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血球減少を伴う悪性リンパ腫患者における運動療法の実行可能性について

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 174 47 巻第 2 号 174 ∼ 180 頁(2020 年) 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 短  報. 血球減少を伴う悪性リンパ腫患者における 運動療法の実行可能性について* ─後方視的観察研究による予備的検討─. 笠 原 龍 一 1)2)# 藤 田 貴 昭 3) 髙 橋 祥 子 1) 甲 斐 龍 幸 4) 森下慎一郎 5) 神 保 良 平 1) 神 保 和 美 1) 髙 野   綾 1) 山 本 優 一 1) 木 村 秀 夫 4) 志 賀   隆 4) 古 川 未 希 4) 池 添 隆 之 2). 要旨 【目的】悪性リンパ腫患者を対象として血液検査所見と理学療法の実行可能性および安全性の関連性を明 らかにする。【方法】対象は入院化学療法および運動療法を実施した悪性リンパ腫患者 79 名で,対象者に は Borg scale 13 を指標とした運動療法を 1 日 20 分間,週 6 日間実施した。理学療法実行率(実施日数 /予定日数)を白血球数,血小板数に基づき層別化して算出した。また有害事象発生の有無を調査した。 【結果】対象者全体の理学療法実行率の中央値は 96.8%(範囲 61.7 − 100.0%)と高く,運動中および実施 後に有害事象は認められなかった。一方,白血球数 1,000/µ L 未満または血小板数 20,000/µ L 未満の時期 では理学療法実行率が有意に低下した(p < 0.001)。【結論】悪性リンパ腫患者に対する運動療法の安全 性は示された。一方で,白血球数と血小板数の減少は理学療法実行率と関連することが示唆された。 キーワード 血球減少,悪性リンパ腫,実行可能性. はじめに. 者について算定可能である。  造血器腫瘍には白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫.  本邦では 2010 年に「がん患者リハビリテーション料」. などが含まれるが,同患者の理学療法のおもな目的は,. が新設されて以降,がん患者に対するリハビリテーショ. 1) 治療に伴う廃用症候群の予防,改善である 。同患者に. ン(以下,リハ)が普及しつつある。造血器腫瘍に関し. 対する運動療法の有効性として,身体機能,心肺機能,. ては,造血幹細胞移植や化学療法が施行される予定の患. 精神機能,QOL,幸福感,除脂肪体重などの改善が報 告されている. *. Feasibility of an Exercise Therapy in Lymphoma Patients with Cytopenia: Preliminary Study by Retrospective Observational Study 1)北福島医療センターリハビリテーション科 (〒 960‒0502 福島県伊達市箱崎字東 23‒1) Ryuichi Kasahara, PT, Shoko Takahashi, PT, Ryohei Jinbo, PT, Kazumi Jinbo, PT, Aya Takano, PT, Yuichi Yamamoto, PT: KitaFukushima Medical Center, Department of Rehabilitation 2)福島県立医科大学血液内科学講座 Ryuichi Kasahara, PT, Takayuki Ikezoe, MD, PhD: Fukushima Medical University, Department of Hematology 3)東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科 Takaaki Fujita, OT, PhD: Tohoku Fukushi University, Faculty of Health Sciences, Department of Rehabilitation 4)北福島医療センター血液内科 Tatsuyuki Kai, MD, PhD, Hideo Kimura, MD, PhD, Yutaka Shiga, MD, PhD, Miki Furukawa, MD, PhD: Kita-Fukushima Medical Center, Department of Hematology 5)新潟医療福祉大学理学療法学科 Shinichiro Morishita, PT, PhD: Niigata University of Health and Welfare, Department of Physical Therapy # E-mail: reha-ryu@jinsenkai.or.jp (受付日 2019 年 5 月 20 日/受理日 2019 年 10 月 31 日) [J-STAGE での早期公開日 2020 年 1 月 27 日]. 2‒4). 。一方,造血器腫瘍患者に対するリハ. では,化学療法による嘔気,倦怠感,発熱など様々な有 害事象の発生および血球減少に伴う感染症や出血傾向の リスクを考慮して介入を行うことが必要となる。そのた め,理学療法実施前にはバイタルサインや身体症状だけ ではなく,血液検査値を確認することが非常に重要とな る. 1). 。「がんのリハビリテーション中止基準」では,白. 血球数 3,000/µ L 以下,ヘモグロビン値 7.5 g/dl 以下, 血小板数 50,000/µ L 以下が血液所見における判断基準と 5) なっている 。これらはリハの実施可否の判断のひとつ. の指針となるが,高度の血球減少を伴いやすい造血器腫 瘍患者においては,この基準値を下回ることが少なくな い。井上ら. 6). によると,中止基準に該当する患者でも. 理学療法によるメリットが大きい場合にはリスクを考慮 して運動内容や運動負荷を調整のうえ,実施することが.

