• 検索結果がありません。

超高速インターネット衛星(WINDS)における衛星搭載交換技術の開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "超高速インターネット衛星(WINDS)における衛星搭載交換技術の開発"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

超高速インターネット衛星

(WINDS)

における衛星搭載交換技術の開発

門脇

直人

a)

吉村

直子

高橋

鈴木龍太郎

Development of On-Board Switching Technology in Wideband InterNetworking

Engineering Test and Demonstrations Satellite (WINDS)

Naoto KADOWAKI

†a)

, Naoko YOSHIMURA

, Takashi TAKAHASHI

,

and Ryutaro SUZUKI

あらまし 超高速インターネット衛星(WINDS) は超高速衛星ネットワーク技術の確立のために開発した実験 衛星である.超高速衛星ネットワークを実現するためには,マルチビームアンテナとビーム間接続技術が必須で あり,特に衛星交換技術はその要素技術として重要である.衛星交換方式には,搭載機器構成が比較的単純なベ ントパイプ型と高度かつ柔軟な交換機能が実現可能な再生中継型がある.WINDS には両方の衛星交換機能が搭 載されており,多様な衛星ネットワーク技術実証が可能である.本論文では特に開発要素の大きい超高速ベース バンド交換サブシステムを中心に,WINDS 搭載衛星交換機能の設計と開発成果について述べる. キーワード 衛星交換,ブロードバンド,再生中継,セルスイッチ,ビーム間接続

1.

ま え が き

衛星通信システムは広域性や同報性,災害時など 緊急あるいは一時的な回線の提供能力に優れた通信 媒体であり,情報通信ネットワークにおいて重要な 役割を果たしている.家庭でも光ファイバが接続さ れ100 Mbit/s以上の回線が提供されるようになり, HDTVがネットワーク経由で配信されるなど,ネッ トワークの高速化とブロードバンドアプリケーション の利用が進展している.このようなネットワーク環境 に適応可能な超高速衛星通信ネットワークの実現が求 められている.特に衛星交換技術は超高速衛星ネット ワークの実現において重要な開発要素である.これ までに米航空宇宙局(NASA)が1993年に打ち上げ た実験衛星Advenced Communications Technology Satellite (ACTS) [1]ではベントパイプ型衛星交換で 622 Mbit/s,再生中継型衛星交換で110 Mbit/sの衛 星ネットワーク実験を実施した.実用衛星においては IPStar [2]がベントパイプ型衛星交換を,SpaceWay が再生中継型衛星交換を採用しているが,ユーザリン 独立行政法人情報通信研究機構,小金井市

National Institute of Information and Communications Technology, 4–2–1 Nukui-Kita, Koganei-shi, 184–8795 Japan a) E-mail: [email protected] クの伝送速度は10∼30 Mbit/s程度のサービスであり 超高速衛星ネットワークの実用化には至っていない. その原因として,多元接続の容易な周波数多元接続 (FDMA)方式を採用することで帯域分割を行ったり, 高速動作するベースバンドスイッチの実現が困難だっ たことが挙げられる. 超高速衛星ネットワーク技術を確立するためには, 衛星回線の超高速伝送を実現すると同時に,効率的な 衛星交換技術を開発しなければならない.独立行政法 人情報通信研究機構(NICT)では,これらの技術開発 実証のため超高速インターネット衛星(Wideband In-terNetworking engineering test and Demonstration Satellite:WINDS [3])を独立行政法人宇宙航空研究 開発機構(JAXA)と共同開発した.WINDSでは固定 マルチビームアンテナと電子的にビーム走査が可能な アクティブフェーズドアレーアンテナを搭載し,ビー ム間接続方式としてベントパイプ中継と再生中継の双 方の搭載交換方式を実現している[4].時分割多元接続 (TDMA)方式を基本として,割当周波数を最大限活用 すること,及びベースバンドスイッチには単純なハー ドウェア動作でスイッチング可能なATMセルスイッチ の採用と処理ルーチンの並列処理化等により高速伝送 を実現し,ベントパイプ中継で最大1.244 Gbit/sチャ ネル,再生中継で155.52 Mbit/sチャネルという世界

(2)

最高速を達成した.本論文では,まず搭載交換技術の 必要性を明確化し,搭載交換方式の検討と,WINDS における搭載交換技術の開発成果について述べる.

