九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
配座制御に基盤をおく複素環系不斉制御分子の創製 研究
鬼村, 謙二郎
九州大学総合理工学研究科分子工学専攻
https://doi.org/10.11501/3065553
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
配座制御に基盤をおく複素環系 不斉制御分子の創製研究
鬼村謙二郎
目 次
第1章
緒論
第2章 イミダゾリジンおよびオキサゾリジン不斉制御子の合成と配座解析
9
第1節 序第2節 不斉制御子の設計思想と合成
ハHu qぺυ ハud 噌lム ハu.u 1ょ っμ qυ
』住 第3節 結語
第4節 実験 参考文献
第3章 キラルアクリルアミドとニトリルオキシドおよびニトロナートとの 50 不斉双極性環状付加反応
第1節 序
50
第2節 キラルイミダゾリジンの不飽和アミドを用いる不斉ニトリルオ
キシド環状付加反応
57
第3節 キラルオキサゾリジンの不飽和アミドを用いる不斉ニトリルオ
キシド環状付加反応
61
第4節 キラルオキサゾリジンの不飽和アミドとニトロナートとの環状
付加反応
75
第5節 結語
85
第6節 実験
88
参考文献
113
第4章 オキサゾリジン不飽和アミドあるいはオキサゾリジンエノラートを
用いる不斉アルキル化反応
114
第l節 序 114
第2節 キュプラートとの不斉共役付加反応 122
第3節 キラルオキサゾリジンアミドのエノラートのアルキル化反応 132
第4節 結語
137
第5節 実験 参考文献
第5章 総括
139 159
161
第1章 緒論
最も優れた不斉反応を日頃の営みの在り来りの行為として行っているのは生体であ り、 そこでは、 有効な不斉反応場を構築できる優れたキラル触媒である酵素の働きに よって、 エナンチオ区別・ジアステレオ区別・ レギオ区別・官能基区別反応などの精 密反応制御が行われている。 しかし、 人間の手になる有機合成化学では、 酵素のよう な巨大分子を自由に操ることは現状では極めて困難であり、 実際には、 はるかに小さ な分子による分子認識能を反応制御の鍵として利用する手法が採り入れられている
近年の有機合成化学の分野では、 分子内に多数の宮能基とキラル中心が含まれる複 雑な構造を有する天然物化合物の全合成研究が盛んに研究されている。 そのようなキ ラル化合物を合成する際、 それぞれの不斉中心の相対立体配置の制御と、 光学活性体 を得るための絶対立体配置の制御を同時に行うことが要求される。 従って、 特定の官 能基を決められた相対配置に配する目的で利用される反応が、 高エナンチオ選択的 (あるいは高ジアステレオ選択的)であることが必要となる場合が多く、 立体選択的 合成反応のそれぞれに対して効率的な不斉制御を達成する手段が必要であると言って も過言ではない。
効率的な不斉制御の目的のために、 立体障害、 静電反発、 分子問・分子内相互作用 などを利用して、 有効な不斉反応場を織築する分子設計の概念が提案され、 現在まで、
品選択的不斉合成反応を達成するための多くの "不斉制御子" が開発されている。 研 究の歴史の初期においては、 分子運動を規制できる特徴ある情造をもった配座規制型 制御子の例が研究対象となり、 次第に、 ルイス酸試薬あるいは金属補助剤などの助け を借りて、 反応の遷移状態における反応部位と制御部位との相対的位置関係を固定し、
高い不斉誘導を行おうとするタイプに移行しつつある。
これまでに報告されてきた不斉制御子の中でも、 メンチルアルコールおよび誘導体 の系、 カンファーあるいはカンフアースルホン酸ならびに誘導体の系、 オキサゾリジ ノン系の不斉制御子は広範な不斉反応に有効に適用し得る大きな特長を有しており、
その意味でこれら一群の化合物は、 現在最も有能な不斉制御子の一つであると言える。
アクリル酸のメンチルエステルを親ジエンとして用いたDiels-Alder反応は、 ル イス酸触媒下で行うことにより著しいジアステレオ面選択性の向上が認められている
CScheme
1-1)01)
これは、 立体的に嵩高いルイス酸のエステルカノレボ‘ニル基への配位Sauer
(1966)
Aux*= �O
,-,,"",1--、'2 _1ム
_____COAux*
-
--// j__ /1
�吋COAux* + が----....Júl T
endo
adductexo
adduct Cat.%de
ofendo
adductnone 8
BF3・OEt2 88
Corey
(1975)
BnO
な +
AICI3
COAux*
>99%de
Scheme 1-1.
により、 α,β- 不飽和エステル基の S-ClS配座異性体よりもs-trans配座異性体が 有利となり、 不飽和反応部位のジアステレオ面の内2位イソプロピル基の反対側の 面からシクロぺンタジエン が接近して反応するためである。 さらに、8位に嵩扇いフェ ニル基を導入した8-フェニルメントールを不斉子として用いた反応では、 完全なジ アステレオ面選択性が達成されているO 2) カンファー3) あるいは10- カンフアース ルホン酸誘導体1) から誘導された不飽和エステルを用いたDiels-Alder反応でも、
ルイス酸存在下で高い不斉収率が観察されているCScheme 1-2)。
これらの反応例では、1) キラル反応剤は、 本来剛直なキラル構造をもっ分子と反 応部位をエステル基のような “柔らかな連結基" で結合させた全体構造をもっ。 従っ
て、 連結基周りでの分子運動を如何に抑制するか が、 高選択的不斉制御のポイントと なる。 そこで、2)ルイス酸の配位は、 エステルカルポニル酸素を見かけ上嵩高くす るため、 ジアステレオマーの関係にある2つの遷移状態の区別を容易にする。 さら に、3)ルイス酸の不飽和カルポニル酸への配位によって不飽和反応部位の電子密度 が減少し、 ジエンに対する反応性を向上させる役割をも担っている。 従って、 比較的 低温での不斉反応が行えることとなり、 効率的不斉誘導の達成には有利な条件となる。
の/臼
Poll
(1984)
。
Aux. = 〆
,
�γOCH2Phルグ�戸O Oppolzer
(1983, 1984)
TiCI4
ノグよ / + nl フ
が---、イ �、-L-COAux合 COAux.
endo
adductexo
adduct88%de
endo/exo
=92/8
O
TIC12町
内入y' +b
C山Aux合= 。
endo
adductexo
adductR = i-Pr
endo/exo
=97/3 endo; 88%de
R = cyclohexyl
endo/exo
=96/4 endo; 93%de
Scheme 1-2.
一方、 不斉制御子部位と反応部位との閣の連結基としてアミド基を選択すると、 ま ず、 アミド結合が平面燐造として安定化を受けること、 s-trans配座では立体的に窒 素上の置換基との間で大きな立体反発を生じるため、 S-ClS配座の反応への寄与が増
大すると考えてよい。 このようなアミド連結基の特徴を巧みに利用した不斉制御子と しては、 Oppolzerによって開発されたカンファーサルタム5 ) やEvansによるオキ サゾリジノン不斉制御子6) などが有名である。 それらのα.β一不飽和アミド誘導体 を用いたルイス酸存在下でのDiels-Alder反応では高いジアステレオ選択性がを達 成されている。
カンファーサルタムの不飽和アミドでは、 ルイス酸非存在下においては、 アミドカ ルボニル酸素とスルホニル酸素との静電反発により、 アミド基は anti配座として反 応に関与する。 一方、 ルイス酸が存在すると、 そのアミドカルポニル酸素とスルホニ ル酸素への配位によってアミド基は syn配座に固定される。 従って、 シクロぺンジ
-3-
R �
R VY Y
M = Lewis acid
R ゾYNY。 「\
Figure 1・1.