(2) 血球減少を伴う悪性リンパ腫患者における運動療法の実行可能性. 175. 望ましいとされている。. 値を解釈するうえできわめて重要な知見であると考えら.  血球減少に伴う感染症や出血傾向のリスクを伴う造血. れる。一方で先行研究. 器腫瘍患者に対して,現実的にどの程度の強度および頻. 検討の余地がある。1 つ目は,これまでの研究では白血. 度で理学療法を行うことができるかという理学療法の実. 病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫などの患者を造血器腫. 行可能性とその安全性に関しては,いくつかの報告があ. 瘍患者として包括的に捉えて調査・分析されており,疾. る。たとえば,Morishita ら. 7). は急性白血病,悪性リン. 9‒11). を俯瞰すると,以下の点で. 患別に理学療法の実行可能性や安全性と血液検査値の関. パ腫,骨髄異形成症候群などに対し造血幹細胞移植が施. 連性を調査した報告は見当たらない点である。2 つ目は,. 行された患者を対象として,移植前後の期間に週 5 日,. 5) 本邦の「がんのリハビリテーション中止基準」 のひと. 1 回 20 ∼ 40 分の理学療法を実施した結果,対象者が理. つに白血球数の基準値が設定されているが,白血球数と. 学療法を計画された日に予定通りに実行することができ. 理学療法の実行可能性や安全性はどのように関連するの. た割合,すなわち理学療法の実行率は平均 74%で,運. かが未だ明らかにされていないことである。3 つ目は,. 動中に出血やめまい等の有害事象は発生せず,また運動. 本邦における造血器腫瘍患者への理学療法の実践報告は. 療法を実施した群と制御群では血球減少期間の合併症の. 非常に限られており,本邦においての同患者への理学療. 発生に有意な差はなかったことを報告している。また,. 法実行率や安全性の情報自体が不足していることである。. Schuler ら. 8). は急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群,.  そこで本研究では,造血器腫瘍のなかでももっとも患. 非ホジキンリンパ腫などにより造血幹細胞移植を受けた. 者数の多い悪性リンパ腫患者を対象として白血球数を含. 高齢者に対して 1 日に 30 ∼ 40 分間の持久性または筋力. めた血液検査所見と理学療法の実行可能性および安全性. トレーニングを週 6 日間,2 ∼ 4 週間実施した結果,患. の関連性を明らかにすることを目的として調査を行っ. 者がプログラムへ参加した割合は平均 85% であり,運. た。特に本研究では臨床における血液所見の解釈に示唆. 動療法による有害事象はみられなかったことを報告して. を与える情報を得るため,血液所見を層別化した分析を. いる。このように理学療法の実行率と有害事象の発生に. 実施した。. 関しては,近年知見が集積されつつある。  しかし一方で,理学療法の実行可能性や安全性と血液 検査値との関連性を調査した研究は非常に少なく,著者 らが文献を渉猟した範囲では Fu ら 11). 9). ,Ibanez ら 10),. 1.対象  対象は,2012 年 10 月∼ 2017 年 9 月までの期間に A. は,血小. 