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回復期脳卒中後片麻痺患者に対する電動車椅子操作練習が車椅子操作能力および身体機能に与える効果

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 192 43 巻第 2 号 192 ∼ 193 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. プログラムが考案されている. 6). が,特に本邦においてはこれ. に対する検討がほとんどなされていない。また,実際に脳卒中 後片麻痺患者が PWC の操作練習を行った際の操作能力,身体. 回復期脳卒中後片麻痺患者に対する電動 車椅子操作練習が車椅子操作能力および 身体機能に与える効果. 機能などに与える影響について検討されているものは我々が渉 猟した範囲では見られない。  そこで本研究の目的は脳卒中後片麻痺患者における PWC 操 作能力やその特性,PWC 操作練習によって得られる効果につ いて明らかにすることとした。. 万治淳史,吉満倫光,石附芽衣,大里武史. 方  法  対象は回復期リハ病院入院中の脳卒中後片麻痺患者 10 名(平. 埼玉みさと総合リハビリテーション病院リハビリテーション部. 均年齢 71.1 歳:52 ∼ 81 歳)であった(表 1)。取りこみ基準 は初発脳卒中後片麻痺患者とし,入院生活において手動車椅子. キーワード:脳卒中,電動車椅子,バランス. 操作が困難なため,院内移動が介助レベルのものとした。除外 はじめに. 基準は研究内容や研究実施にあたって,指示などの理解が困難.  脳卒中後片麻痺患者では身体・高次脳機能障害など様々な障. な認知機能障害,高次脳機能障害を有する者,PWC 乗車や評. 害が生じ,特に身体機能障害が重度なものにおいては転帰にお. 価・練習に伴って,内科・整形外科的リスクを有するものとし. ける自力歩行の困難さがその後の活動制限を引き起こす重大な. た。本研究は患者が入院する病院の倫理委員会の承認を得て行. 問題点として挙げられる。歩行困難な患者において,代償的な. い,対象者には研究参加に先立ち,研究内容の説明を書面と口. 移動手段として車椅子が使用されるが,より重篤な患者におい. 頭により行い,署名によって同意を得た。. ては車椅子の自走も困難となる。そのような患者や特に屋外で.  介入方法について,対象者の入院リハのうち,1 日 20 分. の移動手段の代替として用いられるのが電動車椅子(Powered. PWC 練習を行う期間(以下,PWC 期)と通常のリハを行う期. wheel chair:以下,PWC)であり,移動範囲拡大の可能性を. 間(以下,RH 期)を設定し,各期間の順序はランダムに振り. 広げる有用なツールであると考えられる。しかし,回復期リハ. 分けた。PWC 練習は Wheel Chair Skills Program 5)に準じて. ビリテーション(以下,リハ)においては,脳卒中後片麻痺. 行った。評価・練習項目は PWC 操作(前進・後退・回転,平. 患者のうち,手動車椅子が処方されるのは 25 ∼ 72%であるの. 地・不整地・傾斜路の走行) ,PWC 座位からのリーチ(床・上. に対し,PWC が処方されるのはたった 1%であったと報告さ. 方),除圧動作や移乗動作などであった。介入前に実施した電. 。脳卒中後片麻痺患者に対する PWC の使用は活動. 動車椅子操作能力テスト 5) (Powered wheel chair skills test:. 範囲の拡大や機能面への影響などポジティブな要素を含んでい. 以下,PWST)において,非達成であった項目について,口頭. れている る. 1). 2)3). 。また,PWC の適応の阻害因子のひとつとなる半側空. 指示や操作介助を行いながら,実施する課題志向型練習とし. 間無視などの高次脳機能障害 1) に関して,半側無視患者にお. た。効果判定のため,PWC・RH 期間の前後に麻痺重症度評価. ける PWC 操作練習の効果・有用性. 4). なども報告されている。. (Stroke impairment assessment set: 以 下,SIAS) ,体幹機. 一方で脳卒中後片麻痺患者の多くを占める高齢患者における操. 能テスト(Trunk Impairment Scale:以下,TIS),座位バラ. 作技術習得の困難さや高次脳機能障害の合併による運転操作に. ンステスト(Sitting Functional Reach Test:以下,SFRT) ,. 伴うリスクが処方を制限する背景として挙げられる。