1. はじめに ねじのゆるみ現象は,ねじ部品の脱落だけでなく, ボルト軸力の低下による締結部の疲労破壊を引き起こ す重大な問題である.ゆるみについては古くから多数 の研究が発表されているが,あらゆる使用状態に有効 なゆるみの防止方法は確立されていない.その原因と して,ゆるみが力学的に極めて複雑な現象である点が 挙げられる.ねじのゆるみ現象には,被締結体に対し てナットやボルトが相対的に回転する「回転ゆるみ」 と,回転なしにボルト軸力が低下する「非回転ゆるみ」 がある1). このうち回転ゆるみについては,古くは実験による 研究が中心であったが,近年は数値解析による研究も 発表されている 2)-5).しかしながら,回転ゆるみはね じ山のらせん形状,接触面の摩擦や締結部形状など多 くの因子の影響を受けるため,ゆるみのメカニズムの 解明は道半ばの状態といえる.前報6)では,ねじ山の らせん形状を忠実に再現した有限要素モデル7)を用い て,被締結体界面の摩擦の影響も含めて,せん断荷重 を繰り返し受けるボルト締結体を対象として,回転ゆ るみが進行する過程を詳細に評価した.その結果とし て,ゆるみの原因となる接触面のすべりは被締結体界 面,ねじ面,ナット座面の順に発生し,全面すべり状 態になると接触状態の不可逆性からボルトの軸力が連 続的に低下することを示し,軸力の低下量を求めた. 一方,ゆるみ現象に大きく影響すると考えられる接触 面の摩擦係数や締結部形状の影響については未解決の 状態である. そこで本研究では,締結部を構成するねじ面,ナッ ト座面,被締結体界面の摩擦係数の影響について,各 摩擦係数の感度も含めて定量的に評価する.また締結 部形状については,従来から耐ゆるみ性能が高いとい われている細目ねじの有効性,被締結体の厚さの合計 であるグリップ長さの影響を定量的に明らかにする. 数値解析は,前報 6)と同じくねじ山らせんモデル 7)を 用いて,上記のパラメータに対応した有限要素モデル を作成することにより実施する. 2.繰り返しせん断荷重を受ける ボルト締結体のゆるみ特性 図1(a)は,ボルトの軸直角方向にせん断荷重が繰り 返し作用する締結部を示している.このような荷重形 態で発生する回転ゆるみの評価には,古くからユンカ ー式ゆるみ試験機 8)が使用されてきた.この試験機で は,繰り返しせん断荷重を被締結体の端部に強制変位 福岡俊道** 野村昌孝** 安井大智*** Effects of Friction Coefficient and Various Geometric Parameters
on Loosening Phenomena of Bolted Joints under Shear Loads By Toshimichi FUKUOKA, Masataka NOMURA and Daichi YASUI
There are two types of loosening phenomena of threaded fasteners which sometimes cause serious accidents involving a variety of machines, structures and electronic devices: rotational loosening and non-rotational loosening of threaded fasteners. The former pattern frequently occurs due to shear loads repeatedly applied perpendicular to the bolt axis. This paper aims to clarify quantitatively how friction coefficients at contact surfaces and the geometry of threaded fasteners affect rotational loosening by conducting three-dimensional finite element analyses with the use of helical thread models. Numerical results showed that friction coefficient at nut bearing surface largely influences the loosening process, and that the introduction of fine screw threads and longer grip length are effective in preventing or mitigating the progress of thread loosening. Based on the foregoing results, a practical proposal is made for the prevention of thread loosening.
*原稿受付 令和2年 3月 2日.
