の特徴は非 集中(分散)とベネルクス裁判所に先行判決を求める制度にあること,この地域 連合は多言語の国家からなるという性格を有することを指摘する。そして,これ らの事情に鑑みると,上記4.6条の規律――被告の住所を目当てとしており,し たがって,ブリュッセル#規則24条によると管轄が寄託と登録が集中されている オランダの裁判所に集中されてしまうのとは異なって,ベネルクス商標,意匠, モデルに関する訴訟の管轄が事案に応じてオランダ,ベルギー,ルクセンブルグ の各裁判所に割り振られることになる――は,ベネルクス商標,意匠およびモデ ルに関する規律が適切に機能するために不可欠であるとする(本判決理由第61節 30 EU 全体に共通する商標と意匠である EU 商標と EU 意匠は,それぞれ EU 商標 規則(現行規則として,Regulation(EU)2017/1001 of the European Parliament and of the Council of 14 June 2017 on the European Union trade mark(Text with EEA relevance),OJ L 154, 16.6.2017, p. 1−99)と EU 意匠規則(Council Regulation(EC) No 6/2002 of 12 December 2001 on Community designs, OJ L 003, 05.01.2002, p. 1− 24)によって規律されている。前者の前身の1993年規則の詳細につき,飯田幸郷『欧 州共同体商標制度新講』(発明協会・1997年),後者の規則の詳細につき,青木博道 「欧州共同体意匠規則」知的財産政策学研究10号189頁以下(2006年)参照。

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・第63節)。

# その他の規則

EU 執行名義規則 第3条〔ヨーロッパ執行名義として証明される執行名義〕! 本規則は,争 いのない債権についての裁判,裁判上の和解及び公の証書について適用す る。 債権は,以下の場合に「争いがない」ものとみなされる。 a) 省 略 b) 債務者が,裁判所手続において,いかなる時点においても,執行名 義成立国の法の基準となる手続規定に従って,債務に対して異議を述べ なかった場合,又は, c) 省 略 " 省 略 $ 「争いがない」の概念の解釈基準(EU 司法裁判所2016年6月16日判決―Pe-bros Servizi, Case C−511/14, ECLI : EU : C : 2016 : 448)

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EU 督促手続規則

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た。そこで,同裁判所は,EU 送達規則8条1項の解釈に関わる問題点を EU 司 法裁判所に付託した。 【解 説】 EU 司法裁判所手続規則99条によると,同裁判所は,先行判決を求めて付託さ れた問題が既に判断された問題と一致し,当該問題に対する回答が先例から明確 に導かれうるものであるときは,報告者の提案により,法務官の意見聴取後,何 時でも,理由を付した決定によって裁判すると決定することができる。EU 司法 裁判所は,最初に本件事案をこの方式で処理する旨を宣言している(本決定理由 第44節)。 それはともあれ,本決定はまず,EU 送達規則による転達と送達の仕組みを説 明した後,転達機関と送達機関の役割は,当該文書の転達と送達を物理的に確保 し,その過程を簡素化するための措置を講ずる点に限定されていることを指摘す る。つまり,逆に言うと,たとえば,受取人がどのような言語を理解するか,文 書に適切な言語による翻訳が添付されていたか,受取人による文書の受取拒絶が 正当であるかといったような内容的な点については,判断しないことになってい る(本決定理由第55節)。むしろ,申立人と被告との間でその点についての意見 が相違するときに,そのような問題について判断するのは,専ら,転達加盟国に おいて提訴を受けた裁判所の役割である(本決定理由第56節)。そして,送達規 則8条1項所定の場合に定型書式を使用して受取人に受取拒絶権を教示する転達 機関の義務は,常に遵守されていなければならないから(本決定理由第69節), この遵守の有無を審査するのは,転達加盟国において提訴を受けた裁判所という ことになる(決定要旨第1項)。 第2に,本決定は,上記の教示義務の強行的性格から,送達を求められた受託 機関が定型書式による翻訳を添付しなかったときは,この不作為は EU 送達規則 の規定によって治癒されなければならないとして,先例(Judgment of 16 Septem-ber 2015, Alpha Bank Cyprus, C−519/13, EU : C : 2015 : 613, paras. 59 to 76)を 引用する。そして,この規定の遵守について配慮するのも,転達加盟国において 提訴を受けた裁判所の役割であるとする(本決定理由第71節・第72節。決定要旨 第2項)。

