九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Empirical Study of Poverty in Japan
徳冨, 智哉
http://hdl.handle.net/2324/2236017
出版情報:九州大学, 2018, 博士(経済学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 徳冨智哉
論 文 名 Empirical Study of Poverty in Japan (日本の貧困に関する実証分析) 論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 浦川 邦夫
副 査 九州大学 教授 大西 俊郎 副 査 九州大学 准教授 宮崎 毅
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は,日本の貧困の実態について,大規模な個票データを用いた実証研究を行っている。論文 は6つの章から構成される。1章で は本 論文 の問 題 意識と2章以 降の 概要 を 説明し てい る。2章で は,
2000年代にお ける貧 困指 標の変動 の要因 を調べ る ため,貧 困指標 の変化 を ,①平均 所得の 変化,
②所得格差 の変化,③各 世帯類型の 構成比の 変化 ,④貧困線の 変化の4つ の要因に分 解し,各 要因 が世帯類 型別に どの程 度 影響して いるの かを厚 生 労働省の 個票デ ータを 用 いて測定 してい る。分 析では,2000年代の 貧困 指標の拡 大に「 夫婦子 供 有り世帯 」での 所得減 少 や格差の 拡大が 少なか らず寄与し ていた点 が指 摘されてい る。3章では,所得に加え,流 動資産 を 考慮して定 義された「 所 得+資産の 貧困 」の社会 経済的要因 について ,「 日本家計パ ネル調査(JHPS)」の 個票デー タを 用いた分 析が行 われて い る。分析 では, 世帯主 が 女性・高 齢者な どのグ ル ープでは ,資産 を考慮 すると貧 困率が 大きく 下 がる点が 示され ている 。 ただし, パネル データ 分 析の結果 では, 一定の 基準で流 動資産 を所得 に 加えた場 合も, これら の グループ の相対 的な貧 困 リスクは 有意に 高い点 が 示 さ れ て い る 。4章 で は ,JHPSを も と に , 貧 困 ま た は 非 貧 困 の 期 間 が 長 く な る に つ れ て , 貧 困 の脱出確 率と突 入確率 が どのよう に変化 するの か が,離散 型ハザ ードモ デ ルに基づ いて検 証され ている。 分析結 果では , 特に世帯 内で就 業者数 の 増減があ ると, 貧困・ 非 貧困間の 移動が 起こり やすくな り,脱 出に与 え る影響が より強 い点が 示 されてい る。5章で は, インター ネット 調査(2 011年)の個票デ ータを 用いて,世帯 類型別 およ び地域別に,主観的 等価 尺度に基づ く貧困率 が推 計され ,OECD 基 準によ る相対的貧 困率(全国基 準と地域別 基準 )や生活 保護基準と の比較が 行 われている 。分析の 結果,世帯人数の 多い世帯 では 主観的貧困 率が相対 的貧 困率よりも 低い一方 , 単身世帯 では高 くなる 傾 向が見ら れた。 また, 地 域別の分 析から は,首 都 圏が含ま れる南 関東で は,「夫 婦子供 あり」 な ど多くの 世帯類 型の等 価 尺度が有 意に高 く, 規 模 の経済性 が働き にくい 状況が示唆 された。6章では,2–5章で得られた分析結果を踏まえて,①貧困線を基準年に固定した場 合の相対貧困率の公表,②資産を考慮した貧困率の公表,③雇用保険の受給期間の延長,④生活保護 の捕捉率の向上,などの政策的含意を述べている。
論文調査 委員に よる調 査 の結果, 本論文 は個票 デ ータを用 いた計 量分析 に 基づいて 日本の 貧困 問題に対 する一 定の重 要 な政策的 含意を 導いて お り,学位 論文と して必 要 な水準に 達して いる点 が確認され た。以上 の点 を踏まえ, 本論文調 査会 は徳冨智哉 氏から提 出さ れた論文「Empirical Study of Poverty in Japan」を博 士(経 済学)の 学位を授与 するに値 する ものと認め る。