**正会員 神戸大学(神戸市東灘区深江南町5-1-1). *** (株)村田製作所
Fig.1 Loosening with rotation due to alternating shear load and relationship between shear load and applied displacement として与えており,被締結体界面の摩擦の影響は考慮 していない.そこで前報6)では,荷重は強制変位とし て与えるが,より実際の締結部に近い状態を再現する ために被締結体界面の摩擦も考慮した.図1(b)は,有 限要素解析により得られたせん断荷重と強制変位の関 係を模式的に示したものである.O-A 間では締結部は 単一弾性体のように変形し,荷重と変位の関係は線形 である.A 点を超えると被締結体界面にすべりが発生 するため,両者の関係が非線形となっている.B-C で はねじ面が部分的なすべりから全面すべりに移行し, さらにナット座面もすべり始めるので,締結部の剛性 が低下して非線形性がさらに顕著に現れている.C 点 ではナット座面も含めて全接触面がすべり状態となり, 締結部に作用するせん断荷重は一定となっている.こ のときのせん断荷重を限界せん断荷重Fslpと定義する. 全面すべり状態になると必ずボルト軸力が低下するこ とから6),Fslpの大きさはゆるみの防止策を考える上で 重要なパラメータである.同じく図1(b)中に示したuslp 0.86 0.88 0.9 0.92 0.94 0.96 0.98 1 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 b / bi Number of steps
Fig.2 Example of FE analysis of variations of axial bolt stress
Fig.3 Finite element models of target bolted joints and measuring points of rotation angle
は,全面すべり状態に移行するときの変位の値であり, 限界変位と呼ぶこととする.ユンカー式試験のように, 締結部に作用するせん断荷重が変位の大きさで決まる 場合は,uslpを上限としてゆるみを防止するという方 法が考えられる. 図2 は前報6)の解析結果の一例である.縦軸はせん 断荷重が作用したときのボルト軸応力bを初期ボル ト軸応力biで除した「軸力残留率」で,ゆるみの程度 を定量的に評価できる.横軸はせん断荷重の繰返し回 数である.ボルト軸力は複雑な挙動を示しながら低下 しているが,基本的には概ね1 ステップの間の変化が 繰り返されていることがわかる. 3.ねじ山らせんモデルによる有限要素解析 図3(a)に解析に使用したモデルの一例を示す.解析 モデルの構成は前報 6)と同じであり,締結部は同じ寸
被締結体界面の各摩擦係数th,nu,plは0.1,0.15, 0.17,0.2 と変化させ,0.15 を標準条件とする.2 枚 の板の厚さの和であるグリップ長さは,48mm を標準 条件として16mm,32mm と変化させる.図は 16mm のモデルである.ねじのピッチP については,図 3(b) に示した並目の 2mm を標準条件として,ピッチが 1.5mm,1mm の細目ねじについても解析した.ナッ トはJIS 規格の二面幅と対角距離の平均値を外径とす る円筒形状とし,ナット高さは12mm 一定とした.平 座金の寸法も JIS 規格に準拠して外径 30mm,内径 17mm,厚さ 3mm とした.上下の板には,端から 32mmの位置にボルト穴径2級に相当する17.5mmの ボルト穴を設けている.材料定数について,ボルト, ナット,被締結体のヤング率は200GPa,ポアソン比 は0.3 とする.また,ボルト軸力は軸応力 100MPa に 対応して20.1kN とする. 境界条件については,図3(a)に示したように上側の 板の左端部の変位を拘束し,せん断荷重は下側の板の 右端部に一様変位として与える.与えたせん断荷重の 大きさは,上側の板の左端部の反力から求める.ボル トを締め付けた後,まず図の右向きに1mm の強制変 位を与える.つぎに強制変位を徐々に小さくして零と し,続いて左向きに1mm の強制変位を与える.ここ では右向きを正として,強制変位を0mm → +1mm → 0mm → -1mm → 0mm と変化させた過程を1ステッ プとする.また図3(c)は,後述するボルト,ナット, ワッシャ各部の回転角の評価位置を示している. 4. 解析結果 4.1 摩擦係数の影響 図4(a)は,ねじ面,ナット座面,被締結体界面の摩 擦係数th,nu,plがすべて等しいと仮定して変化さ せた場合の1 ステップ間のせん断荷重と強制変位の関 係を示している.図2 に示したように,せん断荷重の 繰り返しに伴う軸力変化等は,基本的に1 ステップ間 の挙動を繰り返す.