病院において入院化学療法および理学療法を実施した悪. 板減少症を伴う白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫患. 性リンパ腫患者 124 名のうち,以下の基準を満たした. 者を対象として,血小板数に基づく運動療法を実施し,. 79 名とした。取り込み基準は本研究目的を鑑み,一定. その安全性を調査した結果,血小板が低値であるほど出. の負荷量の運動療法が可能である Eastern Cooperative. 血の発生率は増加し,特に 10,000/µ L 以下のケースでは. Oncology Group Performance Status(以下,ECOG-PS). 37%と高い出血発生率が認められた一方で,重度の出血. が入院時に 0 または 1 であった者とした。入院時 ECOG-. 発生のリスクについては低かったことを報告している。. PS が 2 ∼ 4 であった者,既往に脳血管障害を有した者,. Elter ら. の報告のみに限られる。Fu ら. 9). 対象および方法. 10). は,白血病,骨髄異形成症候群,非ホジキ. 死亡した者は対象から除外した(図 1) 。なお,本研究. ンリンパ腫などにより造血幹細胞移植が行われた小児患. 内容は北福島医療センター倫理審査委員会の承認を得た. 者 62 名における重度血小板減少症期間中の血小板数と. うえで研究を実施した(承認番号 71)。. 理学療法および作業療法の運動強度および出血の発生と.  すべての対象者は A 病院リハ室にて筋力増強運動,. の関係を調査した結果,重大な出血の発生はなく軽微な. 持久力運動を中心とした理学療法を受けた。筋力増強運. 出血の発生も 1.5%と稀であること,そして出血の発生. 動はスクワット,カーフレイズなど closed kinetic chain. とリハ介入の強度および血小板数は関連しなかったこと. での運動と重錘や理学療法士の徒手抵抗を利用した運動. Ibanez ら. を報告している。Elter ら. 11). は,急性骨髄性白血病,. を実施した。持久力運動は自転車エルゴメーターや歩行. 急性リンパ性白血病,非ホジキンリンパ腫の患者で大量. を行った。運動の強度は,血圧,脈拍に留意したうえで,. 化学療法が施行された 12 名に対する自転車エルゴメー. 筋力増強運動,持久力運動でともに最大で Borg scale13. タートレーニングの安全性を調査し,結果として対象者. 「ややきつい」となるように設定した。Borg scale 13 は. の血小板数が 10,000/µ L 以下の場合でも出血は生じず,. 術後や化学療法中のがん患者に運動療法を行った先行研. ヘモグロビン値が 8 g/dl 未満であっても重症な頻脈が. 究において広く使用されている運動強度である. 発生しなかったことを報告している。. 介入は原則的に 1 日 20 分間,週 6 日間とした。骨髄抑.  理学療法の実行可能性や安全性と血液検査値の関連性. 制等により血液データが「がんのリハビリテーション中. を示したこれらの報告. 9‒11). は,理学療法士が血液検査. 12‒15). 。. 5) 止基準」 の数値を下回った場合でも,医師が実施可能.

