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がん相談支援センターにおける高齢者がん相談の現状と課題

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Academic year: 2021

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がん相談支援センターにおける高齢者がん相談の現状と課題

Present State and Problems of Cancer Counseling for Older Patients in the

Cancer Consultation Support Center

長 岡 敦 子

Atsuko NAGAOKA

新潟県立がんセンター新潟病院 緩和ケアセンター 

Key words: がん相談支援センター(cancer consultation support center),高齢者がん患者(old cancer patient), 相談援助(consultation help)

は じ め に

 高齢化がピークに達するとされる2025年に向け, 地域医療構想,病棟機能の適正配置と在宅医療の拡 充が国の医療政策の柱として出された。可能な限り 住み慣れた地域や場所で,安心して適切な医療やケ ア,介護サービスを受けながら暮らせる環境や状況 が求められる。高齢化社会の中で,都道府県がん 診療拠点病院である,県立がんセンター新潟病院 の2013年度の受診延べ数は約242,200人で,その約 57%を65歳以上の高齢者が占めている(図2)。その 中で,がん相談支援センターにおいても,問題を抱 えた高齢がん患者やその家族,医療スタッフからの 相談が増えている。患者やその家族が求める医療・ 介護・ケアの提供を適切に行うために,がん相談支 援の果たす役割は,重要性を増している。  今回,がん相談支援センターにおける1年間の相 談内容の現状から,高齢がん患者の抱えている問題 を分析し,今後の取り組みを明らかにすることがで きたので報告する。

Ⅰ 方   法

調査期間  2014年5月1日~2015年4月30日の1年間 ︵電子カルテ導入後) 調査方法  がん相談支援センターのスタッフが介入し た,連絡・調整や患者及び家族が関与し ない相談援助内容を除いた相談援助延べ 数と,70歳以上の患者に関する相談援助 内容をカテゴリーに分類し比較検討する。

Ⅱ 結 果

1.相談件数  1年間の調査期間に,がん相談支援センターのス タッフが介入した,がん患者とその家族からの相談 件数は8,693件であった。その中で70歳以上の高齢が ん患者やその家族からの相談件数は4,351件で約50% を占めていた(以後患者とその家族とする)(図3)。 2.カテゴリーによる比較  1年間の患者とその家族に行った相談援助内容か らカテゴリーにした結果,9の項目に分類すること

要   旨

2008年1月,厚生労働省から「都道府県がん診療連携拠点病院」として指定されたことを受 けて,がんに関する様々な相談に対応する窓口して同年4月に「相談支援センター」が開設さ れた。2012年4月には,「地域連携・相談支援センター」として名称を変更した(以後がん相 談支援センターとする)。がん相談支援センターにおいては,他職・複数の専門職による,病気・ 治療に関することや転院や在宅療養に向けた問題ばかりでなく,心理的,家族間の悩みや問 題に専門性の高い支援を行っている。また,相談件数においては,年々増加しており2014年 度の相談延べ数は約15,700件と過去5年間の相談件数を比較すると約2.5倍となっている(図1)。 超少子高齢者社会が進む中,当センターにおいても高齢がん患者を支える家族からの相談に 対しての援助が多く行われている。高齢がん患者の相談内容を分析,課題を明らかにするこ とで,高齢化社会に向けた高齢がん患者やその家族への相談援助を果たすことが重要である。

(2)

      図1  過去5年間の相談件数推移 図1  5年間の相談件数推移 6519 7868 11069 12731 15746 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 過去5年間相談件数推移       図2  平成25年度年齢(階層)別受診患者数      受診延べ数  242,200⼈人 642   1,037   1,845   1,414   3,924   8,773   20,054   32,816   32,403   37,069   36,647   33,938   21,413   10,204   0   5,000   10,000   15,000   20,000   25,000   30,000   35,000   40,000   2013年度年齢(階層)別受診患者数 70歳未満 4,342 70歳以上 4,351 図1 5年間の相談件数推移 図2 平成25年度年齢(階層)別受診患者数 受診延べ数 242,200人 図3 患者・家族からの相談件数 (期間 2014年5月1日~ 2015年4月30日)  (70歳以上と未満の比較)

