第一部 研究論文・実践報告・活動報告
初年次における
アカデミックスキル教育
─アウトプットを重視した実践報告─
─アウトプットを重視した実践報告─
同志社大学 経済学部 嘱託講師
笠井高人
同志社大学 経済学部 助教
迫田さやか
同志社大学 経済学部 助教
内木栄莉子
要約
2017年度の経済学部1年次生を対象にした導入教育に関する実践を報告する。筆者 らが担当する基礎演習において、学生がアカデミックスキルを十全に修得できること を目指して共通のアクティブラーニング型のカリキュラムを導入した。アカデミック スキルに関する調査と報告を学生自身が行うことで、主体的に考え、知識を深める機 会を提供した。また、報告内容を成果物としてまとめて、クラス内で共有し、初年次 で身につけておくべき基礎的なアカデミックスキルを解説するパンフレットを作成し た。
1.はじめに
本論文では、経済学部基礎演習にて筆者らが担当したクラス1)で行ったアクティブ ラーニング型のアカデミックスキル教育カリキュラムについて実践報告を行う。基礎 演習は大学入学後の春学期に実施されるゼミ形式の授業である。また、1年次生全員 の登録指定科目であるが、卒業に必要な必修科目ではなく、学生IDに応じて自動的に クラスを割り振られる。したがって、各クラスで本学部所属学生の平均的な学習意欲・
学力・学習達成水準を推測することが可能である。本科目は、新入生に対する初年次 教育を行うことを目標としているが、その内容については各教員に一任されているた め、教員自身の専門分野についての教示や課外活動、「経済学部ではどの様な学びを するだろうか」など経済学教育の導入機会として活用されている場合もある。
しかし、筆者らがこれまで行ってきた基礎演習教育について以下2点で反省を得た。
一つ目は、他の科目等で3・4年次のレポートを筆者らが添削する場面に遭った際に、
本来であれば学年が上がると共に定着するはずであるアカデミックスキルが十分に獲 得できていない学生と出会ったことである。もう1点は、筆者らはこれまで、大学で の能動的な学びや人的ネットワークの構築などについて学生らがスムーズなスタート を切れるように支援したつもりだが、学習スキル・習慣が定着しているとは言い難かっ た。
新聞報道2)によれば、入試の形態や入学試験の成績と卒業時のGPAには相関がない 一方で、1年終了時のGPAと卒業時のGPAには高い正の相関がある上に、1年終了時 に成績上位の学生のほぼ100%が良い成績で卒業している。また、本調査を行った同学 教育研究開発センター HPにおいて「入学試験においてボーダーライン上で合格した 学生でも、1年次をうまく滑りだせれば、最終的に優秀な成績で卒業できることがデー タによって示され、初年度の導入教育の重要性が改めて示されました。」とも報告さ れている。高校卒業から大学に入学するまでの移行段階で、学習習慣が充分に身につ いていない、学習目的が明確ではない、学習意欲が低いといった諸問題は、大学の偏 差値にかかわらず確認されることを濱名(2008)が指摘したように、学習スキルが定 着していないという筆者らが確認した問題は1年次の学習習慣の未整備が引き起こし てしまったのであろう。高校から大学への移行を支援する初年次教育をどの様に位置 づけるかという取り組みが高大接続改革においてなされている中で、アカデミックス キルの定着は早急に対応しなければならない問題である。
森・山田(2009)では、国立教育政策研究所(2006)『大学における初年次教育調 査』を用いて、回収されたアンケートの95%以上の学部が初年次教育を「実施している」
と答えている中、初年次教育の内容について評価を実施していると回答した学部は約 32%に留まっていることや、その評価は学生アンケートなど学生の主観的な評価によ るものであることを指摘している。その中で、東京理科大学教育研究開発センターの 取り組みは初年時の成績と卒業時のGPAとの関連について分析し、初年次教育の重要 性について定量的な評価を行い、既存の様に学生の視点に依る評価とは異なる評価軸 を創り出したと言えよう3)。また、2016年学校教育法施行規則以降、初年次教育にお いては特に大学で学ぶための方法を涵養することに重きが置かれるようになった(濱 名 2017)。先進諸国において大学での学びの方法を涵養する、初年次教育の授業デザ インには多くの研究がなされている一方で、我が国における初年次教育は、文部科学 省中央教育審議会大学分科制度・教育部会が2008年度末に答申した『学士課程教育の 構築に向けて』をもって本格的に推進され始めたばかりであり、十分な研究が蓄積し
