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カレント・トピックス No アフリカ・カッパーベルトの最近の動向―ザンビアにおける銅減産に係る背景―

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令和元年7月26日 19-18号

カ レ ン ト ・ ト ピ ッ ク ス

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

アフリカ・カッパーベルトの最近の動向

―ザンビアにおける銅減産に係る背景―

<ヨハネスブルグ事務所 原田武・金属企画部 北良行・ 前ボツワナ・地質リモートセンシングセンター(現地熱技術部) 長江晋 報告> はじめに アフリカ内での銅生産第 1 位は DR コンゴ、第 2 位がザンビアであり、この 2 か国の産銅地域は 古くからカッパーベルトとして知られている。コバルトが付随する上に、世界の銅生産量の 1 割 ほどを占めるポテンシャルがあるとも言われ、この 2 か国の銅の生産動向は注視されている。2019 年 5 月のザンビア鉱業協会の発表によると、2019 年のザンビアの銅生産量は鉱業税の増税に伴う 減産のため、前年の銅量 860 千tに比べ 100 千t減になると予想された。また、DR コンゴからザ ンビアへの銅精鉱輸出が止まっているとする報道もされている。本レポートでは、ザンビアの銅 生産の今後の動向を注視していくために、最近のメディア情報や現地ネットワークからの情報を 元に整理分析した。 1.DR コンゴ及びザンビアにおける銅生産 DR コンゴとザンビアの国境をまたぐカッパーベルトは、高品位かつ大規模な埋蔵量の銅鉱床地 帯として古くから知られ、600km の延長と 50km の幅をなす。コバルトを含有することでも注目さ れているが、銅の品位だけでも 1%以上、場所によっては 7~8%もあり、大抵は銅平均品位 1~ 4%で操業されている。長い鉱山開発の歴史があり、銅を 1~2%程度を含む古い廃滓からの回収も 行われている。 このカッパーベルトで生産される銅鉱石であっても、DR コンゴとザンビアでは主な鉱石の種類 に違いがあり、その製錬において違いが見られる。DR コンゴでは主に酸化鉱が、ザンビアでは硫 化鉱が産出される。そのため DR コンゴでは、酸化鉱を硫酸で浸出して金属分を回収する SxEw 法に よる湿式製錬が生産の主体となり、一方のザンビアでは硫化鉱を溶錬して金属分を回収する乾式 製錬が生産の主体となっている。そのため、DR コンゴで採掘された銅鉱石が硫化鉱の場合は、DR コンゴで処理されず、ザンビアに輸出され、ザンビアで銅が回収されるケースが多い。ICSG によ ると、2017 年の DR コンゴからザンビアに輸出された銅精鉱量は 573 千t(銅量 172 千t)(ICSG 2018)となるため、ザンビアの製錬銅生産量 788 千t(ICSG 2018)の約 22%を DR コンゴの鉱石 に頼っていることになる。ザンビアの銅精鉱輸入量の推移は図 1 のとおりであり、ほとんどが DR コンゴからの輸入と考えられる。近年のザンビア国内製錬量は増加傾向にあり、その中で DR コン ゴからの銅精鉱輸入の重要性も増していると考えられる。

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図 1.ザンビアの銅精鉱国内生産量と銅精鉱輸入量(銅量)

(データ出典:ICSG 2018 STATISTICAL YEARBOOK)

