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就学前児童のピア・ティーチング : ケーススタディに見る相互作用

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(1)

就学前児童 の ピア・テ イーチ ング

― ケースス タデ イに見 る相互作用 一

*

Preschool children's peer teachingi

case study of interactive operation

OGAWA Yoko*

キーワー ド:ピア・ティーチ ング

,就

学前児童

,垂

直的相互作用

,水

平的相互作用

Key ヽVordsI Peer teaching, Preschool chiXdren, Vertical interaction, IIorizontal interaction

l.問

題 提起 子 どもが子 どもに教 える場合

,そ

の知識 は直観 的 で暗黙 知 (言語化 で きない知識

)が

多 く

(Sternberg,Wagner&Okagaki,1993),同

時に

,教

える側 (教師役

)の

子 どもは自身の学習によつ て得た方略を多用するとされている

(Siegler,1986,Shachar&Sharan,1994;Brand,1999,2000,

2002)。 例 えば

,6歳 ,9歳

及び12歳児 を

2人

1組として,知らない曲を教 える課題 を課 したBrand の研究 (2002)では

,教

える側の子 どもが

,デ

モ ンス トレーシ ョン

,説

,情

報の伝 達

,教

,再

構 築

,精

級化等

,教

わる側の子 どもので きない部分 を即座 に直観的に把握 して,さ まざまな方略をつか うこと

,子

ども同士で交わされる質問やフイー ドバ ックは適切な ものであ り

,問

題解 決型 に似 てい ること等が明 らかにされた。 さらに

,教

える根1は個別の音 (音色

,音

長等

)を

取 り出 して教 える と い うよりは,音楽構造に焦点をあてて教 えること

,学

習にかけた総時間数のうち,「問答 (Dialoguc)」 と「相互作用 (Interaction)」 に8割

,技

術の習得 に2割程度の時間が割かれていること

,教

える側 と教 わる側の両者 ともオフタスク活動がほとんど認め られないことも指摘 された。 こう した異年齢 間の協 同的学習 は

,一

方 のパ ー トナーが熟達 してい る場合 の「垂直的相互作用」(Hartup,1989;

Granott,1993)あ

るいは「相互教授」(BrOwn,et al.,1989)の 一つ と考えられ

,作

文や歴 史

,理

科の課題学習の分野では

,ヴ

イゴツキーの「最近接発達領域」 と関連づ けて論議す る研 究者 も多い

(佐藤,1996)。 これ らの研究成果 によると

,異

年齢間や熟達度が異なる子 ども⇔ 子 ども間には

,仲

間同士の水平的相互作用 とは明 らかに異なる機能が内在化 していること力W旨摘 されている。教 わる

(2)

小川容子 :就 学前児童の ピア・ティーチ ング 側の技術・知識の習得は

,教

師役の子 どもの支援や指導の影響 を受けて効果的 に深 まるこ とも確 認 されてお り

,学

習者 自身の知識の再構造化 をも促進 しているのではないか と解釈 されてい るのであ る。 では

,対

象児が就学前児童である場合 も

,子

ども同士の垂直的相互作用 は同 じような機 能 をもつ のであろうか。一般的に3歳か ら

4歳

にかけて

,子

どもは仲間よりも大人の承認 を得 ようとす るが, 集団遊 びがで きるようになる5歳ごろか らは,仲間の承諾や協調 に重 きをお きは じめ る とされてい る (波多野,1981)。 これまで

,幼

稚園児の学 びに関する研究では教師・親 と子 どもの関係 に焦点 を 当てた ものが多 く

,異

年齢 を含めて子 ども同士の学びを実験的に扱 った ものは少 ない。特 に

,技

術 の習得 を主 とした音楽活動において

,子

ども達が どのように関わ りあい相互交流 をお こなってい る のかを明 らかにしたものは,ほとんど見当たらない。最近では,「(フ イール ドワー クをお こなった 結果

)子

どもが子 どもか ら教わっていることが明確 に見て取れる場面はきわめて稀 である」「子 ども の学びは大人が考えるモデルとは違 うのではないか」 といった意見を主張する研究者 もいる (今川, 小川,2003)。 子 ども同士の学びを明 らかにするためには,自 然観察法だけでな く

