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新規エノン型プロスタグランジン分子プローブの創製と活用

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Academic year: 2021

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Title

新規エノン型プロスタグランジン分子プローブの創製と活

用( はしがき )

Author(s)

古田, 享史

Report No.

平成14年度-平成15年度年度科学研究費補助金 (基盤研究

(C)(2) 課題番号14550824) 研究成果報告書

Issue Date

2003

Type

研究報告書

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/688

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

壁究担彗星

アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼの作用によって生合成されるプロスタグ ランジン(PG)類は、恒常性の維持や防御反応などの生体機能調節に深く関わる内 因性生理活性物質である。炎症などの刺激に応じて産生されたPGE2やPGD2などの PGは、細胞外に分泌され、近傍の細胞膜上に発現している受容体に結合することで そのシグナルを細胞内に伝え、細胞応答を誘導する。役割を終えたPGは、酵素な どの作用により速やかに代謝され活性を失う。PGA2や△12-PGJ2などのシクロペン テノン型PGは、PGE2およびPGD2の代謝体であり細胞膜上のPG受容体には結合 しないため、生理作用を持たない単なる代謝物であると考えられ、ほとんど研究さ れていなかった。しかしながら、これらPGが腫瘍細胞の増殖を強く抑制する作用 を示すことが発見され、最近になって、PGD2の代謝体である15-deoxy一△12,14-PGJ2 による核内受容体PPARγ活性化を介した脂肪細胞の分化誘導作用や、核内転写因 子NFFCBの活性化キナーゼIKKβの阻害による抗炎症作用などが報告されたこと から、癌や肥満、炎症、生体防御などとの関連からもシクロペンテノン型PGへの 関心が高まっている。我々は、エノン型PGおよびその人工類縁体をもとにした高 機能プローブを設計・合成し、PG類の多彩な生物活性や生体機能制御に関する分子

レベルでの研究を展開してきた。まず、抗腫瘍性PGとして知られ、細胞の増殖や

分化の制御に働く△12-PGJ2と同等の生物活性を持ち、化学合成により大量合成が可 能な人工類縁体△7-PGAlの構造修飾体を多数合成し、生理作用発現機構の分子レベ ルでの解明を試みた。PGA9や△12-PGJ2などのシクロペンテノン型PGは膜受容体 を介する情報伝達系と異なり、細胞内さらには核内へと輸送され、転写レベルで特 異的タンパク質の発現を制御することで強い細胞増殖抑制作用を示す。また、PGの 細胞内への移行は可逆的であるが、核内には不可逆的に蓄積すること、細胞増殖抑 制作用はPGA2よりも△12-PGJ2の方が強く、これは核内への蓄積の程度と相関して いることなどが知られていた。しかしながら、これらの特異な細胞挙動や活性発現

における作用機序は全く解明されていなかった。我々は、PG宛および△7-PGAl類

と生体関連物質との化学反応を検討・解析することにより、PGの示すinfluufflux 挙動の差を化学的にシミュレートすることに成功した。また、シスプラチン耐性癌 細胞のPGに対する交叉耐性現象のメカニズムが、細胞内でのPG-グルタチオン抱

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合体の形成と、細胞膜上に発現している有機アニオン輸送ポンプであるGS-Ⅹポン

プによる細胞外排出に起因していることを、実際にPG-グルタチオン抱合体および

その放射ラベル体を化学合成して同ポンプによる輸送実験を行うことで実証した。 さらに、探索分子として新たに設計・合成したPG構造修飾体を活用し、エノン型 pGの細胞増殖抑制作用が、サイクリンキナーゼ阻害タンパク質であるp21の特異 的誘導とサイクリンEの阻害により細胞周期をGl期で停止させるためであること を明らかにした。また、△7-PGAlの血清中の代謝物の構造を化学合成によって決定 し、代謝に関わる構造要因を明らかにするとともに、分子の不斉を非天然型に転換 することで、代謝安定でかつ高活性な新規PGを創製することにも成功した。続い て、△7-PGAl類の蛍光プローブを合成し、その活用に-よってPGが細胞内の小胞体 (ER)に不可逆的に局在すること、この局在とPGによる遺伝子誘導が強く相関し ていることを明らかにした。一方、上記研究で合成したPGの内のいくつかが、細 胞毒性濃度以下でグリオーマに対して細胞周期Gl期停止作用を示すとともに神経 細胞の分化を誘導することを見いだした○これを契機として、種々のPG類を合成 して神経系での活性評価を進め、天然の15-de∝y-△12・14-PGJ2を含めたエノン型PG 類が神経成長因子(NGF)により誘導される神経突起伸展作用を顕著に増強すること を発見した。各種構造修飾体を用いた詳細な構造活性相関研究により、本活性には 交差共役ジエノン構造が必須であること、C-15位の水酸基が選択性と低毒性を実現 する決定的要因であることなどを明らかにし、強い活性、高い安定性、および低毒 性を兼備したNEPPlO(仝迫uriteOutgrowth2romoting2rostaglandins)の設計・ 合成に至った。さらに、ある種のエノン型PGが酸化ストレスにより誘発される神 経細胞死を顕著に阻害し、神経保護作用を示すことを発見した。新たに合成した構

造修飾体による構造活性相関研究から、高活性で毒性の低い化合物NEPPllを創製

することにも成功した。このNEPPllはNGF存在下に神経突起伸展増強作用卑示

し、神経細胞の保護・再生に関連した神経突起伸展および神経細胞死阻止作用の両 活性を合せ持つ特異な生理活性物質であることが判明した。このように、シクロペ ンテノン型PG類は、従来の膜受容体型PGとは全く異なる活性プロファイルを示 す興味深い化合物であることが明らかとなった。

参照

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