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大学生における達成動機,達成目標,完全主義傾向が課題先延ばし行動に与える影響

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-76 448

-大学生における達成動機,達成目標,完全主義傾向が課題先延ばし行動に与える影響

○竹村 優希1)、佐藤 友哉2)、兒玉 憲一2) 1 )比治山大学大学院現代文化研究科臨床心理学専攻、 2 )比治山大学現代文化学部社会臨床心理学科 【問題と目的】 「先延ばし行動(procrastination Behavior)」とは, 主観的な不快感を経験するまで,不必要に課題を遅ら せる行為であると定義され,精神的健康を阻害する可 能性のある行動であることが明らかにされている (Solomon & Rothblum, 1984)。先行研究においては,

先延ばし行動と関連するさまざまな変数が検討されて きている。たとえば,個人のパーソナリティに近い変 数のひとつとしては,「完全主義傾向」があげられて おり,完全主義傾向の中でも,失敗過敏及び行動疑念 傾向が強いと,課題先延ばし行動が多いことが明らか にされている(藤田,2007)。その他にも,当該の行 動に対する動機づけや達成目標といった変数があげら れており,自分自身の人生を充実させることを主な動 機づけとした「自己充実的達成動機」が低い者は課題 先 延 ば し 行 動 が 多 い こ と や( 鈴 木・ 谷 口・ 安 福, 2013),成績や進路などの外的な基準を達成すること を目標とする「成績・進路目標」や,物事を理解する ことそのものを目標とする「プロセス目標」が高いと 課題先延ばし行動が低いこと(藤田・中澤,2013)な どが明らかにされている。このように,これまでの先 行研究においては,課題先延ばし行動に影響を与える 変数として,さまざまな変数がそれぞれ別個に検討さ れているが,これらの変数を包括的に扱った研究は見 当たらない。そこで本研究は,大学生を対象として, 「達成動機」,「達成目標」,「完全主義傾向」が「課題 先延ばし行動」に与える影響について検討することを 目的とする。 【方法】 分析対象者及び調査手続き 大学生177名を対象に 授業中に無記名自記式質問紙を配布し,回答を求めそ の場で回収した。回答に欠損値のあった25名を除いた 有効回答者152名を分析対象者とした。 質問紙の構成 フェイス項目:属性 性別,年齢, 学年の回答を求めた。達成動機:堀野(1987)の達成 動機測定尺度を用いた。本尺度は 2 下位尺度で構成さ れており,「自己充実的達成動機」13項目と「競争的 達成動機」10項目の計23項目で構成された。達成目 標:速水・伊藤・吉崎(1989)の達成目標傾向尺度を 用いた。本尺度は 3 下位尺度で構成されており,「学 習目標傾向(先行研究と合わせるため,以後プロセス 目標と記す)」 9 項目と「成績目標傾向 α(先行研究 と合わせるため,以後他者承認目標と記す)」 7 項目 と「成績目標傾向β(先行研究と合わせるため,以後 成績・進路目標と記す)」 4 項目の計20項目で構成さ れた。完全主義傾向:桜井・大谷(1997)の新完全主 義尺度を用いた。本尺度は 4 下位尺度で構成されてお り,「完全欲求」 5 項目と「高目標設定」 5 項目と「失 敗過敏」 5 項目と「行動疑念」 5 項目の計20項目で構 成された。課題先延ばし行動:藤田(2005)の課題先 延ばし行動測定尺度を用いた。本研究では 2 下位尺度 のうち,以下の 1 下位尺度である「課題先延ばし因子」 を用いた。具体的には,課題先延ばし行動として,学 業からの先延ばしについて,課題着手または課題提出 への遅延行動の程度を尋ねた。本因子は 9 項目で構成 された。 倫理的配慮:講義の冒頭および終了後に研究実施者 が,研究目的,研究への参加は自由意思によるもので 任意であること,研究への参加不参加が学業の成績に 影響を与えることはないこと,個人が特定されないこ とを伝え,調査用紙の提出をもって参加を同意したも のとした。 【結果】 各尺度の記述統計量と性差の検討 分析対象者は, 男 性67名, 女 性85名 で あ っ た。 平 均 年 齢 は 全 体 が 19.22±1.04歳であった。各下位尺度において性差を 検討した結果,有意差は認められなかった。 それぞれの変数を説明変数とした重回帰分析 各変 数が先延ばし行動に与える影響を包括的に検討するた め,達成動機として「自己充実的達成動機」,「競争的 達成動機」,達成目標として「プロセス目標」,「他者 承認目標」,「成績・進路目標」,完璧主義傾向として 「完全欲求」,「高目標設定」,「失敗過敏」,「行動疑念」 を説明変数,「課題先延ばし行動」を目的変数とした 重回帰分析を行った(Table)。その結果,達成動機に おいては,自己充実的達成動機(β =.36,p <.01), 達 成 目 標 に お い て は 成 績 進 路 目 標(β =-.22,p <.10),完全主義においては完全欲求(β =-.28,p <.05),失敗過敏(β =.33,p <.05)において課題 先延ばし行動に対する偏回帰係数が有意であった。 【考察】 本研究の目的は大学生を対象として,「達成動機」, 「達成目標」,「完全主義傾向」が「課題先延ばし行動」 に与える影響について検討することであった。各変数 を説明変数とした重回帰分析の結果,種々の変数のな かでも,「自己充実的達成動機」,「成績・進路目標」,

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-76 449 -「完全欲求」,「失敗過敏」が「課題先延ばし行動」に 影響を与えていることが示された。具体的には,成 績・進路目標,完全欲求の程度が高いと課題先延ばし 行動が少なく,自己充実的達成動機,失敗過敏が高い と課題先延ばし行動が多い可能性が考えられた。この ことを踏まえると,成績や完全を求めることなど,明 確かつ比較的達成しやすい目標があれば課題を行いや すい(先延ばししない)一方で,自己充実といったあ いまいな動機によって成果が見えづらい(強化されづ らい)場合や,失敗過敏が高く課題先延ばし行動が回 避として機能しうる場合は,課題先延ばし行動が認め られる可能性が考えられた。今回測定した先延ばし行 動は,大学生の「学業からの」先延ばし行動が測定さ れた。しかし,大学生が先延ばしを行う対象として は,就職活動など,より成果が見えづらく,今後の生 活に影響する活動もあろう。今後は,さまざまな種類 の先延ばし行動に影響を与える変数(ルールなど)を 今後明らかにしていく必要があるであろう。また,こ れまでの研究では,先延ばし行動に影響を与える変数 として,おもに個人内要因が取り上げられることが多 かったが,先延ばし行動が「非適応的」と判断される ためには,環境との相互作用(たとえば,「テスト直 前に先延ばしするか」など)を含めた検討も必要であ ろう。今後は,このような環境的側面も含めた検討を 行う必要がある。

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