エンとの反応は、 ルイス酸触媒下と非触媒下の反応では、 反対のジアステレオ面を選 択することになる。 触媒下の反応では、 ジエン反応剤は、 立体的に高度に遮蔽された
Sl面を避けて、 オレフィンのre面を選択した付加体が高選択的に生成する
(Figure 1-1)。 ルイス酸による配座固定の原理は、 オキサゾリジノン誘導体について も同じことが言え、 ルイス酸を用いたDiels-Alder反応において高いジアステレオ 選択性を得たと報告されている。
一方、 金属工ノラートは、 炭素-炭素結合生成反応における中心的な求核部!として、
有機合成化学上重要な活性種である。 特に、 エノラートを用いたアルキル化反応ある いはアルドール反応は、 複雑な天然化合物合成の鍵反応として重要であるが故に、 そ
の不斉反応への展開研究も熱心に行われている。 不斉反応例は少ないものの、 エノラ ートをドナーとして用いる.M.ichael付加反応の不斉反応への展開は、 今後の大きな 発展が望まれる炭素-炭素結合形成反応として興味がもたれる。
キラルな金属工ノラートの分子内にヘテロ官能基が存在する場合、 エノラート金属 へのこのヘテロ原子の分子内配位が生じて反応部位まわりに効率的な不斉反応場を構 築するのに都合が良いことは、 前述のキラルアクセプターの場合と 同様である。 むし ろ、 金属工ノラートが構築する分子内配位は極めて強力であるため、 Oppolzerのカ ンファーサルタムやEvansのオキサゾリジノン不斉制御子の合成化学的有用性は、
-4-
アミド誘導体を金属エノラートに導いた後、 そのアルキル化、 アシル化、 アルドール 反応を通じて、 高選択的な不斉誘導が行える点にある。
例えば、 キラルなエノラートを用いたアルキル化反応の例としてオキサゾリジノン 不斉制御子を用いた反応例を示す(Scheme
1-3)
0 7) キラルサルタムのアミドから発 生させた種々に金属工ノラートを用いた不斉アルキル化、 アシル化、 アルドール反応 における優れたジアステレオ選択性は、 驚樗に値する(Scheme1-4)
08)ミ
「 LDAR L P
M
吋 γ Þ: M介Y
。
R2
=
i-Pr. PhCH2 Z-enolateScheme 1-3
Oppolzer
(1989,1990)
NHMDS Me2CH(CH2bl HMPA
戸jム__ 1)
8U280Tf, Et(i-Pr)2NqrくMe一o o
Scheme 1-4.
-5-
\〔
N
Y o h R \ ~ Ho 肌
Me Me
Aux*N.. ./人ノ... A
、l("
..."". ..."". -Meo 97% de
AUX.N
yγ
Phsingle
一方、5員環状複素環の形成反応として最も重要な1.
3-双極性環状付加反応では、
6員環状化合物を構築するDiels-A l der反応と同様に、 反応の遷移状態の立体化
学
が反応する不飽和系閣のフロンティア軌道相互作用によって決まる。 従って、立体特
異性が高く、立体選択性を高めることができれば、 単一操作で多数の不斉中心の立体
化学を制御しつつ生成せしめることが比較的容易である。 この利点を活かすため立体 選択的分子内反応に応用して、 複雑な天然化合物の合成に利用されている。1. 3-双極性環状付加反応とDiels-Alder反応とは共に、67r電子が関与する電子環
状反応でありながら、4π共役系部分(双極子あるいはジエン部分)の化学的性質を 大きく異にする。 すなわち、1. 3-ジエンは弱いルイス塩基であって、親ジエンがカル
ポニル活性化型である場合には、 ルイス酸触媒反応が効率的に行える。 すなわち、 添 加したルイス酸は、 専ら親ジエンのカルボニル基酸素に配位してこれを活性化させ得る。 一方、1.3一双極子は、 形式的に電子密度の高いアニオンセンターを有し、
その意 味で強力なルイス塩基である。 少なくとも、 通常の親双極子よりははるかに塩基性が 強い。 そのため、 ルイス酸(あるいは金属試薬)と容易に錯体を形成して、 不活性化される。 ルイス酸触媒下でのDiels-Alder反応で極めて有効に利用できたキラル親
ジエンが、 不斉双極性環状付加反応の中で効力を失うことが多いのは、 ここに原因が ある。著者は、 以上のような背景を踏まえて、 特に、 高ジアステレオ選択的不斉双極性環 状付加反応を達成することを主目的として、 新しい方法論に立脚して効率的な不斉制 御が行える、 新規な不斉制御分子の創製研究に着手した。 新しい不斉制御子の分子設
計を行うに当たり、 次の諸点を念頭に置いて研究を進めた。
1)効率的な不斉誘導を達成するために、 反応部位の近傍に不斉制御部位を配すこ とを可能とする構造的特徴を導入すること。
2)ジアステレオトピックな関係にある遷移状態の相対的安定性を、 反応部位と不 斉制御部位との相対配座のみで考察できるように、 不斉制御子として簡素な構造を したキラルな複素環を用いること。
3)反応後に不斉制御子の除去が容易にで:きること。
4)不斉源の入手が容易で合成が簡単であること。
詳しいことは、 第2章第1 節の序論で述べるが、 これらの諸条件を満たす不斉制 御子として窒素隣接炭素上にキラル中心をもっ複素環である、 C2対称性イミダゾリ
ジンおよび4-キラルオキサゾリジンを用いることにした。 反応部位と不斉制御子部
位との聞はアミ ド結合で連結することとした。 新規に開発した不斉制御子から誘導し た種々のアミド誘導体を用いた不斉反応を研究し、 その合成化学的有用性を調べた。
本論文は第5章 から成る。
第 1章では、 これまでに報告された不斉制御子について紹介し、 それぞれの不斉
制御子の特徴と欠点を指摘し、 本研究の目的および意義について述べた。
第2章では、 配座制御に基盤をおく新規なC2対称性2.2-ジ置換イミダゾリジン および4-キラル2.2
ージ置換オキサ
ゾリジン不斉制御分子の分子設計の基本的な概念 と合成について述べた。 そのアクリロイル誘導体について、 基底状態の配座安定性に 関する知見を得るために、 温度可変 IH NMRと分子力場計算(MM2)を用いた配座解 析を行い、 その結果か らこの不斉制御子反応における有用性を予惣した。第3立では、C2対称性1.3-ビスアタリロイルイミダゾリジン誘導体および4-キ
ラル3-アクリロイルオキサゾリジン誘導体の不斉双極性環状付加反応について検討
した。 その結果、 高い不斉収率の達成が困難であるニトリルオキシドとの反応におい ても、4位の置換基がジフェニルメチル基の場合には、 完全なジアステレオ面選択性 を達成できた。 また、 シリルニトロナートとの反応では、 選択性は多少低いものの、
ニトリルオキシドの合成等価体として用いることが可能であることが明ら か になった。
第4章では、 オキサゾリジン不斉制御子の他の反応への応用として、 アルケノイ ル誘導体をアクセプターとする有機銅試薬との不斉Michael付加反応を検討した。
その結果、4位の置換基の適切な選択により、 完全なジアステレオ面選択性を達成す ることができた。 また、 アシル誘導体からキ ラルなリチウムz-エノラートを発生さ せ、 アルキル化反応について検討した。 その結果、 アルキル化反応ではほぼ満足のい く選択性を達成されることを明らか にした。 さ らに不斉子の除去を行い、 そのアルキ ル化体の絶対配置を明らかにし、 反応の遷移状態について考察した。
第
5
章は、
第2
章か
ら第4章
までの
総括である。
-7-
参考文献 1) J.
2) E.
3) T.
4) w.
C.