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24% 23% 15% 15% 9% 8% 3% 2% 1% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 1.退院に関する援助 2.転院に関する援助 3.在宅療養に関する援助 4.⼼心理的問題に関する援助 5.受診・⼊入院に関する援助 6.福祉制度に関する援助 7.家庭⽣生活に関する援助 8.経済的問題に関する援助 9.その他(要望等) ができた(図4)。  その中で,「退院に関する援助」「転院に関する援 助」がともに23.5%で一番多く,次いで「在宅療養 に関する援助」「心理的問題に関する援助」が同じ く15.3%であった。  「受診・入院に関する援助」8.8%,「福祉制度に 関する援助」7.6%,「家庭生活に関する援助」2.8%, 「経済的問題に関する援助」2.0%,その他,医療 スタッフへの要望などが1.4%であった。9のカテゴ リーの中で,相談援助の約50%を占めている70歳以 上の患者とその家族への相談援助は,「退院に関す る援助」が1番で16.1%,次いで「転院相談に関す る援助」15.6%,「在宅療養に関する援助」8.5%,「受 診,入院に関する援助」5.0%,「福祉制度に関する 援助」3.1%で援助項目が低い「心理的問題に関す る援助」1.9%,「家庭生活に関する援助」「経済的 問題に関する援助」は,ともに1.2%であった。70 歳未満の患者とその家族への援助項目を比較する と,「退院に関する援助」や「転院に関する援助」 は,それぞれの項目の70%以上を占め,「在宅に関 する援助」約55%,「心理的問題に関する援助」では, わずか12%であった(図5)。 図4 患者・家族の相談援助内容のカテゴリー(9カテゴリーに分類) 図5 70歳以上の患者・家族の相談援助内容の占める割合 70歳以上 70歳未満 1.退院に関する援助 16.10% 6.90% 2.転院相談に関する援助 15.60% 7.70% 3.在宅療養に関する援助 8.50% 6.80% 4.⼼心理的問題に関する援助 1.90% 13.40% 5.受診・⼊入院に関する援助 5.00% 3.30% 6.福祉制度に関する援助 3.10% 4.50% 7.家庭⽣生活に関する援助 1.20% 1.60% 8.経済問題に関する援助 1.20% 0.80% 9.その他(要望等) 1.40% 1.40% 16.1% 15.6% 8.5% 1.9% 5.0% 3.1% 1.2% 1.2% 1.4% 6.9% 7.7% 6.8% 13.4% 3.3% 4.5% 1.6% 0.8% 1.4% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 1.退院に関する援助 2.転院相談に関する援助 3.在宅療養に関する援助 4.⼼心理的問題に関する援助 5.受診・⼊入院に関する援助 6.福祉制度に関する援助 7.家庭⽣生活に関する援助 8.経済問題に関する援助 9.その他(要望等) 70歳以上 70歳未満

(4)

2.相談内容の実際   70歳以上の患者やその家族から依頼された相談内 容の一部をあげると,退院に関する問題では,「退 院が決まったが身体が思うように動かない。日中1 人で過ごすことが心配」「子供へは迷惑をかけられ ない,帰れば病気の妻の面度を見なければならない」 日常生活動作の変化に伴う不安や,自分が病気に なったことにより,家族へ負担や,介護への不安か らの相談であった。また,転院に関する問題では「病 院で最期を過ごせないなら,家に帰りたい。しかし, 家族は転院を希望している。せめて近いところで過 ごしたい」「最期を家で過ごしたいが,家族だけで は限界がある。本人(患者)は他人が家に入るのを 嫌がっている」最期をどこで過ごすのか,患者・家 族との気持ちのすれ違いから相談支援センターを訪 れていた。  在宅療養に関しての問題では「子供夫婦と同居し ているが迷惑をかけずに生活をしたい。使えるサー ビスがあるか」「1人暮らししている。買い物はどう したらよいのか,食事が心配で頼れる者がいない」 1人暮らしの不安からの支援,福祉サービスを求め ている。  受診や入院に関する問題では「定期的に治療のた めに入院が必要だが年金暮らしで経済的負担が大き い」「薬でお金がかかる」「1人暮らしで病院に連れ てくる人がいない」。年金暮らしによる経済的負担 や通院時の問題に対しては,核家族や1人暮らしの 患者からの相談件数が多くみられた。 3.相談から見えた高齢者がん患者の問題  1. 病気や治療により日常生活動作に変化が生じ た場合,患者やその家族にとって退院への不 安は大きい。  2. 核家族化や子どもたちへの負担への思いから 退院を不安にさせている。  3. 患者やその家族の思いや意向とのすれ違い。  4. 病院からの見放され感による不安。  5. 人生の最期をどこで過ごすか,どこで過ごせ るのかの不安と迷い。