一方で、DR コンゴ及びザンビアの両国では、鉱業法や税制の改正及び資源ナショナリズム的な 動きもある中で、DR コンゴの精鉱輸出禁止やザンビアの輸入税の導入といった政策の動きは、ザ ンビアの銅製錬にとって障害になるものと考えられる。 2.DR コンゴの鉱業政策の動き DR コンゴの銅・コバルト生産量はここ 10 年ほどで大きく増加し、アフリカで第 1 位の銅生産国 となる(図 2)。その一つの要因として、2002 年の鉱業法の制定に伴い、外資との JV 事業が推進 されたことが挙げられる。しかし、DR コンゴ政府内では、当時の JV 契約は外資に有利な契約にな っていたとする意見が強くあり、そのことを背景に 2012 年頃から鉱業法の見直しが議論されてき た。新鉱業法は、2018 年 3 月に Kabila 大統領(当時)の署名後、政府の承認を経て、2018 年 6 月 から施行されている。ロイヤルティの増加や政府のフリーキャリー割合の増(5%から 10%への増) など、2002 年の鉱業法と比較して国の収益を増加させる法律となった。また、国営鉱山企業 Gecamines がこれまでの JV による参入方法ではなく、生産分与方式の導入など、外資との事業の 実施方法において国の関与を高める方策も模索している模様。このような鉱業政策の見直しの過 程で、国内の高付加価値化を推進する観点から、2013 年以降、度々、銅・コバルト精鉱の国外輸 出を禁じた法令が発出されている。結果的には、DR コンゴの鉱山業界による政府へのロビー活動 などの結果、施行が見送られている状況にある。

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図 2.DR コンゴ及びザンビアの銅鉱石生産量(銅量)推移

(データ出典:ICSG 2018 STATISTICAL YEARBOOK 及び ICSG 2010 STATISTICAL YEARBOOK)

DR コンゴにおける銅精鉱を処理できる製錬能力が銅量 63 千t(ICSG 2018)程度である一方で、 2017 年の精鉱生産量は銅量にして 283 千t(ICSG 2018)であることを考えると、国内製錬では限 界があり、海外への輸出、特に近隣での製錬能力に余裕があるザンビアへの輸出を考慮せざるを 得ない。また、DR コンゴにおいて十分な電力インフラが整っていないことも、製錬能力を増強す る上でのボトルネックになっている。一方で、最近では、新規の銅製錬施設として、China Nonferrous Mining Corp's(CNMC)の Lualaba 銅製錬所(ブリスター生産能力 120 千 t/年)が 2020 年操業開始と計画しており、このような新規の製錬所が稼働すれば DR コンゴからザンビアへの精 鉱輸出が減少する。 3.ザンビアの鉱業政策の動き ザンビアでは、2018 年に鉱業税制が見直され、2019 年 1 月から施行された。ロイヤルティ等の 鉱業税収を増やし、国の増え続ける債務への貢献が期待されている。 従前から銅生産に係るロイヤルティはマーケット価格によって段階的に設けられており、今回 は、いずれも 1.5%増(4,500US$/t 以下で 4%が 5.5%に増、4,500~6,000US$/t で 5%が 6.6%に 増、6,000~7,500US$/t で 6%が 7.5%に増)に変更された。また、新たに銅価 7,500US$/t 以上の 場合のロイヤルティは 7,500~9,000US$/t で 8.5%、9,000US$/t 以上で 10%となった。コバルト のロイヤルティについては従前の 5%から 8%に増加。貴金属は、15%輸出税などが導入された。 これ以外にも付加価値税(VAT)を廃止し、新たに売上税を導入する計画もある。現在の VAT 制 度では還付に 6 か月から 1 年の返金遅延が常態化しており、売上税導入により、納税者への還付を 無くすことによって、政府としては手続きを簡素化する狙いもあるようだが、6 月時点では施行に