2.

衛星搭載交換方式

2. 1 衛星搭載交換機能の必要性と要求条件 衛星通信回線の超高速化を実現するためには,衛星 通信における電力的制限を克服するためスポットビー ムアンテナを用いる必要がある.その一方で,スポッ トビームアンテナを使用する場合,各スポットビーム のカバレッジは利得を高くするに従って小さくなる. したがって広域性を確保するためにはマルチスポット ビーム,あるいはアクティブフェーズドアレーアンテ ナが必要となる.この場合,各スポットエリアに存在 するユーザ間を自在に接続するためには,ビーム間接 続のための衛星交換機能が必須である. ユーザの通信要求に柔軟に対応し,かつ電力利用効 率を高めるためには,高速動作する衛星交換機能とそ の効率的な運用が求められる.また,衛星搭載機器の 規模やコストを適切なレベルに維持すると同時に,開 発リスクの低減,開発期間の短縮も求められる. 2. 2 衛星搭載交換方式 衛星搭載交換方式として,通信信号を衛星上で再生 することなく中間周波数(IF)帯のマトリックススイッ チで経路を切り換える方式(ベントパイプ中継型)と, 通信信号を衛星上で再生して内部のあて先情報を解読 して経路を選択する方式(再生中継型)が存在する. ベントパイプ型及び再生中継型の衛星交換機能を実現 する衛星搭載機器の基本構成を図1及び図2に示す. ベントパイプ中継型では,衛星上の経路切換をスケ ジューリングし,地球局からの送信タイミングを所望 のビーム間接続となるタイミングに合わせる必要があ る.そのため,あらかじめスケジューリングするプリ アサイン方式となり,ユーザ要求に対して柔軟性に欠 ける.しかし,主要コンポーネントはIF帯マトリッ クススイッチであり,デバイスの広帯域化が容易,か つ比較的簡素な搭載機器構成で実現可能である. 再生中継型は復調器,変調器と経路選択のための ベースバンドスイッチが必要であるため,搭載機器構 成は比較的複雑であり,かつ搭載可能デバイスの動作 速度により処理能力の制限が生じる.しかし,衛星上 で経路を識別しビーム間接続経路設定ができるため, 事前のスケジューリングは不要であり,柔軟なスイッ チングが可能である. 図 1 ベントパイプ型衛星交換方式中継器の基本構造 Fig. 1 Configuration of bent-pipe type satellite

switching transponder.

図 2 再生中継型衛星交換方式中継器の基本構造 Fig. 2 Configuration of regenerative type satellite

switching transponder.

図 3 アクティブフェーズドアレーアンテナによる衛星交 換方式中継器の基本構造

Fig. 3 Configuration of satellite switching transpon-der adopting active phased array antenna.

図3のようにアクティブフェーズドアレーアンテナ を使用する場合は,送受信アンテナのスポットビーム を独立に任意の場所に指向することが可能であるため, 中継器に交換機がなくても任意の地域間を接続するこ とが可能である.ビーム数が全対象地域を常時照射す るに十分でない場合は,ビーム走査によって照射され ない地域が存在する.そのため広域にわたり常時トラ ヒック量が多い場合は適していないが,トラヒック発 生が時間的に変動し,かつ地域的にも分散するような 場合には少ないビーム数で柔軟な運用が可能である. なお,アクティブフェーズドアレーアンテナは再生中 継型衛星搭載交換と組み合わせることも可能である.

3. WINDS

の超高速衛星搭載交換機能

WINDSは,超高速衛星ネットワーク技術確立のた めの実験衛星であり,可能な限り多様な衛星交換技術

(3)

図 4 WINDSの外観 Fig. 4 External view of WINDS.