(3) 176. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 図 1 対象者選定のフローチャート. と判断した場合には対象者の体調に配慮しつつ上記運動. 大値,最小値,中央値および四分位範囲を求めた。加え. 療法を実施した。その際,白血球数が特に低値(2,000/. て,対象者全体の実施日数の総数を予定日数の総数で除. µ L 以下)のときは感染予防に配慮しリハ室ではなく病. した理学療法実行率も算出した。次に白血球数および血. 棟内で行った。. 小板数と理学療法実行率の関連性を調べるため,白血球 5) 数では「がんのリハビリテーション中止基準」 である. 2.方法. 3,000/µ L 以下を基準として 1,000/µ L 毎に,血小板では. 1)評価項目. 同中止基準 50,000/µ L 以下を基準として 10,000/µ L 毎に,.  本研究は介入を伴わない後方視的観察研究である。診. 理学療法実行率を算出した。この理学療法実行率は,対. 療録より,対象者の属性,血液データ,理学療法の実施. 象者全体の実施日数総数を予定日数の総数で除した値と. を予定した日数(以下,予定日数),理学療法を実施し. した。なお白血球数と血小板数の測定は毎日ではなく 2. た日数(以下,実施日数),理学療法を予定していたが. ∼ 3 日に 1 回であったため,測定の行われなかった日に. 体調不良により実施できなかった日数(以下,中止日数). ついては前回測定値を採用した。また白血球数および血. と理由,入院中および理学療法中の有害事象の有無を抽. 小板数で層別化した群間において実施日数と中止日数の. 出した。理学療法が中止となった理由が複数ある場合. 比率を比較するため,カイ二乗検定を行い,有意差が認. (倦怠感と頭痛の併発など)は,1 日の中止であっても. められた場合には残差分析を実施した。有意水準は 5%. 複数の理由をカウントした。対象者の属性については,. とした。統計ソフトは SPSS Statistics version 25(IBM. 年齢,性別,悪性リンパ腫の種類,化学療法の種類,入. 社)を用いた。. 院時の ECOG-PS の情報を収集した。血液データは,赤 血球,白血球,血小板,好中球,ヘモグロビン,総蛋白,. 結   果. アルブミン,C 反応性蛋白についてリハ開始時の数値お.  本研究対象者の属性,血液データ,理学療法実行日数,. よびリハ期間を通しての最低値を収集した。また白血球. 中止日数を表 1 に示す。各対象者の理学療法実行率は最. 数と血小板数についてはリハ期間を通して収集した。化. 大値 100%,最小値 61.7%,中央値 96.8%(四分位範囲. 学療法の施行が理由で理学療法が行われなかった日数は. 7.3%)であった。また,対象者全体の実施日数の総数を. 予定日数および中止日数に含めなかった。有害事象につ. 予定日数の総数で除した実行率は 94.4%(4,043 / 4,281. いては非血液毒性 CTCAEv4.0 に準拠した情報を収集. 日)であった。理学療法が実施された場所については,. した。対象者のなかには悪性リンパ腫の再発により入退. 対象者全体の実施日数 4,043 日のうち,リハ室が 2,315. 院を複数回繰り返している者もいるが,その場合本研究. 日,病棟が 1,505 日,病室内が 223 日であった。. ではすべての入院リハ期間の情報を収集し,理学療法の.  白血球数および血小板数と理学療法実行率の関係を表. 予定日数や実施日数等は合算して取り扱った。. 2 に示す。カイ二乗検定の結果,白血球数および血小板. 2)データ分析. 数で層別化した群間において実施日数と中止日数の比率.  まず上述した一定の運動強度を有する運動療法に対し. に有意差が認められた(p < 0.001) 。そこで残差分析を. て,悪性リンパ腫患者がどの程度体調を崩さずに実施で. 実施した結果,白血球数に関しては,2,000 ∼ 2,999/µ L. きているかを調査するため,各対象者の理学療法実行率. の際の実施日数が期待値よりも有意に多く(p < 0.01),. (実施日数/予定日数)を算出し,理学療法実行率の最. 1,000/µ L 未満では期待値よりも有意に少なかった(p <.

