1.文書管理の重要性(1)
(1) 文書管理とは
文書管理(DMS)
記録管理(RIM)
エビデンス管理
文書管理システムは文書の発生から廃棄まで
文書の起案→決裁段階のフローシステムを文書管理システムと呼ぶことがあるが、
本来は文書の作成から廃棄に至るストック段階も含めたトータルを文書管理という。
新聞・雑誌、特許公報、
議事録、健康診断記録、
帳簿書類、取引証憑
議事録、健康診断記録、
帳簿書類、取引証憑 帳簿書類、取引伝票、
(完全性が要件)
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1.文書管理の重要性(3)
(3) 文書管理の目的はステークホルダーへの説明責任
記録管理(RIM)
エビデンス管理)
ECM
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2.レコードマネジメントとは(1)
(1) レコマネの歴史とECMの歴史
マイクログラフィックスは、米国で1906
年に提案され、1930年代から図書館
の図書のマイクロ化からスタート。 1980年代に事務の機械化が進み、電子文書の
作成や文書の電子化に発展。ここがECMのス
タートとされる。
1965年頃からコンピュータ時代に。
全社的統一データの作成に貢献。
構造化データと非構造化データ
最初からデジタルデータを使うのがERP、
最初は紙や映像で後からデジタル化するの
がECM。次第にオフィスワークはデジタル
データだけで行われる、これをECMという。
1893年シカゴ万博で米国で考案されたバー
ティカルファイリングが最初とされ、1909年に
わが国にも登場したとされている。
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2.レコードマネジメントとは(2)
(2) 文書管理の目的別電子化方法
目的
文書の例
電子化方法
電子化後の紙文書
歴史文書 ・企業の定款や制度の原本
・個人の生命と財産の記録
・永久保存文書
・貴重な原本を保全するため、電子
データは見本としての価値
・廃棄せず紙のまま保存
ビジネス文書 ・業務文書、行政文書
・文書整理や保存年限の決定
等、リテンションスケジュール
で管理
・e-文書法の対象
・営業秘密法対応文書
・特許の先使用権の証明文書
・ビジネス文書が最も大量
・文書の種類毎に電子化方法が異なる
電子化コスト+外部保存との費用対
効果を検討し方法を決める
・電子署名やタイムスタンプ不要文書も
多い
・エビデンス管理は完全性が必要
電子署名やタイムスタンプ付与
(電子データが原本)
完全性が担保できない場合は電子化
後も原本保存
・電子署名+タイム
スタンプの場合は通常
原本廃棄
・税務文書以外の特許や
営業秘密対応にも
タイムスタンプの価値
が高い
情報検索 ・論文や技術資料
・他社特許の調査
・事業化未定資料の蓄積
・WEBサイト情報の利用
・属性検索や全文検索の利用
・PDFとOCRの併用も可能
・電子化後は紙文書は
廃棄が原則
3.エビデンス管理とは
(1) e-文書法の技術要件
e-文書法は技術要件が求められており、次の3種類の技術要件がある。
① 見読性:スキャニングによりイメージ化文書を生成する場合、スキャン文書が後から読める必要がある。
② 完全性:スキャニングする時の担当者が特定でき、電子化した時刻と電子化後に改ざんされていない証明が必要。
③ 検索性:大量の電子化文書が蓄積されている場合、適切な検索ができなくてはならない。
e-文書法の中でも国税関係書類と診療録のスキャナ保存は完全性が求められる。
(2) 電子署名とタイムスタンプ
① e-文書法の技術要件は、法令によって要件が異なるが、財務文書(会計帳簿書類)は電子署名と
タイムスタンプが付与されないと紙文書は廃棄不可
② タイムスタンプは当初(2005年)は1スタンプ8円~10円だったが、次第に価格が下がり負担が軽減されている。
③ 入力サービス業者によっては、入力料金に含めて格安に付与するサービスを提供している。
(3) スキャニング要件
解像度
階調
文書の電磁的保存
(経済産業省)
目安 カラー :150dpi
モノクロ:200dpi
カラー :各色256階調
モノクロ :2値
国税関係書類
(国税庁)
200dpi以上
→4ポイント文字の認識
カラー :各色256階調以上
→改ざん後の検出
診療録
(厚生労働省)
実用上支障のない解像度 カラー :各色256階調以上
