《報 告》
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報告―本シンポジウムの背景と目的土田和博教授(早稲田大学法学部)
早稲田大学の土田でございます。きょうは たくさん報告者の方がいらっしゃいますので,
私の持ち時間は 10 分ということでございま すけれども,できるだけ手短に本シンポジウ ムの背景と目的についてお話をさせていただ きたいと思います。
シンポジウムのテーマからもわかりますよ うに,入札談合を含めて,日本ではカルテル がなかなか後を絶ちません。それどころか,
審決確定後にもたびたびカルテルを繰り返す 事業者が少なくない。それにもかかわらず,
それが密室で行われるために,容易に発見し がたいという問題があるわけであります。
入札談合が社会的な必要悪であるというこ とは昔から言われております。あるいは,日 本の談合は官製談合であって,発注者である 官の規制こそが問題であるという指摘もなさ れております。おそらく,官の規制強化の必 要性を否定する人はいないだろうと思います し,あるいは,市場競争が人間の目的を達成 するために必要な規制,例えば,長野県で行 われているように変動最低制限価格制によっ て,あまりにも低価格で応札するものについ てはこれを失格とするような規制,あるいは,
手持工事制限枠を設けて入札参加資格に反映 させ仕事の独占を排除するように働く規制は,
私自身は必要であると考えておりますが,し かし,そのような規制に囲まれた中での市場 競争は,国民あるいは地域住民の血税の無駄 遣いを防ぐという意味で,たいへん重要な意 義を持つものであります。
これを制限するカルテル・入札談合をいか に発見し,どのように立証し,いかなる手続 を経て,どんな「サンクション」を賦課する かという問題は,国内のみならず,国際的に もきわめて重要な課題となっているわけであ
ります。
本日は,まず,公正取引委員会の諏訪園さ んから,昨年 10 月に公表されました独占禁 止法研究会の「報告書」の内容,あるいは,
その後 12 月に発表されました公正取引委員 会の「独占禁止法改正の基本的考え方」につ いてご報告いただき,今回,どのような改正 をしようとしているのかお話しいただきます。
独禁研報告書の「第1部 措置体系の見直 し」の部分はお手元に配布されているかと思 います。排除措置命令,課徴金納付命令,刑 事罰といった談合を含めたカルテルに対する
「サンクション」について,改正の方向を提 案するものでありますけれども,諏訪園さん に続きまして,これに対する日弁連の見解を 消費者問題対策委員会独禁法部会長の大西弁 護士からお聞きしたいと思います。
さて,シンポジウムは入札談合に一つの焦 点を合わせていますので,入札談合の住民訴 訟で活躍され,長野県の入札改革にもかか わっておられる松葉弁護士から,入札談合の 実態あるいは入札制度改革について,その次 にお話しいただきます。
指名競争入札から一般競争入札に切り替わ ればリーニエンシー制度はいらないという見 方もありうるかと思われますけれども,しか し,リーニエンシーはカルテル一般にかかわ る問題であります。また,入札談合に限って 言いましても,実際には直ちに一般競争入札 方式を導入することは難しいようであります し,また,物品やサービスによりましては,
一般競争入札方式がとれない場合もあると聞 いておりますので,一般競争入札制度と相互 補完的なリーニエンシー・プログラムについ て議論することは可能であり,また必要でも あるということになろうかと思います。
ところで,本日のパネリストの中には,独 禁研・措置体系見直し検討部会の会員であっ た方がお二人おられます。安保弁護士と岸井 教授がそうでありますけれども,安保弁護士 からは,日弁連意見書を踏まえまして,課徴 金の性格,専属告発制度,被害者の救済のあ り方など,報告書の問題点と課題についてお 話しいただく予定であります。
また,岸井教授が説明されるであろうポイ ントはかなり多岐にわたっておりまして,例 えば,刑事罰もしくは行政制裁金のいずれか に一元化した制度にするのではなく,また,
事件によって刑事罰と制裁金を選択的に賦課 するのでもなく,さらにまた,事業者に制裁 金,従業者個人に刑事罰という現在のイギリ ス方式でもなく,課徴金・刑事罰を併用する システムを維持する理由ないしは意義が一つ であろうと思います。
あるいは,新課徴金は,算定率を引き上げ たうえに加算する制度も含まれているわけで ありますので,これは制裁金ではないのかと いった新課徴金の性格の問題,あるいは,公 取委の裁量性を否定したままで加算や減免制 度を導入することが可能なのかといった問題,
さらに二重処罰論などがおそらくは議論され るところであろうと思います。
最後に,今回の改正は隣接する他の法分野 との関連も重要であります。その一つは刑事 法との関係であります。早稲田大学の野村教 授には,犯則調査権導入の是非と,その後に 生じるであろうさまざまな問題,告発に始ま る刑事手続上の諸問題,あるいは,今回の報 告書では触れられておりませんけれども,法 人処罰の基本的な問題をお話しいただきます。
もう一つの隣接分野は証券取引法でありま して,どうやらこちらのほうが法案が出てく るのは早いようでありますけれども,ご存じ のとおり,証取法におきましても,課徴金制 度を導入するために改正法案が提出される予 定であります。課徴金をどのような性格のも のとしてとらえるのか,あるいは,証取法に
おきましては不公正取引に対して刑事罰や自 主規制機関が課す過怠金がすでに存在するわ けで,そのうえに課徴金制度を導入するとい う今回の改正は,独禁法にとってもたいへん 参考になるわけでございます。本日は,東京 証券取引所の天野さんに,「証券取引法にお ける規制のエンフォースメント」と題してご 報告いただきます。
以上,ごく簡単に報告のご紹介をしてまい りましたが,最後に,本シンポジウムの目的 について蛇足ながらお話しさせていただきま す。端的に申しまして,本日のシンポジウム には二つの目的があると言っていいかと思い ます。
一つは,そもそも独禁法改正の必要がある のかどうか,あるとすればどのような内容の 改正が必要なのかについて,自由に討論して いただくことであります。自由にと申しまし たのは,もちろん独禁法改正の必要があるか ないかも含めてですけれども,例えば,独禁 研報告書や公取委の「基本的考え方」に書か れていることに対する議論はもちろんですけ れども,報告書にあまり書かれていない,損 害賠償ですとか差止請求などの民事的救済な いしは私人による法執行についてもご議論い ただいて結構かと思いますし,あるいは,不 公正な取引方法の規制も重要ではないかと いったご意見も賜れればと考えております。
もう一つの目的はこういうことであります。
今回の独禁法改正は四半世紀ぶりの本格的な 大改正だと言われておりますけれども,二十 数年前の大改正,つまり 1977 年の改正と背 景を比較してみますと,いろいろな対照がみ られるわけであります。
当時はオイルショックに端を発した物価の 異常な高騰,大企業による買占め・売惜みな どの反社会的な行動があり,アンチ・ビッグ ビシネスムードといったようなものが国民の 間に広く共有されておりました。それに対し て今回は,バブル崩壊後のいわゆる「失われ た 10 年」が 10 年以上続くなかで物価が下が
り,あるいは,企業の全般的な利益率につい ては下がっていると言われております。その ような意味では,現在の情勢は独禁法の強化 改正に有利とは必ずしも言えないわけであり ます。
