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生乳のリポリシスにおける温度活性化

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Academic year: 2021

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北畜会報 39 : 31-33, 1997

生乳のリポリシスにおける温度活性化

洋 史 * ・ 斎 藤 善 一 件

北海道大学農学部,札幌市 060 現在*サツラク農業協同組合,札幌市 065 **北海道生乳検査協会,札幌市 060

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Hiroshi KON* and Zenichi SAITO**

Faculty of Agriculture, Hokkaido University, Sapporo 065

Present address:

*

Satsuraku Dairy Co-operative, Sapporo 063

*

*

Hokkaido Milk Testing Association, Sapporo 060

キーワード:生乳, リポリシス, リバーゼ,温度活性化,遊離脂肪酸

Key words : raw milk, lipolysis, lipase, temperature activation, free fatty acids

生乳の冷蔵中に一時的な温度上昇があると以後の遊 離脂肪酸生成量は著しく増大する(温度活性化).この 原因を知るため生乳,洗浄クリーム,バターオイル乳 化液などを試料として実験をした.試料を 1時間氷冷 後, 12~450C の湯浴中に 5 分間静置し,氷水中に戻し て23時間冷蔵し,遊離脂肪酸量を測定した. 脂肪球は脂肪球膜により保護されリパーゼの作用を 受けないが, 200 C以上に加温するとこれが解除され, 以後の脂肪分解が促進される.しかし

3TC以上の加 温で、は脱脂乳成分の脂肪球への吸着により, リバーゼ の作用が阻害され450 Cの加温の場合は温度処理をし ない場合よりもリパーゼの作用は低下した.その結果, 300 C付近に加温すると温度活性化がみられると考えら れた.

緒 百

生乳の冷蔵中における遊離脂肪酸の増加は僅かで, 通常は脂肪分解臭を与えるには至らないが,一時的な 温度上昇があると以後の冷蔵中における遊離脂肪酸の 生成は著しく増大する.この現象は温度活性化と呼ば れ, KRUKOVSKY and HERRIGNTON (1939)により初 めて報告されたが,以後ほとんど研究されなかった. 脂肪の固化 (KRUKOVSKYand SHARP, 1940)や脂肪 分子配列の変化(RAO,1951),脂肪球膜とリバーゼの 親和性の変化 (TARASSUKand RICHARDSON, 1941: W ANG and RANDOLPH, 1978)が推察されているが結

受理 1997年 3月 14日 論は得られていない.斎藤・津村 (1984)は,冷却し た個体乳を 500 C湯浴中に 1分間保持したところ,リ バーゼ活性は増大していないにもかかわらず,以後の 冷蔵中における遊離脂肪酸生成の増大を認めたが,牛 の個体による影響が大きいと報告している.斎藤・金 (1995)は, 200Cの湯浴中に3分間静置した場合の温度 活性化と泌乳期の関係を調査し,泌乳期の進行にとも ない増大するが, リバーゼ活性との相関は個体によっ て異なると報告した。

実 験 方 法

北海道大学農学部附属農場に繋養する牛群から,冷 却前の混合乳を採取し実験材料とした.遠心分離によ

りクリームを調製し,人工乳清(JENr、mssand Koops,

1962)で稀釈し再び遠心分離をして洗浄クリームとし た.これを振とうしてバター粒を分離し,さらに加温 遠心分離をしてバターゼーラムを得た.洗浄を2回お こなったクリームを再洗浄クリームとした.人工乳清 にアラビヤゴムを溶解し(10%),遠心分離により微量 の不溶物を除いた後,市販バターオイルを加え, 15分 間 (450 C)ワーリングブレンダーで、処理しバターオイ ル乳化液とした.いずれの場合も最終の脂肪含量が生 乳とほぼ同じ (4.1%)になるょっにした. リバーゼは 脱脂乳よりクロマトグラフィーにより調製した (MAT-SUOKA

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.

1980). 共栓付試験管6本に試料各2.3mQを採り,氷水中 に保持した. 1時間後, 5本は12,20, 30, 37, 450C の湯浴中に5分間静置し,再び、氷水中に戻し23時間冷 蔵した.残りの1本は加温処理をおこなわず

o

oC処 理 とした.計24時間の冷蔵後に抽出溶媒を加えフェノー

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-31-今 洋 史 ・ 斎 藤 善 一 ルレッド法(斎藤, 1979)で遊離脂肪酸を測定した. 測定結果はパルミチン酸 (mg/mQ) として示した.

