2015年 2月13日
電源開発株式会社
技術開発部長
大塚 哲夫
石炭からのCO
2
分離・回収技術
~ EAGLEプロジェクトでの取り組みと将来展望 ~
NEDO FORUM テクニカルセッション
TS-6 CO
2
分離回収技術の現状と展望
1
石炭火力発電の位置付け
発電方式毎のメリット・デメリット
個々の発電方式のメリット・デメリットを考慮し、極力メリットを活かすべく、
長期的・安定的・経済的・クリ
ーン
に電力を供給できるよう、バランスのとれた電源のミックスを図ってきている。
電源構成に関する議論が行われる際は、メリットだけに着目するのではなく、想定されるデメリットも同
時に認識しておく必要がある。
発電方式
供給の
安定性
経済性
地球
温暖化
需要変動
対応
備 考
揚水・調整池・
貯水池式水力
△
△
○
○
急激な需要の変動に対応できる。石油
△
△
△
○
産出国が政情不安の国に偏在している。天然ガス
(LNG)
△
△
○
○
世界的な需要の拡大による資源の奪い合い に注意が必要。大規模立地・パイプラインが 必要石炭
○
○
△
○
CO2回収やガス化など、低炭素化に向け取組中。大規模・分散立地が可能。原子力
○
○
○
△
更なる安全性の確保のほか国民的合意形成が一層重要に。地熱
○
○
○
△
化石燃料と比較して小規模。 再生可能エネルギー法の施行によって、一 層の普及が期待されている。流込式水力
△
○
○
△
ピーク
電源
ミドル
電源
ベース
電源
3
世界の発電電力量の
約41%が石炭火力
で、最も大きな割合を占めている。
石炭火力の割合は、エネルギー消費の大きい中国、インド、米国で高い。
再生可能エネルギーの導入が進むドイツにおいても、約半分は石炭火力が占める。
日本では全発電電力量の30%を石炭火力が供給(2011年は27%)
主要国の電源別発電電力量の構成比(2012年)
出典) IEA「World Energy Outlook2014」,ドイツとデンマークはIEA「Electricity Information 2014」 30% 16% 29% 40% 41% 46% 34% 38% 72% 76% 18% 3% 2% 1% 5% 1% 1% 1% 2% 0% 39% 49% 18% 28% 22% 12% 14% 30% 8% 2% 2% 17% 27% 19% 11% 16% 19% 3% 2% 7% 16% 10% 2% 16% 4% 7% 11% 17% 4% 5% 5% 2% 8% 17% 2% 6% 5% 8% 33% 3% 2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 日本 ロシア EU 英国 世界計 ドイツ デンマーク 米国 インド 中国 石炭 石油 ガス 原子力 水力 バイオ+廃棄物 風力 その他再生可能4
20,938 31,615 35,523 40,848 45,950 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 1990 2012 2020 2030 2040 CO 2 排出量( Mt -CO 2 ) 世界のCO2排出量 総CO2排出量 発電(ガス) 発電(石油) 発電(石炭) 11,825 22,721 28,489 36,253 44,003 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 1990 2012 2020 2030 2040 発電電力量( TW h) 世界の発電電力量 その他再生可能 風力 バイオ+廃棄物 水力 原子力 ガス 石油 石炭
世界の発電とCO
2
排出の見通し
IEA WEO2014 現行政策シナリオ
出典) IEA “World Energy Outlook 2014”の現行政策シナリオ※
※2014年央時点で公式に採用されている政策を考慮したシナリオ
世界の発電電力量の4割以上を石炭火力
が担い、安定供給上今後も重要な位置づけ。
世界のCO
2排出量の約3割が石炭火力からの排出
であり、今後も増加傾向。
世界のCO
2排出量の削減には、地球規模での石炭火力からの排出削減が鍵。
石炭火力からのCO
2排出量が
世界の総排出量に占める割合
2012年
2040年
30%
35%
石炭火力が
世界の発電電力量に占める割合
2012年
2040年
41%
40%
石炭
石炭
5
今後の石炭利用高効率発電の技術開発
・・・更なる効率向上、CO
2削減を目指して
次世代技術(A-USC, 石炭ガス化等)による更なる高効率化で世界トップ維持を目指す。
長期的にはCCS(CO
2回収・貯留)との組合せによりゼロエミッション石炭火力を目指す。
AUSC: Advanced USC
IGCC : Integrated Coal Gasification Combined Cycle
IGFC : Integrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle ST: 蒸気タービン GT: ガスタービン FC: 燃料電池
ST
Gasifier
GT
ST
Gasifier
GT
FC
ST Boiler USC:熱効率41% 蒸気温度約600度 IGCC: 熱効率46-48% (2020年以降実用化) IGFC:熱効率55%以上 (2030年以降実用化) CO2排出 ▲13% ▲25% ST Boiler AUSC:熱効率46% 蒸気温度約700度 (2020年以降実用化) CO2排出 ▲11% ST Boiler 亜臨界:熱効率36% 蒸気温度約560度 CO2排出 ▲17%(※) (※)磯子火力リプレースによる実績値次世代技術
石炭ガス化高経年火力
最新鋭火力
6
微粉炭火力石炭ガス化技術とCO
2
回収技術の取り組み
豪州カライド発電所 ■実施機関:Jパワー/三菱重工 ■処理ガス量: 1,750Nm3/h ■回収CO2量: 10 t-CO2/日 ■試験期間:2007年度~2008年度燃焼後回収法
酸素燃焼法