,実

験者 の積極 的 な介入 も必要ではないだろうか。 以上のことを踏 まえ

,本

研究では現場実験 をおこなうことによって

,子

ども達 の学 びの実態 とそ こでお こっている垂直的及び水平的相互作用の機能について明 らかにすることを 目的 とした。年長 児はどのように教 えるのか

,ど

のような方略 を用いるのか

,教

わる側 は どの ように学 ぶのか。教 え る側 と教わる側が同年齢である場合 と異年齢である場合 とでは

,子

ども達の教 え・学 びは異 なるの か。異 なるとしたらどのように異なるのか。こうした点 をディス コース分析 によって明 らかにす る と共 に

,大

人が幼稚園児に教 える場合 と比較 しなが ら検討する。

2.年

長 児 か ら年 中児へ の教 え (実験 1) 2,1方法 被験者 鳥取大学附属幼稚園及び鳥取短期大学附属幼稚園の5歳児3名と

4歳

3名

, 2名 1組

となって実験 に参加 した。被験者の選出にあたっては,日 頃か ら仲良 く遊ぶ友達 同士であることを 前提 に

,幼

稚園園長,当該クラスの担任

,及

び保護者の方々に協力 をお願い した。 刺激 図 1に 示 したように,き らきら星の前半

4小

節 を課題 と し

,4分

音符

=110-120bpmの

テ ン ポで,オルフ鉄琴楽器 (ミ ュージ ックベル

,SUZUKI SB25)を

用いて

,被

験者に提示 した。 手続 き 実験 は大人か ら年長児への教示,そのあ と年長児か ら年中児へ の教示 とい う2ステ ップを 設けておこなわれた。まず

,大

人か ら年長児へは「この曲を覚えて

,OOち

ゃんに教 えてあげ よう ね」 と動機づけがなされ

,年

長児が一人で

4小

節 を間違わずに叩けるまで教 え られ た。鉄琴 は, 1 音に1鍵盤ずつ対応 してお り

,取

り外 しがで きること,自 由に並 び代 え られ るこ とも併せ て教 え ら れた。指導 ・学習に要 した時間は

,8分

か ら13分

(Average=103)で

ある。 次に,「上手 に弾けるようになったか ら

,今

度は

,○

○ちゃんに教 えであげてね」 と年 中児 に「 き らきら星」 を教 えるよう

,年

長児 に教示 した。年中児の入室後

,実

験者 は子 ども達 の活動状況 に応 じて意図的に保護者不在の時間 をつ くり出 した。子 ども達の教 え・学 びの様子 は

,ビ

デオカメラ

(SONY DCR―

TRV50)2台

を用いて録画 され

,実

験終了後 に子 ども達の間で交わされた全談話及 び 音楽活動の書 き起 こしと分析 をおこなった。ステップ

1,2と

,教

師役 である「教 える側」 は曲

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第 5巻 第 2号

(2004) 89

及 び奏法 を熟知 してお り,「教 わ る恨I」 は奏法等 を全 く知 らない子 ども達 である。実験 は

,鳥

取 大 学 大学院生室及 び鳥取短期大学附属幼稚 園の一般教室でお こなわれた。実験 に要 した時 間 は

, 1組

あ た り90分 以内であった (平均

726分

)。 図

1

課題 とした「きらきら星」の 4小 節 2.2結果 と考察 書 き起 こされた子 ども達の談話データは

,教

える狽1,教わる側それぞれが用いた「言葉」 と「音」 及び教 える狽Jが用いた「提示方法」「提示方略」に焦点 をあてて分析 した。 表1は

,教

える側 と教わる側の間で どのような言葉が用い られたか を

,被

験者別 にカテ ゴ リー ご との一覧表にまとめた ものである。「カテゴリーA」 は「接尾語

,接

頭語

,あ

いづ ち,う なず き」 等 であ り,「カテゴリーB」 は「先生

,OOち

ゃん

,弾

,歌

,分

かる

,二

,一

緒」等 この場面以外 にも用い られる用語である。「カテゴリーC」 は「順番

,2個

ずつ

,飛

ぶ,と な り

,並

べ る

,続

け る, 棒 (バチ)」 等 この場面特有 に用いられる用語,「カテゴリーD」 は「やつた,すごい

,で

きた」 等 の 称賛 をあ らわす用語,「カテゴリーE」 は「 きらきら星の歌詞」である。「カテゴリーF」 は「 ちが う よ,え ?」 等の批判 に相当する用語,「カテゴリーG」 は「わかった?いい