(4) 血球減少を伴う悪性リンパ腫患者における運動療法の実行可能性. 177. 表 1 対象者の属性および血液データ(n=79) 項目. 中央値(四分位範囲) または n. 範囲. 年齢. 66(15)歳. 32 ‒ 87. 性別  男性. 41 名.  女性. 38 名. 悪性リンパ腫の種類  びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫. 41 名.  濾胞性リンパ腫. 14 名.  MALT リンパ腫. 5名.  ホジキンリンパ腫. 4名.  その他. 15 名. 化学療法の種類  R-CHOP 療法. 35 名.  R-CHOP 療法 + その他. 31 名.  R-CHOP 療法以外. 13 名. 入院時 Performance Status(PS)  PS 0. 55 名.  PS 1. 24 名. 血液データ(単位) 赤血球. リハ開始時. 395(110). 234 ‒ 529. (X10~4/µ L). 最低値. 300(104). 10 ‒ 431. 白血球. リハ開始時. 4,950(3,460). 1,000 ‒ 96,540. (/µ L). 最低値. 1,150(990). 140 ‒ 4,360. 血小板. リハ開始時. 192,000(103,000). 13,000 ‒ 538,000. (/µ L). 最低値. 93,000(73,000). 6,000 ‒ 218,000. 好中球数. リハ開始時. 3,522(2485). 600 ‒ 34,628. (/µ L). 最低値. 490(701). 8 ‒ 2,896. ヘモグロビン. リハ開始時. 12.1(3.1). 7.6 ‒ 20.4. (g/dl). 最低値. 9.3(3.0). 0.2 ‒ 13.4. 血清総蛋白. リハ開始時. 6.4(0.8). 4.0 ‒ 8.6. (g/dl). 最低値. 5.8(1.1). 3.1 ‒ 8.4. アルブミン. リハ開始時. 4.0(0.6). 2.5 ‒ 7.1. (g/dl). 最低値. 3.5(0.7). 1.6 ‒ 4.6. C 反応性蛋白. リハ開始時. 0.2(1.1). 0.0 ‒ 19.0. (mg/dL). 最高値. 2.8(8.0). 0.0 ‒ 25.2.  予定日数. 47(53)日. 9 ‒ 191 日.  実施日数. 42(45)日. 7 ‒ 187 日.  中止日数. 2(4)日. 0 ‒ 28 日. 96.8(7.3)%. 61.7 ‒ 100.0%. 理学療法.  実行率 各対象者の実行率の中央値 全対象者の総実施日数/総 予定日数. 94.4%. 0.001) 。一方,血小板数については,60,000/µ L 以上の. 後の体調不良や出血等の有害事象は発生しなかった。理. 場合に実施日数が期待値よりも有意に多く(p < 0.001) ,. 学療法が中止となった理由は,おもに倦怠感(39.9%). 一方で 20,000/µ L 未満では期待値よりも有意に少なかっ. と発熱(31.9%)であった(表 3)。. た(p < 0.001) 。  すべての対象者において理学療法実施中および実施直.

(5) 178. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 表 2 白血球数および血小板数と理学療法実行率 血液データ. 実施日数 (日). 中止日数 (日). 実行率. p値. <0.001. †. 調整済み 残差‡. 白血球  3,000/µ L 以上. 2,691. 153. 94.6%.  2,000 ∼ 2,999/µ L. 707. 24. 96.7%. 0.7.  1,000 ∼ 1,999/µ L. 480. 28. 94.5%. 0.0.  1,000/µ L 未満. 165. 33. 83.3%. ‒ 7.0***. 3,756. 204. 94.8%.  50,000 ∼ 59,999/µ L. 63. 7. 90.0%. ‒ 1.6.  40,000 ∼ 49,999/µ L. 46. 