実 験 結 果

生乳を試料とし温度処理をおこなった結果の 1例を 図 1に示す.20~3TC に加温すると高い遊離脂肪酸生 成を示した.すなわち,温度活性化が認められた.一 方, 450 C加温では

o

oC, 120 Cの場合よりも低い遊離脂 肪酸含量を示した.なお,試料により生成する遊離脂 肪酸量は大きく変動したが,処理温度との関係は同様 であった.脱脂乳を同じ様に処理し,殺菌均質化乳に 加えることによりリバーゼ活性を測定したが,活性の 増加はみられなかった. ノてターオイル乳化液にリバーゼを加えると,温度処 理にかかわらず高い遊離脂肪酸生成を示したが,特定 の温度における温度活性化は見られなかった(図2). 一方,洗浄クリームにリパーゼを加えた場合は, 300 C 加温により最も高い遊離脂肪酸生成を示したが, 450 C でも

o

oC, 120 C加温の場合よりも高い遊離脂肪酸生成 を示した(図 2).すなわち,同時に示した生乳の場合 に比べると,洗浄による脱脂乳成分の除去は 450 C加温 による遊離脂肪酸生成の低下をある程度防いだといえ r-. 1.0 苦

OB 縦 0.6 歯

0.4 欄 0.2 10 zo 30 40 50 処理温度 ("C) 図 1 冷蔵(日。C, 1時間)した生乳を温度 処理(5分間静置加温)し, 23時間 OOC に保存した後の遊離指肪酸含量と処理 温度の関係 r-. 0.3 首 ¥ 習 鑑 0.2 鑓 題 灘 樹 0.1 10 20 40 50 処理温度 C'C) 図2 冷蔵したバターオイル乳化液(・),洗 浄クリーム(・),生乳

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)

を温度処 理 (5分間静置加温)し, 23時間 OOC に保存した後の遊離脂肪酸含量と処理 温度の関係(生乳以外はリバーゼ添加) る. ノてターオイル乳化液において,ブレンダーによる乳 化時にバターゼーラムを加えた場合の結果を図3に示 す.バターゼーラムを加えない場合は,図2と同様に 温度活性化を示さなかったが,乳化前にバターゼーラ ムを加えた試料を温度処理をすると,遊離脂肪酸生成 は, OoC, 120 Cでは低下を, 300 C以上では増加を示し た.すなわち,処理温度が低い場合はリバーゼ活性の 阻害を,高い場合は促進を示した.なお,

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分間ブレ ンダーによる乳化をおこなった後にバターゼーラムを 加え,さらに 1分間ブレンダーで処理した場合は,パ r-.0.12 ~ ~ 0.10 〆 /

/

0.02 o 巴二二二二= 10 20 30 40 処理温度 C'C) 図 3 バターゼーラムを添加したバターオイ ル乳化液を温度処理(5分間静置加温) し , 23時間日。Cに保存した後の,遊離 脂肪酸含量と処理温度の関係(・乳化 前に添加,

0

乳化処理の末期に添加,X 無添加,いずれも冷蔵前にリバーゼ添

加)

~ ¥ 智 0.2 0.1 '-' 0 総

0.1 灘 樹 0.1 クリーム 10 20 30 40 50 図4 クリーム,洗浄クリーム,再洗浄クリー ムに冷蔵前(・)または温度処理(5 分間静置加温)の後(・)にリバーゼ を加え, 23時間 OOCに保存した後の遊 離脂肪酸含量と処理温度の関係(企リ

.