図 5 WINDSの中継器構成

Fig. 5 Configuration of WINDS’ communication payload. を実証できるよう設計している.WINDSの外観を図4 に示す.WINDSの搭載通信ミッションは図5に示す ように,2機の固定マルチビームアンテナ(MBA),Ka 帯アクティブフェーズドアレーアンテナ(APAA) [5], Ka帯マルチポートアンプ(MPA) [6],超高速ベース バンドスイッチ(ABS) [7],IFスイッチ(IFS),スイッ チ制御器(SW-CONT),網制御情報送受信機(NITR) で構成される.なお,WINDSの衛星バスは開発リス ク低減のため1998年に打ち上げられたCOMETS [8] バスを応用している. 3. 1 超高速伝送を実現する中継器設計 中継器の主要諸元を表1に示す.送信周波数及び受信 周波数はそれぞれ17.7∼18.8 GHz,27.5∼28.6 GHz であり,帯域幅1.1 GHzの広帯域中継器である. MBAは,直径45 cmの地球局で155 Mbit/s程度の 信号受信を可能とするシステム要求を実現するために搭 載されており,後述のMPAと組み合わせて67.3 dBW 以上の等価放射電力(EIRP)及び16.3 dB/K以上の 利得雑音温度比(G/T)を達成している.1機のMBA は日本と東アジアの3都市を12ビームで,もう1機 のMBAは7ビームで東南アジアの主要都市をカバー 表 1 WINDSの主要諸元 Table 1 Major specifications of WINDS.

図 6 MBAと APAA のカバレッジ Fig. 6 Coverage of MBA and APAA.

している. APAAは衛星からの可視範囲のほぼすべての領域 を通信対象としているため,MBAカバレッジ外のア ジア太平洋地域の広い範囲に通信回線を提供可能であ る.APAAは送信,受信ともに128の放射素子で構 成されている.EIRPとG/Tはそれぞれ55.5 dBW 及び7.1 dB/Kであり,MBAよりも低い値であるた め,155 Mbit/s以上の通信に関しては1ビーム運用 を基本としているが,共通増幅時の特性把握等のため, 2ビーム同時運用が可能な設計としている.MBAと APAAのカバレッジを図6に示す. MPAは入力及び出力それぞれ8ポートであり,総 合出力は280 Wである.MPAは出力ポートごとに柔 軟に出力を配分できるため,特定のビームにより多く の出力を割り当てることにより降雨地域の通信品質改 善を可能とする利点を有する. 3. 2 衛星搭載交換機能を実現する中継器設計 WINDSは前述したベントパイプ型,再生中継型, 及びアクティブフェーズドアレーによる衛星交換方式 をすべて実証可能な設計をしている.

(4)

続されている.ビーム間接続制御は地上のネットワー ク制御局(NCS)のスケジューリング情報をNITR経 由で受信し,SW-CONTによりIF-SWを制御するこ とで実行される.これによりベントパイプ型の衛星搭 載交換機能を実現している.

