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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

低温で生成した金属水素化物ナノコンタクトで発現 する量子現象に関する研究

髙田, 弘樹

http://hdl.handle.net/2324/1937181

出版情報:九州大学, 2018, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式2)

氏 名 :高田 弘樹

論 文 名 :低温で生成した金属水素化物ナノコンタクトで発現する 量子現象に関する研究

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

低温・高密度状態にある水素は波動関数の大きな重なりのため、量子多体現象の発現が期待され ている。また、金属表面に吸着あるいは内部に吸蔵された水素の解離、吸蔵、拡散過程にも顕著な 量子性が現れることが、これまでの研究から明らかになっている。さらに、高濃度に水素吸蔵した 金属では水素電子軌道と母金属電子バンドの混成により、電子状態も大きく変化することが期待さ れている。実際、これまでには水素吸蔵に伴う金属-絶縁体転移などの現象が見出されている。一 方、金属内水素の量子諸現象の解明は十分進んだとは言い難い。これは、一般に水素吸蔵は高温で 行われるため試料作製時に空孔・欠陥が発生してしまうことや、金属内部の水素吸蔵・拡散過程や その電子状態を微視的に直接検出できる方法が限られていること、などの理由による。

以上の背景より本論文では、パラジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)などの単一元素か らなる金属ナノコンタクトを用い、液体水素中での電子輸送特性から、各種金属内における水素の 量子的挙動の検出・制御を試みた。本論文は、各種金属ナノコンタクトの伝導特性から得られた水 素吸蔵・拡散現象過程、及び母金属の電子状態の変化に関する結果をまとめたものであり、以下の 6章から構成されている。

第1章では、まず遷移金属に対する水素の吸蔵・拡散過程と金属内部における水素の原子状態に ついて概説し、金属中水素の物性を説明するには量子論的に取り扱う必要があることを示した。次 に、金属中水素原子の拡散現象は高温では古典論に従い、低温では量子論的なトンネル過程に移行 することを説明した。合わせて水素のトンネル拡散過程に関する研究事例を示した。続いて、金属 内に吸蔵された水素の 1s 電子軌道は金属 d バンドと混成するため、高濃度の水素吸蔵に伴い母金 属の電子状態に大きな変化が生じることを、過去の研究事例を交えながら説明した。これらを踏ま えて研究の目的を設定し、本研究の位置付けを明確にした。

第2章では、まず、金属中水素の検出に利用した点接合分光法について説明した。特に、金属ナ ノコンタクトで測定される電流―電圧(I -V)特性には、電子とフォノンの非弾性散乱に起因して非線 形な振る舞いが現れることを示し、その2階微分(d2I/dV2)の信号強度には電子―格子相互作用の 大 き さ が 反 映 さ れ る こ と を 説 明 し た 。 次 に 、 本 研 究 で 金 属 ナ ノ コ ン タ ク ト 作 製 に 利 用 し た Mechanically Controllable Break Junction(MCBJ)法の原理とこの手法の利点についてまとめた。

最後に、本研究で用いた低温装置の構造を概説し、MCBJ機構を装着した液体水素セル内での金属 ナノコンタクトの制御法を説明した。

第3章は、液体水素に浸したPdナノコンタクトに30mV程度の電圧を印加することで観測され た、低温水素吸蔵現象についてまとめた。まず、高温で水素化したPdH0.6を用いたナノコンタクト を作製し、微分伝導信号(dI/dV信号)とd2I/dV2信号を測定することで、点接合分光法を用いることで

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金属内水素の検出が可能であることを示した。続いて、液体水素に浸した状態で測定した Pd ナノ コンタクトの微分伝導信号は経時変化することを示し、最終的にPdH0.6ナノコンタクトで得られた

dI/dV,d2I/dV 2信号と形状がほぼ一致することを示すことを確認した。さらに、Pdナノコンタクトへ

の印加電圧値に対する信号変化を追跡することによって、水素吸蔵はコンタクトへの電圧印加によ り誘起される現象であることを明らかにした。

第 4 章は、Nb ナノコンタクトで観測された集団的な水素のトンネル運動についてまとめた。ま ず、液体水素中に浸した Nb ナノコンタクトに対して電圧を印加することで水素吸蔵が誘起される ことを示し、低温における水素吸蔵現象の一般性を明らかにした。続いて、低温水素吸蔵で作製し た試料では d2I/dV2 信号に複数のスパイク構造が観測されることを示した。このスパイク構造が出 現する電圧値は、ナノコンタクトのサイズに依存して変化するが、電流値と電圧値の積は、ナノコ ンタクトのサイズに依存せず一定値となることが分かった。さらに、コンタクトへの電圧印加によ り励起されるフォノン数に関する考察をもとに、スパイク構造はフォノンアシスト過程による水素 の移動誘起に起因する信号であると結論付けた。合わせて、このスパイク構造の経時変化・コンタ クトへの印加電圧依存性から、金属中水素原子の配置構造変化が本現象を観測する上で重要である と結論付けた。

第5章は、Vナノコンタクトへの低温水素吸蔵により誘起される電子状態変化についてまとめた。

まず、液体水素に浸したVナノコンタクトに対する水素吸蔵現象の印加電圧依存性を述べ、水素の 希薄領域における吸蔵現象は、fcc構造を持つ Pdとは定性的に異なり、同じbcc構造を持つNbと 同様の電圧依存性が見られることを示し、低温水素吸蔵過程は母金属の結晶構造の違いにより大き く変化することを明らかにした。また、ナノコンタクトに 110mV 程度以上の電圧を印加して高濃 度水素化物を作製すると、dI/dV信号が劇的に変化することを示し、そのコンタクトサイズ依存性の 測定から信号変化は水素吸蔵に伴う V 電子状態の変化を反映したものであることを明らかにした。

さらに、水素吸蔵後のdI/dV信号はクロム(Cr)金属のナノコンタクトで得られたdI/dV信号と定量的 に一致していることを示し、この信号変化は V の水素化に伴い電子状態が電子数の1つ多い Cr へ 近付いたことに起因すると結論付けた。

最後に、第 6章において以上の結果を総括し、今後の展望と課題について記述した。

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〔作成要領〕

1.用紙はA4判上質紙を使用すること。

2.原則として,文字サイズ10.5ポイントとする。

3.左右2センチ,上下2.5センチ程度をあけ,ページ数は記入しないこと。

4.要旨は2,000字程度にまとめること。

(英文の場合は,2ページ以内にまとめること。)

5.図表・図式等は随意に使用のこと。

6.ワープロ浄書すること(手書きする場合は楷書体)。

この様式で提出された書類は,「九州大学博士学位論文内容の要旨及び審査結果の要旨」

の原稿として写真印刷するので,鮮明な原稿をクリップ止めで提出すること。

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