第一部 研究論文・実践報告・活動報告 ているとは言えない。
以上より、筆者らは、入学直後より大学での学びに必要とされる基礎的なスキルす なわちアカデミックスキルを指導することに至った。もっとも、図1の様に、講義形 式でアカデミックスキルを伝達しても定着率は十分でないと予測し、且つ、佐藤(1999)
を契機として、他者との相互作用的な活動の中で学習が実現されていく協調学習の実 践が強く謳われていることに鑑み、「グループ討論をする」「自ら体験する」「人に教 える」ことからなるアクティブラーニング型のアカデミックスキル教育法を実践する こととした。
グループでの活動ではメンバーとの協力関 係をどの様に作るか、対人コミュニケーショ ンの涵養、各人のグループに対する責任の確 立など、学習過程に学生個人の社会性が反映 される(茂呂 2005)。そのため、従来のマス講 義式とは異なる、クラス内での配慮や役割が 教員に求められる。それらを踏まえて、初年 次協調学習のデザイン構築としてのアクティ ブラーニング型アカデミックスキル教育カリ キュラムについて、その手法を詳細に記述し、
効果を見ることが本稿の目的である。
2.実践内容
2.1 基礎演習の目的と概要
基礎演習とは、経済学部の導入科目として1年次の春学期に開講されている2単位、
全15回のゼミ形式の科目である。本演習は初年次教育として位置付けられており、シ ラバスに記載の通り、「情報の収集や整理,議論の仕方や,論理的に考え伝達するた めの手法など,大学で学ぶために必要とされる基本的なスキルを身につけること」を 目標としている。具体的な授業の進め方は担当教員の裁量に委ねられており、基本的 なITスキルやテキストの輪読、レポート作成、プレゼンテーション、ディベート、外 部講師によるノートテイキングやロジカルシンキング、キャリア教育といったテーマ での講義など様々な内容の演習が展開されている。
なお、基礎演習は、卒業に必要な必修科目ではないが、1年次生全員の登録指定科 図1 ラーニング・ピラミッド
出典:Letrud 2012より筆者作成
目であり、受講クラスは学生IDによって自動的に決定される。その結果、クラス内に は、講義の目的やシラバスへの理解度や講義に対するモチベーションが異なる受講生 が混在しているため、教員はこの点を考慮した授業運営を行う必要がある。筆者らは、
以下で述べるアカデミックスキルに関する取り組みへと進む前に、本講義を通じて習 得できるスキルや、1年次秋学期以降の大学での学びとの関連について、クラス内で 十分に共有をはかることによって、受講生それぞれのモチベーションを高め、グルー プでの活動を円滑に進めることができるよう注意を払った。
さらに、基礎演習とその担当教員には、基礎的なスキルの習得という学修上の目的 の達成にくわえて、1クラス30名前後と高校と同規模のクラスということもあり、高 校までのホームルームやクラス担任のような役割も期待されている。親元を離れ一人 暮らしを始める学生をはじめ、環境が大きく変化することによって精神的に不安定に なりやすい大学入学直後の学生にとって、基礎演習は、同じクラスの受講生や教員と の交流を通じて人的ネットワークを構築する第一歩になると考えられる。そこで、授 業内および授業時間外学修において、受講生同士また受講生と教員相互のコミュニ ケーションが促進されるような工夫を取り入れた。具体的には、①グループ学習の積 極的な導入、②提出物の添削および再提出、③欠席が多い学生に対する追加課題を通 じた積極的な対話などである。
2.2 アカデミックスキルに関する講義計画と内容