そこで,これ以降は1 ステップの 解析結果を示すこととする.図4(a)から明らかなよう に,摩擦係数が大きくなるにしたがって,全面すべり 状態になったときの限界せん断荷重 Fslpと限界変位 uslpはいずれも増加している.このことは,摩擦係数 が大きくなるとゆるみが発生しにくくなることを意味 している.また図1(b)の被締結体界面がすべり始める A点と全面すべり状態となるC点に対応する点のせん 断荷重に着目すると,A 点についてはボルト軸力に摩 -10000 -8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 6000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 Shear Load (N)
Displacement applied to lower plate (mm)
(a) larger uslp 0.85 0.9 0.95 1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 0 0.25 0.5 0.75 1 b / bi Number of steps (b) larger
Fig.4 Effect of friction coefficient on relationship between shear load and applied displacement
and variations of axial bolt stress
擦係数を乗じた値,Fslpに対応するC 点については概 ねその2倍と前報6)と同様の結果となっている.図4(b) はボルトの軸力変化を表す軸力残留率に対する摩擦係 数の影響を示している.摩擦係数の増加に伴って軸 力の変動が大きくなり,その傾向は=0.2 の場合にと くに顕著である.また1 ステップ終了後の軸力残留率 は,が大きいほど高くなっている.例えば=0.1 の 場合の92.7%に対して, =0.2 では 97.6%である.つ ぎに,ボルトの軸力変化と摩擦係数の関係を詳細に検 討するために,ねじ面摩擦係数thとナット座面摩擦係 数nuを個別に変化させる. 図5(a),(b)は,摩擦係数を標準値の 0.15 に対して, それぞれthのみ,nuのみを変化させた場合の結果で ある.thについては,thが小さいほど軸力変化が大
0.9 0.92 0.94 0.96 0.98 1 0 0.25 0.5 0.75 1 th = 0.1 th = 0.15 th = 0.2 b / bi Number of steps (a) smaller th 0.85 0.9 0.95 1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 0 0.25 0.5 0.75 1 nu = 0.2 nu = 0.15 nu = 0.1 b / bi Number of steps (b) larger nu
Fig.5 Sensitivity of friction coefficient on variations of axial bolt stress
きく,1 ステップ終了後の軸力残留率も高くなってい るが,変化の大きさは図 4(b)に比べてかなり小さい. 一方nuを変化させた場合,軸力残留率はthとは逆に nuの値が高いほど変化が大きく,その傾向は図 4(b) より顕著に現れている.また,1 ステップ終了後の軸 力残留率について,nuの影響はほとんど見られない. 上記の結果より,軸力残留率に対してthとnuは概ね 相反する影響を持つと考えられるが,nuの影響の方 がより大きいといえる.なお,軸力残留率に対する被 締結体界面の摩擦係数plの影響については,図には示 していないが実際の締結部では無視できる程度であっ た.上記のように各摩擦係数の影響が現れた原因は, 前報6)で示したように,せん断荷重の繰り返しによる すべりが被締結体界面,ねじ面,ナット座面の順に進 行し,ナット座面がすべると軸力が顕著に低下して, -8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 6000 8000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 th = 0.2 th = 0.15 th = 0.1 She ar Loa d (N)
Displacement applied to lower plate (mm)
(a) -10000 -8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 6000 8000 10000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 nu = 0.2 nu = 0.15 nu = 0.1 Sh ea r Lo ad ( N )