しかし,談合は世界的にみますとハードコ ア・カルテルであり,原則違法・当然違法の 行為類型であります。このような行為が全国 に蔓延し,同じ事業者が談合を繰り返し,予 定価格ぎりぎりで落札して納税者の税金を ガッポリ奪っているのに何もしないでいいは ずはないのではないでしょうか。それにもか かわらず,今回は当時と比べますと強化改正 に向けた国民的な盛上りがやや力を欠くよう にも思われます。
したがって,本シンポジウムがそのような 国民的な運動の盛上りに一つのきっかけを提 供することができれば望外の喜びであると考 えております。有意義な議論ができることを 期待いたしまして,私の前座的な報告はこれ で終わりにいたします。
ただ今ご紹介にあずかりました公正取引委 員会の諏訪園でございます。たいへん過分な お褒めのお言葉をいただきましてありがとう ございます。
この話をいただきましたのは今年の1月で ございまして,その際には,通常,3月の頭 でありますと法案はだいたい仕上がっている ころで,もう決着済みの時点であるとすると 少し遅いかなと思っていたのですが,全然遅 くない状況になってまいりまして,そういう 意味では,きょうは最後のお願いといいます か,あともう一押しということでお願いした いということでありまして,本日はお招きい ただきまして本当にどうもありがとうござい ます。
張り切って資料をいろいろと付けすぎてし
まいまして,若干多くなりすぎましたので,
比較的見やすい資料を中心にご紹介申し上げ たいと思っております。
20 頁目を開いていただけますでしょうか。
ここに「執行力・抑止力強化のための独占禁 止法の見直し〜 21 世紀にふさわしい競争政 策の確立〜」とございまして,まさに先ほど 石戸谷先生からお話がございましたように,
市場原理,自己責任原則を軸とした日本経済 を再生する。それによって新規参入を活性化 しまして,それによって雇用も創出されるだ ろう。まさに日本経済の「失われた 10 年」
を取り戻す再生のための重要なカギだろうと 私どもは位置づけております。そういった観 点から,実は,この改正にあたりましては,
民間有識者等から構成されます「総合規制改
〇大橋幹事(司会) どうもありがとうござ いました。
それでは,次の報告に移りたいと思います。
次の諏訪園貞明さんは,公正取引委員会の経 済取引局の企画室長という要職にある方でご ざいますけれども,諏訪園さんは非常に庶民 的な方でございまして,本当だったら役人が 日弁連の委員会とか,あるいはこういうシン ポジウムに出てきて皆さんの前でお話しする のはだれも非常に嫌うのです。でも,諏訪園 さんはそれをものともせず,こういうところ へ出てきてお話をしてくれる。
今,独禁法改正の問題も一番重要な時期に かかっているということで,どうも政治家の 皆さんを相手にして日夜苦戦しているようで,
これをわれわれみんなで支援してあげないと,
本当にいい独禁法の改正にならないと思いま す。そういうところも含めて,「独占禁止法 改正の基本的考え方について」ということで ご報告いただきます。よろしくお願いいたし ます。
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独占禁止法改正の基本的考え方について諏訪園貞明氏(公正取引委員会経済取引局企画室長)
革会議」からも答申をいただきまして,独禁 法の執行力・抑止力の強化と,特に措置体系 については抜本的に見直すべきだというお話 もいただき,そういったご意見を踏まえまし て私どもも法案を準備させていただきました。
また,一昨年から,2年前でございますが,
「独占禁止法研究会」を立ち上げまして,経 済法学者,経済学者,また,民間,経済団体 等のご推薦,それから消費者団体のご推薦の 方,それから中小企業の団体のご推薦の方に も参加していただき,1年余りにわたりまし て,いろいろと綿密に検討させていただいた ということでございます。
特に,私どもがいろいろと勉強させていた だいて気づいたのは,21 頁目に「カルテル 規制の今日的意義」とございますが,これは
OECD
(経済開発協力機構)という国際機関 でまとめたレポートを出しております。これ は先進各国のいわゆる経済についての経験則 をもとに,カルテル規制にはどのような意義 があるのかをまとめたものでございます。ご 承知のように,カルテルについては通常,先 ほどもありましたように,ものの値段を上げ るわけでございますから,まさに消費者にし わ寄せがくるというのが一番大きな弊害だろ うと思います。一方で,
OECD
の報告によれば,企業に とっても二つあるだろうと。結局,コストが アップして,特に中小企業のように高いもの を買わされるリスクが非常に高くなる。それ からもう一つ,カルテルをやっている企業の 事業部門の側は,カルテルをやればやはりも うかりますから,ぬくぬくとしてしまうわけ でございまして,どうしても新しい商品を開 発してイノベーションをやっていこうという 意欲が低下するだろう。それから,コスト削 減意欲が低下する。そういった負のコストも 企業側にかかってくるだろう。今回,私どもは「独占禁止法研究会報告書」
を昨年 10 月に発表しまして,いろいろなご 意見をいただいたのですが,なかには地方の
建設会社の方からもご意見をいただいており まして,2カ月ぐらい前でしょうか,その社 長さんからお電話をいただきまして,「この 報告書に書かれている措置減免制度による課 徴金の引上げはぜひやってほしい。実は私も 談合を二十何年やってきたけれども,この際 抜けようと思う。それは結局,建設業界もこ ういった談合体質にドップリつかっている。
いってみれば,新しいビジネスないしは新し いことをやろうとするとどうしても業界から 疎外されてしまう。それをやって何がどう なっているかというと,会社の中では調整が うまいやつだけが偉くなっていく。本当に技 術開発をやろうというやる気のある若い人が どんどんいなくなってしまう。これだと会社 はおかしくなってしまう」とおっしゃってい まして,そういう意味でも,やる気のある企 業経営者はどんどん変えていこうとされてい る。
そういう意味で,私どもも,カルテル規制 をきちんとやっていくことが日本経済を再生 するカギだろうと思っております。もちろん,
「デフレなのに課徴金を上げてどうするんだ」
と 言 う 声 も あ り ま す が , 実 は ア メ リ カ は 1993 年に,国際カルテルに対して厳しく取 り締まろうということで措置減免制度等を導 入したわけでございますが,ご承知のように,
1992 年に今のブッシュ大統領のお父さまが 大統領選で負けた頃,1993 年はアメリカ経 済はどん底にあったわけでございます。その あとクリントン大統領が当選しまして,1993 年に措置減免制度というリーニエンシー・プ ログラムを新しく導入して,国際カルテルに 対して相当厳しく取締りを始めた。その後,
アメリカの高い経済成長は 10 年間ずうっと 続いて,つい最近,不景気になった時期もあ りましたが,あっという間に回復しているわ けでございます。他方,
EU
も 1996 年にリー ニエンシー・プログラムを導入して,その後 の景気回復につなげていると考えられるわけ でございまして,まさに国際競争力といいますか,国の競争力をアップするための大きな カギだろうと思っているわけでございます。