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-8-
第2章イミダゾリジンおよびオキサゾリジン不斉制御子の合成と配座解析
第1節 序
第1章でも述べたように、 金属補助淘!などの助けによって1.
3-双極性環状付加反
応のレギオあるいは立体選択性を制御した前例はない。 従って、 キラルオレフィンを 用いての不斉1. 3-双極性環状付加反応において高い不斉収率を達成するためには、反応の遷移状態において反応部位と不斉制御子部位とを結ぶ単結合(連結基)回りで の立体配座を固定し、2つのジアステレオ面での反応の区別をすることが必要である。
すなわち、 ジアステレオメリックな2つの遷移状態の安定性の差は、 反応で構築さ れるキラリティーと不斉制御子のキラリティーと聞の相互作用の違いで生ずるので、
現在のレベルでは、 連結基回りでの配座制御によってこの安定性の差をし1かに強調で きるかが、 効率的な不斉双極性環状付加反応を達成できるかの鍵を握ることとなる。
反応部位と不斉制御子部位とを結ぶ連結基としては、 反応終了後の不斉制御子の除 去の容易さをも考慮すれば、 エステルあるいはアミド結合を利用することが最も一般 的である。 そのうち、 キラルアクリル酸エステルを籾双極子として用いたニトリルオ キシドの不斉双極性環状付加反応では、 ジアステレオ面選択性は慨して満足できるに は程遠い。 しかし、 反応サイトが環状構造に組み込まれている場合や、 連結基回りで の自由回転が制限されている場合には、 高い選択性が得られているo l -2) エステル 結合回りでの回転束縛エネルギーは小さいので、 エステル連結基を利用しての効率的 な不斉誘導は困難である。 これに対して、 アミド結合は大きな回転束縛エネルギーを 有するので、 この目的を達成するための連結基としては有効であろう。 アミド結合の 回転束縛を利用した不斉制御子としては、 現在まで、 以下のような報告がある
(Figure 2-1)03-5)
"Oppolzer のカンファーサルタム" を不斉制御子としてもつアミドC,3) シクロヘ キサントリカルポン酸から誘導されるトリシクロラクタムアミドD, I!) および、 やは りOppolzer によって開発されたキラルサルタムのアミド体E5) は、 かつて不斉双 極性環状付加反応において用いられた最も優れたキラルな電子不足オレフィンである。
これらのキラル不飽和アミドのアミド連結基回りでの回転で生ずる最安定配座は、 連 結基のアミドカルボ‘ニル酸素がスルホニル酸素あるいはアミドカルボ、ニル酸素に対し てantiperiplanar (ap)な位置を占める配座であるとされているo 6} 更に、 これら
-9-
A
Il.._ 、い、--'L ./バ= j \ 11
C D
Figure 2・1.
E
のキラル不飽和アミドを用いたニトリルオキシドの不斉環状付加反応が実際に選択し たジアステレオ面に基づく考察から、 次のような環状付加反応の遷移状態の姿が明ら かとなった。 すなわち、 不飽和アミドDの反応では、 アクリロイル基がap配座を 占めた上でフェニルエチル基側のジアステレオ平面が立体的に遮蔽されている。 この
立体遮蔽の効率はほぼ完全であるため、 ベンゾニトリルオキシドとの環状付加反応は
100完ジアステレオ選択的に進む。
一方、 サルタムアミド構造をもっ不飽和アミドC. Eを用いた同様の反応では、 や はりアミド連結基がap配座を占めた上で、 ボルニル基のイソプロピリデンブリッジ あるいはt一ブチル基が形成する立体的不斉場ではなくて、 スルホニル基が形成する 電子的不斉場によりジアステレオ面選択性が支配されている。 すなわち、 求核剤であ るニトリルオキシドは、 スルホンアミドの擬axial酸素との閣の電子的反発相互作 用を避ける方向から接近している。 その際、 ベンゾニトリルオキシドとの環状付加反 応における選択性は十分高い。
不飽和アミド2の不斉制御子部分を構成するトリシクロラクタム不斉制御子は、
ハHU旬lム
天然の “Ke田pのトリカルポン酸" から出発して複雑な合成経路を経て合成しなくて はならないので、 それだけ合成化学的有用性が減じることになる。 当然のことながら、
不斉制御子倦築のための原料化合物の入手の容易さは、 合成化学上極めて重要である。
この観点に立てば、 OppolzerのキラルサルタムCは、 入手容易で安価なカンファー から比較的短い合成経路を経て合成できるので、 現在最も実用的な不斉制御子である と言える。
一方、 Evansの2-オキサゾリジノン不斉制御子は、
その不飽和アミド体Fを用い
たルイス酸存在下でのDiels-Alder反応7)
あるいはアミドエノラートのアルキル 化、8) アルデヒドへの求核付加反応g) などで高いジアステレオ選択性を示すことか ら、 種々の不斉合成で最も便利に利用されてきたが、Fとニトリルオキシドとの環状
付加反応の選択性は低かった。 このことは、 Evansの不斉制御子が威力を発揮するに は、 金属補助剤の助けを借りるか、 あるいは、 メタル化された活性中間体へ導いての 反応で用いるかが必須であることを示している。
さらに、 山口らにより開発されたC2対称性ピロリジン不斉制御子をもっ不飽和ア
ミド5は、 その対林性の高い精造から、 本来金属補助剤の助けを必要としない特徴 をもつものの、I 0) 比較的立体的に小さな求核剤であるニトリルオキシドとの環状付 加反応におけるジアステレオ選択性は、 やはり低い結果に終わった。
YY h 帆ェrγNYO O.、O h
F
Figure 2・2.
1i 寸lよ
CH2CI2
M 0
L A O
「/
i=\
、司
』N
o o pa
PhC(Cり=NOH+ NEt3 PhC三N→O
V
F (R=i- Pr) or G
H Scheme 2-1.
I
このように、 不斉双極性環状付加反応に用いて合成化学的に高い有用性を発揮する 既存の不斉制御子としては、 Oppolzer のサルタム類C, Eが唯一満足出来る結果を 与える。 しかし、 これらのサルタム型キラル不飽和アミドを用いた反応において、 求 核試剤は、 スルホンアミドの擬axial酸素との間に働く静電反発を避けて、 反発的 立体相互作用の働く側のジアステレオ面を攻撃しなくてはならない。 従って、 通常の
反応と比較して反応性の低下を招くことは否めず、 反応性の乏しい求核試剤や嵩高い 求政試trJを用いた反応で、 これらの不斉制御子がうまく機能できるかについては疑問 が残る。
著者は、 双極性環状付加反応のように、 反応の性路上、 金属補助剤の助けを借りて の反応制御が不可能とされているタイプの反応において、 高効率的な不斉誘導を達成 するためには、 新しい方法論に立脚した不斉制御子の創裂が必須である と考えた。 す なわち、 反応部位と不斉制御子部位とを分子運動の束縛された “堅い連結基"で結び つけ、 ついで、 反応部位の一方のジアステレオ面が不斉制御子によって効率的に立体 遮蔽される分子構造を設計できれば、 この目的を達成できるはずである。 その時、 立 体遮蔽されていない側のジアステレオ面空間を、 求核試剤の攻撃に対してオープンに することができれば理想的であろう。
本章では、 回転束縛のあるアミド結合を連結基として利用し、 不飽和アミドの配座 制御に基盤を置いて、 双極性環状付加反応におけるジアステレオ面の選択を行わせる 新規な不斉制御子の創製をめざす。 まず、 新規不斉制御子の設計思想、と合成について 述べる。 また、 そのN-アクリロイル誘導体の基底状態の配座安定性に関する知見を 得るために、 温度可変lH NMRと分子力場計算(MM2)を用いた配座解析を行う。
η/臼 41i
第2節 不斉制御子の設計思想、と合成
2-1. 不斉制御子の設計
α-アミノ酸は光学活性体が安価で容易に入手できるので、 これらから誘導される ß-アミノアルコールあるいは1. 2-ジアミンを利用する不斉制御子の創製は、 合成化 学的に極めて有意義である。 著者は、 以下に述べる考えに従って、 β-アミノアルコ ールあるいは1. 2-ジアミンから容易に誘導できる複素環骨格を新規不斉制御子とし て利用することを計画した。Figure 2-3に示すC2対称性イミダゾリジンや4-キラ ルオキサゾリジンのようなキラル複素環の不飽和アミド誘導体において、 アミド連結 基の配座を都合よく固定することができれば、 少なくとも基底状態において、 不飽和 結合部分のジアステレオ面の一方がキラル炭素上の置換基によって有効に遮蔽できる と期待される。 従って、 これらの不斉制御子は、 基底状態に近い遷移状態を経る反応 の不斉誘導には効果的であろう。
窒素の隣接位にキラリティー(遮蔽置換基R2)をもっオキサゾリジン、 イミダゾ
リジンのN-アクリロイル誘導体J
(X
= 0あるいはNR)のすべての単結合の中で、最も大きな回転束縛を受けるのは、 アミド窒素とカノレポニル炭素聞の結合(連結基結
R
H
R3〉ii;711
匂司司司戸ーー
s-trans
andsyn-J
G刀ti-Js-cis
andsyn-J
R
rォ
Dienes
Dipoles
syη-J
Evans' auxiliaryFigure 2・3.
