Title
粒子充てんによる機械構造物の減衰特性向上に関する研究(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
若澤, 靖記
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 乙第054号
Issue Date
2007-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/21466
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 学位論文審査委員 若 澤 靖 記(愛知県) 博 士(工学) 乙第 54 号 平成19 年 3 月 25 日 生産開発システム工学専攻 粒子充てんによる機械構造物の減衰特性向上に関する研究 (Studiesondampingcapacityimprovementofmachinestmcturesby ballspacking) (主査)教 授 丸 井 悦 男 (副査)教 授 小 野 晃 明 教 授 山 本 秀 彦
論文内容の要旨
加工の高精度化・高能率化を達成するためには,振動特性,特に減衰特性に優れた工作 機械の設計が求められている.またこのような工作機械では,周辺の機械からの不確実で 未知の要因の多い各種衝撃力に対する対処法も考慮しなければならない.機械構造物の振 動特性,特に減衰特性を改善することは,機械構造物の寿命延長による省資源化等の観点 からも重要であり,減衰能改善のために多くの研究が行われている.さらに,機器,床お よび建築物を対象にした免震装置の開発・実用化もこの分野の業績である. このような技術の機械構造物への適用は,コストの増加をもたらすばかりでなく,構造 あるいは機構が複雑になる.附加的な装置を必要とすることなく,機械自身の構造を利用 して減衰能を向上することができれば,振動対策が必要な工作機械にとって非常に実用的 なことである.そこで本研究では,機械構造を利用して簡便な方法により,減衰特性を向 上する技術を開発する上で必要となる基本的な事項について,実験的に研究している. 第1章において,パッシブ(受動型)ダンピング技術,アクティブ(能動型)ダンピン グ技術の研究および実用化の現状,パッシブダンピング技術の1種であるインパクトダン パ,特に粒子充てんによる振動特性(減衰特性)改善の現状について詳しく議論し,本研 究の位置づけ・目的を明らかにしている. 第2章では,機械構造モデル,充てんする粒子の種類と特性,充てん方法(加振充てん による最桐密,2種類の粒子を同時に充てんする複合充てんなど),振動の測定方法,加 振条件などの実験装置・実験条件について,詳細な説明を加えている. 第3章では,ガラス粒子を最桐密売てんしたときの減衰特性に対する粒径・加振方向・ 構造物の支持方法の影響をハーフパワ法によって調べている.減衰能が最大になる粒径が 存在すること,このことは充てん粒子問および充てん粒子と構造物壁面間の非弾性衝突に よるエネルギー消散の考え方により説明しうることを明らかにしている.ガラスの小径粒 子を使用して充てん率を広範囲に変化させると最桐密充てんよりもわずかに低い充てん 率において減衰能が最大になることを明らかにしている.さらに,加振方向,構造物の支-82-持方式の効果についても検討を加えている. ガラス粒子以外の粒子を充てんして加振実験を行うと,ハーフパワ法によっては減衰特 性を評価することができない場合が多数見つけられた.そこで第4章では,粒子充てん構 造物の減衰特性を的確かつ簡便に評価することができる一般的な手法について検討し,広 範な特性をもつ場合の減衰能を評価するための新しい特性値を提案している.この特性値 (波形面積減衰率)は,構造物のインパルス応答波形の解析から容易に求めることができ る.ハーフパワ法による減衰特性評価が可能な場合について,波形面積減衰率を求め,ハ ーフパワ法によって求められた減衰比と比較している.両者(波形面積減衰率と減衰比) は,一対一の対応をしていることが確認でき,新しく提案した特性値は粒子充てん構造物 の非常に広範囲な減衰特性を評価しうる一般的な係数と位置づけている. 第5章では,充てん粒子の材質,粒径,充てん率(最桐密充てんの場合も含む),イン パルス加振力などのパラメータが減衰特性(波形面積減衰率)に及ぼす影響を詳細に調べ ている.さらに同じ粒径で材質が異なる粒子・材質は同じであるが粒径が異なる粒子・粘 弾性体と鋼球の組み合わせのようないろいろな複合充てんの場合の減衰特性への効果,着 磁粒子充てんと未着磁粒子充てんにおける減衰特性の違い,等の粒子充てんによる減衰特 性向上の実用化において重要ないくつかの項目についても検討を加えて,貴重な資料を明 らかにしている.本研究で提案している粒子充てんによる減衰特性向上においては,減衰 能は向上するが,粒子同士あるいは粒子と構造物壁面間の衝突によりかなりの騒音を発生 することがある.そこで,騒音の発生状況についても詳細な検討を加えている. 第6章では,パッシブ型のダンパではあるが,構造物内の接触部に作用する摩擦力によ る減衰能向上について検討している.具体的には,切削工具のシャンク部にあけられた角 穴に板材を挿入して,切削工具系の変形により摩擦力が発生する構造を考案し,この構造 の減衰能と粒子充てん構造物の減衰能と比較している.シャンク部の摩擦力による減衰能 は,最桐密充てんにおける減衰能と同等である.しかし,粒子充てん構造物では充てん粒 子の材質・充てん率等の充てん条件を調整することで,より高い減衰能が得られ,粒子充 てんの効果を強調している. 第7章では,実際の機械構造物における粒子充てんの減衰能向上効果を明らかにするた めに,実際の工作機械とはぼ同じスケールのコラムとアームを有する構造物モデル,T型 工作機械ベースモデルを製作して,これらについて減衰能を求めている.これらの実機に 近い構造物では,粒子を充てんする場所の選定が減衰特性向上に大きな影響力をもつこと が示されている. 第8章では,本研究で得られた結論を総括して述べ,粒子充てんによる実際的な減衰特 性向上法をまとめるとともに,今後の粒子充てんによる減衰能向上法の展望についても議 論している.