4.エビデンスの保存年限
法令による保存年限には、1年、3年、5年、7年、10年、30年、永久の7種類ある。
(1) 原本が他部門にあるコピー文書は電子化せず紙のまま1年保管後廃棄
原本を保管する部門が電子化し、コピーを配布されている部門は電子化せず1年保管で廃棄が原則
(2) 1年保存文書は紙のまま廃棄
法令では日報類は1年保存、日次帳票も1年保存が普通。1年保管保存は電子化せず紙のまま廃棄がよい。
(3) 3年保存以上から電子化
人事部門の社会保険関係文書は2~3年保存、健康保険は5年保存。
3年保存以上の文書は電子化の効果あり。
(4) 税務関係帳簿書類は7年保存
法人税法で帳簿書類は7年保存。紙書類を廃棄するにはカラースキャン、電子署名とタイムスタンプなどで完全性が要求される。
なお電子署名は最大5年の有効期間であるが、タイムスタンプの付与によりその有効期間内(通常10年)は完全性が保たれる。
(5)
10年保存以上はデジタルマイクロアーカイブか、標準化された電子フォーマットを利用
デジタルデータはOSや業務ソフトが短期に更新されるため、
デジタルデータの10年以上の保存には計画的に仕組みを取り入れる必要がある。
・デジタルデータが読取り不能になっても読めるように、デジタルデータをマイクロフィルム化しておく。
・ PDF-Aが国際標準になったため、デジタルデータをPDF-Aに変換しておくと長期保存に耐えられる。
(6) 歴史文書は電子化後も紙を廃棄しない
古文書や書画は元の文書の存在に意味がある。
電子化して閲覧に供するが元の文書は廃棄せず、空調設備の完備した部屋で保存する。
5.文書検索の重要性
文書管理において
文書検索が最重要課題
、電子ゴミ箱になり易いので注意が必要
(1)
総務系・業務系文書は階層検索、情報システム系文書は属性検索・全文検索になり易い
文書の「起案・決裁」を電子化する「文書管理ソフト」は、検索が全文検索のみが多く検索しにくい。
文書のストック(保管・保存)を統合したECMは検索に意を尽くすべき。
階層検索や属性検索(キーワード検索、メタデータ検索)を検討する必要あり。
(2) 全文検索はタイトル全文とコンテンツ全文検索あり
簡易な全文検索はPCに保存されたフォルダやファイル名からの全文検索。タイトルが不完全だと検索漏れになる。
文書の記載内容(コンテンツ)からの全文検索は検索漏れが少ない。シソーラス(類語)検索も要検討。
(3) コンテンツ全文検索は文字認識によるテキスト化が必要
コンテンツ全文検索には、文字が記載されている文書が対象。OCRによる文字認識でテキスト化が必要。
テキスト化できない画像や写真、図形等は全文検索は不可。階層検索や属性検索を検討する必要あり。
(4) 階層分類の標準化を要検討
総務系・業務系は階層検索に適するが、階層検索の作成がかなり難しいのが現実。
業務全般を知悉している人材でなければ広範囲の階層の構築が困難。
上場条件の業務分掌規程で分類すると適切な文書分類ができる。
または文書管理に精通したコンサルに依頼するなど、標準化する努力をすべき。
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6.国税以外のe-文書法の対象文書
(1) 法令による技術要件の相違
銀行法21条では銀行業は帳簿書類を「見読性」のみの技術要件で電子化すればよいが、
法人税法施行規則59条では、普通法人は帳簿書類を「見読性」「完全性」「検索性」の要件が必要。
国税庁や金融庁は「完全性」を不可欠とする。完全性のためには電子署名とタイムスタンプが必要。
(2) JIIMA発行の「e-文書法対象リスト」CD-Rは文書種別毎に分類
e-文書法対象リストは、業種別に検索可能で、さらに文書を「帳簿書類」「営業上の重要書類」「業種特有文書」に分
類して表示。完全性を要求されるのは「帳簿書類」のみ、「営業上の重要書類」と「業種特有文書」は、ほとんど「見読
性」のみが技術要件。
「営業上の重要書類」:定款、株主総会議事録、取締役議事録、株主名簿、社員名簿、証書類等
「業種特有文書」:講習会の記録、健康診断記録、安全管理者に関する記録、旅行業約款、定期点検記録等々。
(3) 完全性が不要な文書の電子化
文書の種類にして2/3、文書量にして1/2は完全性が不要な文書。
医療及び会計上の帳簿書類以外は、完全性を要求されないと判断してよい。
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