つd4Ii
合)である。 次に大きな回転束縛を受けているのは、N
-アクリロイル基のC1(Sp2)
C2 (Sp2)単結合であろう。 そこで、 これらの複素環の2位に2つのアルキル置換基を 導入することによって、2,2-ジ置換オキサゾリジンおよびイミダゾリジンのアミド誘 導体I(X = 0あるいはNR,R1
=
アルキル )とすれば、連結アミド結合回りでの配 座に関しては、 syn-配座( syn-l)がanti-配座(anti-I)より安定と考えられる。何故なら、anti-]においては、 ビニル基とオキサゾリジンの2位のアルキル基R1 聞に大きな立体反発が生ずるからである。 さらに、N -アクリロイル基のC1(Sp2)ー し(Sp2)単結合回りでの回転に関しては、 s- trans配座では2位置換基R1 あるい は4位置換基R2との間に立体反発が生じるために、 syn- あるいはanti-]配座の 両方に対して、S-ClS配座がより安定であると考えてよい。 従って、 基底状態におい ては、 syn-/s-cis配座がもっとも安定な配座であると言える。
syn-/s-cis配座の高い安定性は、 後述する分子力場計算(MM2)の結果のみならず、
lH NMRによるNOE測定によっても確認された。 アミド結合回りでの配座が
syn-/s-cis型に固定されると、 反応部位である不飽和基がキラル炭素による立体逮 蔽を受けやすい位置に回定されるので、 -Jjのジアステレオ面がキラル遮蔽基によっ て効率的に遮蔽されることになる。 従って、 不飽和基への求絞試剤の接近はR2の反
対側から起こることになり、 遮蔽基を適当に選ぶと、 高選択的な不斉誘導が達成でき ると期待できる。 その際、 不斉反応が起こるジアステレオ面側の空間が大きく空いて いることが特長である。以上のことを踏まえると、 キラルアクリルアミド誘導体Zを用いて高い不斉収率 を達成するには、 次の諸点が重要なポイントとなる。
1)連結アミド結合に関して、 syn配座への平衡組成の制御がどの程度行えるか、
すなわち、 syn/anti比をどこまで大きくできるか。
2) N-アクリロイル基に関して、C1 (Sp2) C
-
(Sp2)単結合のS-ClS配座への制御が2
どの程度行えるか。3) キラル中心上の置換基R2によるアクリロイル反応部位に対する立体遮蔽をど こまで効率的に行えるか。 すなわち、 キラル遮蔽の効率の向上である。
などが重要なポイントとなる。
連結アミド結合に関する配座制御の成否と効率的なキラル遮蔽は、2位と4位の 同換基(R1,R2)の組み合わせに依存するはずである。 さらに、4位置換基R2によ
-14-
るキラル遮蔽の程度は、 5位の置換基R3 の有無と種類によって左右されることにな る。 そこで、 種々の置換基をもっアクリルアミド誘導体Zを合成して、 これらの複 素環の不斉制御子としての有用性を調べることにした。 その際、 ヘテロ原子Xが酸 素であるオキサゾリジン不斉制御子は、 前述したように、 光学活性な天然アミノ酸を 還元して合成できるβ-置換β-アミノアルコ ール類から容易に 誘導でき、 種々のキラ ル遮蔽基R2 および5位の置換基R3の導入は極めて容易に行えるので、 この点、が 合成的に大きな魅力となる。
2-2. 2. 2-ジ置換し対称性イミダゾリジン
および2.2-ジ置換オキサゾリジンのア クリルアミド誘導体の合成光学活性 2.2-ジアルキル-4.5-ジフェニルイミダゾリジンビスアミド4S. 5S-3 は、
以下の方法で合成した。 まず、 無水硫酸マグネシウム存在下ジクロロメタン中で、 光 学活性なC2対称性 1.2-ジフェニルー1.2ーエタンジアミン[C1S.2S) -lJとアセトン との室温下での反応により、 アミナール体に相当する 2, 2-ジメチル-4,5-ジフェニル
イミダゾリジンíCS,S)-2.Jを定量的に得たCScheme 2-2)。 なお、 ここで用いた光学 活性なC2 対林性1.2-ジアミンlS,2S-1は市販品は極めて高価なので、 文献既知の 方法に従って合成した。 すなわち、 ベンジル、 酢酸アンモニウム、 シクロヘキサノン の反応で 2II-イミダゾール誘導体を調製し、 そのLiによるBirch還元、 加水分解 を経て、 最後に光学分割を行った。11) こうして得られたアミナール2は、 シリカゲ ルクロマトグラフィーによる精製過程で容易に加水分解するので、 精製することなく
そのまま次のN-アタリロイル化反応に用いた。
イミダゾリジン2のN-アタリロイル化は、 トリエチルアミン存在下で塩化アクリ ロイルを反応させることにより進行するが、 反応温度がo OCと高い場合には複雑な 生成物の混合物を与える。 そこで、 反応温度を -78 Ocまで下げた後に、 マイクロフィ ーダーを用いて塩化アクリロイルを約1時間かけてゆっくり添加する方法を採用し
た。 かくして、 1.3-ジアタリロイル-2.2-ジメチル-4,5ージフェニルイミダゾリジン [C4S, 5S) -�Jが収率60完で得られたCScheme 2-2)。
「同υ噌ti
sh� Acetone
刑
制
e2
いい〔Nパm
p・
H
ー4
H2C=CHCOCI
NEt3 MgS04 in
CH2CI2介Xr 料、
(15,25)-1
(4S, 55)-3 Scheme 2-2.
