序
本書は「Lisp-Statによる統計解析入門(垂水共之著)」を元に,Lisp-Statで作成 していたプログラム部分をRに書き換え,いくつかの節を加えたもので,大学入門 程度の統計的データ解析の初歩を,計算機を使いながら理論を理解させることを念頭 に,大学での講義ノートをもとに書き直したものである。データ解析や,統計のユー ザーの立場では不要と思われる「数理統計学」的側面も省略することなくできるだけ 精述し,数理関係の学生にも将来役立つようにしたつもりである。数式の変形につい ても省略することなく,細かく変形を追っているので,式の変形についてはテキスト を参照することにし,講義では省略してもいいように心がけたつもりである。 このごろの統計の本はデータ解析の側面が強くなり,理論的な証明は抜きで説明だ けを行っているものが多いが,本書ではあえて硬派の路線を選んだ。計算機を使った シミュレーションを多用しており,一見ソフトに見えるが,解説は硬く,理解は柔ら かくとしたつもりであるが,読者の評価はいかがであろうか。 最近のパソコンの普及・高機能化に伴い,ほとんどの処理はパソコンで可能となっ ているが,大学の一斉授業ではUNIXを使っている大学も多い。このため講義で使う データ解析エンジンとしては,UNIXからパソコンまで,パソコンもWindowsから Macintoshまでをフリーでサポートしている「R」を本書では選んだ。 Rは「S」およびその後継である「S-PLUS」を見本にして開発されたフリーソフ ト(ここでは無償で使えるソフトウェアの意味で使っている)である。S-PLUSは商 用ソフトであり国内では(株)数理システム(http://www.msi.co.jp/)が販売してい る。S-PLUSもRも「S言語」が利用できるソフトウェアであり,この間の互換性 は高い。しかし完全互換をめざしているものでないので一部違いはある。本書は主に Windows版Rで開発し,Linux版Rを使って講義してきた。本書をまとめるにあたり,Windows版S-PLUS,およびLinux版S-PLUSでチェックを行い,その差異が
ある部分を脚注に記している。S-PLUSでもほぼ問題なく利用できる。 大学でLinux版のRを使っている人は,本書で使った新しい関数のファイルだけを Linuxワークステーションにftpで転送し,ロードすれば,本書の内容をそのまま利 用できる。最近のLinuxではRが標準でインストールされているものもあるので,確 かめて利用していただきたい。プログラムは主にWindowsで開発したが,Linuxを 使った講義で使いチェックしている。残念ながら身近にMacintoshがないので,Mac
ii 版Rではチェックしていない。 本書で使っている新しい関数などは次のホームページで公開しているので,ダウン ロードして,自分のパソコンで自学自習することも可能である。 http://www.mikawaya.to/appstat/ 本書の作成にあたり,岡山大学環境理工学部環境数理学科の関係者の方々にはいろ いろご協力をお願いした。とくに,講義ノート,および関数のチェックを手伝ってくれ た久保田貴文君(岡山大学助手),大学院生の亀川佳美さんの協力はありがたかった。 また岡山大学での講義・演習のときTA (Teaching Assistant)として演習を手伝って くれて,講義ノートの誤りを見つけてくれた大学院生の丸山敬博君の協力もありがた かった。 2006年1月 垂水共之,飯塚誠也