Displacement applied to lower plate (mm) (b) larger nu -8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 6000 8000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 pl = 0.2 pl = 0.15 pl = 0.1 Sh ea r Lo ad ( N )
Displacement applied to lower plate (mm)
(c)
larger pl
Fig.6 Sensitivity of friction coefficient on relationship between shear load and applied displacement その後は各接触面のすべりにより生じた相対変位が回 復しないという「非可逆現象」が原因と推察される. 4.2 ゆるみ現象に対する摩擦係数の感度
本節ではせん断荷重と強制変位の関係と,せん断荷 重により発生するボルト・ナット各部のねじれを詳細
それぞれth,nu,plのみを変化させたときのせん断 荷重と強制変位の関係を示している.図6(a)より,全 体にthの影響は小さく,thが増加すると限界せん断 荷重Fslpと限界変位uslpはやや低下している.その原 因は,thが大きくなると相対的にnuとの差が小さく なり,ナット座面においてすべりが発生しやすくなる ためと推察される.一方,nuの影響は大きく,nuの 増加に伴ってFslpとuslpはいずれも顕著に増加してい る.またplが大きくなると,被締結体界面のすべりが 開始するせん断荷重が上昇することから,それに対応 してFslpが大きくなっているが,uslpの値に変化は見 られない. つぎに,図3(c)に示したボルト・ナット各部の回転 角の値から摩擦係数の影響を考察する.図7(a)はすべ ての接触面の摩擦係数が0.15 の場合の結果である.縦 軸が回転角,横軸は強制変位の値である.これに対し て図7(b),(c)は,ねじ面の摩擦係数thとナット座面の 摩擦係数nuのみを変化させた場合の結果である.th が大きくなるとボルトの 3 点の回転角は小さくなり, nuが大きくなると反対に回転角は大きくなっている. またボルトのねじれている期間に注目すると,thが大 きくなると期間は短くなり,反対にnuが大きくなる と明らかにねじれ期間が長くなっている.以上の結果 から,ねじ面とナット座面の摩擦係数の影響について は,nuの絶対値が大きいほど,あるいはnuとthの差 が大きいほどボルトの回転角が増加し,ねじれ期間が 長くなると考えられる.いいかえると,摩擦係数がこ のような状態の場合,ナット座面にすべりが発生しに くいために,ボルトのねじれが進行する期間が長くな り,回転角が増加したと推察される. 上記の結果より,ボルトのねじれ現象と軸力変化の 関係についてまとめる.前報6)で示した各接触面にお けるすべり現象の進行状況,ならびに図4(a)等から明 らかなように,接触面のすべりは被締結体界面,ねじ 面,ナット座面の順に進行する.その結果,ボルトの ねじれに対する摩擦係数の影響は,nuがもっとも大 きく,以下th,plの順となっており,最終的に全面す べり状態になると確実にゆるみが進行する.また,th が小さくnuが大きいと,ねじ面のすべりが早期に発 生し,ナット座面も含めて全面すべり状態になるまで の期間が長くなるのでボルトが大きくねじれる.また, 1 ステップ間の軸力の変化に着目すると,例えば図 5(b)のnu=0.2 の場合,軸力残留率が一時的に上昇する ピークが2 回現れている.これは被締結体の下側の板 に引張りと圧縮を与える期間に対応している.nuが thに対して相対的に大きい場合,ナット座面がすべり -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
far end of bolt thread runout of bolt thread bolt head nut washer R ot at io n an gl e (d eg .) washer nut three points in bolt
Displacement applied to lower plate (mm) (a) -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 far end runout head nut washer far end runout head nut washer th = 0.2 th = 0.1
rotation angle of bolt
nut washer rotation angle of bolt
R otat ion a ngle (d eg .)