?大

丈夫?」 等確 認 に関 連する用語 とした。被験者の組は

,Y女

M女

,T女

H女

,H女

とK男が,それぞれ年長 と年 中のペ アとなっている。尚,別の 日におこなった実験者 (大学院生

)か

ら年長児 ・年中児への教示 の様子 も同様 に分析 し

,年

長児の教 えと比較するために

,表

の横 に平均値 として掲載 した。 表 1に 示 したように

,幼

稚 園児の場合

,教

える側である年長児の言葉数は

,教

わる側の年中児 よ り も比較的多いことが分かる。カテゴリー別にみると,「きらきら星

Jを

教 える場面特有に用 い られ る 「カテゴリーC」 の用語,こ の場面以外 にも用い られる「カテゴリーB」 の汎用語が多 く用 い られて いる。子 どもによつては,「カテゴリーE」 の「歌詞」や「カテゴリーF」 の批判,「カテ ゴリーG」 の確認に相当する用語 も用い られている。 しか し,「カテゴリーD」 の称賛 をあ らわす用語 は

,わ

ず か1語しか用い られていない。一方

,大

人の場合 は

,年

長児 よ りもはるか に多 くの言葉数 を用 いて お り,しか も,さ まざまなカテゴリーに分類 されることが分かる。恐 らく

,姑

象者 となった子 どもの 様子 を見なが ら使い分けているためであろう。 さらに「批判」「確認」 に相当する用語が全 く使 われ ていないこと,「称賛」が比較的多 く使われていることが認め られる。 次 に示 した表2は

,両

者の間で鳴 らされた音の数 を1音符 三1と して カウン トした ものであ り, 表1と同様

,大

人か ら年長児 ・年中児への教示の平均値 も併せて掲載 した。 この数字か ら鉄琴 が ど のように叩かれたかを探 ることができる。幼稚園児の場合

,年

長児の音数 は年 中児 よ りも若干多 い ものの,個人差が大 きいことが分かる。 しか し

,年

長児 と年中児 の音 の総数の比率が類似 してい る ことか ら,「教 え ⇔ 学び」間での対応が運動 してなされていること

,教

える恨1も学ぶ側 も叩 きなが ら確認 しあつていることが伺 える。これに対 して大人の場合

,教

示の音数はかな り少ない。 つ ま り,

(4)

小川容子 :就学前児童の ピア・テ ィーチ ング 自分が叩 くよりも

,学

ぶ側 に叩かせなが ら教 えているといえよう。 次の表3は

,教

える側が どのようにして音 を提示 したかを

,楽

曲の区切 り方によって分類 し

,そ

れ ぞれの提示回数 を示 した ものである。「4小節全部」は課題全部 を一度に提示 した もの,「

4小

>

2小節」は

,楽

曲の区切 りとは無関係 に区切 つた もので

2小

節 より長 く提示 した もの,「

2小

節」 は フレーズごとに提示 した もの,「2小節

>単

音」は2音以上

,2小

節以内の提示 で

,小

節 と しての区 切 りとは無関係 な提示,「単音」 は 1つ の音 を取 り出 して提示 した ものを,それぞれ表わ してい る。 表に示 したように

,幼

稚園児の場合 は「単音」や「2小節以内」 といった提示が多 くみ られ,フ レー ズや小節の区切 りとは無関係 に提示 していることが分かる。これに対 して

,大

人の場合は「

2小

節」 のフレーズごと,「単音」,「2小節

>単

音」の順 に提示回数が多 くなってお り

,音

楽の まとま りを意 識 した教示 といえよう。 以上述べたように

,幼

稚園児 と大人を比較すると

,両

者間で はか な り異 なった教示方略が とられ ていることが分かる。 しか し,それぞれの年長児 ・年中児 はさまざまな教 え・学びをしてお り,「幼 稚園児」 として一括 りにする前 に,一人ひとり個別 に抽出 しなが らペアごとの年長児 ⇔ 年 中児 の関 わ りを明 らかにする必要があろう。そこで

