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年金エキスパート・システム*
意思決定支援システムとして
野 本 明 成
正はじめに
従来エキスパート・システムは,特に医学,工学等の分野において数多く構
築されてきており,Hayes−Roth et al.[6コ,上野[23]に代表的な例が示されている。たとえば,感染症に対する診断と治療のためのエキスパート・シス
テムであるMYCIN,地質学データから鉱脈を発見するための助言を与える
PROSPECTOR,四声理解のためのHEARSAY・II等があげられる。
また,最近社会科学系分野においても,エキスパート・システムが構築され
つつある。法学分野においては,加賀山[10]・[11]・[12],吉野[24],吉野 ・他[25],池田[8]にその発展の経緯および種々のエキスパート・システムが示されており,たとえぽ家族関係についての事実に基ずく相続税の納税義務
者の判定が可能な「相続税法エキスパート・システム」,特許の出願に対して
その手続きが正当かどうかの判定が可能な「特許法エキスパート・システム」 があげられる。経済関係の分野においては,金融・財務エキスパート・システムが種々構築
されつつあり,たとえぽ財務分析システムとしてIwasieczko et al.[9],銀行による顧客への与信評価のためのエキスパート・システムとしてBen・David
et al.[3]があげられる。これらのシステムは,Feigenbaum[4コの指摘するとおり,知識原理,す
なわち「主としてあるシステムが活動しようとする領域について持っている特
* 本研究は,爾生命保険文化センターより研究助成を受けている。殊な知識によって,そのシステムが高い能力水準で,インテリジェントな理解
と行動を実行すること」に基ずいていると考えてよいであろう。 また,Al−Ani et al.[2コによれば,意思決定支援システム(Decisi・n Sup− port System,以後DSSと呼ぶ)は,エキスパート・システムに移行されるが,その違いは「エキスパート・システムはDSSを使用するときに,使用者が必
要とする種々の知識,すなわち意思決定の性質,利用可能なデータ,適切な分
析手法についての知識をソフトウエアとしてシステムの中に含んでいる」とい
うことである。このように,エキスパート・システムは各種の領域において領域固有の知識
を持ち,また進化したDSISとして使用しうるシステムであり,それ故に各種
の分野においてその需要は増加の傾向を示しており,ICOT−JIPDEC AIセン
ター編[7]の試算によれば,産業全体のAIソフトウェア需要は,1990年に
は9600億円,1995年には4兆8000億円と予測されている。
そこで本論においては,最近人口の高齢化と共に社会的に特に関心を集めて
いる年金制度を取り上げ,年金制度固有の知識に基ずいて,年金制度について
の意思決定を支援するシステムとしてエキスパート・システムを構築する。II.公的年金制度および年金エキスパート・システム
(1>公的年金制度の概要人口の高齢化と共に,社会保障の充実に関心が集まりつつある現在,各種の
公的年金制度が確立されてきているが,未だ十分なものと言えず,各企業ある
いは各個人においてそれを補填するために,それぞれ企業年金,個人年金が活
1) 用されている。公的年金制度には,国民年金,厚生年金,共済年金があり,国民はすべて年
金に加入することとされている。各年金は,それぞれ老齢保障(老齢年金),障 害保障(障害年金),遺族保障(遺族年金)から構成されており,各受給資格を2)
充足した場合にその保障(年金)を受けることが可能となる。 1)詳細は,国崎[16],小林[13],龍宝[20ユ参照。年金エキスパート・システム 133
各公的年金制度は各種法令に定められているが,その量は膨大であり,かつ
3)各種の特例措置,経過措置等,複i雑多岐に亘りその解釈,適用については専門
家により行われているが,最近その需要は人口の高齢化と共に多くなりつつあ
るようである。 ② 年金エキスパート・システム 4)一婦保障(年金)の概要および運用例一
5)ここでは,新法で定められた各種公的年金を取り上げ,それぞれの年金を構
成する3つの保障(年金)を対象としてシステムを構築する。システムは,知
6) 識をルールにより表現している。 (1)老齢保障(老齢年金)㈹ 概 要
各老齢年金は,各年金共通の老齢基礎年金,および各年金独自の年金(老齢
厚生年金,退職共済年金,ただし自営業老およびサラリーマンの妻については支給されない)からなり,それぞれの基本構成要素は受給資格期間,支給開始年齢,支
給金額等である。 7) (老齢基礎年金)a.受給資格期間
原則として25年。(この期間には保険料納付済期間,保険料免除期間,合算対象 2)詳細は,『年金六法』[15]参照。 3)詳細は,『年金六法』[15],野本[18]参照。 4)詳細は,社会保険庁[22],国家公務員等年金制度研究会[14],『年金六法』[15]参 照。 5)新法においては,各種特例措置,経過措置等が定められ,その結果新法は旧法に比 証すればより複雑になり,また今後の年金対象者のほとんどが新法に依存すること になるので(新法の対象者は,大正15年4月2日以降に生まれた人),ここでは新 法に依拠してシステムを構築することにした。 6)本エキスパート・システムは,ツールとして「創玄」を使用しているので,知識の 表現形式はルールに限定されている。(『創玄マニ=アル』[1〕参照。)ルール数は, 416である。ルールの例は,野本[18]参照。 7)特例等については,野本[18],『年金六法』[15]参照。期間が含まれる。合算対象期間には,海外居住期間,20才以上60才未満で学生である ために国民年金に任意加入できた人が任意加入しなかった期間等が含まれる。)ただ し,特例がある。