筆者らが担当した2017年度の基礎演習において、アカデミックスキルに関する知識 の習得および活用の一環として、学生がアカデミックスキルの基礎知識をまとめたパ ンフレットを作成するというカリキュラムを6クラス共通の課題として取り入れた。
具体的な授業の進め方は表1の通りであり、全15回中、第5・7・9・11回のみが共 通である。
表1 授業概要およびスケジュール
授業回数 授業内容 授業時間外学修
第5回
「アカデミックスキル」パンフレット作成
・概要説明、グループ分け
・参考文献の紹介
原稿(第1稿)作成
・文献調査、内容の検討
第7回 原稿(第1稿)提出 教員による添削後、第8回に返却。修正 後、再提出
第9回
「アカデミックスキル」発表(約10分)
・受講生同士での相互評価
・教員によるコメント、補足説明
教員、受講生のコメントに基づき修正。最 終稿提出までに、必要に応じて教員による 添削を返却。
第11回 原稿(最終稿)提出
第一部 研究論文・実践報告・活動報告 まず、第5回では30〜35名からなる1クラスを3名ずつのグループに分け、表2に
記載の11テーマを各グループに割り当てた。ここで、1グループ3名としたのは、パ ンフレット作成に必要な作業量を考慮した場合、フリーライダーを防ぎ、各人がグルー プ活動に能動的に参加できる人数と判断したためである。次に、教員から、アカデミッ クスキルのパンフレット作成の目的および作成過程で意識しながら取り組むことを望 む点について説明を行った。その後、アカデミックスキルやアカデミック・ライティ ングに関する書籍および各大学が作成してウェブ上で公開している資料4)を参考文献 として紹介し、作成要領について説明を行った。作成要領には、wordを用いて原稿を 作成することやA4用紙2ページでまとめること、グループ内で分担して作成した場 合、担当箇所を明記することなどが含まれる。原稿を作成する上で特に強調したのが、
引用や剽窃に注意することと、ウェブページ以外の参考文献を挙げることである。参 考文献は、上述のウェブ上で公開されている資料にくわえて書籍を1人1冊以上挙げ ることを提出の条件とした。
表2 「アカデミックスキル」パンフレット目次
レポート編 発表編
1 レポートと作文の違い 5 図表の種類・入れ方 9 プレゼンの仕方 2 レポートの構成 6 適切な文体 10 レジュメの作り方 3 資料の集め方 7 参考文献の書き方 11 スライドの作り方 4 引用と剽窃 8 提出前の確認事項
以上の説明を踏まえて、パンフレット作成に取り組み、2週間後の授業時(第7回)
に提出することを課題とした。提出された課題は、教員が添削後、返却し、第9回の 発表までに修正、改善するよう求めた。添削の際には、①執筆要領に則って作成され ているか、②剽窃はないか、参考文献の書き方や引用の仕方が適切か、③内容に誤り がないか、④必要なポイントが含まれているか、を中心に確認した。
第9回では作成した原稿を受講生全員に配布し、グループごとに担当箇所について 約10分間で報告後、受講生同士で相互評価を行い、授業内でその内容について発表し た。相互評価の際に、担当教員は、原稿の内容やレイアウト、プレゼンテーションの 内容や分かりやすさといった観点から評価するよう促した。特に、原稿の内容に対す るコメントでは、文体や参考文献の書き方等、アカデミックスキルの各テーマの重要 なポイントを意識した指摘や改善点が多く出された。担当教員は、各グループの原稿 や発表に対するコメントにくわえて、受講生の理解度を確認できるような内容の発問 を行った。さらに、アカデミックスキルの知識習得のために、特に強調しておきたい 点や報告だけでは不十分な点について、適宜、補足しながら、授業を進めた。
授業外学修として各グループは、授業時に出されたコメントに対応するとともに、
他のグループの長所を取り入れながら、原稿の修正、改善を行った。さらに、各グルー プの意欲に応じて、教員による添削、再提出を繰り返し行ったグループもあった。第 11回目で提出された最終稿を製本し、後日受講生に配布した。図2は、完成したパン フレットの一部である5)。
図2 アカデミックスキル・パンフレット完成稿
3.成果
