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LMX とストレスが若年社員の離職意思形成に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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 LMX,チャレンジ・ストレッサー,ヒンドランス・ストレッサー,職務満足,心理的ストレ イン,離職意思,早期離職

 本研究では,近年深刻な問題とされている早期離職の原因と解決策を探るため,若年社員の離 職とストレス,上司と部下の関係に着目し,離職行動の過程を包括的に解明することを試みてい る。

 近年,早期離職が問題となっており,個人にとっても,企業にとっても深刻な影響を及ぼして いる。厚生労働省の調査によれば,入社3年以内に離職する大卒従業員の割合は,2009年3月 時点で,28.8%となっている(厚生労働省,2012)。このため,早期離職に関するさまざまな研 究が行われてきた。

 早期離職の要因に関する研究として,組織社会化に着目した研究やリアリティ・ショックの研 究が挙げられる。また,早期離職を防ぐための実務的な施策に関する研究には,メンター制や,

RJP(Realistic Job Preview)に関する研究が発表されているが,これらの早期離職に関する研究 は,離職行動に関する研究に比べて,職場環境や,個人特性に着目し,早期離職形成のプロセス を明らかにするような包括的な観点から検討がなされていない。また,実務的な施策の有効性に 関しても現在のところ明確に検証されておらず,早期離職を防ぐ要因が明らかにされていないた め,若年社員の離職行動の原因とそれを防ぐ要因について検討していく必要がある。

 そこで,早期離職を防ぐ要因として上司と部下の関係と,離職の原因としてストレス環境に着 目する。若年社員は,育成段階であるため,上司からの指導や仕事の指示を受けることが多く,

上司と部下の関係の重要性が高いと言える。また,早期離職者の退職理由として,「仕事上のス トレスが大きい」ことが一番多いことが発表されており(労働政策研究所・研修機構,2007),

ストレスが若年社員に大きな影響を及ぼしていることが明らかになっている。よって,本研究で は,上司と部下の関係を表す概念として,LMX,ストレス環境として,チャレンジ・ストレッ サー,ヒンドランス・ストレッサー,ストレスの影響として,心理的ストレイン,職務満足,離 職意思を取り上げ,先行研究を元に,仮説を構築し,質問紙調査の分析によって,仮説の検証を 行った。

 勤続年数5年以内の社会人を対象に,質問紙調査を実施し,得られた141の有効調査票につい て分析を行った。サンプル対象の平均年齢は,24.0歳,平均勤続年数は,2年2ヵ月であり,そ のうち74人(52.5%)が男性であった。

 分析結果から,LMXが若年社員の離職を防ぐ要因であることが示唆された。分析結果より,

LMXがヒンドランス・ストレッサーに負の影響を,職務満足に正の影響を及ぼすことが明らか になった。それに加えて,チャレンジ・ストレッサーの心理的ストレインに対する負の影響を弱 めることも示唆されている。また,ヒンドランス・ストレッサーは職務満足,心理的ストレイン に負の影響を及ぼし,職務満足は離職意思に負の影響を,心理的ストレインは離職意思に正の影

LMX とストレスが若年社員の離職意思形成に及ぼす影響

川 俣 彰 広 修士論文 アブストラクト

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響を及ぼすことが明らかになった。このことから,LMXは,部下の職務満足を向上させること で,離職意思を低下させることが推測される。さらに,LMXは職務満足を低下させるヒンドラ ンス・ストレッサーを抑え,チャレンジ・ストレッサーの負の規定力をモデレートし,心理的ス トレインの増加を防ぐことで,離職意思の増加を抑制することが明らかになった。さらに,若年 社員においては,チャレンジ・ストレッサーの規定力が先行研究と異なり,職務満足に正の影響 を及ぼさないことが示唆された。

 本研究の学術的意義は以下の2つである。第1に,先行研究で不十分であった,早期離職の原 因と早期離職防止につながる要因を明らかにしたことである。第2に,チャレンジ・ストレッ サーの影響の仕方に関する新たな知見を得たことである。また,本研究は以下の2点の実務的な 意義も持つ。第1に,高い質のLMXが,若年社員の離職を防ぐ要因であることから,上司のと るべき行動を示唆できることである。第2に,若年社員のチャレンジ・ストレッサーの認知の違 いを発見したことにより,上司に,若年社員に仕事を与える際の注意点を提言できることである。

一方で,本研究には3点の限界がある。第1に,離職意思形成の過程が十分に説明されていない こと,第2に,勤続年数の長い社員との比較がなされていないこと,第3に,ストレスの認知や 職務満足に影響を及ぼす個人特性の検討が不十分であることが挙げられる。今後の研究では,長 期的かつ個人特性を含む包括的な研究を行うことによって,早期離職の理解をより深めることが できるだろう。

川俣彰広:LMX とストレスが若年社員の離職意思形成に及ぼす影響

参照

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