受信側と送信側のIFSの間にABSがあり,ABSに よって再生中継型衛星交換を実現している.ABSは WINDSの中でも最も開発要素が大きいサブシステム であり,その構成と機能,性能については後述する. またKa帯APAAを搭載しており,ビーム方向を 電子的に切り換えることにより,任意の地点間を接続 可能である. 3. 3 超高速ベースバンド交換サブシステム WINDSでは前述のとおり再生中継型衛星交換方 式の実証を行うため,超高速ベースバンドスイッチ (ABS)を搭載している.ABS開発においては,搭載 機器開発の実現性を示すことが重要であり,以下の3 点が課題として挙げられる. ( i ) 地上民生品に比べて動作速度が遅い耐放射線 性デバイスにより,高速スイッチング動作を実現する こと. ( ii ) 衛星搭載において現実的なサイズ,重量,消 費電力を実現できること. ( iii ) 開発期間,開発コスト,その他の開発リスク の低減が図れること. これらの課題を解決するため,ABSは固定長セル をハードウェアでスイッチング処理することが可能な ATMセルスイッチ方式に着目し,更にソフトウェア については打上げ後にも地球局からのダウンロードに よる更新が可能な搭載機器設計を行った. 3. 3. 1 ABSの構成 ベースバンドスイッチの高スループット化を実現す るためには耐放射線性と高速動作を両立する搭載用 プロセッサが必要であり,Silicon-On-Insulater (SOI) 技術を応用するプロセッサなどが開発されてきたが, 冷戦終了後世界的に新規開発が停滞してしており,搭 載用プロセッサの動作速度は地上民生品と比べて動作 速度が1けた遅いという状況である.そのため搭載ス イッチとして高速動作を実現するためには,できるだ けハードウェアによる動作を主としてソフトウェア動 作部分を極力少なくするべきである.そのような観点 から,ATMセルスイッチは高速なハードウェア動作 が可能なスイッチとして搭載スイッチに適している. そこでギガビット衛星プロジェクト[9]で設計検討し たATMスイッチに基づいてABSを設計開発した. ATMセルスイッチはレイヤ2におけるビーム間接続 スイッチとして動作し,またIPネットワークとの親 和性にも問題がない.その結果,WINDSの目的であ る高速インターネット接続を提供可能な衛星システム 構築が実現可能となる. ATM方式はセルサイズが53オクテットと小さく, そのうち5オクテットがヘッダであり,155.52 Mbit/s 伝送時のバーストにおけるプリアンブル,誤り訂正符 号等を考慮したペイロード効率は約75%である[10]. 回線品質を考慮した上でより長いセル構造の採用によ る回線利用効率向上の検討が必要である. ABSの構成を図7に,主要諸元を表2に示す.ABS は3台のディジタル信号処理型復調器(DDEM),2台 のATMセルスイッチ(ATMS),及び3台の変調器 (MOD)から構成される. DDEMは周波数多重分離器(FDMUX),復調ユニッ ト(DEM),及び復号器(DEC)で構成される.1台の DEMは三つの復調ユニットを有しているため,ABSは 9器の復調ユニットを有することになる.各復調ユニッ トはディジタル信号処理による復調処理を実現してお り,6.144 Mbit/s,24.00 Mbit/s,及び51.84 Mbit/s の伝送速度に対応している.FDMUXは復調ユニット の前段に置かれ,1.536 Mbit/sの信号14チャネル分 を51.84 Mbit/sの1チャネルに変換しDEMに入力 する機能を有する.FDMUXは1.536 Mbit/sのチャ ネルを必要とする場合のみ使用され,それ以外の場合 はバイパスする.また,51.84 Mbit/sの復調ユニット 3台を並列的に使用することにより155.52 Mbit/sの 伝送速度に対応させることも可能である. 複数伝送レートへの対応を可能とするため,ディジ タル信号処理技術とFPGA [11]を採用している.こ れにより設計,実装とデバッグが容易になる利点もあ る.搭載モデルでは耐放射線性を有するFPGA及び ゲートアレー(G/A)を用いており,これらのデバイ スのゲート数は16 kゲートまたは32 kゲートである. 軌道上での安定動作のため,1ビット誤り補正2ビッ ト誤り検出機能,ウォッチドッグタイマ,三重多数決 処理等の機能を具備している.これらの機能は比較的 単純なロジック回路で実現でき,処理速度に影響を与 えることなくシングルイベントアップセット(SEU)に よるビット誤りを訂正することが可能となっている. 図8 (a)に28 GHz帯アップリンク周波数配列を示す. ABSはこれを3 GHz帯に周波数変換された信号

(5)

図 7 ABSの構成 Fig. 7 Configuration of ABS.

表 2 ABSの主要諸元 Table 2 Major specification of ABS.

を受信する.DDEM-1はFu-1/2/3に,DDEM-2は Fu-4/5/6に対応する.DDEM-3はDDEM-1及び DDEM-2の冗長系の機能を兼ねるため,Fu-1/2/3, Fu-4/5/6,Fu-7/8/9のすべてに対応可能である.こ れはDDEM-3に入力するローカル信号周波数を切り 換えることで実現している.誤り訂正符号は Consulta-tive Committee for Space Data Systems (CCSDS) 仕様のリードソロモン符号RS (255,223)を採用し, 耐放射線FPGAに実装している.