本カリキュラムでは学生がパンフレットを作成するため、それ自身が具体的な成果 物として完成する。成果物は、完成までのモチベーションにくわえ、完成時の達成感 という双方において心理的な効果を生んだ。
次に、本カリキュラムは大学の学びに対する適切な態度を育むことに寄与した。パ ンフレットの作成に際し、教員からテーマのみが与えられたため、どのような情報を 掲載するべきか、またどのような構図にすれば見やすいのかといったように、確固と した外的基準が存在しない状況から、学生が自ら基準を設定して作業を進め、教員に よる添削に助けられながら修正を重ねる作業は、中学・高校段階では必ずしも十分に 経験していない学生が多い6)。特定の解を求めるのではなく、目標に向けて漸進的改
第一部 研究論文・実践報告・活動報告 善を繰り返すこのような作業は、大学と高校との学びの違いを認識してスムーズに前
者から後者への移行を企図する本科目の性格に適合する。
また、多くの時間を割いてアカデミックスキルを教授することで、学生がアカデミッ クスキルを学ぶ必要性について理解しやすくなる。多くの新入生にとって「レポート と作文の違いはどのようなものなのか」や「なぜ剽窃は許されないのか」ということ を明示的に言語化することは容易ではない。実際に、剽窃がなぜいけないのかという ことを十分に理解していないために、レポート作成においてそれを行ってしまう学生 はいる。しかしながら、上記の問いを考えながらアカデミックスキルに関して学修す ることで、大学で学ぶ学生としての基本的な態度を涵養でき、新しい知を生産する場 所という大学の性質を伝える絶好の機会となる。このように低セメスター学生に本カ リキュラムを提供することの意義は大きい。
さらに、グループでの作業によって学修を進めることで、大学生活をスムーズにス タートするための人的ネットワークを形成するのに役立つ。大教室でのマス講義と ホームルームで展開される高校の授業とのギャップをうまく処理できず、友人作りに 積極的になれなかった新入生が、大教室にいる大勢の中に埋没することのみを続けて しまうと、大学に通う意義を見失いかねない7)。大規模な本学の現状に鑑みると、知 識の伝達を効率的に行える大講義を補完するものとして、少人数のグループワークは 知識だけでなく大学生活の定着に効果的である。
学生の発表には、教員からだけではなく発表者以外の受講生にも質問や評価の機会 を与えた。教員が学生の報告に関して、パワーポイントの作り方がきれいであること や発表の構成などの良い点を授業内、つまり他の学生の前で褒めると、それ以後に発 表するグループは先のグループが高評価を得られた点を踏襲する傾向が強かった。筆 者らが担当したどのクラスにおいても、教員の褒めるという行為が学生のポジティブ な模倣行為を誘導した。授業の感想でも「褒められたことがうれしかった」という回 答があり、教員がクラス内で褒めることは、道具的なモチベーションを通して、学生 が学びに前向きになるきっかけとなりうる8)。また、褒めた点については模倣の効果 もあり、当該学生だけでなく、クラス内のアカデミックスキルの習得が著しく高かっ た。具体的に何が良かったのかを示すと、学生は適切に反応できる。
他方、学生同士の相互評価は、受講生のモチベーションを大いに刺激した。学生に とって机を並べる仲間からの評価も重要であるようだ。学生の相互評価は、発表の誤 りを単純に指摘するだけでなく、どのようにすれば成果物がより良いものになるのか を聴衆側の学生に考えさせる機会を提供する。また、発表の至らない点を指摘するに
は、発言に際して慎慮を伴って発表者に敬意を払う必要があることを知覚する機会も 提供できる。
4.おわりに
本稿では初年次生がアカデミックスキルを修得するためのアクティブラーニング型 のアカデミックスキル教育カリキュラムを紹介した。6クラス共通の取り組みによっ て明らかになった5つの課題を示して本稿のまとめとする。