論文審査結果の要旨
工作機械は,加工に伴う振動ばかりでなく,■周辺の機械からの未知の要因の多い各種衝 撃力を受けた状態で,加工を行っている.加工精度を高め,安定な加工を行うには,工作 機械の振動特性,特に減衰特性を最適にする必要がある.減衰特性を改善するために様々 な研究が行われているが,実用的な見地からは未だに問題点が残されていると考えざるを_ 得ない.附加的な装置を追加して,振動特性・減衰特性を改善することは,コストの増加 をもたらすばかりでなく,加工に直接かかわらない複雑な構造を工作機械にもたらすこと になる. そこで本研究では,附加的な装置を必要とすることなく,工作機械自身の構造をうまく 利用するという簡便な手段(粒子充てん)により,減衰特性を改善することを試みた.粒 子充てんによる減衰特性改善に対する基本的な事実を解明し,本手段を実用化しうる可能 性を詳細に述べている.本研究で明らかになった具体的な成果は,以下のようである.①ガラス粒子の充てんを基本的な実験条件として,痍討している.モデル構造物とし
て,単純なインチ角の鋼製角筒にガラス粒子を充てんした.ガラス粒子の粒径,充 てん粒子数を様々に変えてインパルス加振実験を行っている.時間応答曲線から共 振曲線を計算しlこれにハーフパワ法を適用して,減衰特性(減衰比)を求めた. ガラス粒子充てんにより,かなりの減衰特性改善がみられたが,特に最桐密充てん よりもわずかに低い充てん率のときに減衰比が最大になることを見いだしている. 充てん粒子間・充てん粒子と角簡壁面間の非弾性衝突が, =エネルギー消費の主な機 構であることを述べている. ②ガラス粒子以外に材質の異なる6種類の粒子についても検討している.これらの粒 子には,インパルス応答(減衰波形)がきわめて複雑になり,ハヤフパワ法による 減衰能評価が困難であるものがいくつかみられた.そこで,実際のいくつかのイン パルス応答波形を詳細に検討し,より広範で複雑な応答を示す場合にも減衰能を評 価しうるより一般的な手法を提案している.これは,インパルス応答波形の包絡線 と時間軸が囲む面積(減衰波形面積)と粒子非充てんの場合の同じ面積の比(波形 面積減衰率)で減衰特性を評価することを提案した.実際にハーフパワ法の適用が 可能であるいくつかの場合について,ハーフパワ法による減衰比と波形面積減衰率 を比較し,きわめてよい直線関係にあることを示し,減衰特性評価における波形面 積減衰率の有効性を実際に検証した. ③機械構造物にとって最適の減衰状態を付与するための情報を得るため,充てん粒子 の材質,粒径,充てん率,インパルス加振力の大きさなどが減衰特性(波形面積減 衰率)に及ぼす影響を詳細に検討している.さらに,粒径が同じで材質が異なる粒 子・材質は同じであるが粒径が異なる粒子・枯弾性体と鋼球の組み合わせ(粒子充 てんによる騒音を嫌う場合に有効である)のように各種の複合充てんの場合につい ても,減衰特性を検討している.着磁フェライト粒子・未着磁フェライト粒子を充 てんした場合のそれぞれについても減衰特性を求め,磁気力の利用も減衰能向上に-84-効果があることを明らかにしている.このように非常に広範囲の粒子充てん条件に ついて減衰特性を明らかにすることで,実際の機械構造物で要求される減衰特性を 粒子充てん構造により得られるものと結論付けている. ④実際の機械構造物における粒子充てんの効果を確認するために,実際の工作機械と ほぼ同じスケールのコラムとアームを有する構造モデル,T型工作機械ベースモデ ルを製作して,これらについても減衰能を求めている.粒子充てんにより,格段の 減衰能向上が確認され,実機への粒子充てんが減衰能向上に有効な手段であると結 論付けている.