,3つ

の表をまとめなが らケース ごとに詳細 に検討 して い く。 まず

,Y女

M女

のケースでは

,年

長児 は

,汎

用語である「 カテゴリーB」 と場面特有 の「 カテ ゴ リーC」 の言語 を多 く使用 し

,単

音 よりもフレーズを提示 しなが ら教 えていた。特 に

,4小

節全体 の 提示回数が多 くなっているのが特徴である。教 える側である

Y女

は,「見ててね」 とい う言葉 を多 く 使用 してお り

,M女

が途中で分か らな くなると

,最

初か ら最後 まで叩 くとい う方略 を用 いていた。 つまり,できなかった箇所 を取 り出すのではな く

,最

初 に戻 つて教 えるのである。さらに

,M女

が一 人で叩けるようになった後 も

,何

度 も繰 り返 し演奏することを要求 し,「わかったね?」 と しつ こ く 確認 をしていた。 次のT女 →

H女

のケースでは,カ テゴリー

C,A,B,Fの

用語の頻度が高 くみ られた。この

M女

はや や寡黙な年長児であるが,と きどき「 え?う うん,あなた,ちが うわよ」 という批判語を用いていた。 また

H女

がで きない箇所では,フ レーズでの提示 よりも単音 や

2音

3音

の繰 り返 しをお こな うこ とによって教示する傾向にあった。その際

,説

明をせずに鉄琴 を叩 く

,H女

の腕 をつかんで叩かせる, 試行錯誤する

H女

の腕 を払い除けて自分で叩 く等の方略を用いていた。 最後の

H女

→K男のケースでは

,年

長児 は場面特有の「 カテゴリーC」 用語 と歌詞 を多 く使用 して お り

,歌

や説明を交えなが ら工夫 に富んだ教えをおこなっていた。にも関わらず

,教

わる側の

K男

に はほとんど言語 による反応がな く「 ようわか らん」「むずか しい」 といった否定的な言語が日立った。

H女

の「 カテゴリーF」 の批判語は

, K男

の態度 と連動 して多用 されていた。 では,上述 した

3人

の年長児はどのような方略 を用いていたのだろうか。 図

2か

ら図 4と してそ れぞれの教示方略 を図示する

c図

2と 図3に示 したように

, Y女

とT女の場合 は良 く似 た方略 を用 いていることがわかる。どちらも鉄琴 を叩 く「音だけ」の方略が半分以上 を占めてお り

,続

いて腕 をひっぱる

,遮

るといった「動作 だけ」や,「歌いなが ら鉄琴 を叩 く」「鉄琴 を叩 きなが ら,叩 く箇所 を示す」「鉄琴 を叩 きなが ら説明する」等の方略が見 られる。言い換えれば

,2人

の年長児 に とって は

,鉄

琴 をどう日「 くか とぃう奏法 を教 えることが最 も重要視 されていることが わか る。 これ に対 し

H女

は,図 4に示 したように

,一

つの方略に固守することな くさまざまな方略を用いていることが 分かる。「音だけ」 と同様に,「歌いなが ら鉄琴 を叩 く」「歌 う」 さらに「音十動作十説明十歌」といっ た方略 も用いてお り

,鉄

琴の奏法だけではな く「 きらきら星」の曲その もの を教 えようとした よう

(5)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第 5巻 第 2号

(2004) 91

である。これは前述 したように

,学

習者であるK男がなかなか演奏で きないためにとつた

H女

の試行

1

錯誤の結果 と思われるが,多様 な方略 を用いたとい う点で非常に興味深 い。 尚

,大

人が とった教示

i

方略 (年長児に対する平均

)を

図 5と して掲げた。 表

1

発話者別に見たカテゴ リー別の言葉数 (年長児から年中児vs大人か ら年長・年中児) 年 長 年 中 年 長 年 中 年 長 年 中 大 人 年 長 大 人 年 中

Ytt I M女

T女 H女 H女 K男 カテ ゴ リー

A

7 4 7 2 カテ ゴ リー

B

8 0 カテ ゴ リー

C

0 2 0 カテゴ リー

D

0 0 0 0 2 0 0 カテ ゴ リー

E

0 0 4 0 2 1 カテ ゴ リー

F

1 0 6 0 0 カテ ゴ リー

G

8 0 3 0 0 0 0 総 数 6 「カテゴリーA」 は接尾語

/接

頭語/あいづち,「カテゴリーB」 はこの場面以外にも用い られる汎用語,「カ テゴリーC」 はこの場面特有用語,「カテゴリーD」 は称賛,「カテゴリーE」 は歌詞,「カテゴリー