では,日本ではどうなのかをその次の頁で 見ていただきますと,「実効性確保の観点か らの課徴金制度の見直し」という表題の資料 でございますが,実際問題として,先ほどご 案内にありましたように,違反行為を繰り返 す事業者が後を絶たないのが現在の状況でご ざいます。
そ の 次 の 23 頁 目 以 降 に 「 同 一 事 業 者 に よって違反行為が繰り返された主要事例」が ございますが,1番目は電機メーカーによる 入札談合事件です。これは公表されているも のでございますので企業名を書かせていただ いておりまして,関係者の方には恐縮でござ いますが,松下さんとか三菱さんといった世 界のトップメーカーの企業が,これは平成3 年7月に今の課徴金の算定率を引き上げて以 降わずか 10 年余りのところでございますが,
2回も3回も繰り返していらっしゃる。
それから,2番目の測量事業者による入札 談合事件,これは東証一部上場企業も含まれ ていますが,4回繰り返して,3億円も課徴 金を国庫に納めていただいている。たいへん ありがたいのですけれども,ただし,私ども も課徴金を取るために摘発しているわけでは なく,談合をやめていただきたい,これで終 わりですという話のはずが,どうもその後も 律義に納めていただいているということでご ざいます(笑)。
その次以降,24 頁目,25 頁目にもずらず らと,水道メーターメーカーらによる入札談 合事件,ゼネコンによる公共工事入札談合事 件,土木工事事業者による入札談合事件。そ れから,カルテルも結構ございまして,管製 品メーカーのカルテル入札談合,病院寝具の カルテル,プロパンガスのカルテル,塗料事 業者によるカルテル事件,その次の頁には鉄 鋼関連事業者,化学関連事業者,最後はト ラック販売事業者ということで,最近,中小 の運送・トラック業者などは,トラックの値
段が少し上がると廃業に追い込まれるみたい な話もございますが,そういった方々を相手 にカルテルが行われているということでござ います。
その次の頁の内閣府の世論調査,これは3 年前でございますが,入札談合の監視・取締 りにつきまして,7割近い国民の方々から不 十分だというおしかりを受けているわけでご ざいまして,これは私ども公正取引委員会も 非常に猛省しなくてはいけないと思う次第で ございます。
ただ,一方で,私どもも摘発を一生懸命 やっているのですが,先ほどの 22 頁目にお 戻りいただきますと,摘発を一生懸命やるだ けではなかなか限界があると感じております。
我が国と他の先進国の制度とを比較してみま すと,今回の研究会で米国・
EU
を勉強しま したら,やはり非常に高額な罰金ないしは制 裁金を賦課している。その下にグラフがございまして,
EU
と日 本の1事業者当たりの課徴金額を比較いたし ますと,これは過去3年間で大企業に限って おりますが,日本は1事業者当たり 3,
700 万 円,EU
は1事業者に対して 28 億円平均で課 しているわけでごさいまして,段違いという 感じがしております。このあたりはもう少し 抜本的に見直さないといけないということが 今回の研究会の報告書でも現れております。その右側に「見直しの方向性」としまして
「算定率の引上げ」とございます。今,違反 行為をやると,その売上高の6%が課徴金の 内容ですが,その6%というのは,売上高営 業利益率の平均値でありまして,不当利得は それぐらいだろうとの推定の下で課されてい るわけですが,それを上回る算定率とするこ とで違反行為を防止する制度に改めていく必 要があるだろうということでございます。ま た,繰り返し違反行為をやったような企業に ついては,さらに加算していくことで二度と 起こさせないかたちの制度の見直しが必要だ ろうというのが私どもの認識でございます。
他方で,先ほど申し上げましたように,企 業さんによっては,談合などをやっていると 本当に有能な社員が逃げていってしまうとい う危機感をもっていらっしゃる企業経営者も いらっしゃるわけです。実は,そういった 方々は談合から抜けて当局においでになるこ とも日本の場合でも間々あります。
ただ,わが国では,そういった方々を応援 するような制度がございませんで,少し飛び ますが,29 頁目にありますように「カルテ ルの効果的規制には,措置減免制度の導入が 不可欠」でございます。これは一定の要件,
つまり,自ら違反行為はやめようと当局に申 し出てこられた違反事業者については課徴金 を減免する。こういう制度は実は
EU
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7 諸 国,韓国,オーストラリア等にも導入されて いるのですが,日本にはこういう制度はない。ですから,もうやめようと思って公正取引委 員会に情報や資料を全部お持ちいただいたと しても,「貴社に対しても課徴金がかかりま すよ」ということで,いってみれば,そのほ かの方々と悪平等みたいな格好になっている わけでございます。
そういう意味で,今回の見直しでは,単に 引き上げるだけではなく,自分から違反行為 はやめようという方についてはきちんと応援 をさせていただこうと。その結果,カルテル については,実際の事案はどうだったかとい う真実も解明されやすくなるだろうというの が二つ目のポイントでございます。
実際,こうした制度を
EU
が行っておりま すので,その次の 30 頁,31 頁目でございま すが,日本企業もいろいろと利用されていま す。例えば 31 頁目にございますが,食品用 香料事件ということで,欧州市場で価格カル テルを行っていた武田薬品工業さんが,こう いったことをやっていたらまずいということ で,検査が開始される前に欧州委員会に資料 を提出されて,「こういうかたちで違反行為 を行っていました」とご報告されたものです から,制裁金についてはすべて免除という格好になっていますし,その下の食品防腐剤の 事件でも,チッソさんが同じようなことをさ れた。
このように企業自体が,いわゆる自浄作用 というのでしょうか,自ら違反行為をやめよ うといった動きをする場合,これを応援する 制度を先進各国で設けているということでご ざいまして,私どもも,そういった制度を設 ける必要があるのではないかということが二 つ目のポイントでございます。
そのほか,独占禁止法研究会では犯則調査 権限の導入,それから,私どもの審判手続は 行政審判ですが,違反事業者の方も自らの違 反事実について,公取委が調べた内容が違う ということであれば,それをより主張してい ただきやすくするようなかたちで,私どもの 処分の前に,事前にご意見を言っていただい たり証拠を提出していただく制度を設けるこ とで,企業の独占禁止法遵守をトータルに応 援していこうと考えているわけでございまし て,そういう意味では,先ほど石戸谷先生か らご案内のように,まさに筋の通った内容だ と私どもは自負しておりますが,私どもの足 りないところは,またこの後のご議論でいろ いろとご指摘いただき,そのご議論を踏まえ て私どももいろいろと見直してまいりたいと 思いますので,よろしくお願い申し上げたい と思います。以上でございます。
〇大橋幹事(司会) どうもありがとうござ いました。
それでは,次の報告に移ります。「独占禁 止法研究会報告書」に対する日弁連の意見書 がありますので,その意見書の内容について,
徳島弁護士会会員で,独禁法部会の部会長で あります大西聡弁護士から,よろしくお願い します。
ただ今ご紹介にあずかりました独禁法部会 の部会長をしております弁護士の大西です。