微粉炭火力発電
微粉炭火力発電
Jパワー・松島火力 化学吸収法試験装置 ■実施機関:日本(Jパワー、IHI、三井物産)/豪州 ■試験規模: 30MW規模 ■回収CO2量: 70 t-CO2/日 ■試験期間: 2011年度~2014年度(予定)燃焼前回収法
Jパワー・若松研究所 EAGLE試験装置燃焼前回収法
石炭ガス化発電
■実施機関:Jパワー/NEDO ■処理ガス量: 1,000Nm3/h ■回収CO2量: 20 t-CO2/日程度 ■試験期間:2008年度~2014年度空気吹(IGCC)
石炭ガス化発電
■実施機関:11電力+電中研 ■石炭処理量: 1,700t/日(250MW) ■試験期間:2007年度~2010年度微粉炭火力発電
酸素吹
(IGFC/多目的)
石炭ガス化発電
■実施機関:Jパワー/NEDO ■石炭処理量: 150t/日 ■試験期間:2001年度~2014年度 CCP研究所 勿来発電所 豪州カライド発電所石炭ガス
化発電
CO
2回収
Jパワー・若松研究所 EAGLE試験装置 Jパワー・若松研究所 EAGLE試験装置
7
酸素吹きガス化技術開発
NEDO補助事業
EAGLE: Coal Energy Application for Gas, Liquid and Electricity
EAGLEプロジェクト
EAGLEガス化炉概念図
上下段の酸素比をコントロールすることで
高効率ガス化・スラグ安定流下排出を可能とする
炉内温度
高
低
酸素
石炭
H2O CO2 CO2 CO H2酸素
石炭
H2O CO2 CO2 CO H2上段バーナ
下段バーナ
上段:酸素供給量「少」
石炭 →チャー
チャー + CO
2+ H
2O → CO + H
2下段:酸素供給量「多」
石炭 + O
2→ CO
2+ H
2O
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EAGLE 設備全容
石炭 ガス化炉 熱回収ボイラ フィルタ チャー スラグ N2 O2 空気 空気 圧縮機 精留塔 空気
ガスタービン設備
G
Comp GT 生成ガス 燃焼炉空気分離設備
燃焼炉 熱回収ボイラ 第一 水洗塔 吸収塔 GGH 精密脱硫器 再生塔 S 回収 吸収塔石膏
煙突
石炭ガス化設備
ガス精製設備
N2 第二 水洗塔 CO2 回収設備 (物理吸収法) CO2 回収設備 (化学吸収法) サワー シフト COS 転化器 スイート シフト150ton/day EAGLE パイロットプラントシステムフロー
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EAGLE プロジェクト 実績
’95 ’96 ’97 ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 ’09 ’10 ’11 ’12 ’13
年度
設計
建設
試験
事前検討
[Step-1]
[Step-2]
[Step-3]
スィートシフト触媒/ 化学吸収 CO2 分離回収設備設置
Step 1 (1995 – 2006)
- 酸素吹き噴流床ガス化炉の開発
- 燃料電池用ガス精製技術の確立
Step 2 (2007 – 2009)
- CO
2分離回収(化学吸収法)試験
- 高灰溶融点炭ガス化適用可能性試験
Step 3 (2010 – 2014)
- CO
2分離回収(物理吸収法、化学吸収法)試験
’14 サワーシフト触媒/ 物理吸収 CO2 分離回収設備設置12
化学吸収法
CO
2吸
収量
CO2分圧(MPa)
物理吸収法 化学吸収法は CO2吸収量が アミン量により 限界に達する 低~中圧プロセス向け 高圧プロセス向け物理吸収法/化学吸収法の特徴
CO2 物理吸収法 液相 Selexol CO2(aq) 気相 液相中のCO2(aq)は気相のCO2濃度に比例して溶存する ⇒ CO2分圧に比例して吸収量が増加 Selexol Selexol Selexol CO2 CO2 CO2(aq) CO2(aq)化学吸収法
:
CO
2とアミンが化学的に結合するため、
CO
2吸収量はアミン量に依存する
物理吸収法
:
CO
2が物理的に吸収液に溶解するため、
CO
2吸収量はCO
2分圧に依存する
高圧プロセスでは物理吸収法が有利
CO2 化学吸収法 [Amine]+ …[炭酸] -液相 +H2O CO2(aq) 気相 液相中でアミンとCO2は弱いイオン結合を形成 ⇒ 吸収可能なCO2量はアミンのモル数が上限 HOCOOH(炭酸) +Amine CO2 CO213
EAGLE における CO
2
分離回収システムフロー
圧縮機
シフト反応器
フラッシュ
ドラム
H
2S
吸収塔
CO
2吸収塔
再生塔
steam
CO
2H
2S
H
2, N
2物理吸収法
脱硫前の生成ガスをシフト反応させる再生塔
シフト反応器
steam
CO
2H
2, N
2CO
2吸収塔
脱硫後の生成ガスをシフト反応させる化学吸収法
石炭ガス化炉 水洗塔CO, H
2, N
2 S 吸収塔 G GT AC シフト反応 : CO + H2O ⇔ CO2 + H214
Case 送電端効率 (HHV%) 効率低下 (%) 備考 IGCC (CO2回収なし)
45.6
Base
IGCC+CO2 回収 (化学吸収法)38.2
-7.4
加熱フラッシュ再生方式適用
IGCC+CO2 回収 (物理吸収法)39.2
-6.4
DOE 試算※1 Shell IGCC31.2
-10.9
発電コストが約 1.4 倍に増加
EAGLE 試験結果に基づく CO
2
回収型IGCC システム 検討結果
検討条件
発電出力 : 370MW
ガスタービン : 1,500℃ 級
蒸気タービン蒸気条件 : 558/558℃
CO
2回収率 : 90%
15
※1 出典 : Cost and Performance Baseline for Fossil Energy Plants Vol.1, Revision 2a, September 2013, DOE/NETL-2010/1397