FJは

批判, 「カテゴリーG」 は確認に相当する用語をそれぞれ示している。表内の数字は 1単 語=1。 表

2

鉄琴 を用いて提示・学習 された音の数 (年長児か ら年中児vs大人から年長・年中児) 表内の数字は教 える側,教わる側両者の間で提示 された音数 を示 している。 1音 符

=1と

して示 した。 年 長 年 中 年 長 年 中 年 長 年 長 大 人 年 中 Y女

M女

T女 H女 音の総数 106 1 137

(6)

小川容子 :就 学前児童のピア・ティーチング 表

3

教 える側 が用 いた内容別提示回数 (年長児vs大 人) 年長児 大 人 Y女

I T女 I H女

4/1ヽ飾全吉Б 1 4 3 4小節>2月ヽ l 2月ヽ節 6 2小 節>単音 単 書 1 「

4小

節全部」 は課題 を一度 に提示,「4小節

>2小

Jは

,2小

節 より長 く提示,「2小節

Jは

フレー ズ を提示,「2小節

>単

音」 は単音 以上 を提示,「単音」 は1つの音 を取 り出 した提示,をそれぞれ示 してい る。表 内の数字 は1試行

=1と

して示 した。

I

歌いなが ら鉄琴の 箇所 を示す 90/0 音十動作+説明十 歌声 0% 鉄琴 を叩いて,箇 所 を示す 30/O (鉄琴 を叩 く ) だけ 55% 歌いなが ら鉄琴 を ロロく 6% 動作 (進る/腕を ひっばる)だけ 14% 図

2 Y女

が用 いた教示方略

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第 5巻 第 2号 (2004)

琴 ら 鉄 が ハ な る 歌 い なが ら鉄 琴 の箇所 を示 す 0% 鉄琴 をロロいて箇 所を示す ―一― = 0% 歌 い なが ら鉄 琴 を叩 く 25% (鉄琴 を叩 くだけ ) 59% 動作 (腕をひっ ばる/進る)だけ 8% 説明だけ 0% 図

3 T女

が用 いた教示方略 音 十動作+説明 +歌声 昔 (鉄 琴 を叩 く) 15% 歌 い なが ら鉄琴 を ロロく 15% 図

4 H女

が用 いた教示方略 音+動作 十説 明 十歌声 11% 音(鉄琴を叩 く) だけ 2% 歌 だ け 2% 動作だけ 4% 歌 い な が ら鉄 琴 を叩 く 41% 鉄琴 を叩 いて箇 所 を示 す 4% 図

5

大人 が用 いた教示方 略

(8)

小川容子 :就学前児童の ピア・テ イーチ ング 以上,年長児 と大 人の教示 を比較す ると,それぞれ次 の ようにまとめることがで きる。 年長児 か ら年 中児ヘ

(1)言

葉数 は100語 前後 であ り,「きらきら星」 を教 える場面特 有 の用 語 と

,こ

の場 面 以外 に も用 い られ る汎用語が多 く使 われている。子 どもによっては歌詞の使用 頻 度 も高 い。批 判

,確

認 に相当す る用語 も少 なか らず用 い られている。 しか し

,称

賛 をあ らわす 用 語 は

,ほ

とん ど用 い られていない。

(2)音

数 は200音 以上 あ り

,言

語 よ りはるか に多い。 また学習者の音数 に運動 している。

(3)単

音 や2・ 3音を繰 り返す

,2小

節以 内 を何 度 も提示 す る とい った内容が多 くみ られ,フ レー ズや小節 の区切 りとは無関係 に提示す る傾 向 にある。 さらに学習者 の上 達 過程 とは無 関係 に 全体提示 をす ることがある。

(4)方

略 と して

,音

(鉄琴 を叩 く

)だ

,学

習者 の腕 をつ か んで叩かせ る

,鉄

琴 を叩いて学習者 に 叩 く場所 を示す等が多 く用 い られている。子 どもによっては歌 い なが ら鉄琴 を叩 く

,歌

う と い った方略 も用 い られ るが

,全

体 の2害」程 度 であ る。 大人

(1)年

長児 よ りもは るか に多 くの言葉数 を用いてお り

,使

用言語数 は約200語である。姑象者 となっ た子 どもの様子 を見 なが ら多様 なカテゴ リーを使 い分 けている。批判 や確 認 に相 当す る用語 は全 く使 われていない。称賛 に関連す る用語 は比較的多 く使 われてい る。