5. 90.2%. ‒ 1.3.  30,000 ∼ 39,999/µ L. 55. 6. 90.2%. ‒ 1.5.  20,000 ∼ 29,999/µ L. 72. 5. 93.5%. ‒ 0.4.  20,000/µ L 未満. 51. 11. 82.3%. ‒ 4.2***. 2.9**. 血小板  60,000/µ L 以上. † ‡. <0.001. 4.1***. カイ二乗検定  残差分析(両側検定)** p<0.01,*** p<0.001. 表 3 予定していた理学療法が中止となった理由. 行研究と同様に運動療法に起因した重篤な有害事象は確. %(当該日数 / 全対象者の 総中止日数). 認されなかった。今回の我々の調査において理学療法実. 倦怠感. 39.9(95 / 238). 身状態の水準が影響した可能性が考えられる。Courneya. 発熱. 31.9(76 / 238). らの報告. 5.0(12 / 238). であり比較検討が困難であったが,Karnofsky Perfor-. 項目. 対象者からの休み希望 (疲労,面会など). 行率が高い結果となったひとつの要因として,対象者の全 16). では対象者の Performance Status が不明. mance Status が 60 を超えることを取り込み基準とした. 痛み(骨痛,腹痛,膝痛). 5.0(12 / 238). 頭痛. 4.6(11 / 238). 吐き気. 4.2(10 / 238). PS が 0 または 1 である本研究対象者の全身状態は良好. 帯状疱疹. 2.9(7 / 238). であり,それが実行率に影響した可能性がある。また今. 下痢. 2.5(6 / 238). 回の理学療法実行率が高い結果となった別の視点とし. 不眠. 1.7(4 / 238). て,我々が実施した運動療法が短時間高頻度であったこ. 頻尿. 1.3(3 / 238). とが関係した可能性も否定できない。上述の Courneya. 血圧低値. 1.3(3 / 238). ら. 胃部不快. 1.3(3 / 238). は週に 2 回で 1 回 60 分の運動療法であり,今回の我々. 嘔吐. 0.8(2 / 238). の介入と比較すると先行研究では頻度が低く,1 回あた. 感冒症状. 0.4(1 / 238). りの時間が長いという相違があった。しかし,理学療法. 発疹. 0.4(1 / 238). の実行率は様々な要因が関与すると考えられ,運動療法. 便秘. 0.4(1 / 238). の内容が実行率に影響したか否かについては推測の域を. 血圧高値. 0.4(1 / 238). Streckmann ら. 17). の報告の対象者と比べると,ECOG-. 16). では週に 3 回で計 120 ∼ 135 分,Streckmann ら 17). 出ず,今後のさらなる検討が必要である。一方,今回の. ※ 複数回答あり. 調査において,週 6 日という高頻度であっても 20 分程 度の短時間かつ Borg scale で運動強度を設定して負荷 量に考慮した結果,非常に高い実行率で安全に理学療法. 考   察. を実施できたという実態が明らかになったことには一定.  悪性リンパ腫患者に対する運動療法の実施可能性に関 して,理学療法の実行率は Courneya らの報告. 16). では. 平均 77.8%(中央値は 92%),Streckmann らの報告. 13). の意義があると考えられる。  理学療法の実行率を白血球数および血小板数を層別化 して分析した結果,白血球数では 1,000/µ L 未満,血小. では平均 65% であり,いずれの研究でも運動による重. 板数では 20,000/µ L 未満になると実行率が低下すること. 篤な有害事象は出現しなかったと報告されている。一. が示唆された。しかしその一方で,白血球数 1,000/µ L. 方,本研究の理学療法の実行率の中央値は 94.4% で,先. 以上または血小板数 20,000/µ L 以上の状態であれば,ど.