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そこから,それぞれの国の転達機関も転達加盟国において提訴を受けた裁判所も, いかなる方法にせよ,関係人によるそのような権利の行使を妨げてはならないと する(本決定理由第73節・第74節。決定要旨第3項)。 また第4として,本決定は,提訴を受けた裁判所は,送達手続の開始前に,文 書の翻訳が必要か否かについて,まず取り敢えずの判断をするが,翻訳をさせな いとのその判断は,受取人の受取拒絶権の有無やその行使に影響を及ぼすもので はないと指摘する。むしろ,提訴を受けた裁判所は,受取人が実際にそのような 権利を行使して初めて,法的に有効に,拒絶が正当であるか否かを判断しうる。 つまり,先の取り敢えずの判断は,この局面では拘束力を持たない(本決定理由 第75節・第76節)。その際,この裁判所は,受取りを拒絶した受取人が文書を理 解することができたか,翻訳が必要であったかを確認するために,関係する記録 中のあらゆる箇所を考慮に入れなければならない(本決定理由第77節。決定要旨 第4項)。

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との調和について疑問があると言った。差戻審であるバーリ控訴裁判所は,上記 規則3条1項の推定に関わる問題を EU 司法裁判所に付託した。 【解 説】 !事件におけるのと同様に,ここでも,EU 司法裁判所は,最初に決定の形式 で裁判することを宣言している(本決定理由第18節・第19節)。ともあれ,2002 年 EU 倒産手続規則3条1項1文は,主倒産手続の管轄は債務者の主たる利益の 中心のある加盟国の裁判所にある旨を,同2文は,会社と法人の場合は,それは 定款上の本拠の所在地と推定される旨を規定している。本決定は,倒産手続開始 申立前に会社が定款上の本拠を他の加盟国に移転していた場合,どのような事情 の下にこの推定が破られるかを明らかにしたものである。 本決定はまず,上記規則考慮事由第13項が,主たる利益の中心とは,債務者が 自己の利益を管理し,そのために第三者から認識可能な場所をいうとしているこ とを指摘する。つまり,先例(Judgment of 2 May 2006, Eurofood IFSC, C−34/04, EU : C : 2006 : 281, paras. 32 and 3333)を引用しつつ,それは客観的で第三者に

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活動をする場所やその財産を保有する場所といった要素に配慮すべきとされてい ることを指摘する(本決定理由第36節)。したがって,客観的で第三者により認 識可能な要素である会社の定款上の本拠のある加盟国とは別個の加盟国における 営業所の所在は,推定の力が削がれるか否かの判断に際して考慮されるべき事情 の1つであるが,それだけで十分であるわけではないとする(本決定理由第37節)。 重要なのは,あくまで,会社の管理とコントロール並びにその利益の管理の実際 の中心が,倒産手続開始申立ての時点でなお,移転前の加盟国にあったか否かと いうことである(本決定理由第40節)。 第8条〔第三者の物的な権利〕! 倒産手続開始時に他の加盟国の領域に所 在する,債務者の有体若しくは無体の目的物,動産若しくは不動産――特 定の目的物及び相互に関連した複数の不特定の目的物――を対象とする債 権者又は第三者の物的権利は,手続の開始によって影響を受けない。 " 第1項の意味における物的な権利とは,特に以下のものをいう。 a) 特に質権又は抵当権に基づいて,目的物を換価し又は換価させ,当該 目的物の売得金若しくは収益から満足を受ける権利 b) 特に債権質若しくは当該債権の担保のための譲渡に基づいて,債権 を取り立てる排他的権利 c) 権利者の意思に反して目的物を占有し若しくは使用している者に対し て,当該目的物の返還を求める権利 d) 目的物の果実を収受する物的な権利 # 公簿に登録され,かつ,各第三者に対して有効な,第1項の意味におけ る物的な権利を取得する権利は,物的な権利に等しいものとする。 $ 第1項は,第7条第2項 m による法的行為の無効,否認又は相対的無 効の妨げとならない。 % 法定の担保と目的物の所在地法による物的な権利(EU 司法裁判所2016年10 月26日判決―SCI Senior Home, Case C−195/15, ECLI : EU : C : 2016 : 80434

【判 旨】

2002年 EU 倒産手続規則は以下のように解釈される。基本手続において問題と

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参照

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