Displacement applied to lower plate (mm) (b) Effect of th th = 0.1 th = 0.2 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 far end runout head nut washer far end runout head nut washer nu = 0.1 nu = 0.2
rotation angle of bolt
nut
washer
rotation angle of bolt
Rot ati on ang le (d eg. )
Displacement applied to lower plate (mm)
(c) Effect of nu nu = 0.1
nu = 0.2
Fig.7 Effect and sensitivity of friction coefficient on rotation angles of selected points
にくいためにボルトが大きくねじれる.そのため,ね じれが解放されると軸力が大きく変動すると推察され
-8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 6000 8000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 P=1.0mm P=1.5mm P=2.0mm Sh ea r Lo ad (N )
Displacement applied to lower plate (mm)
smaller pitch (a) 0.9 0.92 0.94 0.96 0.98 1 0 0.25 0.5 0.75 1 P=1.0mm P=1.5mm P=2.0mm b / bi Number of steps P = 1 mm P = 1.5 mm P = 2 mm (b) -0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 far end runout head nut washer far end runout head nut
washer rotation angle of bolt P = 1.5 mm P = 1 mm
rotation angle of bolt nut
washer
Displacement applied to lower plate (mm)
(c) Ro tat ion an gle (d eg.) P = 1.5 mm P = 1 mm
Fig.8 Effect of pitch on various loosening characteristics る.軸力残留率の変動に対して摩擦係数が敏感に影響 することは,摩擦係数を4 通りに変化させた図 4(b)の 結果からも明らかである. 4.3 ピッチの影響 本報で対象としたボルト・ナットはM16 であり, 並目ねじの場合,ピッチは2mm である.これに対し て,細目ねじのピッチは1.5mm,1mm と小さく,は めあいねじ山数が多くなり,ねじ山のらせんの角度で あるリード角が小さいために強度やゆるみが問題とな る締結部に広く使用されている.本節では,回転ゆる みに対する細目ねじの特性を評価する. 図 8(a),(b),(c)にせん断荷重と強制変位の関係,軸力 残留率の変化,ボルト・ナット各部の回転角の解析結 果を示す.図8(a)ではピッチの影響はほとんど見られ ないが,ピッチが小さくなると限界変位uslpがわずか に小さくなっている.その原因として,細目ねじは並 目ねじに比べてリード角が小さいため,軸直角方向に せん断荷重を受けた場合,ねじ面において荷重方向の すべりが発生しやすいことが考えられる.図8(b)の軸 力残留率はピッチが小さいほど高く,細目ねじがゆる みの進行抑制に対して一定の効果があることを示して いる.ただし,図8(a)の結果より,限界せん断荷重Fslp の大きさに差が見られないため,回転ゆるみの開始を 抑える効果は限定的と考えられる.また図8 (c)の結果 は,ピッチが小さくなると各部の回転角が小さくなる ことを示している.回転角の差はさほど大きくないが, 「グリップ長さが等しいボルト締結体の締め付けに必 要なナットの回転角は,ピッチの大きさに反比例する」 という弾性域回転角法の原理 9)を考慮すると,ピッチ の小さな細目ねじを使う効果は,回転角の差よりさら に高いといえる. 4.4 グリップ長さの影響 同じボルト・ナットを使って同じ軸力で締め付ける と,グリップ長さの小さな締結部ほどゆるみが発生し やすい.この現象は回転ゆるみだけでなく,非回転ゆ るみにもあてはまる 1).そこで本節では,グリップ長 さと回転ゆるみの関係を評価する.図9(a),(b),(c)にせ ん断荷重と強制変位の関係,軸力残留率の変化,ボル ト・ナット各部の回転角の解析結果を示す.図9(a)よ り,限界せん断荷重Fslpの大きさに差は見られないが, グリップ長さ Lfが大きくなると,明らかに限界変位 uslpが大きくなっていることから,ゆるみにくいとい える.図9 (b) の軸力残留率についても,グリップ長 さが大きいほど高くなっている.回転角については, 図9(c)に示したLf =16mm,32mm の場合と図 7(a) の48mm の結果を合わせると,グリップ長さの増加に 伴って回転角は大きくなっていることが分かる.グリ ップ長さが回転角と軸力残留率に対して反対の影響を 示す原因は,ピッチの影響の場合と同じく,グリップ 長さが大きいほど同じボルト軸力を得るために必要な ナットの回転角が大きくなることにより説明できる.