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は至っていない。 この鉱業税制の見直しの一環として、銅・コバルト精鉱については、5%の輸入税が導入されて いる。ザンビア鉱業界の反発がある中で、ザンビア政府による輸入税導入の撤回を見越して、か なりの量の精鉱がザンビアの保税倉庫に保管されているとの報道もあった。しかし、ザンビア政 府及び大統領は、新規の鉱業税制を堅持すると強く公言しており、輸入税撤廃の動きは今のとこ ろない。この銅精鉱輸入税導入によって、輸入精鉱を規制して国内鉱山生産を拡充することがザ ンビア政府の思惑と思われるが、結果的には鉱石不足による国内製錬所の休止に拍車をかけてい る。年産 300 千t規模の製錬能力を持つ Nchanga 製錬所(英 Vedanta Resources Plc.(インド Vedanta グループ傘下)の子会社 Konkola Copper Metals(KCM)社が操業)は輸入税の導入に合わ せて操業を休止している。また、精錬銅を生産するための精鉱を DR コンゴに頼る ERG 社の Chambishi 銅製錬所(年産 55 千t規模の能力)も操業休止となった。この 6 月には Glencore の子 会社 Mopani Copper Mines の Mufulira 銅製錬所(2018 年生産銅量 119 千t)も大規模改修を理由 に操業休止に入っている。これらの操業休止の結果、ザンビア鉱業界の雇用やサプライヤーにネ ガティブな影響を与える事態になっている。 ザンビア商工会議所(Goodwell Mateyo 会頭)によると、これら鉱業税の高騰により、2019 年は 半分以上の銅鉱山で赤字が予想され、ザンビア鉱業界全体では、今後 3 年間で設備投資が 50kUS$減少し、21,000 人以上の解雇に繋がる可能性があるとする。また、鉱業協会(Zambia Chamber of Mines)の発表(2019 年 5 月 23 日)では、銅生産量(鉱石生産量ベース)が前年の銅 量 860 千tに比べ 100 千t減になると発表している。鉱業協会の Chief Executive Officer・ Sokwani Chilembe 氏に取材した際の話でも、2019 年の銅生産はロイヤルティや輸入税等で減少す ることが予想される。個別案件では、First Quantum 社が操業する Kansanshi 鉱山(2018 年産銅量 250 千t)や Glencore が操業する Mopani 鉱山(2018 年産銅量 622 千 t)といった大規模鉱山で生 産減になり、KCM 社が操業する Konkola(同 93 千t)はかなり落ち込む見込み。一方で、中国 CNMC の Luanshya 鉱山(同 30~40 千t)、EMR Capital の Lubambe 鉱山(同約 20 千 t)といった生産増 が見込まれる中小規模鉱山はあるとの説明があった。

4.ザンビア政府と Vedanta 社の Konkola Copper Mines(KCM)社を巡る対立

2019 年 5 月になって、KCM のマイナーシェア 20.6%を持つザンビア国有鉱山企業 ZCCM-IH が、 KCM の仮清算の手続きを国内の高等裁判所に申請した。大統領や政府関係者からは、KCM について、 同社のメジャーシェアを持つ英 Vedanta Resources Plc.に代わって、より開発実施能力のある他 社を引き入れる旨の発言もなされていた。また KCM は開発ライセンスの規則違反(詳細不明)が あるとする政府関係者からの発言も報道されていた。

ZCCM Acting Chief Executive Officer・Mavuto 氏に背景を取材したところ、ザンビアの銅鉱山 会社はこれまで十分な税金を支払ってこなかったことを最大の要因に挙げている。1,000 千tの銅 は、銅価を 6,000US$/t とすると 6bUS$となるが、その 1 割の 0.6bUS$ほどはザンビア国民に還元さ れてもよいはず。ただ、実際には企業の多くが赤字決算を理由に十分な税金を払っていないとし た。また、同氏によると、ザンビアの 2019 年産銅量 1,000 千tという目標を達成できるかどうか は、KCM の生産次第。KCM の現状の生産能力 350 千t(銅量)に対して、100 千t程度しか生産で きていない。Vedanta 社が鉱山開発に再投資をしないことが問題で、これが同社を精算申請した大