われわれの部会は,消費者とか中小企業者 の観点から独禁法を考えていこうというスタ ンスでやっております。このたび,去年,独 占禁止法研究会の報告書が出ました。それで 意見募集がなされましたので,われわれとし てもこれに対して意見を出そうということで 意見書をまとめました。
お手元の資料の通し番号の 33 ぺージ以下 がわれわれが出した意見書です。いろいろ書 いているのですけれども,通し番号の 49 頁 に意見書の要旨をまとめております。左側の
「報告書」と書いてあるのが公正取引委員会 の独占禁止法研究会の報告書です。その右側 に「日弁連意見書」とあるのはそれに対する われわれの意見,そういうかたちで書いてお りますので対照させていただければと思いま す。
基本的に,今回,独占禁止法研究会が出さ れた報告書について,われわれ日弁連として は賛成の方向で考えています。不十分な点は 確かにあります。しかし,基本的な方向とし ては賛成であるというスタンスです。日弁連 は,内容にもよるのですけれども,批判的な 見地から辛口の意見とか反対の意見などが結 果的には多い。しかし今回は,別に公正取引 委員会に頼まれたわけではないですけれども,
基本的な方向では賛成である。つまり,今回 の報告書の内容は,日本の経済,日本の業界 と国民・納税者の立場を考えると,こういう 改正はぜひ必要であるということでまとめら れたことがよくわかると思っています。
「意見の趣旨」を見ていただきたいのです が,先ほど,諏訪園さんからもありましたが,
課徴金の率の引上げと加算制度,課徴金への 措置減免制度の導入,価格カルテル以外の重 大な違反行為への課徴金の導入,違反事件調
査への犯則手続の導入,不公正な取引方法に ついての刑事罰の導入,審判手続の見直しに 賛成する,しかも早期の立法化を求める,と いうような意見を書いています。
ただし,その中に留意点ということで,措 置減免制度(リーニエンシー)の設計にあ たっては,申告する動機づけを強化するなど,
実際に機能する制度となるよう十分配慮され たい。また,入札談合における非落札者,つ まり談合に加わった落札していない人につい ても課徴金を課する制度を導入すべきである。
それから,不公正な取引方法に違反する行為 に対して課徴金を課する制度を導入すべきで ある。犯則調査については,適正手続の観点 から,いかなる基準でこれを発動するのかに ついて,その基準を公表すべきであろう。専 属告発制度については撤廃をして,検察官が 公取委の告発を待たずして捜査に着手して起 訴できるようにすべきであると書いています。
さらに,今回,われわれが少し残念だった のは,違反行為に対する民事救済制度,損害 賠償とか差止制度は十分機能していないと言 われております。その強化改正の検討につい てあまり触れられていませんでしたので,こ れについては早急に着手すべきであるという 意見を述べております。詳しいことはまた安 保先生からお話があるのですが,「意見の理 由」をさらっと見ていきたいと思います。
まず,改正の必要性については,われわれ としては公正取引委員会の言うとおりですが,
もう少し言いますと,今の日本経済は非常に 行詰りを見せている。不良債権問題と日本型 の談合体質が非常に日本経済の手かせ足かせ になっていると言われています。膨大な財政 赤字を抱えておりまして,財政再建が叫ばれ ている。そうなると,やはり無駄をなくすこ とが非常に大事になってくる。結局,談合に よる利得は年間6兆円とも言われています。
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「独占禁止法研究会報告書」に対する意見書の概要大西 聡弁護士(徳島弁護士会)
6兆円というのはちょっとした国の国家予算 です。無駄を省くという観点から,これは看 過しなえないだろう。
それから,業者にとっても営業の自由が憲 法上保障されております。優良業者が一生懸 命効率よく頑張って,よりいいものをより安 く作ろうという意欲はもっていても,結局,
談合によってそうでない業者が落札すること になると,競争意欲もなくなりますし,コス ト高にもつながる。優良な効率的な業者が落 札しないとなれば,そうでない業者が仕事を 受け持つことになりますから,コストが非常 に高くなる。そのようなしわ寄せは結局,納 税者である国民に来る。先ほど言った6兆円 はなんとかしなければいけない。しかも,競 争力を高めるという業界の利益にとっても,
これは非常に大事な問題だと考えます。
そういうことで,やはり改正をしなければ いけないのですけれども,独占禁止法が十分 に機能していれば当然こういうことにもなら ないだろう,それは独占禁止法が十分機能し ていないからではないかということから,や はり改正の必要性がおのずと出てくるのだろ うと思います。
課徴金の問題についてですけれども,先ほ ども諏訪園さんの話がありました。今までの 課徴金自体はやはり少なすぎるということで,
日弁連としても引上げに賛成である。しかも,
課徴金を受けても再度再々度繰り返す業者が いるということで,加算制度についても賛成 である。ここで問題となりますのは,課徴金 の水準を引き上げるとともに加算制度を導入 した場合に,憲法 39 条の「二重処罰の禁止」
にあたるのではないか,憲法違反ではないか という議論が出ています。
しかし,課徴金は,違反行為によって社会 にもたらされた損失を負担または補償させる,
社会的公正を確保するという,いわゆる行政 上の目的を達するための行政罰である。また,
違反行為が継続している期間にわたって一律 に一定率の金額を徴収するものである。加算
制度も,そのような目的の実効性確保の観点 から,法定された客観的な要件に該当する場 合に定率の付加をされて課される金額だとい うことを考えますと,刑事罰とは趣旨,目的,
手続を異にしている。したがって,課徴金と 刑事罰を二重に課したとしても「二重処罰禁 止の原則」に違反するとは言えないだろうと 考えます。このへんの議論は,岸井先生や野 村先生からまたあると思います。
措置減免制度については,仮にカルテル・
談合にかかわっても,早くそこから離脱する インセティブ,動機づけを与えること,それ から,やはり密室で行われますから,一定の 情報を公にする利益もあります。こういうこ とからすれば,措置減免制度は不可避であろ う。実効性を確保するために有効であること は明らかであろう。ただ,具体的にどういう 場合にそれを発動するかという要件について は,きちんと定めておくべきだろうと思いま す。減免対象者が課徴金については減免され ることになっても,刑事告発をされて刑事罰 を受けることになりますと,やはり意欲がそ がれてしまうということで,減免要件に該当 する事業者については刑事告発をしない措置 をとりうるような制度を構築する必要がある だろう。これは公取委に対して自首したもの と認められますので,告発しないことはそれ なりに意味があるだろう。
ただ,われわれとしては,刑事処分を受け ないですむというような手続的な担保をすべ きではないかということで,一定の要件を満 たす場合には刑の免除をするといった手続を 整備する必要があるのではないかと考えてお ります。このへんについては,また後ほど先 生からお話しいただければと思っております。
かつては,価格カルテルがカルテルの典型 的なものでしたけれども,最近,それ以外の 形態のカルテルがたくさん出てきております。
また,私的独占に対して課徴金は課しえない ことも問題ですので,価格カルテル以外のカ ルテルに対する課徴金,私的独占に対する課