1

ーゼ無添加)

(3)

-32-生乳のリポリシスにおける温度活性化 ターゼーラムによる阻害効果は大きくなり, 0 ~20oC の温度処理ではほとんど遊離脂肪酸が増加せず, 300 C 以上では処理温度が高くなるにしたがって遊離脂肪酸 の生成が増大した. クリームおよび洗浄クリームについて,温度処理の 前,あるいは後にリバーゼを加えた場合の温度処理の 結果を図4に示す.クリームの場合, リバーゼを加え ると無添加の場合よりも遊離脂肪酸生成は増大する が,温度処理前に加えた方が効果が大きかった.洗浄 クリームでは,温度処理後に加えたリバーゼの効果は 僅かで、あるが,温度処理前に加えたリパーゼの効果は 大 き し し か も

3TC

450 Cに加温した場合も 300 Cの 場合に近い遊離脂肪酸の生成を示した.再洗浄クリー ムの場合は,生乳から移行したリバーゼがほとんど失 われたため,加温処理前にリバーゼを加えた場合だけ 温度処理による遊離脂肪酸の増力日が認められた. しか も,3TC, 450 Cに加温すると 300 C加温の場合よりも高 い遊離脂肪酸の生成を示した.

考 察

生乳中の脂肪は脂肪球膜により保護されているため リバーゼの作用を受け難いことはよく知られている. バターオイル, リバーゼ,バターゼーラムからなる系 における温度処理の影響から,低温で温度処理をした 場合はバターゼーラム中の脂肪球膜物質によるリバー ゼ阻害効果が大きいが, 200 C以上に加温されるとこれ が解除され,以後の脂肪分解が促進された.この場合, 加温よりも加温直後の急冷による脂肪分子の配列の変 化 (RAO,1951),脂肪球膜物質の離脱(ANDERSON

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al., 1972)などの効果を考えることができるが明確でお はない.一方,脱脂乳成分によるリバーゼに対する阻 害作用が3TC,450 Cでは示された.低温におけるカゼ インの阻害作用は認められていないが(若演, 1990), 脂肪球とカゼインミセルとの結合など複雑な要因が加 わるので,阻害作用の王因を特定することはできない. 低い温度の温度処理による脂肪球膜物質の阻害作用 の解除じ 3TC以上の温度処理における脱脂乳成分に よるリバーゼに対する阻害の

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因子により,結果的に 300 C付近に加温じた場合に温度活性化がみられたと考 えられる. バルククーラー内で冷却された生乳に次の搾乳によ り温かい生乳が加えられた場合,バルククーラーの冷 却能力が低いと乳温が 15~20oC に上昇するおそれが あり,温度活性化により遊離脂肪酸含量が増加し脂肪 分解臭を示すことも可能で、ある.したがって,十分な 冷却能力を備えていること,あるいは,バルククーラー に入る前に生乳を冷却することが必要で、ある.クリー ム分離機を用いる場合に生乳を 35~40oC に加温する. 分離機を通る時に大きな脂肪球が受ける損傷によって リバーゼの作用を受け易くなると思われるが,その外 に,温度の僅かな差によって遊離脂肪酸含量は変化す ることになる.分離条件を設定するにあたって考慮す べきことである. 生乳を提供された北海道大学農学部附属農場の各位 に感謝する. 文 献

ANDERSON, M., G.C. CHEESEMAN, D.]. KNIGHT and W.F. SHIPE (1972) The effect of ageing coold milk on the composition of the fat globule mem-brane. ]. Dairy Res, 39: 95-105.

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V.N. and B.L. HERRINGTON (1939)

Studies on lipase action.

I

I

.

The activation of milk lipase by temperature change. ]. Dairy Sci., 22: 137-147.

KRUKOVSKY, V.N. and P.F. SHARP (1940) Effect of the properties of the fat and of the fat globule surface on lipolytic activity in milk. ]. Dairy Sci.,

23: 1109-1118.

MATSUOKA, N., K. SHIRAI and R.L. ]ACKSON (1980) Preparation and properties of immobilized lipo -protein lipase. Biochim. Biophys. Acta, 620: 308 316. RAO, S.R. (1951) A study of the activity of lipase on milk fat. PhD Dissertation, Univ. of Wisconsin. 斎藤善一 (1979)原料乳のlipolysisに関する検査にお けるフェノールレッド法の利用について.日畜会報, 50 : 710-715. 斎藤善一・津村浩 (1984)原料乳のリポリシスにおよ ぼす温度処理と撹伴の影響.日畜東北支部会報,34: 10-13. 斎藤善一・金居猷 (1995)個乳の温度活性化リポリシ スとリバーゼ活性に及ぽす泌乳期の影響.酪農科 学・食品の研究, 44: A-139-A-145.

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参照

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