(6) 血球減少を伴う悪性リンパ腫患者における運動療法の実行可能性. の水準においても実行率に大きな差はない可能性も本研 究結果は示唆しており,「がんのリハビリテーション中 5) 止基準」 である白血球数 3,000/µ L 以下の状態であっ. ても理学療法を安全に実行可能である可能性が考えられ る。今回,白血球数が低い値でも高い実行率を保つこと ができた理由として,白血球数に応じて病室または病棟 で運動療法を実施するなど,感染対策に十分に留意して 実施したことが挙げられる。このように感染対策を徹底 することで,白血球数が低い水準であっても安全に理学 療法を実施できる可能性がある。  また今回,血小板数については 20,000/µ L 未満の場合 に理学療法実行率が低下したものの,血小板数低下によ る懸念事項である出血については発生しなかった。血小 板数低下時の出血に関して,Fu ら. 9). ,Ibanez ら 10) も. 運動療法によって重篤な出血事象がなかったとしてお り,本研究も同様の結果となった。今回我々が実施した Borg Scale 13 程度の運動負荷量であれば,血小板数が 低値であっても出血を発生させずに運動を実施できる可 能性が考えられる。  しかし一方で,今回の調査では白血球数 1,000/µ L 未 満,血小板数 20,000/µ L 未満の時期において理学療法の 実行率が低下した理由について明らかにすることができ ていない。そのため,Borg Scale 13 を指標とした今回 の運動療法が,白血球数 1,000/µ L 未満または血小板数 20,000/µ L 未満の患者に適切であったかについては今後 の検討が必要である。  本研究の限界のひとつは,今回の調査では身体機能や QOL など運動療法による有効性について検討できてい ないことである。そのため,運動負荷が Borg Scale 13 程度とした今回の短時間高頻度の運動内容が身体機能お よび QOL にどのように影響したかは不明である。また, サンプル数が 79 名と比較的少数であり,また単施設の 結果であることも限界として挙げられる。今後,結果の 一般化可能性について検討が必要であり,リハ内容と血 球数に応じた実施基準を統一したうえで多施設共同研究 につなげていく必要がある。 結   論  今回,悪性リンパ腫患者を対象として白血球数および 血小板数と理学療法の実行可能性および安全性の関連性 を明らかにすることを目的として調査を行った。ECOGPS が 0 または 1 である悪性リンパ腫患者 79 名に対して Borg Scale 13 の運動負荷にて短時間高頻度の運動療法 を行った結果,実行率は 94.4% と高かった。また,運動 中および実施後に感染症や出血などの有害事象は認めら れず,運動療法の安全性が示された。一方で,実行率は 白血球数 1,000/µ L 未満または血小板数 20,000/µ L 未満 で低下することが示された。. 179. 利益相反  本研究において開示すべき利益相反はない。 文  献 1)井 上 順 一 朗: が ん の 理 学 療 法. 理 学 療 法 学.2016; 43: 42‒51. 2)Wiskemann J, Dreger P, et al.: Effects of a partly selfadministered exercise program before, during, and after allogeneic stem cell transplantation. Blood. 2011; 117: 2604‒2613. 3)Courneya KS, Sellar CM, et al.: Randomized controlled trial of the effects of aerobic exercise on physical functioning and quality of life in lymphoma patients. J Clin Oncol. 2009; 27: 4605‒4612. 4)Anthony F Yu, Jones LW: Modulation of cardiovascular toxicity in Hodgkin lymphoma: potential role and mechanisms of aerobic training. Future Cardiol. 2015; 11: 441‒452. 5)  哲也,木村彰男:悪性腫瘍(がん)のリハビリテー ション─オーバービュー.総合リハ.2003; 31: 753‒760. 6)井上順一朗,神津 玲:理学療法 MOOK21 ─がんの理学 療法.三輪書店,東京,2017,pp. 11‒12. 7)Morishita S, Kaida K, et al.: Safety and feasibility of physical therapy in cytopenic patients during allogeneic haematopoietic stem cell transplantation. European Eur J Cancer Care (Engl). 2013; 22: 289‒299. 8)Schuler MK, Hornemann B, et al.: Feasibility of an exercise programme in elderly patients undergoing allogeneic stem cell transplantation- a pilot study. Eur J Cancer Care (Engl). 2016; 25: 839‒848. 9)Fu JB, Tennison JM, et al.: Bleeding frequency and characteristics among hematologic malignancy inpatient rehabilitation patients with severe thrombocytopenia. Support Care Cancer. 2018; 26: 3135‒3141. 10)Ibanez K, Espiritu N, et al.: Safety and Feasibility of rehabilitation interventions in children undergoing hematopoietics stem cell transplant with thombocytopenia. Arch Phys Med Rehabil. 2018; 99: 226‒233. 11)Elter T, Stipanov M, et al.: Is physical exercise possible in patients with critical cytopenia undergoing intensive chemotherapy for acute leukaemia or aggressive lymphoma? Int J Hematol. 2009; 90: 199‒204. 12)Hacker ED, Larson JL, et al.: Exercise in patients receiving hematopoietic stem cell transplantation: lessons learned and results from a feasibility study. Oncol Nurs Forum. 2011; 38: 216‒223. 