徴金の導入もやはりすべきであろうと考えて おります。
刑事告発の見直しの観点についてですけれ ども,悪質で重大な事案について積極的に刑 事告発をしていくためには,事件審査の組 織・体制について整備を図る必要があるだろ う。これについては賛成である。
そして,犯則調査権限を付与することは,
適正手続の観点からも大事だろうと考えます し,刑事告発を積極化する観点からも大事だ ろうと考えられますので,われわれとしまし ては犯則調査権限の導入についても非常に賛 成である。ただ,いかなる要件のもとで発動 するのかについては規定をしておくべきで,
少なくともその内容が公開されてしかるべき ではないかと考えています。
専属告発の点については,公正取引委員会 の人的・物的体制とか,公取委だけではなし に,一般消費者とか国民が独禁法の運用状況 を監視することは非常に大事だろうというこ とと,それがまた独禁法の執行力の強化にも つながるだろうということで,専属告発制度 は撤廃すべきであろうとわれわれは考えてお ります。検察官が悪質違反事件の捜査に着手 して起訴できる,また,特捜部と同じような かたちで独禁取締部のようなものを設置して,
捜査機能の充実を図ることが検討されていい のではないかという意見を出しております。
東京高裁専属管轄について廃止すべきだと いうことについても賛成です。ただ,各高等 裁判所所在地の地方裁判所に管轄を与えるこ とが適当ではないかとわれわれは考えており ます。
それから,罰則規定の見直しとか,不公正 な取引方法に対する刑事罰の導入,課徴金の 導入,民事的な救済手段の充実・強化の検討,
これらも必要であろうとわれわれは考えてお ります。
不公正な取引方法については,罪刑法定主 義の観点から,例えば欺瞞的顧客誘引の問題 とか再販価格拘束など一定のものについては,
構成要件を明確化したうえで刑事罰を導入す ることが検討されてよいのではないかと考え ております。
審判手続の見直しにつきましても,排除措 置と課徴金納付命令の一体化・同時化につい ては,やはりそうすべきだろうと考えており ます。審判手続開始による納付命令が失効し てしまう,つまり,現行法制度のもとでは課 徴金納付命令が不服申立てによって失効して しまうのですけれども,それは「争い得」を 認めてしまうことになるのではないかという ことがありますので,課徴金納付命令は,不 服申立てによって審判開始決定が下されても 失効しないようにして,供託金を納付する,
もしくは供託させる方法がいいのではないか と考えられます。
それから,先ほども言いましたけれども,
民事上の措置の強化について,もっと検討す べきであろうというような意見も書いており ます。
ということで,先ほども述べましたけれど も,今回の公正取引委員会の報告書について は基本的には賛成です。不十分な点はあるの ですけれども,ぜひこの方向で進めていただ きたいとわれわれは考えております。
簡単ですけれども,以上でわれわれの出し ました意見書の報告を終わらせていただきま す。どうもありがとうございました。
〇大橋幹事(司会) どうもありがとうござ いました。
少し淡々と進みすぎていますけれども,こ の次は生々しい話も出てくるかもわかりませ ん。「入札談合の実態について」ということ で,先ほどまで三重弁護士会所属でありまし て全国的に活躍しておりまして,このたび長 野県の軽井沢へ移りましたけれども,長野県 弁護士会所属の松葉謙三さんからお願いいた します。
ご紹介いただきました弁護士の松葉ですが,
私のレジュメは資料の 53 頁以降,数頁あり ます。
私がお話しさせていただくことは,まず,
日本には入札談合が蔓延している。何回も何 回もやるという問題ではなく,しょっちゅう やっているというのが私の感想でありまして,
捕まったあともずうっとやっている。という のは,私は,談合か談合ではないか,そのあ とも入札結果調書等を見ておりますが,少な くとも談合の可能性がきわめて高いといえる 入札結果ばかりでございます。まず私がお話 しすることは,日本には談合が蔓延している。
その談合による損害は 15 %ないし 20 %だと。
では,なぜ日本に談合が蔓延するのか,そ の政治的な問題を簡単に申し上げたいという ことと,それからさらに,私どもはアメリカ とか韓国の入札制度の調査をしてきましたが,
特にアメリカの人が言うには,「3%から 5%ぐらいは談合があるかもしれないけれど も,談合を相当になくしている」と。私ども の調査の結果でも,そのように認識できたと 思います。そこで,日本とアメリカの入札制 度の違いがどこにあるのか,アメリカはどの ように談合をなくしているかということを前 提といたしまして,では,日本でどのように すれば談合がなくなるかという盛りだくさん の話になりますが,時間がございませんので 簡単に申し上げたいと思います。
まず,談合が蔓延しているというのは事実 かどうかという問題ですが,55 頁を見てい ただきたいのですが,日弁連の当部会で,各 県あるいは政令指定都市についてアンケート 調査と資料の提出をお願いした結果,私ども の考えとしては,その中の3自治体,長野県,
宮城県,神戸市の三つの自治体は談合をかな り防止している。それが 75 %から 83 %ぐら いの落札率です。落札率というのはご存じだ
と思いますけれども,予定価格に対する落札 価格の割合でございますが,それ以外の自治 体はほとんど,平均の落札率が 90 %以上と いうことで,これらの自治体には談合が蔓延 していると思っております。
一つひとつの入札につきましても,90 % 以上の落札率の入札については談合の可能性 がきわめて高いと私どもは判断しております。
その根拠といたしましては,一つは,私は 談合関係の住民訴訟を 10 件ぐらいやりまし て,そのなかで刑事記録をほとんど閲覧して おります。その刑事記録を見ますと,談合は どのようにやるかといいますと,まず,当然 ながら,本命業者・落札予定業者を決める。
落札予定業者・本命業者が一応積算をしまし て予定価格を推定する。予定価格を推定する 場合にも,パソコンで推定してみても5%な い し 10 % ぐ ら い の 誤 差 が あ り ま す 。 し た がって,その本命業者は自治体の担当者のと ころに聞きに行って,「私の計算ではだいた い幾らが予定価格ぐらいと思いますが,どう ですか」と言いますと,担当者は「だいたい いいですね」とか「ちょっと高いですね」
「ちょっと低いですね」と教えてくれる。ほ とんどそのような調書ができております。
それで,本命業者は予定価格ぎりぎりのと ころに自分の入札価格を決めて,そして,本 命でない他の業者に対しては「私のところは 幾らで入札するから,あなたたちは幾らぐら いにしてください」ということで,指名する 場合,「幾らにしてください」とか,あるい は「幾ら以上にしてください」というような ことを言います。そうすると,多くの入札に おいては予定価格ぎりぎりに落札され,あと の業者は予定価格より高い価格で落札する事 態になります。
56 頁・ 57 頁の別図3,4,5を見ていた だきたいと思いますが,これは一つの入札で,
Q
入札談合の実態について松葉謙三弁護士(長野県弁護士会)
それぞれの業者が予定価格の何%で入札した かをグラフにしたもので,黒い点がそうであ ります。そして,100 %のところが予定価格 でございます。本命業者,要するに落札業者 だけが予定価格ぎりぎりの 100 %より少し下,
これだと 99
.
6 %から 98.
9 %,99.