図7に示すように,ATMSは受信ラインインタフェー ス(Rx-LINF),入力バッファ(Input-BUFF),ATM コアスイッチ(SW-CORE),出力バッファ (Output-BUFF),送 信 ラ イ ン イ ン タ フェー ス (Tx-LINF), ATMコントローラ(ATM-CONT)で構成される. SW-COREは実用時の要求性能を想定してスルー

図 8 アップリンク及びダウンリンクの周波数配列 Fig. 8 Frequency allocation of uplink and downlink.

プット 2.5 Gbit/sを達成できるよう設計している. Output-BUFFは出力セルをあて先地球局が存在する ビームごとにバッファリングする. SW-COREの基本アーキテクチャは,地上系ネット ワークで使用されたATMスイッチと同一である.しか し使用デバイスは宇宙環境への適応が実証されたもの, またはスクリーニングにより選別されたものに置き換 えている.Rx-LINF,Tx-LINF,及びATM-CONT に使用されているFPGAはDDEMに使用されてい

(6)

表 3 ABSコンポーネントのサイズ,質量,消費電力 Table 3 Dimensions, mass, power consumption of

ABS. るものと同じである.2台のATMSは待機冗長構成 をなしている. ABSは3台の変調器を有しており,ダウンリンク 信号は3チャネルの155.52 Mbit/sの回線に多重化 されている.各変調器は3 GHz帯の変調信号を生成 し,後段のアップコンバータにより図8 (b)に示され る18 GHz帯に周波数変換される.MOD-1はFd-1 に,MOD-2はFd-2に対応し,MOD-3はMOD-1と MOD-2のバックアップ機能を果たすためFd-1,Fd-2, 及びFd-3に対応する.

3. 3. 2 ABSの機能性能評価

ABS の 開 発 は ,性 能 確 認 モ デ ル (BreadBoard Model:BBM)が2003年,工学モデル (Engineer-ing Model:EM)が2004年 ,搭 載 モ デ ル (Proto-Flight Model:PFM)が2006年に完了した.DDEM, ATMS,及びMODのPFM開発後のサイズ,重量, 消費電力を表3に示す.サイズについてはインタフェー ス仕様に合致した値であり,質量仕様:122± 7.5 kg (DDEM 3台,ATMS 2台,MOD 3台),消費電力:

650 W以下(DDEM 3台,ATMS 1台,MOD 3台 がON)の開発仕様を満足することができた.以下に ABSの機能性能評価結果を示す. ( 1 ) DDEM WINDSでは多元接続方式としてTDMAを採用し ているため,DDEMへの入力信号はバースト形式で, これが復調され,誤り訂正処理された後,ATMセルが 抽出され,UTOPIAインタフェースを介してATMS に出力される. DDEMでは,伝送レートが1.5 Mbit/sである場 合,入力信号はまず FDMUXにおいてフィルタリ ングされ,16ポイントFFT処理によって信号処理 される.1.536 Mbit/s信号は周波数多重分離されて 51.84 Mbit/sの信号1チャネルに変換され,復調ユ ニットに入力される.一つの復調ユニットに14チャ 図 9 DDEM (PFM)の BER 特性 Fig. 9 BER characteristics of DDEM (PFM).