Ⅲ.考   察

 相談支援センターにおける1年間の患者やその家 族からの相談内容をカテゴリーに分類することによ り,患者やその家族が抱えている問題が明らかに なった。  相談内容の実際から,高齢者である70歳以上の患 者やその家族にとって,「退院に関する支援」にお いては,病気や入院治療などから,今まで出来てい た日常生活動作などに変化が生じた場合,日常生活 に大きく影響を与えることから患者ばかりではなく 家族の不安は大きい。そのため,不安から退院を拒 むなどの状況を生んでいる。また,核家族化やひと り暮らしなどは孤独になりやすく,配偶者に病気が あった場合には,患者自身の病気も重なり心労から 眠れない状況などを引き起こすこともある。  患者が病気や治療により,日常生活動作に変化が 生じた場合や家庭での問題を抱えている場合でも, 安心して退院に望めるよう支援することが大切であ る。入院時より医療スタッフ間との情報共有が重要 であるが、入院時からの情報共有は,現実として難 しい点もある。しかし,カンファレンスへの参加な どにより早期からの対応に努めることも一つの手段 と考える。院内の医療スタッフ間での情報共有は, 地域の医療機関や,ケア・介護スタッフとの連携に 繋がり,早期から退院に向けて取り組むことができ る。その結果,患者やその家族にとって安心できる 生活環境となり,生活の質を保つことに繋がる。  「転院に関する問題」では,患者は家に帰りたい, 最期を在宅で過ごしたい。その結果,現実は身の回 りの介護をしてくれる人がいなかったり,家族は仕 事があり,生活をしていくためにも介護で仕事を辞 めることはできない。その結果,高齢者である患者 を,一人家に置くわけにはいかず,不安から施設や 他医療機関への入床を希望する。互いを気遣いなが ら気持がすれ違うこともある。そうした場合,患者 は家族への遠慮から家族の意見に従うことが多い。 家庭状況や患者,家族の個々のニーズを把握して調 整を図ることが大切である。また,「在宅療養に関 する援助」では,家族や周りの者にできるだけ迷惑 をかけずに生活したい,家族の介護の限界などから, 医療やケア,介護サービスについての情報や申請手 続き,介護サービスや福祉器具への要望がある。し かし,介護度によっては,患者とその家族が望むサー ビスの提供が一部認められないこともある。そのよ うな場合においても,患者や家族の必要とする医療 やケア,介護は勿論のこと,生活の質を維持させる 必要がある。地域の医療機関との連携がますます必 要とされるため,連携強化を図っていく。「受診・ 入院に関する援助」では病気や治療に関する不安や 治療のために掛かる費用など経済的負担を感じてい る。治療や病気に対しての不安は,高齢患者の場合, 家族の方が強く不安に思っていることが多い。時間 をかけてでも丁寧な説明を繰り返し行っていく必要 があり,専門的知識をもった看護師が対応している が,担当の医師や看護師,薬剤師との連携が重要で ある。また,経済的問題に関しては,核家族や一人 暮らしの患者が比較的多く,利用できる可能性のあ る制度の紹介や市区町村との連携により,治療や生 活の保障を行うことが大切である。

(5)

結   語

 今回,患者やその家族の相談内容から,がん相談 支援センターの今後に向けての取り組むべき方向性 を明らかにすることができた。これらのデータを基 に医療者間で共有し,今後の支援に役立てていく必 要がある。また,高齢化社会を迎えるにあたり,地 域の医療機関,介護スタッフとの連携や情報共有に おいては,医療と介護の視点の違い,求める情報の 相違を理解することが必要となる。がん相談支援セ ンターへの相談内容は様々であるため,相談支援セ ンターのスキル向上に努めて行きたい。

参 考 文 献

1)厚生労働省: 平成25年(2013)人口動態統計(確定数) の概要.[引用2014-9-11]  http://www.mhlw.go.jp/toukei/hw/jinkov/ 2)厚生労働省:がん対策基本法.[引用2011-6-21]  http://mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan03/pdf/1-2.pdf 3)大松重弘:がん診療連携拠点病院において相談支援セ ンターはどのような役割を担っているか.[引用2011-8] http://www.hospat/assets./templates/hospat/ 4)鎌田昌彦:退院後のがん患者と家族の支援ガイド.日 本ホスピス・緩和ケア研究会編.p11-15プリメイド社. 2008. 5)山崎章郎:在宅医を生きるケアタウン小平の取り組み から.[引用2009-11-25]  http://www.phcd.jp/kenshu/H210129/yamazaki2.pdf

参照

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