-8000 -6000 -4000 -2000 0 2000 4000 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 Lf = 16mm Lf = 32mm Lf = 48mm Sh ea r Lo ad ( N )
Displacement applied to lower plate (mm)
(a) 0.9 0.92 0.94 0.96 0.98 1 0 0.25 0.5 0.75 1 Lf = 16mm Lf = 32mm Lf = 48mm b / bi Number of steps Lf = 48 mm Lf = 32 mm Lf = 16 mm (b) -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 far end runout head nut washer far end runout head nut
washer rotation angle of bolt Lf = 32 mm Lf = 16 mm
nut washer
(c)
Displacement applied to lower plate (mm)
Rot ati on an gl e (de g.) Lf = 16 mm Lf = 32 mm
Fig.9 Effect of grip length on various loosening characteristics
5. 回転ゆるみの防止と軽減に対する提案 上記の計算結果に基づいて回転ゆるみの防止/軽減 策を検討する.基本的には締結部に作用するせん断荷
Fig.10 Small ingenuity for enhancing anti-loosening performance 重を小さくすることがもっとも有効であるが,それ以 外の防止方法としては,せん断荷重の大きさが限界せ ん断荷重Fslpを超えないこと,あるいはFslpに対応す る限界変位uslpが大きくなるように締結部を設計する ことが有効といえる.限界せん断荷重Fslpの値を高く するためには 1)塑性変形などが問題とならない範囲で,できる限 りボルト軸力を高めに設定する. 2)ナット座面と被締結体界面の摩擦係数nu,plが 高くなるように締結部を設計/施工する. 限界変位uslpを大きくするためには 1)ナット座面の摩擦係数nuは高い方が望ましい. 2)グリップ長さLf が大きくなるように設計する. 3)ボルト・ナット周辺の軸直角方向の変位が小さく なるような締結部形状とする. 最後の3) は,図 1(b)において O-A の傾きを小さくす ることにより,ボルト・ナット周辺の変形量を限界変 位uslp以下に抑えるという考え方である.被締結体に 作用する変位の大きさが一定の場合,被締結体の荷重 方向の長さを大きくすると,ボルト・ナット締結部周 辺の変位量を押さえることができる.このような寸法 の変更が難しい場合,例えば図10 に示すように,ボ ルト・ナットから離れた部分の剛性を下げることも有 効である.一方,全面すべり状態になると必ずボルト の軸力低下が進行すると考えると,以下のような軸力 低下の軽減方法が考えられる. 1)ピッチの小さな細目ねじは軸力の低下量を抑える 効果がある. 2)グリップ長さが大きな締結部では軸力の低下量が 小さくなる. 3)接触面の摩擦係数が高いと軸力低下量が小さくな る傾向がある. 6. 結 言 ボルトの軸直角方向に繰り返し作用するせん断荷重 によるゆるみ現象について,接触面の摩擦係数と締結
部形状の影響を明らかにするために,ねじ山らせんモ デルを用いた三次元有限要素解析を実施した結果,以 下に示す結論を得た. (1)締結部を構成する接触面の摩擦係数が高くなる と,回転ゆるみが発生しにくくなることを定量的に示 した. (2)繰り返しせん断荷重によりボルト軸力が低下す る現象には,ナット座面の摩擦係数の絶対値とナット 座面とねじ面の摩擦係数の差が大きく影響する. (3)グリップ長さが大きくなるように締結部を設計 すると,すべての接触面が完全なすべり状態になりに くくなるため,ゆるみの防止に有効である. (4)細目ねじを用いると,ゆるみによるボルト軸力 の低下量を軽減することができる.グリップ長さを大 きくした場合も同様の効果がある. (5)ゆるみの防止に対して,ボルト軸直角方向の締 結部剛性を下げることの有効性を具体的な例とともに 示した. 本研究では,ボルトの軸直角方向に作用するせん断 荷重による回転ゆるみを対象としたが,実際の締結部 では曲げやねじりが同時に作用するケースが多い.こ れらの影響を含めた回転ゆるみの挙動を解明すること は今後の重要な課題である. References
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