奈 良国立文化財研究所史料第25冊 として,『平城官 出土墨書土器集成』Iを世 に お くることにな った。
古代以降歴史時代 の官衝
,寺
院,集
落その他 の諸遺跡 か ら土器に墨書 した もの が出土す る。 これ らは古文書 にみ られない使用時 のな まの文字資料 として貴重 な 意 味を持つ点では木簡 にお とらない学術的価値 を持 ってい る。 しか も木簡 に比べ,よ り悪 い条件 の遺跡で も残 る可能性を持 ち
,木
簡 出土遺跡 の何百倍かの遺跡 か ら 検 出 され るところに特色があ る。一方,墨
書土器は文書的意 味で書かれた もの と い うよ りは,使
用時 の判別用 の記号的 な ものか習書・ 落書風 の ものが多 く,普
遍 性は高いが,内
容を正確 に断定で きるものが少ない とい う難点を持 ってい る。平城官 出土墨書土器 の研究 は昭和3年
,当
時奈 良県技師を してお られた岸熊吉 氏には じまる。平城官東大濤 出土土器 に「 内掃」の墨書銘 のあ ることか ら,この 付近に官 内省 の位置 した ことを考定 された もので,近
年 の発掘で この付近か らさらに この説を補 う資料 の増 えた ことは本集で も御覧いただけ るもの と考 え る。
平城官跡 の本格的発掘調査をは じめた昭和34年 以来
,四
半世紀にわた る発掘で 出上 した土器類は土師器・ 須恵器 。施釉陶器 その他数百万片を数 え るが,宮
内で 約2000点,そ
の他 の平城京域で も 700点 の墨書土器を検 出 している。 今回,この うち1070点をえ らび,出
土遺跡 の説 明,釈
文 と,器
形 のわか るものの実測 図を添 えて公表す ることとした。 この中にはすでに発掘調査報告に発表 した もの も重複 してい るが,上
器 その他 の遺物 の調査が発掘 の進行 に追 いつ けない現状か ら,本
書に載せた資料 のほ とん どは報告書 の完成 していない地区 の出土資料であ り,こ れに よって平城官 出上墨書土器 の大要 を知 っていただけ るよ うにな った と考 えて い る。 とはいえ現在 までに検 出 した墨書土器 の半数 しか収録で きていないので, 今後 も引続 いて続巻を出版 してゆ く予定であ る。平城官研究 の新たな史料 として
『 平城官木簡 』 とともに 御活用 いただ き,この研究に今後 とも御理解 と御鞭撻を 願 うものであ る。
昭 和
58年 3月
奈 良国立文化財研究所長