(2)言

葉数 に比べ

,音

数 は100音前 後 とかな り少 ない。 また学習者 の音 数の方が はるか に多 い。

(3)小

節や フ レーズ単位 で 区切 って提示す る場合 が多 く

,全

体提示 はそれ ほ どな されていない。

(4)方

略 と して は

,歌

い なが ら叩 く

,鉄

琴 を叩 きなが ら説 明す る

,音

十動作 十説明十歌声 な ど

,複

合 した教示 方略が用 い られてい る。 では,年長児 か ら年長児へ教 える場合 には

,ど

の ような教 え・学 びが見 られ るの だろ うか 。 次 の 実験 で は

,被

験 者 の年齢が 同 じ場合 の相互作用 について検討す る。

3.年

長 児 か ら年 長 児 へ の 教 え

(実

2)

3.1方法 被験者 ′鳥取大学 附属幼稚 園及 び′鳥取短期大学 附属幼稚 園の5歳児8名が

2名

1組となって

,実

験 に参加 した。 刺激 実験 1と 同様 の4小節 の課題 を用 いた。 手続 き 実験 1と ほぼ同様 の手続 きであるが

,保

護者及 び実験 者 は同席 してい ない。 3.2結果 と考察 被験者 同士 の間で交 わ された言葉 と音 を,各ペ アごとに表 4と 表5に示 し

,表

6には教 え る側 の 年長児が どの ような内容で教 えたか を一覧表 として示 した。

M女

A女

,K女

とI女

,Y女

R女

,M

女 とS女 が,それぞれのペ アである。表4に示 した よ うに

,年

長児 が年長児 に教 え る場 合 は

,年

中児 に教 える場合 に比べ て言葉の数がか な り少 な くなっていることが分か る。 さ らに どの年 長児 も共 通 した言語 を用 い る傾 向 にあった。 カテゴリー別 にみ る と,「この場 面 以外 に も用 い られ る汎用 語J,

(9)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第 5巻 第 2号

(2004) 95

「場面特有の用語」,「歌詞」,「あいづち」の順 に多 く用いられてお り

,批

判や称 賛 は全 く用い られて いないことが分かる。さらに表5に示 したように

,使

用 した音数 も50音か ら170音と年中児 に教 える 場合に比べて格段に少な くなっている。学習者側 も50音以内の音数で反応 してお り

,年

長児 に共通 する傾向 といえよう。 なぜ年長児 と年中児の間で,こ の ような教え方の違いが見 られたのであろ うか。 これは

,学

習者 側の要因を加味 して検討すべ きであると思われる。 というのは,こ の実験

2で

学習者側 の被験者 と なった年長児すべてが

,短

時間で「 きらきら星」の叩 き方を修得 したか らであ る。 どの学習者 も試 行錯誤 を くり返す というよりは

,教

える側の年長児の奏法をじっ と見てか ら日「 きは じめ

,数

回の練 習後に一人でHΠくことが可能になった。さらに「 こう?これでいい?」 とい った確認 の用語 を頻繁 に用いていた。表6に示 したように

,教

える側が用いた提示内容にも年 中児へ の内容 とは違 いが認 め られた。提示回数が最 も多かったのは,「

4小

節全体」の提示であ り,ついで「2小節」 の提示 と 「単音

Jで

あつた。 表

4

発話者別に見 たカテゴ リー別の言葉数 (年長児か ら年長児) 年 長 年 長 年 長 年 長 年 長 年 長 年 長 年 長

M女 A女 K女 I女 Y女 R女

M女

S女

カテ ゴ リー

A

9 2 7 2 カテ ゴ リー

B

4 4 4 6 カテ ゴ リーC 2 7 5 3 カテ ゴ リー

D

0 0 0 0 0 カテゴ リー

E

9 5 9 カテ ゴ リー

F

0 0 0 0 カテ ゴリー

G

0 0 4 0 0 総 数 「カテゴリーA」 は接尾語

/接

頭語/あいづち,「カテゴリーB」 はこの場面以外にも用い られる汎用語,「カ テゴリーC」 はこの場面特有用語,「カテゴリー

DJは

称賛,「カテゴリーE」 は歌詞,「カテゴリーF」 は批判, 「カテゴリーG」 は確認に相当する用語をそれぞれ示 している。表内の数字は 1単 語=1。 表

5

鉄琴 を用 いて提示・学習 された音の数 (年長児か ら年長児) 年 長 年 長 年長 年 長 年 長 年 長 年 長 年 長

M女 A女 K女 I女 Y女 R女 M女 S女

音の総数

(10)