9 %で落札し ておりますが,このように1社だけが予定価 格以下,あとは予定価格以上というような入 札が非常に多い。も ち ろ ん , 予 定 価 格 の 推 定 に は 5 % ・ 10 %の誤差がありますので,それが外れた 場合には予定価格の例えば 92 %で落札する とか,95 %で落札するとか,そういう例が あるわけですけれども,それもやはり談合だ と推定されます。
役所の担当者は,談合のことを言われると,
「最近,予定価格はパソコンなどで非常に簡 単に推定できるんです」と言いますけれども,
「予定価格が推定できるというけれども,予 定価格以上で入札している業者がいっぱいい るじゃないですか。これはわかったのですか。
わからないのですか。1社だけが予定価格が わかったということになりますね」という話 になってしまうわけで,そういうことで,こ ういうグラフが本当に蔓延している実態であ ります。
例えば,別の事件で 55 件ぐらい入札があ りまして,そのうち,業者が「これは談合で きませんでした」というもの 55 件ぐらいに ついて区別させて,私が計算したところ,談 合 で き な か っ た も の に つ い て は だ い た い 75 %ぐらいで落札している,談合したもの は 95 %から 99 %というような状況にありま す。そういうのを見ても,90 %台は談合に よるものであると推定できます。
そして,私がいろいろな自治体の入札結果 を検討した結果でも,ほとんどが 95 %から 99 %で落札をする。そして,ばさっと離れ て 80 %とか 75 %がいくつかある。100 のうち 三つか四つそういうのがある。そういうのは 結局,私の推定では,100 %みんな談合を求
めて一生懸命やりますけれども,談合が成立 しなかったものだけ本当に競争になって,最 低制限価格のあたりの 75 %とか 80 %ぐらい で落札する。そういう実態だと推定できます。
そのようなところから,90 %以上は談合で あろうと強く推定されると思います。
特に,宮城県と長野県につきましては,55 頁のグラフにありますように,入札制度改革 前と改革後,旧制度・新制度ということで二 つ入れておりますけれども,宮城県の場合は,
一般競争入札を導入する前は平均落札率が 95 %だったのが,一般競争入札を導入した ら 79
.
5 %,長野県の場合は,旧制度のときは 96.
4 %,一般競争入札にしたら 75.
5 %という ことで,要するに,談合が非常に難しい制度 にすれば談合はできなくなるということで,そ う い う こ と か ら み て も , 競 争 を す れ ば 75 %から 85 %ぐらいになると思います。
そういう意味で,日本のほとんどの県,ほ とんどの政令指定都市は談合が蔓延している と言えると思います。だから,先ほどのお話 のように,談合が後を絶たないという問題で はなく,業者の場合は 100 %談合を求めて話 合いをします,そして,談合がうまくいかな いものが少しある。最近は 10 %から 15 %ぐ らい話合いができないものがある。それは,
最近,工事数が少なくなって話合いが難しい わけです。
今,日本の入札制度が非常に談合がしやす いのは,指名競争入札ということで,工事現 場の近くの 10 社から 15 社を指名する。そう すると,いつもの同じメンバーで入札をする。
そうすると,「この工事はA業者」「この工事 はB業者」ということで,話合いが非常にし やすいわけです。
ところが,一般競争入札にしまして,50 社とか 100 社というような業者が入札に可能 性があることになると話合いが非常に難しく なって,実質談合不能ということで落札率が 急落するという事態であります。そういうこ とから,日本は談合が蔓延している。
では,なぜ蔓延してくるかといいますと,
私の目からみれば,国も自治体も「談合をし てください」という顔をして入札制度をやっ ていると思います。それは,先ほど言いまし たように,談合の非常にしやすい入札制度し かしない。そして,罰則もペナルティーも非 常に少ない,ばれにくい制度を導入しており ます。
では,どうしてそんな制度にしているかと いいますと,それは,よく言われる政官財の 癒着です。政治家と官僚と業者が,それぞれ 自分たちの利益のために談合をする。談合を やめさせてもなんの利益もないのです。損を するのは国民だけです。政官財の人たちが利 益があるからこういうことをやって,業者の 人 は , も ち ろ ん 談 合 を す れ ば 15 % な い し 20 %利益が上がるわけですけれども,その 中から政治家に政治献金をする。政治家は,
談合しやすいような制度をつくったり,ある いは予定価格を官僚のところへ行って教えて もらったりして,談合しやすい制度を一生懸 命にやっている。さらに,建設業者は選挙に 非常に熱心ですから,票もたくさん取ってき てくれるという関係になります。
では,官僚にはどういう利益があるかとい うと,天下りができるのです。そういう人た ちは定年後に建設業者にたくさん行っていま す。その人たちはどのような活動をしている かというと,予定価格を聞きに行ったりして 教えてもらう。要するに,先輩だから教える とか,あるいは,そのようにすれば自分たち もあとから天下りができて,定年後にいい仕 事ができるということです。長野県とか宮城 県,あるいは横須賀市などは談合をなくした ものですから,天下りで来てくださいとはほ とんど言われない実態になっています。
そういうことから,政官財癒着でそういう 人たちがもうける。そのために談合して,談 合してもうかったお金は,そういう人たちに 配って利益を得ていることになるわけです。
だから談合は一向になくならないと思います。
そういうことで,日本の政治は談合によって 大きくゆがめられていると思います。
私どもはアメリカへ行きましたけれども,
アメリカの制度と日本の制度を比較したいと 思います。58 頁を見ていただきたいのです が,私は当時,三重市民オンブズマンの代表 をしていたものですから,アメリカと日本の 入札制度について,もちろん日弁連で調査し たものを材料として表を作ってみたのですけ れども,要するに,アメリカの場合は談合を しにくい入札制度です。アメリカは一般競争 入札ということで,どの業者でも入札に参加 できることになっています。ただし,「ボン ド制度」といって,ボンド会社等が許可しな いと入れないわけですが,いずれにしても,
どの業者が入札に参加してくるかわからない 制度で,たくさんの業者が参加可能性がある ということで談合が非常にしにくい。
そして,もう一つは厳しいペナルティー。
アメリカの場合は,談合をするとほとんど 12 カ月ぐらいの実刑です。平均的にいうと 12 カ月ぐらい刑務所に入らなければならな いということと,それから,罰金なども談合 による損害のだいたい2倍です。それから,
資格もだいたい3年間近く剥奪になる。それ ばかりでなく,談合によって国が損害を被れ ば,司法省の検察官が自ら損害賠償請求をす るのです。それも損害額の3倍の請求をする 権利がある。検事の人たちにも話を聞きまし たけれども,「談合行為があったら,われわ れはどこまでも厳しくやる」と言っておりま した。そういうことで,日本の国とアメリカ の国とは談合問題については姿勢が全然違う のです。
それからもう一つ,談合がばれやすい制度 になっています。これが先ほどの措置減免制 度になるわけですけれども,アメリカの場合 は 1993 年ごろに導入して,当初はリーニエ ンシーはそれほど働かなかったわけですけれ ども,1996 年ごろから,司法省の検事がそ の業者に対して呼出しをかけたあとでも,一