このよ. PWST 5) を実施した。分析は各期間前後での評価結果の比較. うに PWC の有用性が報告されている一方で様々な背景の下,. を反復測定分散分析および Bonferroni 法による事後検定によ. PWC の処方は制限されているのが現状である。このような状. り行った。有意水準は p = 0.05 とした。. 況に対して,PWC の操作能力の評価. 5). や車椅子操作の練習の. 表 1 対象属性 年齢. 性別. A. 76. 男性. 脳幹梗塞. B. 81. 女性. 脳出血. 発症後病日. 日常生活自立度 FIM 点数※. 左橋. 60. 41. 右視床. 37. 37. 疾患名. 病巣. C. 78. 女性. 脳出血. 右頭頂葉皮質下. 44. 61. D. 73. 男性. 脳幹出血. 右橋. 55. 76. E. 79. 男性. 脳梗塞. 右 MCA. 59. 62. F. 54. 男性. 脳梗塞. 左 MCA. 166. 49. G. 52. 男性. 脳出血. 右被殻. 161. 73. H. 81. 女性. 心原性脳塞栓症. 右 MCA. 97. 50. I. 71. 男性. 脳梗塞. 右前頭葉,後頭葉. 59. 60. J. 66. 男性. 脳梗塞. 右放線冠. 46. 68. 平均 78.0 日. 平均 58 点. 平均 71.1 歳 ※ FIM:Functional independence measure.

(2) 脳卒中患者における電動車椅子操作練習の効果. 193. 表 2 RH・PWC 期前後評価結果 評価項目 SIAS(点). 平均 (標準偏差). TIS(点). 平均 (標準偏差). SFRT(cm) 平均 (標準偏差). RH 期前. RH 期後. PWC 期前. PWC 期後. 29.1. 31.0. 29.3. 31.5. (11.6). (13.7). (11.5). (13.0). 4.2. 4.5. 3.5. 5. (3.05). (2.80). (1.96). (2.75). n.s. ※ 1. n.s. ※ 1. 16.8. 19.8. 19.4. 24.2. p < 0.05. (11.8). (9.27). (8.11). (9.82).   ※ 1. p = 0.015 ※ 2 PWST(点) 平均 (標準偏差). 13.5. 19.2. 14.8. 22.4. p < 0.05. (6.82). (6.34). (6.05). (5.97).   ※ 1. p = 0.021 ※ 2 ※ 1 反復測定分散分析の結果,n.s.:有意差なし,p<0.05:有意差あり. ※ 2 表内の p 値は Bonferonni 法による多重比較の結果を示す.反復測定分散分析の結果,SIAS・TIS 得 点は各評価時期間で有意差は見られなかった.SFRT・PWST 得点は反復測定分散分析の結果,評価 時期による効果がみられた(p<0.05).Bonferroni 法による多重比較の結果,それぞれ,PWC 期の前 後で有意差が見られた(p<0.05) . ※ 3 SIAS : Stroke impairment assessment set.TIS : Trunk impairment scale.SFRT : Sitting functional reach test.PWST : Powered wheelchair skills test.. 結  果. 操作中の患者の様子や自ら操作するといった自発的・能動的な.  各期前後での各評価の結果(表 2)は,身体機能および体. 課題特性がこれらの側面に影響を与え,複合的な課題である. 幹機能について,SIAS および TIS は各期前後での有意な差. リーチ課題の改善につながった可能性もあると考えた。これら. は見られなかった。座位バランス能力について,SFRT(cm). のことから,転帰において,PWC の適用が困難と予想される患. (平均点±標準偏差)は,RH 期前 16.8 ± 11.8 →後 19.8 ± 9.3,. 者においても,移動範囲や条件,本人・家族の理解などについ. PWC 期前 19.4 ± 8.1 →後 24.2 ± 9.2 であった。分散分析の結果,. て考慮したうえで,PWC 適用について検討していくことが有用. 評価時期に有意な効果が見られ,多重比較の結果,PWC 期前. となるのではないかと考えた。. 後で有意な改善が見られた(p < 0.05)。PWC 操作能力につい. おわりに. て,PWST(点)は RH 期前 13.5 ± 6.8 →後 19.2 ± 6.8,PWC.  脳卒中後片麻痺重症患者を対象に PWC 操作練習が操作能力. 