小川容子 :就 学前児童の ピア・ティーチ ング 表

6

教 える側が用いた内容別提示回数 (年長児)

M女

K女 Y女 M女 4小 節全部 8 6 3 4小 節>2月ヽ 1 2 0 1 2小 節 4 0 0 2小 節>単音 1 1 2 単 音 1 2 2 1 「 4小 節全部」は課題 を一度に提示,「4小節

>2小

節」 は

,2小

節 より長 く提示,「2小 節」はフレーズを提示, 「2小 節>単音」は単音以上 を提示,「単昔」 は 1つ の音 を取 り出 した提示,を それぞれ示 している。表内の数字 は1試 行

=1と

して示 した。 図6と して

,教

える側の年長児達が用いた方略を表す。個人差がそれほ ど認 め られ なか ったので, 被験者の平均値 を図示する。 歌 い なが ら鉄 琴 の箇所 を示す 13% 鉄琴 を叩 いて箇 所を示す 0% 鉄琴 を叩 きなが ら説明する 0% 歌いなが ら鉄 琴 音(鉄琴を叩 く) だけ 49% をロロく 0% 動作(腕をひっ ぱる/進る)だ け 6% 説明だけ 0% 歌 だけ19% 図

6

年長児が用いた教示方略(平均) 図6に示 したように

,鉄

琴 をHΠく「音だけ」の提示が半数 を占めてお り,ついで「歌 だけ」「歌 いな が ら鉄琴の叩 く箇所 を示す」「音 十動作 十説明十歌声」の川買に教示方略が使われている。一見

,年

中 児への教 えと類似 しているように見 えるが

,課

題全体 を通 した提示及 び確認行為 と しての提示がお こなわれてお り,ま た

,歌

だけの提示では学習者 と一緒 に歌 う活動へ と発展 していることか ら

,質

的 に異なる提示だと考えられる。このように,年長児の教 え・学びの プロセスは

,年

中児 のそれ とは かな り異 なっているといえる。以下に

,年

長児が同年齢 に対 しておこなった教示 をまとめる。 年長児か ら年長児ヘ

(1)言

葉数は100語内であ り

,異

年齢 に対するよりも少ない。場面以外 にも用い られ る汎用語

,場

面特有の用語

,歌

詞が多 く用い られている。批判や称賛は全 く用い られていない。

(2)音

数は50音から200音以内であ り

,異

年齢 に対するよりもかな り少ない。学習者側 も50音 以内 の音数を使用 してお り

,両

者 とも少ない音数である。

(11)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第 5巻 第 2号

(2004) 97

(3)4小

節全体の提示回数が多い。フレーズや音楽的まとまりに則 った区切 り方がお こなわれて いる。

(4)説

明や歌 を伴わない音だけの提示方略が多 く用い られている。学習者へ の確認行為 の一環 と 考えられる。 4・ 総 合考 察 以上

,本

研究では子 ども達の垂直的相互作用及び水平的相互作用 について明 らかにす るため に, 幼稚園児 を対象 にした異年齢及び同年齢の教え・学 びに焦点 を当て

,デ

イス コース分析 によつて検 討 した。併せて

,大

人か ら子 ども達への教 えも分析対象 とし,それぞれの相違 について比較 した。 その結果

,異

年齢の場合は次のようにまとめることがで きる。教 える側が用 い る言葉数は学ぶ側 よ りも圧倒的に多 く,「場面特有の用語」 と「他の場面で も使 える汎用語」が共通 して多用される。ケー スによつては,「さらきら星の歌詞」や「批半J」「確認 に関連する用語」が用 い られる。教 える側が 用いる音数は子 どもによつてまちまちであるが