13)Dimeo FC, Thomas F, et al.: Effect of aerobic exercise and relaxation training on fatigue and physical performance of cancer patients after surgery. A randomised controlled trial. Support Care Cancer. 2004; 12: 774‒779. 14)Thorsen L, Skovlund E, et al.: Effectiveness of physical activity on cardiorespiratory fitness and health-related quality of life in young and middle-aged cancer patients shortly after chemotherapy. J Clin Oncol. 2005; 23: 2378‒ 2388. 15)van Waart H, Stuiver MM, et al.: Effect of Low-Intensity Physical Activity and Moderate- to High-Intensity Physical Exercise During Adjuvant Chemotherapy on Physical Fitness, Fatigue, and Chemotherapy Completion Rates: Results of the PACES Randomized Clinical Trial. J Clin Oncol. 2015; 33: 1918‒1927. 16)Courneya KS, Sellar CM, et al.: Moderator Effects in a.

(7) 180. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. Randomized Controlled Trial of Exercise Training in Lymphoma Patients. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009; 18: 2600‒2607. 17)Streckmann F, Kneis S, et al.: Exercise program improves. therapy-related side-effects and quality of life in lymphoma patients undergoing therapy. Annals of Oncology. 2014; 25: 493‒499.. 〈Abstract〉. Feasibility of an Exercise Therapy in Lymphoma Patients with Cytopenia: Preliminary Study by Retrospective Observational Study. Ryuichi KASAHARA, PT, Shoko TAKAHASHI, PT, Ryohei JINBO, PT, Kazumi JINBO, PT, Aya TAKANO, PT, Yuichi YAMAMOTO, PT Kita-Fukushima Medical Center, Department of Rehabilitation Ryuichi KASAHARA, PT, Takayuki IKEZOE, MD, PhD Fukushima Medical University, Department of Hematology Takaaki FUJITA, OT, PhD Tohoku Fukushi University, Faculty of Health Sciences, Department of Rehabilitation Tatsuyuki KAI, MD, PhD, Hideo KIMURA, MD, PhD, Yutaka SHIGA, MD, PhD, Miki FURUKAWA, MD, PhD Kita-Fukushima Medical Center, Department of Hematology Shinichiro MORISHITA, PT, PhD Niigata University of Health and Welfare, Department of Physical Therapy. Purpose: This study aims to assess the relationship between blood data and the safety and feasibility of physical therapy in lymphoma patients with cytopenia. Methods: Total 79 patients with lymphoma who underwent chemotherapy were included in this study. All patients received exercise therapy (13 on the Borg scale) six days per week, 20 min per day. Physical therapy adherence (implementation/scheduled days) was calculated after stratification according to the white blood cell and platelet counts. In addition, the occurrence of adverse events was investigated. Result: The median physical therapy adherence rate of the patients was high at 96.8% (range, 61.7% ‒ 100.0%), and no adverse events were observed during or after the physical therapy. However, the adherence rate significantly decreased when the white blood cell count was <1,000/µ L and platelet count was <20,000/µ L (p < 0.001). Conclusion: The results of this study suggest the safety of exercise therapy in patients with lymphoma. In addition, the results suggest that decreased white blood cell and platelet counts are associated with poor physical therapy adherence. Key Words: Cytopenia, Malignant lymphoma, Feasibility.

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参照

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