ネルの1.536 Mbit/s信号が入力されるため,ABS全 体では126チャネルの1.536 Mbit/sアップリンク回 線を提供可能である. DEM で はQPSK 復 調 さ れ ,そ の 後 RS (255, 223)符号の復号処理が行われる.PFMのビット誤 り率(BER)特性を図9に示す.1.536 Mbit/sから 51.84 Mbit/sのすべての伝送レートにおいて,誤り訂 正を行わない状態でBERが1.0e-4における理論値か らの劣化は約1 dBである.これは直交検波器の直交 性のずれなどに起因する劣化と考えられるが,極めて 良好な特性を達成している.誤り訂正を動作させた場 合,Eb/Noが8 dB-Hz以上であれば,1010個以上の ビット列において誤りは発生しなかった. ( 2 ) ATMS ATMSではセルスイッチング処理及びセル多重処理 を行う. 間欠的にバーストが到着するTDMA回線を用い てATMの接続品質を維持するため,SW-COREと DDEM及びSW-COREとMODの間のRx-LINF及 びTx-LINFにおいてバッファリング,フレーミング 及び同期処理を行う.サービス品質に影響を与えるシ グナリングやアドレッシングなどの接続制御処理は, ATM-CONTで実行される. ATMS内のソフトウェアは地上の網制御局から送 信してダウンロードすることができる.これにより ATMS内のソフトウェアの不具合を修正したり,Multi Protocol Label Switching (MPLS)の追加などの機 能向上を衛星打上げ後に実施することが可能である. また,リアルタイム系,非リアルタイム系アプリケー

(7)

ションに対応するためContinuous Bit Rate (CBR) とUnspecified Bit Rate (UBR)の2種類のサービス クラスに対応した優先制御を実装し,セルコピーによ るビーム間にまたがるマルチキャスト機能を実現した. ふくそう制御は出力バッファの滞留データ量がしきい 値を超えると入力バッファからスイッチコアへのセル 転送を抑制するバックプレッシャー型制御を採用して いる.これらの機能はACTS等,これまでの衛星で は実現していない機能である. ATMSは4台の622 Mbit/sインタフェースを具 備するよう設計されており,スイッチング処理能力は 2.5 Gbit/sを達成している.しかしWINDSは2.4tバ スに搭載可能なペイロード質量と消費電力に抑えるた めにDDEMとMODを各3台に制限したため,最大処 理能力は変復調器の総合伝送能力である466.56 Mbit/s (155.52 Mbit/s × 3 ch)である. ( 3 ) MOD MODは155.52 Mbit/sのダウンリンク信号を生成 する.変調方式はQPSK,誤り訂正符号はアップリン クと同じリードソロモンRS (255,223)を採用して いる.また,搭載機器と地上のユーザ局間のTDMA 同期をとるための基準バーストを生成し,TDMAフ レームの先頭スロットに送出する機能を有する.基準 バーストにはABSの動作状態を示すABSステータ ス情報,地上の網制御局から送信されるスロット割当 情報などの網制御情報が格納されている.また,バー ストの先頭には,基準バーストと通常のバーストを識 別するユニークワード(UW)を付与する機能を具備し ている.

4.

軌道上評価試験実施結果

WINDSは2008年2月23日に種子島宇宙セン ターから打上げに成功し,その後約3か月間初期 チェックアウト(IOT) が実施された.ABSについ ては各ビームとの組合せで10日間の日程で実施さ れ,表4に示すとおり軌道上においてもアップリンク 1.5/6.1/24.0/51.84 Mbit/s伝送で誤りなし,ダウン リンク155.52 Mbit/s回線で地球局受信誤りなし,パ ケット伝送時に損失なしという各条件を満たすことが 確認された.また,ハイビジョン映像6 ch中継実験を 実施し,CBR優先制御が正常に機能していることが確 認できた.ベントパイプ中継においては,622 Mbit/s の伝送特性を取得し,所望の性能が達成できているこ とを確認している[12]. 表 4 軌道上試験結果

Table 4 Result of in-orbit operation test.

これまで,高速通信衛星としては1993年に打ち上 げられたNASAのACTSが再生中継型衛星交換と して伝送速度110 Mbit/sを実現したが,WINDSは これを上回る1チャネル当り155.52 Mbit/sを達成し た.ベントパイプ型では同じくACTSが622 Mbit/s の伝送を実証したが,WINDSでも同じ伝送速度を達 成した.更に1中継機に622 Mbit/s信号を2 ch中継 させることによる1.244 Gbit/s伝送にも成功した.初 期チェックアウト終了後,WINDSは定常運用モード に移行し,各種実験が実施されている.NICTでは, 引き続きABSの特性評価実験を実施するとともに, 1.244 Gbit/s伝送技術の確立やアプリケーション実験 実施を計画している.

5.