1つ目は、学生が担当したテーマによって獲得する知識が著しく偏ってしまうこと である。本カリキュラムの学修成果とりわけ知識の定着度合を測るために、クラスで 作成したパンフレットを参照しながら、任意テーマの期末レポートを課したが、残念 なことに、提出されたレポートからは対象とした範囲の知識が確実に定着しているこ とを十全には確認できなかった。パンフレット作成に際して、グループごとに異なる テーマを与えたため、自身が担当したテーマに関しては熱心に9)学習に取り組んで知 識を定着できていた一方で、自身が担当していない項目に関しては、知識の獲得がや や不十分であった。基礎的なアカデミックスキルを対象としているため、一通りの知 識を獲得することが必要である。知識の獲得のためには、学生による発表の後に教員 が褒めて模倣行動を誘発したり、何が重要であるのかを示したりすることで、ある程 度はカバーできるであろうが、むしろ知識の偏在はアウトプットの重要性を改めて示 したと言える。
2つ目には、受講生が不公平感や優越感を持ったことである。経済学部1年次の30 クラス中6クラスのみで本カリキュラムを実施したために、同じ学部の学年全体でみ れば授業課題の負担が大きい10)という不公平感を学生が抱いていた。逆に、「他のク ラスでは教えてもらっていないことを学べた」という優越感ともいえる感情を抱いた 学生もいた。前者に関しては、学期末アンケートにおける授業満足度にそれほど不満 が出ていないため、不公平感はあるものの自身の能力が向上すると感じたことで補償 されているようである。むしろ、注目に値するのは後者であり、アカデミックスキル は学生生活に必須であると授業では伝えつつも、それを学んでいない学生がいること は、それを習得していなくても大学での学びに差し支えがないという誤った認識を生 みかねない。そのような学生はそれこそ無意味な作業をさせられたという印象を残す だけになってしまうだろう。
3つ目に、現段階では知識の定着を十分に確認・測定できないことである。学んだ
第一部 研究論文・実践報告・活動報告 アカデミックスキルが真に活用されるのは、本科目よりもむしろ次セメスター以降の
学修過程とりわけレポート執筆やゼミ活動における調査報告であろう。本カリキュラ ムの評価には継続的な調査が必要である11)。結果次第では今よりもゆっくりとした1 年間のカリキュラムを作成し、学生の反応を見守りながら学修機会を提供するのもよ い。また、1度では知識が十分には定着できないという前提に立ち、繰り返して類似 のカリキュラムを提供することも必要かもしれない。
4つ目に、教室内で議論の素地を整える必要が明らかになったことである。発表に 対する批判はあくまで発表内容や方法に向けられたものであり、決して発表者の人格 や準備に対する努力を否定するものではないということを学生が十全に理解できるよ う事前に教員が適切に解説する必要がある。研究者である教員にとっては、そのよう な態度は討議の前提いわばプラットフォームであったとしても、議論することに慣れ 親しんでいない低年次生にとってはそうではない。相手の主張の間伱を突くことが有 効なディベートとは目的を異にするのを強調し、彼らがしっかりと討議のステップを 踏めるようにサポートすることが必須であろう。
5つ目に、レポートの書き方を指南しつつも、アカデミック・ライティングについ ては時間の制約のため、あまり十分に教授できなかったことである。パラグラフライ ティングに関する項目を加えることで本カリキュラムは改善される。
アカデミックスキルはあらゆる学生が習得すべきものであるにもかかわらず、各大 学や各学部にとってベストな教授法が確立しているとは言えない。しかしながら、多 くの教員にとって自らが系統的には学んだことのない「学び方」といういわば自身の 研究プロセスをメタ認知した知識を、短期間で体系的に教授することが必要とされて いる。本カリキュラムによって、学生の主体的な学びを促すことの難しさと共に、高 校から大学への接続をも内包する課題が明らかになった。
注
1) 一人2クラス、計6クラスで実施した。
2) 2016年6月3日毎日新聞「大学成績 1年で決まる? 卒業時と一致 東京理科大調 査」
3) 東京理科大学教育開発センター GPAを用いた入学後の学力追跡調査の実施(https://
oae.tus.ac.jp/fd/constitution/education-subcommittee/admission,2018年1月14日取 得).