,学

ぶ側の音数は教える側 とほぼ同数である。全体 を提示するよりも

,単

音や2・ 3音あるいは

,2小

節以内の短い部分 を くり返 し提示す る回数が多 い。教 える叡1の方略は

i説

明をせずに鉄琴 を叩 くといつた「音だけ」 の提示が共通 して多 く認 め ら れ

,次

いで

,腕

をつかんで叩かせ る,叩 く箇所 をバチで示す等が用い られる。これに対 して同年齢 の 場合は

,教

える側が用いる言葉数は,学ぶ側 よりも多いものの

,異

年齢の場合に比べて

1/2か

1/3

程度減少 している。「場面特有の用語」 と「他の場面で も使 える汎用語」「歌詞」 が共通 して多用 さ れる。教える側が用いる音数 も

,異

年齢の場合 に比べて減少 し

,全

体提示が多 く見 られる。教 える 狽1の方略は,「音 だけ」「歌 う」「歌いなが ら叩 く」 といつた方略が多 くとられる。 このように両条件 を比較すると

,教

示方略には類似点が多々あるものの

,言

葉数や音数

,教

示内容 にはかな り違いがあることが分かる。概 して

,異

年齢の教 えは一方的であ り

,且

つ強引である。黙っ て音 を提示する

,腕

をとって叩かせる

,腕

を払い除けて自分が叩 くといつた方略は

,学

ぶ側の心情 に 配慮 した教 え方 と言 うよりもむ しろ徒弟制度に類似 しているといえるだろ う。一方

,同

年齢 の場合 は

,学

び手の意見やや り方 を尊重 しなが ら教示 していると推測で きる。恐 ら く垂直的相互作用 と水 平的相互作用の違いがあらわれた ものと

,解

釈で きる。 しか しここで最 も考慮すべ きことは

,先

行研究結果 との大 きな違いである。多数の研 究者 に よつ て指摘 されて きた異年齢間の「問題解決型の相互交流」や「問答が主」,「音楽構造 を提示」 といつ た傾向は

,今

回の実験ではほとんど認め られなかった。年長児の教 え方 は

,鉄

琴 をどう叩 くか とい う奏法伝達が主であ り,年中児 との対話 というよりも一方的な教示や単音の繰 り返 しが特徴的であっ た。なぜ,こ のような違いが得 られたのか。対象年齢

,姑

象楽曲あるいは難易度の違いなのか,それ とももっと根本的な原因に拠るものだろうか。さらに実験者 にとって驚 きであったのは

,こ

う した 教示が展開されていて も

,学

び手である年中児は

,皆

「一生懸命」聞 き,覚えようとしていたことで ある。邦楽に代表 される伝統的な家元制度では,「厳 しい しつけと共に自然 に習得することが主 であ り」(梅本

,1999)学

習者 自身の活動や模倣が中心 となるとされている。幼稚 園児の子 ども同士 にみ られた教え・学びも,こ うした点か ら考慮する必要があるのか もしれない。 今後はこうした先行研究 との違いの原因究明に焦点 を絞 って

,被

験者数 を増や して追実験 をす る と共に

,実

験室以外の場面での異年齢間・同年齢間の相互作用 を明 らかにしていきたい。

(12)

小川容子 :就学前児童の ピア・ティーチ ング 謝 辞

1

本実験 をお こな うにあた り,鳥取大学大学 院教育研 究科 の佐 々木 唯 さん

,羽

根 田真 弓 さん を は じ め,鳥取大学 附属幼稚 園,鳥取短期大学附属幼稚 園の関係者の方 々,園児 の皆 さん に御協 力 をいた だ いた。記 して感謝 の意 を表 します。 引用文献

(1)Brand, E (1999) Learning frO■l children: A child's mentalェnodel of learning and teaching a song Paper presented at the lnternational COnferencc on Cognitive Processes oF Children

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(3)Brand, E (2002) HOw do children teach each other a sOng? Paper presented at the 19th

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_日

本 音 楽教 育 学 会 平

成15年度研 究発表 ラ ウン ドテーブル発表資料

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(10)Shachar, H, &Sharan, S (1994) Talking relating and achieving: Effects of cooperative

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'n

ιV9Spα れOθυθιopttθれι

Hlllsdale,NL:Earlbaum

表 3  教 える側 が用 いた内容別提示回数 (年長児vs大 人 )

参照

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