一方、 光学活性2,2-ジアルキルオキサゾリジンアミド2は、 光学活性なβ-アミ ノアルコール4のケトンによるアセタール化、 それに続くN- アクリロイル化により 合成した。 光学活性なß-アミノアルコール立は、 対応する天然のα-アミノ酸を還 元することによって容易に入手できる。 一方、 幾種類かのアミノアルコール立は、
後で述べる方法で合成したα-アミノエステル誘導体の同様な還元によって調製した。
α-アミノ酸のβ-アミノアルコール生への還元方法は多数の方法が報告されている が、 還元条件下でラセミ化しやすい基質の還元反応について少し詳しく述べる必要が あろう。
フェニルグリシンを通常の還元条件下で還元すれば、 α位でのラセミ化が起こる問
題点がある。 光学的に純粋なフェニルグリシノールの合成のための還元剤としては、
ジポランージメチルスルフィド系、I2) 水素化ホウ素リチウム一塩化トリメチルシリル 系I3) などが報告されているが、 いずれの場合も比較的高価な反応試薬を用いる必要 がある(Scheme2-3)。 最近、 水素化ホウ素ナトリウム-硫酸系を用いるα-アミノ酸 の新しい還元法が、 安孫子らによって報告された(Scheme2-4) 0 I -1) この方法は、 懸 濁したα-アミノ酸と水素化ホウ素ナトリウムのTHF溶液にo OCで濃硫酸のエーテ ル溶液を添加する操作から成る。 用いる試薬は安価で、 多量合成も可能である。 そこ で、(R)-フェニルグリシンにこの還元法を適用することによって光学的に純粋なフェ
ニルグリシノール(R)-4aを得た。
一方、 フェニルアラニンやノくリンのような光学活性なα-アミノ酸の還元では、 フェ ニルグリシンの場合と比較してラセミ化は起こりにくいので、 他の還元法を用いても 光竿的に純粋なアミノアルコールへ誘導することができる。 特に、 α-アミノ酸をー
円hU41ム
UH o o c -n 、 P E - A F R
N H Reagents H O〆 a J 4斗 h
、 ヘj p=・ ・ 《干rh引' r r 〆'K
M川 円ノ』 UH
Reagents: BH3・SMe, LiBH4-T孔1SCl Scheme 2-3
H O 0
c m= 〈R M川
HAUT
O一qu一円ζ - UN- - -cs
ーは一Hト一丁B一ZA - nH i - - -
M川一 H OJ a h
\ 4
p・ t - 一R め - /E1
N門ノ』
HScheme 2-4.
係 人 s
SOCI2 R2
1 ・HCI NaBH4 H2N'S、C02Me in EtOH/H20
5・HCI
H
ふ
OHin MeOH
』F
Scheme 2-5.
Eエステルに導いた後に還元する方法が有効である。1 5) すなわち、 まず、 これらの 光学活性α-アミノ酸と塩化チオニルとの反応をメタノール中で行って、 対応するα
アミノ酸メチルエステル塩酸塩(5.aCl)を得る。 次いで、 トリエチルアミンにより この塩酸塩から脱塩化水素化した後、 水、 エタノール混合溶媒中で水素化ホウ素ナト
リウムにより還元し、 対応する光学活性β-アミノアルコール(S)-_4を得た
(Scheme 2-5)。
また、 β-アミノアルコールのα位へのジメチル基の導入は、 α-アミノエステルと ヨウ化メチルマグネシウムとの反応により容易に行える(Scheme 2-6)。 すなわち、
(S) -フェニルアラニンメチルエステル塩酸塩(5.HCl.
RZ=
PhCHz) のエーテル懸濁溶液をトリエチルアミンで処理した後、 不溶物を渡過して取り除いた溶液をヨウ化メ
チルマグネシウムと反応させることによって3-アミノ-2-メチル-4-フェニル-2-ブタ ノール(但)を得ることができた(Scheme 2-6)。
ワI 4』i
R2
1
・HCI1)
NEt3H2N'S、C02Me
2)
MeMgl5・HCI
R2
=
Benzyl, iso・ButylScheme 2・6_
H2N
ん
OH(S)・4d,g
天然の光学活性アミノ酸から誘導できるβ-アミノアルコールのα位の置換基には
おのずと制約がある。 そこで、 それ以外のα位置換基をもっアミノアルコールの最も 有用な合成法は、 求核的グリシン合成等価体のα-アルキル化反応で得られるα-アミ ノ酸誘導体を還元する方法であろう。
求核的グリシン合成等価体として、 エチルN-ベンジリデングリシナートのリチウ ムエノラートを用いることとした。 既知の方法に従ってIIMPA-THF混合溶液中でエチ ルN-ベンジリデングリシナートとLDAとから調型したリチウムエノラートを、 ブロ モジフェニルメタンあるいは9-ブロモフルオレンなどの臭化アルキルによってアル キル化して、 アルキルグルシンエチルエステル塩酸塩邑. X -HClを得た。I 6) このよ つにして得られた塩酸塩5e.X-HClは、 トリエチルアミンにより塩化水素を除去した 後に水素化ホウ素ナトリウムにより還元し、 アミノアルコール(rac)-坐.1に誘導し た。 この方法で得られたアミノアルコールは、 光学分割することなく反応に使用した (Scheme 2-7)。
/々、 /ハ\
Ph ・N' 'C02Et
R2
5 ・HCI
H2N' 、C02Et
5・HCI
R2
=
Ph2CH, 9-FluorenylScheme 2-7.
1)LDA
2)
RX1 一 2
N一一NFヒ一a & ほ 一B
HバU『
OHf
ん 内
N H
nJ』 /11
nnxU
4』よ
4-キラルオキサゾリジンZは、 対応するアミノアルコール4とケトンとのアセタ ール化により合成できる(Scheme
2-8)0
2位の置換基R2がメチル基の場合には、アミノアルコール4をアセトン中、 触媒量のp-トルエンスルホン酸(PTSA)の存在 下で加熱還流することによって、 また、 R2がぺンタメチレシあるいはエチル基の場 合には、 アミノアルコールとシクロヘキサノンあるし、はジエチルケトンとをジクロロ
メタン中、 触媒量のp-トルエンスルホン酸存在下で加熱還流することによって、 合 成した。 また、 R2がベンジル基の場合には、 ジクロロメタン中では反応しないので、
トルエン中で加熱還流して初めてアセタール化が進行した。 しかし、 アミノアルコー ル立とジイソプロピルケトンとの反応は進行せず、 原料回収であった。
このようにして得られたオキサゾリジン体Zは、 シリカゲルクロマトグラフィーに よる精製過程で容易に加水分解するので、 精製することなく次のN-アクリロイル化
反応に供した。 N-アクリロイル化反応としては、 オキサゾリジン?をジクロロメ タン溶媒中、 トリエチルアミン存在下でo OCで塩化アタリロイルと反応させること により、 対応する4-キラルー3ーアタリロイルオキサゾリジンSが高収率で得られた。
。
H
日
NR.1・ IR,O1 R3 H2C=CHCOCl
�
OH +人
1 PTSA reflux NEt3 in CH2CI2H2N
4 7 8
4a -g: 巧 司
a: R'" = Ph, RJ = H b: R2 = isoPr, R3 = H
c: R2 = PhCH2, R3 = H d: R2 = PhCH2, R3 = Me
e: R2 = Ph2CH, R3 = H f: R2 = 9-Fluorenyl, R3 = H g: R2 = iso-Butyl, R3 = Me
7a・1,8a・1:
a:Rl=Lfe,R2=Ph,R3=H b:R12=(CH2)5R2=Ph,R3=H
c: R1 =孔fe,R2=i-Pr,R3=H
1 .... " y-,. 2 r.. /"'IT T r. 3
d: R1 = Me, R'" = PhCH2, RJ = H e:R1=R3=Me,R2=PhCH2 f: R1=Et,R2=PhCH2,R3=恥1e g: R1 = R2 = PhCH2, R3 =Me