番最初に談合の事実を明らかにした場合には,
その1番目に来た業者は必ず免責されるとい う制度にした。その前は,司法省が呼出しを かけたあとに来てもだめで,要するに,役所 にわかる前にそういう事実を知らせない限り は免責されない制度だったのが,1996 年か らは,呼出しをかけてからでも一番初めに自 白すればいいという制度になった。
そうしたら,その検事が言うには,「その 制度はアメリカ 100 年の歴史の中で本当にす ごいものだった」と。これによって呼出しを かけると,とにかく1番でなければいけない わけですから,2番目に来たらアウトでなん にもならないわけですから,そうすると,司 法省のドアのところで「おれが1番だ」とい う感じでケンカをするぐらいだ―それは冗 談かもしれませんが―という話を聞いて,
そうなのかと納得したわけです。
したがって,要するに刑罰が厳しい。実刑 であり,罰金もすごい。それで,資格剥奪に なるということは入札に参加できなくなって しまうわけですから,そのような厳しい制度 のなかで免責制度があることによって,1番 に行けば免責される。
ただ,日本の場合は今のところ,仮に今の 時点で免責制度をつくっても,課徴金が6%
だったら,いくら免責制度をやってもらって も大したことはない。アメリカの場合は,刑 務所に行くか行かないかという問題と,罰金 もものすごいということで免責制度が効いて いるのです。韓国にも免責制度はありますけ れども,やはり罰則が大したことないもので すから,あまり成果が上がっていないという 話でした。
これに比べて日本の入札制度はどうかとい いますと,先ほど言いましたように,本当に 談合しやすい制度です。私に言わせれば,自 治体や国の人たちは本当に「どうぞ談合して ください」という顔をしているのです。だか ら,本当に談合をしやすい入札制度ですし,
罰則も資格停止平均2〜3カ月です。2〜3
カ月というと,談合の順番が回ってくる間に 2〜3カ月はたってしまうわけです。そうす ると,資格剥奪制度などは全然意味がない。
それから,仮に裁判になっても執行猶予ば かりです。今,新聞に出るような,例えば東 芝だとかいろいろな大きな会社が刑事事件に なる場合は,談合による国や自治体の損害は 非常に莫大なものだと私は思います。何億と か何十億という数字の問題です。そうしたら,
1億円横領したとか盗んだといったら実刑に なるに決まっているわけですけれども,どう いうわけか談合の場合は執行猶予ということ で刑事事件になりました。
私は,きのうも四日市で談合の刑事記録を 取ってきたのですけれども,これは5件ぐら いの入札談合をやったと認定していて,その 損害額は私の推定では 5
,
000 万円ぐらいにな る。しかしながら,罰金は一人 50 万円です。これは,いくら警察に捕まってもやったほう が得だという制度です。そして,日本は談合 がばれにくい制度でもありますので,とても 談合はなくならないような実態だと思います。
そこで,ではどうすればいいかという問題 ですが,今,改正案が出ておりますように,
やはり罰則を厳しくする。そして,免責制度 をつくることが大事です。
ただ,私が言いたいのは,まず入札制度を 変える必要が絶対にあるということです。長 野県と宮城県で入札制度を変えたらほとんど 談 合 が な く な り ま し た 。 お そ ら く , ま だ 10 %は談合があるかもしれませんけれども。
要するに,今まで 90 %は談合だったのが,
5%か 10 %の談合になったということで,
談合を 80 %なくした言えるのです。ただ,
まだ5%か 10 %はあります。
ただ,これからは参加可能業者は 50 社・
100 社になるのですが,最近,実際に参加し てくる業者は5社とか6社とか少なくなって しまいました。だけど,可能性があるから談 合はしにくいと思いますが,それがどういう 業者が入ってくるかがわかってしまえば,ま
た談合が復活する可能性もあると思います。
そういう意味では,罰則を厳しくし,免責 制度を導入することはぜひ必要です。ただし,
私は,入札制度をまず変えるべきで,それが 一 番 大 事 で す 。 そ れ か ら , 厳 し い ペ ナ ル ティー,免責制度,そういうものが大事だと 思います。
とにかく,談合をなくすことは日本の政治 構造の本当に根本的な問題だと思います。こ れがなくなったら,ある政党は政治献金がほ とんどなくなってしまうのではないか,そし て政党がやっていけないのではないかという ような政党もあるかと思います。そのような ことで,なかなか難しいかと思いますけれど
ご紹介を受けました弁護士の安保嘉博と申 します。ご紹介にありましたように,私は,
今回の改正について公正取引委員会の中に設 けられました独禁法研究会の会員に,日弁連 の石戸谷委員長のご努力によりまして,また,
公正取引委員会からも「今回は日弁連から会 員を」というお話があって,この部会から出 させていただくことになりました。
そういう機会に恵まれましたので,本日は,
そこで出たお話などをご紹介しながら,先ほ ど大西部会長がご説明された,今回の日弁連 の意見書が指摘しているいくつかの問題点に ついて触れていきたいと思います。私の報告 の文書は,きょうの資料集の 59 頁にござい ますので,それを広げていただきたいと思い ます。
今回の独占禁止法研究会報告書,それから,
今,公正取引委員会が法案化されようとして います法案の中身は,二十数年ぶりに独禁法 の内容を大幅に強化改正しようという方向を 出したものでございますが,そのそもそもの 理由は,わが国においては,依然としてカル テル,入札談合,新規参入排除などの独禁法
違反が絶えないということで,わが国では独 占禁止法が機能していないのではないか,こ ういう事態を放置できないので,根本的に措 置体系を見直すべきだという問題意識から出 発しているわけで,私たちはその問題意識を まったく共有しているわけです。
独占禁止法が定める違反行為に対する措置 体系は,一つは行政上の措置で,これは公取 委による排除措置,課徴金です。二つ目が刑 事上の措置で,これは公取委の専属告発を条 件にして刑罰を科すものです。3番目に民事 上の措置ということで,これは被害者が損害 賠償,差止めを請求できる。この三つを法律 は独禁法違反に対する制裁措置として認めて いるわけです。
今回の改正案の概要は,まず,行政上の措 置につきましては,課徴金の率を引き上げる。
それから加算制度,逆に「リーニエンシー」
といいまして,自ら公正取引委員会に駆け込 んで違反行為を申告すれば措置内容を減免す るという措置減免制度,さらに,私的独占な どへの課徴金の導入,審判手続の見直しとい うことで,行政上の措置については非常に大 も,ぜひ強化する必要があると思います。
以上です。ありがとうございました。
〇大橋幹事(司会) どうもありがとうござ いました。
それでは,次の報告に移ります。次は「今 後の措置体系見直しの方向について」という ことで,京都弁護士会の安保さんからお願い します。安保さんは,先ほど紹介がありまし たけれども,公正取引委員会の独禁法研究会 の委員であります。われわれの部会の理論的 支柱でありまして,エースです。よろしくお 願いします。
R
今後の措置体系見直しの方向について安保嘉博弁護士(京都弁護士会)
胆な提案をしていることです。