む す び

超高速衛星ネットワーク技術の確立のため,その重 要な要素技術である衛星交換方式について研究を実施 した.衛星交換方式はベントパイプ型と再生中継型の 2種類に大別されるが,ベントパイプ型は衛星構成が 比較的簡素で超高速伝送が実現しやすく,再生中継型 はより柔軟かつ高度な交換が実現可能というそれぞれ の特長を有する.WINDSプロジェクトにおいてはこ れらの衛星交換方式を実証するための中継器を開発 した.特に開発要素の高い再生中継型交換システムと して,可変伝送速度を実現するディジタル信号処理型 復調器,セルコピー機能,CBR/UBR対応,ソフト ウェアダウンンロード機能などこれまでにない先端的 な機能を有するセルスイッチ,及びセル多重型変調器 から構成されるABSを開発し,2トン級衛星である WINDSの搭載条件を満足した.衛星打上げ後の軌道 上試験においても所定の機能,性能が確認されており, アプリケーション実験にも使用されている.一方,ベ ントパイプ型では,伝送速度622 Mbit/sの2 ch中継 (1.244 Gbit/s)を実現し,更に衛星伝送で世界最高速 となる1 ch当り1.244 Gbit/sの変復調器についても 装置単体折返しで性能確認を終えている. 今後の課題として,セルのペイロード部分を拡張す ることによる回線利用効率の改善や,MPLS採用に よるIPスイッチングへの親和性の向上で地球局端末

(8)

の処理負担軽減に関する検討が重要である.WINDS では,高速搭載交換機能を利用する多様なアプリケー ション実験が今後実施される予定である.これらによ り,WINDSプロジェクトで開発された高速衛星交換 技術の運用性が実証されると同時に,有益性,実用性 が実証されるものと期待される. 謝辞 ABSの開発においてはNEC(株)の関係各 位に感謝する.また,JAXAのWINDSプロジェクト チーム及び衛星利用推進センターの各位に感謝する. 文 献

[1] R.J. Krawczyk and L.R. Ignaczak, “The advanced communications technology satellite—Performance, reliability and lessons learned,” Proc. 6th Ka Band Utilization Conference, pp.3–11, Cleveland, June 2000.

[2] W. Thesling, M. Vanderaar, M. Thompson, P. Hamilton, P. Panuwattanawong, and R. Gedney, “Two-way Internet over iPSTAR using advanced er-ror correction and dynamic links,” AIAA-2002-1944, 20th ICSSC, Montreal, May 2002.

[3] R. Kuramasu, T. Araki, T. Sato, and E. Tomita, “Research and development of wide-band inter-networking engineering test and demonstration satel-lite (WINDS),” AIAA-2003-2400, Yokohama, April 2003.

[4] N. Yoshimura, N. Kadowaki, and Y. Ogawa, “Con-ceptual design of networking scheme for WINDS,” AIAA-2003-2396, 21st AIAA ICSSC, Yokohama, April 2003.

[5] A. Akaishi, M. Iguchi, and K. Hariu, “Ka-band active phased array antenna for WINDS satellite,” AIAA-2003-2397, 21st AIAA ICSSC, Yokohama, April 2003. [6] M. Amano, T. Kuroda, M. Yajima, M. Shimada, Y. Motohashi, and Y. Ohgushi, “18 GHz band high power multi-port amplifier for WINDS satellite,” 2002-j-03, 23rd ISTS, Matsue, May 2002.

[7] N. Kadowaki, N. Yoshimura, Y. Ogawa, and M. Nakao, “Broadband networking with wideband in-ternetworking engineering test and demonstration satellite,” Proc. 8th Ka-Band Utilization Conference, pp.491–497, Baveno, Sept. 2002.

[8] E. Morikawa, H.B. Li, S. Kozono, E. Okamoto, M. Takahashi, and H. Wakana, “Ka-band and millimeter-wave advanced mobile satellite commu-nication experiments using the COMETS satellite,” Proc. 17th ICSSC of AIAA, pp.421–430, Yokohama, 1998.