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きな理由であるとした。 また、ザンビア地質調査所主任技師 Dokowe 氏によると、今回の KCM の件は税金というより雇用 問題に関連した政治的な動きと理解。KCM の露天掘鉱山はピット拡張工事が進まず、ベンチ角度の 関係から鉱山保安上、これ以上の採掘が難しくなっている。一旦は、剥土作業に着手したものの、 その後の作業が停止したまま。また、深部坑内掘開発(Konkola Deep)も計画だけで一向に進ま ない状況。以上は KCM の資金不足が大きな原因のひとつであり、これらの計画の遅延により雇用 機会が大きく損なわれていると大統領及び政府は捉え、KCM を精算し、より開発実施能力のある他 社を引き入れたいとの考えがあるとのこと。

このような政府の動きに対抗しつつも、親会社 Vedanta の Anil Agarwal 会長からは、KCM の銅 年間生産量を 300 千tから 400 千 t にすべく投資を行い、1 万人の雇用増(2019 年 5 月時点で 13,000 人)につなげるとコミットする場面もあった。また、Vedanta は、この精算手続きについて 国際仲裁裁判所への訴えも準備中との報道もある。ザンビア Muskwa 鉱山・鉱物開発大臣からは今 回のプロセスを「国有化と誤解すべきではない」、「違反を取り締まるべく監査を強化する」な どの発言がなされており、国による接収との違いを強調しているが、鉱山関係者の間では、アフ リカの資源ナショナリズムの懸念が増しており、今後の動向が注視されている。 おわりに DR コンゴにおいては、急速な銅生産拡大を遂げた一方で、銅精鉱の製錬能力は低いままであり、 銅精鉱は近隣で製錬能力を有するザンビアに輸出されてきた。一方のザンビアにおいては、DR コ ンゴからの銅精鉱が無いと成り立たない銅製錬所があり、銅精鉱輸入税の導入のタイミングで、 国内の主要な銅製錬所 4 つのうち 3 つの操業が休止している状況にある。ザンビアの製錬銅生産量 への直接的な影響は大きく、世界の銅供給への影響を注視していく必要がある。 なお、概して DR コンゴの銅精鉱はザンビアよりコバルト含有量が高いことで知られるが、従前 より、ザンビアにおいてはコバルトを未回収とする銅製錬所が多くあり、今回のザンビアの銅減 産に伴う世界のコバルト供給への影響は限定的と思われる。ザンビアでコバルトを回収する銅製 錬所として Chambishi 銅製錬所(ERG 社)があるが、ここでは DR コンゴの Boss 鉱山(ERG 社)か らの精鉱を処理してコバルト年間 2~3 千t程度を回収してきた。しばらく、この Chambishi 銅製 錬所及び Boss 鉱山の両方が操業を休止していたが、7 月初旬に入って DR コンゴにある尾鉱から回 収した水酸化コバルトを使い、Chambishi 製錬所にて金属コバルトの生産を再開したとの情報もあ る。 ザンビアで隣国からの精鉱輸入が減り、製錬銅の生産量が減少する。また、同国での鉱業税の 負担増に伴い、生産規模を縮小する大規模鉱山も多くザンビア鉱業協会は年産銅量 100 千tのレ ベルでザンビア銅鉱石生産は減少すると予想している。この鉱業税の問題とは別に、ザンビアで は、KCM の親会社 Vedanta の排除を意図する政府と Vedanta の対立が表面化している。この論争の 最中に、KCM は鉱山の操業拡張などの投資の拡大をコミットし、休止中の Nchanga 製錬所の再開に も言及している。ザンビアで鉱山会社が操業を続けていく上では、増えた鉱業税の負担を吸収し つつ、落ち込んだ生産量を再起させていくことが大きな課題となっている。 ザンビアでは道路や病院、学校などを含み市内のインフラ開発、発電施設の新設など急ピッチ

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に進められている。その多くは中国等諸外国からの資金支援を活用していると言われ、その借金 返済のために政府は銅産業に重い負担を強いているのかもしれない。政府が関与を強める資源ナ ショナリズムを思わせる動きが見られる中で、今後の動向とザンビアの銅生産への影響を注視し ていく必要がある。 おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情 報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰 結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用 等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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