刑事手続につきましても,これまで,公正 取引委員会の調査は「間接強制」といいまし て,違反業者の事務所に行っても,あくまで 相手方の同意のもとに,相手方にお願いして 書類を出していただくということで,目の前 に重要な証拠があっても,それを強制的に取 り上げることができない,直接強制権限がな いというきわめて不十分な権限しかなかった ものを,脱税の調査並みに,裁判官の令状を 取って強制的に捜索・差押えができる権限を 今回遅まきながら入れるということで,カル テルというような重大な犯罪行為を摘発する 調査なわけですから,このぐらいの権限は当 然必要だということですが,それが今回入れ ようとされている。それから,不公正な取引 方法に対して刑罰を導入するということで,
刑事上の措置についても手当てがなされよう としている。
ところが,残念なことに,民事上の措置に ついては,今回の提案ではまったく触れられ ていないということでございます。
ただ,独禁法上も 24 条,25 条,つまり,
差止め,損害賠償ということで,独禁法違反 行為に対して私人が損害賠償ができる,それ から差止請求ができるということも立派な措 置として入っているわけでございまして,差 止めは最近入ったわけですが,損害賠償は当 初から入っていると思います。ですから,独 禁法が私人,被害者によって運用されること を当初から予定しているわけでして,民事上 の措置の手当てもぜひ必要ではなかったかと 思っております。
日弁連意見書が指摘している問題点のいく つかについて触れさせていただきたいのです が,まず,課徴金の引上げと憲法 39 条の議 論があります。
まず,課徴金とは何かという課徴金の性格 の議論があります。これにつきましては,従 来,昭和 52 年の独禁法改正で導入されたと きから,課徴金は不当利得の剥奪である。つ
まり,違反事業者が独禁法違反行為によって 得た不正な利益・不当な利得を剥奪する。課 徴金という行政的な措置でそれを取り上げる という「不当利得剥奪説」でずうっと説明を されてきたわけですが,今回,この考え方を 改めまして,「違反行為によって社会に及ぼ した経済的公正の損失を負担させる」という 表現になっているわけです。
ただ,これは非常にわかりにくい。「経済 的公正の損失」という言葉自体まったく初め てでして,私も,この研究会に出させていた だいてこういう言葉に接したわけですが,
はっきり言って,まったくわからないという 感じがしました。研究会の中でも,「端的に 行政上の制裁である,行政罰だということを 明確にすべきだ」という会員の先生方の意見 がかなり多数あったように思います。私も,
もちろん今回の日弁連の意見書も,その立場 をとっているわけです。
これがなぜ,そういうかなりわかりにくい 表現になったのかは,諏訪園さんにぜひご説 明をしていただけたらと思いますが,制裁金 であるとはっきりと打ち出しても,私たちは,
憲法違反といった問題にはならないと考えて いるわけです。59 頁のレジュメのイに書い てありますが,「日弁連意見書は行政上の制 裁金であると明確にするほうが望ましいとす る。」。その理由として,課徴金は公取委とい う行政機関が課する行政上の制裁であり,刑 罰でない以上,憲法 39 条後段に反するとは 解せないという法的判断があるわけです。
憲法 39 条後段といいますのは,同一の犯 罪について重ねて刑事上の責任を問われない という条文です。これをこの文言どおり解釈 すれば,今回,行政上の制裁金であると解し て,その行為について刑罰を科しても,これ が憲法 39 条違反になるとは解せないわけで す。
これについては,最高裁判所の昭和 20 年 代からのいくつもの判例が公取委の報告書の 中で引用されています。私もそれを拝見して,
こんなにたくさんあったかなと感心したわけ ですが,所得税法の追徴税,弁護士に対する 懲戒―これは業務停止とかいろいろあるわ けですが―,監獄法による懲戒,運転免許 の停止,裁判所が行う法廷秩序維持法の監置 処分等々を受けた者に対して刑罰を科しても 憲法 39 条に反しないという判例が蓄積され ているわけでして,憲法違反にはならないと 考えております。
次に,専属告発制度の問題につきましては,
日弁連はかねてよりこの制度は撤廃すべきで あるという主張を掲げております。この制度 は独禁法 96 条にあるわけですが,要するに,
私的独占・カルテルなどの犯罪は,公取委の 告発がないと検察官は公訴提起できないとし ている制度です。この制度趣旨は,独禁法違 反の犯罪行為は刑法犯のような反倫理的性格 の自然犯ではないから,違反行為に刑罰を科 することにするかどうかの判断は専門機関で ある公取委に任せたほうがよいからと説明が されているようです。
しかし,確定審決違反罪等の手続上の違反 の罪はともかくとしまして,カルテルなどは 競争事業者が合意を結ぶだけで一般消費者か ら多額の財産を収奪する行為であり,詐欺に も匹敵する悪性があり,自然犯といっていい のではないか。ここは刑法の理論になります ので,このへんは自信がございませんけれど も,しかし,これは詐欺に匹敵する行為であ るということは確信をもって言えるのではな いかと私どもは思うわけです。したがって,
公取委の判断だけで,これを裁判にかけるか 否かを決せられる制度は不合理ではないか,
被害者は消費者なわけですから,消費者の意 向と離れて行政機関の一存で罪に問えるかど うかを決められるのはどうか,ということで ございます。
この問題については,研究会の中でも私は 発言をさせていただいたのですが,支持する 意見はあまりなかったです。これについては,
ちょうどリーニエンシーの問題があったもの
ですから,一番最初に申告した方の課徴金を 減免するだけではなく,刑事起訴もされない という保証を与えてあげないとこれは機能し ないだろうということで,やはり公正取引委 員会が告発権限を握っておかないとリーニエ ンシー制度が十分に機能しない,というご説 明だったように思います。
しかし,日弁連でその点を検討したわけで すが,公取委の報告書の中でも告訴不可分の 原則がある以上,一人の人についてリーニエ ンシーを適用して告発しないようにしても,
共犯者を告発すれば全員に告発の効力が及ぶ ことになるのです。ですから結局,専属告発 制度を維持することとリーニエンシーを徹底 することとはあまり関係がないという一応結 論に至ったわけです。それで,措置減免制度 を徹底するには,専属告発制度の維持という 方式ではなく,独禁法を改正して,減免対象 者に対する刑の免除規定を設けることで対処 するしかないのではないかという意見になり ました。それが日弁連の意見書であります。
最後の論点は「違反行為の被害者の救済と 求められる措置体系の見直し」ということに なるわけですが,冒頭に申し上げましたよう に,今回,残念ながら,民事上の措置の見直 しに触れられていないことは,今後の課題と して早急にもう一度検討をしていただきたい 点だということです。
日弁連は,十数年来,独禁法違反行為に対 する民事上の措置の改正強化の意見書を繰り 返し出してきております。そこにも書いてあ りますけれども,損害賠償制度の改正,具体 的には独禁法違反行為による損害の推定規定 の創設,公正取引委員会の事件記録を民事裁 判で活用させるための規定の創設,クラス・
アクション,団体訴権,懲罰的損害賠償制度 等,具体的に条文の中身まで踏み込んで,こ れまで意見書で提言してきております。
差止制度につきましては,数年前にこれが 導入されまして,不公正な取引方法に違反す る行為については私人が民事の裁判所に差止