1 /'-'T T ' r. 2
h: R12 = (CH2)S. R'" = PhCH2, RJ = Me
1 .... K _ r. 2 T'\L í'lT T T'\ 3
i: R1 = Me, R"-= Ph2CH, RJ = H 1 /'-'T T ' r. 2
J: R 12 = (CH2)S. R"-= Ph2CH, RJ = H k: R 1 =加1e,R"-= 9-Fluorenyl, RJ = H 2
1: R 1 = R3 = Me, R2 = iso-Butyl
Scheme 2-8
nHU 4ti
2-3. アクリルアミド誘導体の配座解析
著者が設定した作業仮説に従えば、 本章第2節2-2で合成した ら 対称性1.3- ジアクリロイル-2,2-ジメチル- 4,5-ジフェニルイミダゾリジン2および3-アクリロ イル-2,2
-
ジメチルオキサゾリジン2を用いた双極性環状付加反応が、 高いジアステ レオ選択性で進行するためには、 アミド連結基が anti配座に固定された上で、 キラル中心炭素上の遮蔽置換基が反応部位となるアクリロイル不飽和部位を効率的に遮蔽 することが要求される。 従って、 個々のキラルアクリルアミド誘導体が当初期待した とおりの安定配座異性体として存在するかと、 キラル中心炭素上の置換基による立体 遮蔽が効果的に行われているかを確認するために、 これらのアクリルアミド誘導体の 配座解析を行った。
まず、27 ocにおけるイミダゾリジン3の重クロロホルム中での lHおよび 13C NKR測定では、2位のメチル基、2つのアクリロイル墓、 4 位(あるいは5位)の
メチン水素(H-
4)のすべては鋭いシグナルとして観察され、
異性体の存在を示す微 小シグナルが混在しないことから、 イミダゾリジン3はし対称性構造をもった単 ーの配座実性体として存在していることが明らかにされた。 さらに、 I1 -4 (δ = 5.37)とアクリロイル基のα-Sp2水素(I1α,
δ = 6.12 )との聞に顕著なNOEが観測され
たことにより、 1.3一位の2つのアミド結合は共にsyn配座を占めると結論づけられ る(Figure2- 4)。
結局、 イミダゾリジン体2については、 期待通り、 室温においてsyn.syn
-3配座
がanti,anti-3およびsyn.anti-3配座より大きな安定性をもつことが見いだされ た。 このことは、3についてのMM2分子力場計算の結果とも一致している。 すなわ
ち、syn,syn-3配座はsyn.anti-3配座より3.24 cal/mol安定であると計算され
た。 従って、 イミダゾリジン不斉制御子をもっキラル不飽和アミド2を用いた不斉 反応においては、 反応部位である不飽和基が 4 位(あるいは5位)の置換基によっ て効率的に立体遮蔽される位置を占めることとなる。 残された問題は、 立体遮蔽基に よる遮蔽効率の程度であるが、 それを調べるための2とニトリルオキシドとの不斉 双極性環状付加反応の結果については、 次の第3章で述べることとする。
nHu qfu
)--\'
Zふiく
syn,syn-3 syn,anti-3 anti,anti-3
Figure 2・4.
次いで、 N-アクリロイル-2,2-ジアルキルオキサゾリジン誘導体2についての配座 解析を行ったo �の室温付近における 'H NMR測定の結果、 上記のイミダゾリジン不 斉制御子をもっ不飽和アミド2とは異なって、 オキサゾリジン8c-_kは異性体の混 合物であった。 詳しいことは後述するが、 温度可変 'H NMRスペクトルの検討の結果、
これらの異性現象はアミド連結基のアミド窒素とカルホ・ニル酸素結合回りでの束縛l口
転に基づくものであることが明らかとなった。
そこで、2が双両性環状付加において優れたキラルオレフィンとして働くためには、
2位および4位の置換基を適切に選択して、 連結アミド結合回りでの配座異性体比 Canti/syn比)を大きく anti 配座側に偏らせることが必要である。 そのためまず、
11M2分子力場計算を行って、3-アクリロイル-2,2ージアルキルオキサゾリジン誘導体
2の syn- および anti-配座異性体のそれぞれについて、 これらの配座異性体聞のエ ネルギー差を求める。 このエネルギー差に基づけば\決められた温度における8の 配座異性体比が予想できる。 ついで、 実際に合成した誘導体の温度可変 'H NMRスペ クトル測定を行い、 計算結果の精度を評価することになる。 測定結果との相関性を知 ることができれば、 優先的に anti配座を占め得る2の誘導体の分子設計が可能と なる。 さらに、 'H N1IRの測定結果を基にすれば\キラル中心上の置換基による反応 部位への遮蔽の効率の程度をも予想することができるであろう。
このような観点に立脚して、 本章第2節2-2 で合成した3の種々の誘導体につ いて、 種々の温度での 'H NMRスペクトルの測定と11M2分子力場計算を行った。 前
者の測定からは、 測定温度における配座異性体比、 遮蔽効率を評価するためのアクリ ロイルプロトンのケミカルシフト値を、 後者の計算からは syn/anti配座異性体問の 工不ルギー差を見積もった。 結果をTable 1にまとめた。
41i η/ω
M恥12 Calculation -800C
ðG (Ganti
_Gsyn)b
3.24d 2.65 2.71 1.25 2.92
Table 2-1. Conformational Analysis of 1,3・Diacryloyl・2,2-dimethylimidazolidine 3 and 3・Acryloyl・2,2・dialkyloxazolidines 8a-k.
En町
2 3 4 5
ト、コtψ
6 7
8 9
ハU4aa--
11 12
九MJ-円レ円ν
FLW内M パ一3abcd
司UEQOQ00000
8e 8f 8g 8h
8i 8j 8k
=CH2t 6.31 6.30 6.28 6.42 6.35 6.41 5.76 6.34 6.13 6.38 6.53 5.76 6.31 5.70 6.20 5.67 6.12 6.22 6.52
Chemical shift (å)a
=CH2C 5.48 5.47 5.44 5.68 5.72 5.74 5.02 _g
5.47 5.69 5.71 5.01 5.69 4.91 _g 4.86
_g
5.47 5.86
=CH- 6.12 6.10 6.09 6.41 6.56 6.58 5.71 6.57 6.31 6.54 6.50 5.71 6.65 5.62 6.42 5.61 6.47 6.17 6.70
Syn/anti ratio at various temperature 270C OOC -30oC -50oC syn onlyc
syn onlyC syn onlyc
_c,e
91:9 92:8 94:6 95:5
2.59
2.34
single 2.71 2.81
98:2 2.67
2.82 2.98 94:6f 95:5 97:3 97:3
a)The upper and lowcf lines Me for major and minor conformers,respectively-lH NMR Specmm was recorded at -30 oC in CD2C12 sol日tÍon unless otherwise noted. b) Energy calculatiõn was made for the môst stable c��i;�ρr each for theりsyn斤_ and aω仰nル1
between syn叱,sηyn斤-3and antμi,sηyn-
.3. �l!'!o syn/anti r�tio was given because of peak coalesëenc�.