4) 例えば、以下のものを紹介した。関西大学教育推進部『レポートの書き方ガイド入門 編・基礎編・発展編』. 『アカデミック・ライティング入門』編集委員会『アカデミック・ラ イティング入門──レポートの書き方』公立大学法人大阪府立大学. 堀一成・坂尻彰宏, 2016,『阪大生のためのアカデミック・ライティング入門 第3版』大阪大学全学教育推 進機構. 入江浩司・高山知明, 2014, 『レポート作成の手引き──レポートの基本的形式 に関するガイド』金沢大学共通教育機構.
5) 迫 田 さ や か の ホ ー ム ペ ー ジ(https://sites.google.com/site/sayakasakoda/home/
Freshman-Seminar)にて、2018年度に担当した基礎演習で作成したアカデミックスキ ルのパンフレットを公表している。
6) 中学・高校段階でもいわゆる「しらべ学習」はあるが、あくまで調べて発表することで、
一つの物事に関しても多様な考えがあるのを認識することに重きを置いているため、
情報が正確かどうかを根拠に取捨選択したり、オリジナリティーを求めたりすること は稀である。
7) 新入生が大学に来る意義を明示的に認識することは決して簡単ではないため、初期の 段階では友人の存在が授業への参加や大学生活のリズムづくりに役立つものと思われ る。
8) とりわけ、いわゆる受験疲れをして目標を失いつつある新入生にとって、内発的モチ ベーションを形成することは困難であると予想できるため、低セメスターにおいては 道具的なモチベーションは有効であろう。
9) 授業後のアンケートに「レポートの文章表現の仕方を班で徹底的に調べて発表できた」
と答えている。
10) しかし授業評価アンケートによると授業外学習時間は平均して0〜30分である。
11) 西村(2015)も初年次教育の成果を単独で評価することは適切でないとしている。
文献
濱名篤, 2008, 「初年次教育の必要性と可能性」大学と学生, 54:6-15.
国立教育政策研究所, 2006, 『大学における初年次教育調査』.
濱名篤, 2017, 「3つのポリシーの中でどのように初年次教育を実際に位置づけるのか─カ リキュラム・ポリシーとの関係を考える─」初年次教育学会課題研究シンポジウム『3 つのポリシーと初年次教育』.
Letrud, Kåre, 2012, “A Rebuttal of NTL Instituteʼs Learning Pyramid,” Education, 133
第一部 研究論文・実践報告・活動報告
(1):117-124.
毎日新聞「大学成績 1年で決まる? 卒業時と一致 東京理科大調査」2016年6月3日.
森朋子・山田剛史, 2009,「<実践報告>初年次教育における協調学習が及ぼす効果とそのプ ロセス−学生同士の<足場づくり>を中心に」『京都大学高等教育研究』15:37-46.
茂呂雄二, 2005,「協同学習」中城和光・森敏昭編,『認知心理学キーワード』有斐閣.
西村靖史, 2015,「大学における初年次教育について」『別府大学紀要』56:75-86.
佐藤学, 1999,『学びの快楽──ダイアローグへ』世織書房.
【執筆担当:迫田(1)、内木(2)、笠井(3〜4)】