[9] N. Kadowaki, N. Yoshimura, Y. Ogawa, N. Noriaki, and T. Araki, “Ka-band gigabit communications technology satellite: Development status and connec-tion control scheme,” Proc. 5th Ka-Band Utilizaconnec-tion Conference, p.19–25, Taormina, 1999.

[10] 衛星アプリケーション実験推進会議,WINDS 利用実験地 球局ガイドライン,2006.11.24.

[11] Actel, FPGAs for Space Applications,

http://www.actel.com/documents/SpacePib.pdf, Nov. 2008.

[12] Y. Hashimoto, M. Ohkawa, T. Takahashi, R. Gedney, and M. Dollard, “1244 Mbps high-speed network for WINDS bent-pipe-relay mode,” IAC-08-B2.1.11, 59th International Astronautical Congress, Glasgow, Oct. 2008. (平成 21 年 12 月 14 日受付,22 年 3 月 8 日再受付) 門脇 直人 (正員) 1984東北大学大学院工学研究科修士課 程了.同年三菱電機(株)入社,1986 郵 政省電波研究所(現,情報通信研究機構: NICT)入所.以来,移動体衛星通信シス テム,高速衛星通信ネットワークの研究, 開発に従事.1990∼1991 オーストラリア AUSSAT社客員研究員.2004 年 7 月∼2006 年 12 月,ATR 適応コミュニケーション研究所.現在,NICT 新世代ワイヤレ ス研究センター長.米国航空宇宙学会 (AIAA),IEEE 各会員. 吉村 直子 (正員) 1993日本大学大学院修士課程了.同年 郵政省通信総合研究所(現,情報通信研究 機構:NICT)入所.以来,移動体衛星通 信,衛星間通信,衛星放送,高速衛星通信 ネットワークの研究に従事.現在,同機構 宇宙通信ネットワークグループ主任研究員. 高橋 卓 (正員) 1991電気通信大学大学院修士課程了.同 年郵政省通信総合研究所(現,情報通信研 究機構:NICT)入所.以来,移動体衛星 通信,衛星間通信,衛星放送,高速衛星通 信ネットワークの研究に従事.2002∼2005 JAXA出向.現在,同機構宇宙通信ネット ワークグループ研究マネージャー. 鈴木龍太郎 (正員) 1979電気通信大学大学院修士課程了. 2005同大学院博士課程了.工博.1979 同 年郵政省電波研究所(現,情報通信研究 機構:NICT)入所.以来,移動体衛星通 信,周回衛星システム,高速衛星通信ネッ トワークの研究に従事.1992∼1995 マル チメディア教育センター (NIME) 助教授.1997∼2002 次世代 LEOシステム研究センターサブリーダー.現在,同機構宇宙 通信ネットワークグループリーダー.IEEE,AIAA 各会員.

図 2 再生中継型衛星交換方式中継器の基本構造 Fig. 2 Configuration of regenerative type satellite
図 5 WINDS の中継器構成
表 2 ABS の主要諸元 Table 2 Major specification of ABS.
表 3 ABS コンポーネントのサイズ,質量,消費電力 Table 3 Dimensions, mass, power consumption of
+2

参照

関連したドキュメント

戦略的パートナーシップは、 Cardano のブロックチェーンテクノロジーを DISH のテレコムサービスに 導入することを目的としています。これにより、

5Gサービスを実現するRANの構成と,無 線アクセスネットワーク技術としてLTE-NR Dual Connectivity *7 ,Beam Management

The behavior of cutting heat heat into chip, work and tool in high speed cutting has been investigated applying theory and experiment methods in the present study.. The heat

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

警告 当リレーは高電圧大電流仕様のため、記載の接点電

Generative Design for Revit は、Generative Design を実現するために Revit 2021 から搭 載された機能です。このエンジンは、Dynamo for

図 3.1 に RX63N に搭載されている RSPI と簡易 SPI の仕様差から、推奨する SPI

アンチウイルスソフトウェアが動作している場合、LTO や RDX、HDD 等へのバックアップ性能が大幅に低下することがあります。Windows Server 2016,