f)
Meas�;ed �t-2-1-�C�
g)Overlapping with other signals- h)Not measured-
_d 81 : 19 81 : 19
single
_d single
96:4
single 96:4
single 97:3
94:6f 94:6 96:4 98:2
h 95:5 96:4 97:3
70:30 71:29 74:26 79:21
3-アタリロイル-2,2-ジメチル-4-フェニルオキサゾリジン邑は、27
ocで測定し た IHNMRスペクトルによれば、単一の配座異性体として存在することが判明した。そのアクリロイル部分のプロトンの化学シフトは、
上記のイミダゾリジン誘導体3のそれらに極めて近い値を示すことから、結局、也は単一の syn配座であると結論
できる(エントリー1と 2 を比較)。 おそらく、非触媒下での不斉双極性環状付加
反応において、イミダゾリジン2と オキサゾリジン邑は、ほぼ同程度のジアステ レオ選択性を示すことが予想できる。 また、2位のジメチル基をぺンタメチレン基に 変えた並では、VM2計算結果はより大きな syn/anti配座比の予想値を与えたもの の、実際に測定した IHNVRスペクトルからは、syn/anti異性体比とN-アタリロイ ル部分の磁気的環境は邑とほぼ同様であった。4位キラル中心上の遮蔽基をフェニル基からベンジル基で置き換えると、ベンジル 基中のフェニル平面と反応部位であるアクリロイル基平面がほぼ平行となる位置関係 をとれるために、反応部位がより効果的な立体遮蔽を受け得ると考えられる。 その際、
アタリロイル基のすべてのプロトンは磁気的な遮蔽を受けて高磁場側にシフトするは ずである。 すなわち、4位の逮蔽基としてベンジル系置換基を有する場合、N-アタリ ロイル部分のプロトンの化学シフト値を読み取ることにより、その温度における遮蔽
基RZ による立体遮蔽の程度を知ることができるはずである。
3-アタリロイル-4-ベンジル-2,2-ジメチルオキサゾリジン(担) は、 クロロホルム
中 -30
ocでは、94:6の配座異性体混合物であった(エントリー4)。 主配座異性体
における 4位のプロトン(H-4) のケミカルシフト(δ=
4. 14) は、冨IJ配座異性体 のそれより(δ = 4. 44)高磁場シフトしている。 これは、anti配座異性体では、H-4 がアミドカルポニルの酸素の磁気異方性を受けて非遮蔽された結果であり、従っ て、予想、どおり、主配座異方性は syn体、亘IJ配座異方性は anti体であることを示 している。
一方、4-べンジル誘導体包のアクリロイル基のすべてのプロトンは、4-フェニル
誘導体包のそれらと比較して低磁場シフトしている(エントリー2 と5を比較)。
これは、ベンジル基のフェニル平面による磁気的遮蔽がアタリロイル部位にまで有効
に届いていないこと、すなわち、べンジルフェニル基がアクリロイル部位から遠く離 れた配座が安定であることを示す。 Figure 2-5に示すように、ベンジル位炭素とオ キサゾリジン 4位炭素との閣の単結合回りでの回転異性体の内、効率的な立体遮蔽
q『Uq/μ
8e
(syn)
sc-8e(syn)
ap-8e(syn)
Figure
2-5. Stabilization of the synclinal conformation
sc-8e (syn)by introduction of two methyl substituets at 5-position.
を招くsynclinal(sc) 配座と非効率的な遮蔽しか生じないap配座とのエネルギー 差は、 さほど大きくないと思われる。 実際、 この2つの配座におけるエネルギー差 をVM2計算で求めると、sc 配座が僅か1.12 kcall皿ole(Gap
-
Gsc)だけ安定であ るにすぎない。 効率的な不斉誘起を行うためには、ap配座の存在確率を高くするこ とが必要である。 そのため、 オキサゾリジンの5位に配座制御用置換基として2つ のメチル基を導入することとした。 その結果、 ベンジルフェニル基と5位メチル基 との聞に立体反発が生じてsc配座が相対的にかなり不利となるため、 それに伴って、ap配座が有利になるであろう(Figure2-5)。
予想通り、4-ベンジル-5,5-ジメチル誘導体坐のアクリロイル部位のすべてのプ
ロトンの化学シフトは高磁場シフトしており、 ベンジルフェニル基による磁気的遮蔽、
言い換えると、 立体的遮蔽の効率が格段に向上したことがわかる( エントリー5と
6 , 9 を比較)。 また、MM2計算の結果も、sc配座の安定性が増大したことを示して いて(GsP -Gap
= 1.76 kcal/mol)、 lH NVRスペクトルにおける高磁場シフトの現 象とよく一致している。 誘導体色に見られるように、5位に2つのメチル基を導 入することによって4 位のベンジル基の運動の自由度が減少することは、 この置換 基の嵩高さが増すことと同義であるので、 アミド連結基回りでの配座異性体比 (syn/anti 比) が減少すると予想された。 しかし幸運にも、 -30 ocにおける4,4-ジ
メチル誘導体邑および組のsyn/anti配座異性体比(8e:97:3, 8h: 96:4) は、
5位が無置換の担の比(94:6) よりもむしろ高い値であった。
オキサゾリジン環の4位の置換基をべンジル基からジフェニルメチル基に変える と、Figure2-6 に示す包,1の最安定配座に見られるように、5位の配座制御用置
A斗&のノ臼
8i (syn)
>>
Ph
8i (syn) Figure 2・6.
換基がなくても、2つのフェニル基のどちらか一方がアクリロイル基側の位置を占め るため、効率的な立体遮蔽が行えると期待される(Figure2-6, syn-8i.i)。 その一 方で、4位のキラル中心上の置換基R2が高高い場合syn配座が相対的に不利にな るので、4位に級数の高い置換基を配すれば不斉制御子としての機能が低下すること が危慎された。 しかし予想に反して、4-(ジフェニルメチル)オキサゾリジン体位,1 のsyn/anti 比は、
-30 ocにおいて共に 96:4 と十分高いものであった(エントリー
10, 11)。 このことは、凶2計算の結果、主, ßユにおけるsyn/anti配座間のエネル ギー差(包: 2. 67kcal/皿01..8i:
2. 82)が 4-ベンジル- 5,5-ジメチル誘導体皇室, 8h
の場合(8e: 2.59 kcal/皿01. 8h: 2.81) とほぼ同様であることと、良く一致してい る。4位のジフェニルメチル遮蔽基による遮蔽効率 は、-30 ocにおいて訓定した化学シ フトの比較によれば、8eの場合とほぼ同じ値を示している(エントリー6 と10を 比較)。 しかし、8eの遮蔽効率が温度の上昇と共に顕著に減少するのに対して、8i の場合には、室温においてすら高い磁気的遮蔽、すなわち高い立体遮蔽、が保持され ている(27 ocにおける化学シフト: それぞれ
=CHz
(cis),=CH-, =CHz
(trans).色: δ= 5. 14, 5. 78, 5. 96, 8i: δ= 4. 9 8, 5. 63, 5. 84)。 この事実は、4-ベンジル-
5,5- ジメチル誘導体色のベンジル基のC- 1
炭素と4位炭素の聞の回転束縛が、専-25-
ら5位メチル基との立体反発に基づいているので温度上昇に敏感であるのに対して、
4-ジフェニルメチル誘導体主の場合には、 回転束縛の要因が4位の置換基そのも のの形状に依存しているためと考えられる。 従って、 ジフェニルメチル誘導体むに は、8e, hには見られない熱的に安定な立体遮蔽の特徴を示しており、 この性質を利 用して比較的高温での不斉反応が効率的に行えることを示唆している。
このように、 4位のジフェニルメチル基が、 syn/anti配座異性体比のみならず遮 蔽効率においても満足できる置換基であるのに対して、 4位に9-フルオレニル基を 導入した8kでは syn/anti配座比が大きく低下することが明らかとなった。 その主
な理由は、9一フルオレニル基を構成する2つのベンゼン環の動きが阻止されている ため、 これが立体的に嵩高く、 剛直な置換基として振る舞うからと思われる。 さらに、
8kのアタリロイル部位のケミカルシフトに基づいた評価でも、9-フルオレニル基に よる遮蔽効率は著しく不十分であった。 syn/anti比の低下と同じ理由によるもので あろう。
この研究で合成したN-アクリロイルオキサゾリジン2の内、 キラルオレフィンと して最も高い有用性が期待される4-ジフェニルメチル誘導体8iにおける、 連結ア ミド結合の安定配座およびアクリロイル部位への遮蔽隊式についての情報を得るため に、 そのX線構造解析を行った。 結果をFigure2-7に示す。
Figure 2・7. Crystallographically determined conformation of 8i (ball and stick molecular model)
-26-
固体状態における包のアミド結合に関する安定配座は予想通りsyn配座であり、
さらに、 ジフェニルメチル基の1つのフェニル基はN-アクリロイル部位をほぼ完全 に遮蔽している。 従って、 その不斉反応における高いジアステレオ選択性が期待され る。
次いで、 オキサゾリジンの2位の置換基の効果について検討した。 2位に置換基 があれば、 連結アミド結合のsyn/anti配座異性体比を制御して、syn配座異性体を 有利にする方向に働く。 2位の置換基を嵩高くすること は、syn配座の相対安定性を 高めるのみならず、 微量存在する anti孟IJ配座異性体におけるアクリロイル部位への 求核剤の接近を一層困難にする効果があるので、 高ジアステレオ面選択的反応の達成 には好都合であろう(Figure2-8)。
そこで、2位の置換基をメチル基からより嵩高いエチル、 ベンジル基へと替えた 泣,gを合成し、 それらの配座解析と lHNMRスペクトル分析を行った。 その結果、
2,2-ジエチル誘導体8fは、 予想外に低い syn/anti配座異性体比(-30 ocにおいて
81:19)しか示さず、しかも、syn-主配座異性体syn一位における4-ベンジル置換基
によるアクリロイル部位への立体遮蔽も不十分であった(Figure2-9)。 一方、2,2- ジベンジル誘導体包は、 室温では単一の配座として存在する。 そこで、 この温度か ら -80 ocまでの温度における温度可変 lHNMRスペクトルを検討した結果、 やはり
この温度範囲でも配座は単一であった。
Highly diastereoselective
dipolarophi
ゾ
nt
J p
esyn-8にg hindered to R 1 anti-8f,g f: R1 = Et; g: R1 = PhCH2
Figure 2-8. Relative reaction rates for both acryloyl faces in syn
and antトconformers (syn-8f,g and anti-8f,g).