期前 14.8 ± 6.1 →後 22.4 ± 6.0 と分散分析の結果,評価時期に. や身体機能の改善に与える効果について検討し,これらの能力. 有意な効果が見られ,多重比較の結果,PWC 期前後で有意な. の改善をもたらす可能性が示唆された。今後,パフォーマンス. 改善が見られた(p < 0.05)。. 改善に寄与する他の指標の検討,能力改善のために必要な課題. 考  察. 設定や組み合わせに関する検討が必要であると考える。.  車椅子自走困難な重症患者に対し,PWC 操作練習の効果に. 文  献. ついて検討した。まず,PWC 操作能力について,比較的重症 な患者においても PWC 期において,操作能力の有意な改善が 見られた。長期の目標設定において,歩行や自走車椅子での移 動能力獲得が困難な重症患者において,操作能力の改善の可能 性や PWC 適用の検討をしていく必要性があると考えた。次に, 身体・体幹機能の有意な改善は見られなかった。バランス能力 (SFRT)については PWC 操作練習の前後で有意な改善が見ら れた。これらについて,対象が比較的重症であったこと,研究 期間の短さや PWC 練習の内容から,身体機能・体幹機能評価 に反映されるための十分な練習量が担保できなかったのではな いかと考えられた。一方で PWC 練習では乗車・操作・移動に 際し,座位・抗重力位保持条件下での能動的な課題指向型の作 業(直進・回転などの操作)やこれに対応した加速度などの感 覚入力や負荷が得られる。これらが重症患者が平常得ている感 覚入力や負荷に対し,大きく,有意な感覚入力となり,姿勢の 変化やリーチ課題における身体の反応性,バランス能力の改善 につながったのではないかと考えられた。また,バランス能力 には身体機能のみではなく覚醒・覚度・注意機能などといった 認知・高次脳機能的側面が関与することが知られている。PWC. 1)Mountain AD, Kirby RL, et al.: Rates and predictors of manual and powered wheelchair use for persons with stroke: a retrospective study in a Canadian rehabilitation center. Arch Phys Med Rehabil. 2010; 91: 639‒643. 2)Pettersson I, Törnquist K, et al.: The effect of an outdoor powered wheelchair on activity and participation in users with stroke. Disabil Rehabil Assist Technol. 2006; 1: 235‒243. 3)Pettersson I, Ahlström G, et al.: The value of an outdoor powered wheelchair with regard to the quality of life of persons with stroke: a follow-up study. Assist Technol. 2007; 19: 143‒153. 4)Dawson J, Thornton H: Can patients with unilateral neglect following stroke drive electrically powered wheelchairs? Br J Occup ther. 2003; 66: 496‒504. 5)Wheelchair Skills Program (WSP). [Internet]. Nova scotia: Dalhousie University. Available from: http://www. wheelchairskillsprogram.ca/eng/documents/FORM_ WST-P-WCU_4.3.pdf 6)MacPhee AH, Kirby RL, et al.: Wheelchair skills training program: a randomized clinical trial on wheelchair users undergoing initial rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil. 2004; 85: 41‒50..

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参照

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