ヮ,an/臼
そこで、2,2-ジメチル誘導体色, 2,2-ジエチル誘導体笠, 2,2-ジベンジル誘導体
包のMM2分子力場計算を行い、 それらのsyn/anti 配座異性体の最適化構造を求 めた。syn一配座異性体 syn-8e,f,g における連結アミド結合回りのねじれ角
C(2)-N(3)-C(CO)-O(CO) を 0とすると、 。 はそれぞれ-5.70 -7.40 -10.50 と計
算される。
一方、anti-配座異性体anti-8e,f,gのねじれ角C(4)-N(3)-C(CO)-O(CO)を()' とすると、 それぞれ
-4.70 -7. 70-2.30 と計算された。 結局、anti-配座異 性体においては、2位の置換基が嵩高くなるにつれてねじれ角θが大きくなる傾向 がある。
この計算結果は、 大きな2位置換基をもっ誘導体で:は、4位の置換基によるN-ア クリロイル基への磁気的遮蔽が小さくなっている事実と一致する。 また、2位の置換 基の嵩高さと共にsyn/anti異性体比が低下することは、 次のように説明できる。 す なわち、アクリロイル基と2位の置換基との立体反発のために、 連結アミド結合回 りでの最安定配座が平面からずれた構造をとるため、 回転の基底状態のエネルギーが 上昇する。 従って、 回転の活性化エネルギーが小さくなる。2位の置換基がべンジル 基の場合には、 回転の活性化エネルギーが大きく減じたため、 低温においてすら単一
の配座異性体として観測されたものと考えられる。
り刀conformer
。=-5.70, -7.40, -10.50 for R = Me, Et, PhCH2
Figure 2・9.
-28-
anti conformer
。'=--4.70, -7.40, -2.30 for R = Me, Et, PhCH2
byM恥12 calculation
第3節 結語
本章では、2.2-ジ置換し対称性イミダゾリジン誘導体および2.2-ジ置換4-キラ ルオキサゾリジン誘導体を含む新規な不斉制御分子の分子設計に関する研究について 述べた。 分子設計の基本的な概念、は、 これらのキラル複素環のN-アルケノイル化に よって得られる不飽和アミド誘導体の不斉反応を、1)まず、 連結アミド結合の配座 制御を行って、 反応部位である不飽和結合をキラル中心上の遮蔽置換基の近傍に配置 させ、2)次いで、 キラル中心上の置換基を適切に選択して、 不飽和結合の効率的立 体遮蔽を達成するものである。 これらの複素環のN-アクリロイル誘導体 3. 8の基 底状態の配座安定性に関する知見を得るために、 温度可変 lHNMRと分子力場計算
(}1M2)を用いた配座解析を行った結果について述べた。
Cz対称性1.2-ジアミンとアセトンとのアミナール化反応で容易に合成できるCz 対称性2.2-ジメチルイミダゾリジンは、N-アクリロイル化によってビスアクリルア ミド3に誘導できる。 室温での IHNVRスペクトル測定から、2はじ対称性の単 一の配座異性体として存在していること、NOE測定から、 連結アミド結合に関する最 安定配座はsyn.syn配座であることが明らかになった。
一方、 β-アミノ酸の還元で得られるアミノアルコールとケトンとのアセタール化、
それに続くN-アクリロイル化により容易に合成できる4-キラル2.2-ジアルキル-3- アクリロイルオキサゾリジン2は、 多くの場合、 室温付近では配座異性体の混合物 として存在するが、 主配座異性体はやはり syn配座であった。 これらの不飽和アミ ド2を用いて不斉反応を行う場合、 連結アミド結合に関するsyn/anti配座異性体
閣の比をsyn 配座側に偏らせる工夫と、syn配座における4位置換基による遮蔽効 率を如何にして高めるかが重要なポイントとなる。 これらの2点を同時に制御する ためには、2位の配座制御用アルキル基と4位遮蔽置換基との組み合わせを適切に 行うことが必須なので、 以下の順序で検討を加えた。
まず、 キラル中心上にフェニル基をもっ誘導体8a. bについて、2位の置換基とし てジメチル基およびぺンタメチレン基を導入して配座解析を行った結果、 これらの置 換基が連結アミド基に関する配座安定性に及ぼす影響には大きな差異が認められなかっ
たので、2位置換基としてはジメチル基を中心に選択して、 以降の検討を行った。 4 位遮蔽置換基としてベンジル系置換基を用いた場合、 ベンジル基中のフェニル基がア
タリロイル反応部位に及ぼす磁気的遮蔽の大きさが、 立体的遮蔽の大きさを見積もる
n斗υ。/臼
1つの目安となる。 この点に着目して、4位に種々の置換基をもっ誘導体の温度可 変'H NVRを測定し、 syn/anti配座異性体比およびアクリロイル反応部位のプロト ンの化学シフトを種々の温度で測定した。 次いで、 測定された磁気的遮蔽の大きさか ら立体的遮蔽の大きさを見積もった。 このような検討経過を経て、 以下のような結論 を得た。
1)
2位にジメチル基あるいはぺンタメチレン基を導入することにより、 連結アミ ド結合の高い syn/anti配座異性体比が達成できる。 しかし、 メチル基より嵩高い エチル基やベンジル基を導入すると syn/anti配座異性体比のみならず4位の置 換基による遮蔽効率が共に低下する。2)ベンジル基は4位の遮蔽基として優れているが、 遮蔽効率は5位に2つのメ チル基が導入された場合特に顕著である。
3)
4位の置換基が9-フルオレニル基のように嵩高くなると、 連結アミド結合の syn/anti配座異性体比は著しく低下する。4) 4位置換基がジフェニルメチル基の場合、 高い syn/anti配座異性体比のみな らずアクリロイル部位への遮蔽効率も極めて高いことが見いだされた。
5)ジフェニルメチル基による立体遮蔽は比較的高温においても大きく低下するこ とがないので、 キラル不飽和アミド8e.Qは高温での不斉反応にも十分利用できる。
ハリU円〈U