b.支給開始年齢
原則として65才。ただし特例がある。c.支給額
626,500円、(昭和62年4月1日現在)。保険料納付済月数が480未満の人につ いては,別の算式によるが,特例がある。 (各年金独自の老齢年金)a.受給資格期間
各年金保険の被保険者期間があり,老齢基礎年金の受給資格期間25年を充
足していること。ただし,特例がある。b.支給開始年齢
原則として,65才。ただし,特別支給がある。c.支給額
各年金独自の算式による。 (B)運用例システムの運用例をシステムとユーザーとの会話例を用いて以下に順に説明
8) する。 図1.老齢年金の運用例 1.会話のための説明 [年金保険のためのエキスパート・システム] あなたの加入している社会保険(年金保険)の内容について,あなたの現在の諸 条件をインプットすることtcより,画面を使用して説明します。 (1)選択肢をもつ質問については,上下キーを移動させ適合する選択肢を選択し, 歯止キーを押して下さい。 例)性別は[選択肢] 1.男 2.女 8)複雑な運用例については,野本[18]参照。年金エキスパート・システム 135 (2)数値の質問については,数値キーを使用して数値をインプットし,復改キーを 押して下さい。 例J) 数29 [ ] 〔解 説〕 20才以上60才未満の期間で,且つ昭和36年4月以後の共済組合加入期間 単位:月 (上記の枠[コは画面を表わしている。) 2.老齢年金についての質問 あなたの知りたい年金は (1)老齢年金 (2)障害年金 (3)遺族年金 (4)年金の併給 ここでは,(1)が選択されている。 3.加入年金の組合せについての質問 あなたの加入年金の組合せは (1)国民年金 (2)厚生年金 (3)共済年金 (4)国民年金および厚生年金 ⑤ 国民年金および共済年金 ⑥ 厚生年金および共済年金 (7)国民年金,厚生年金,および共済年金 (8)加入していない 〔解 説〕 あなたが過去および現在加入してきた年金の組合せをインプットして下さい。 ただし,厚生年金は船員保険を含むものとします。 また,共済年金は次の共済組合の年金を含むものとします。
L国家公務員等共済組合
2.地方公務員等共済組合 3.私立学校教職員共済組合 4.農林漁業団体職員共済組合 こでは,(1)が選択されている。 4。生年月日についての質問 あなたの生年月日は 一 (1)大正15年4月1日以前吉井典章教授退官記念論文集(第253・254号)
(2)大正15年4月2日一昭和2年4月1日
(3)昭和2年4月2日 昭和3年4月1日
(4)昭和3年4月2日 昭和4年4月1日
(5)昭和4年4月2日 昭和5年4月1日
(6)昭和5年4月2日 昭和6年4月1日
(7)昭和6年4月2日 昭和7年4月1日
目8)昭和7年4−月』2日一一一1一一・昭和8年4月1日(9)昭和8年4月2日 昭和9年4月1日
UO)昭和9年4月2日一昭和10年4月1日
(mp昭和10年4月2日一昭和11年4月1日
{12}昭和11年4月2日 昭和12年4月1日 (13)昭和12年4月2日一昭和13年4月1日(14昭和13年4月2日一昭和14年4月1日
U5)昭和14年4月2日一昭和15年4月1日
〔16)昭和15年4月2日 昭和16年4月1日 a7}昭和16年4月2日 昭和17年4月1日 (18)昭和17年4月2日一昭和18年4月1日ag)昭和18年4月2日一昭和19年4月1日
⑳ 昭和19年4月2日 昭和20年4月1日⑳ 昭和20年4月2日一昭和21年4月1日
⑳ 昭和21年4月2日一昭和22年4月1日
⑳ 昭和22年4,月2日 昭和23年4月1日⑳ 昭和23年4月2日一昭和24年4月1日
?5)昭和24年4月2日一昭和25年4月1日
⑳ 昭和25年4月2日一昭和26年4月1日
⑳ 昭和26年4月2日一昭和27年4月1日
?8)昭和27年4月2日一昭和28年4月1日
⑳ 昭和28年4月2日一昭和29年4月1日
(30)昭和29年4月2日一昭和30年4月1日 (31)昭和30年4月2日一昭和31年4月1日 ここでは,(2)が選択されている。 5.国民年金保険料納付済期間についての質問 数 54=[300 ] 〔解 説〕 国民年金の保険料を納めた期間(任意加入で納めた期間を含まれる) 単位:月 ここでは,国民年金の保険料納付済期間,300ヵ月がインプットされている。年金エキスパート・システム 137 6.国民年金保険料免除期間にっC・ての質問 数42=[0 ] 〔解 説〕 国民年金の保険料を免除された期間(計算上/3) 単位三月 一 ここでは,免除期間はなく,0ヵ月がインプットされている。 7。合算対象期間についての質問 数43=[0 ] 〔解 説〕 20才以上60才未満で,サラリーマンの妻として国民年金に任意加入できたが任意 加入しなかった期間(合算対象期間) 単位:月 数44=[0 ] 〔解 説〕 20才以上60才未満であるために国民年金に任意加入でき’た人が任意加入しなかっ た期間(合算対象期間) 単位:月 数45=[0 ] 〔解 説〕 昭和36年4月以後の海外に住んでいた期間で,20才以上60才未満の期間(合算対 象期間) 単位:月 ここでは,これらの合算対象期間がないことを示しており,0力丹がインプットされ ている。 ただし,合算対象期間とは年金額の計算のための期間とはならないが年金受給のための 資格期間と.見なされる期間をいう。 8.国民年金の付加保険料についての質問 あなたは,国民年金の付加保険料を支払っていますか。 (1)は い (2)いいえ これは,国民年金の付加保険料を支払っているかどうかの質問であり,ここでは,(1) はい,が選択されている。 9.付加保険料納付月数についての質問
数47・・=[20 ] 〔解 説〕 付加保険料納付月数(国民年金の場合) 単位:月 質問7の回答が,(1)はい,であったのでそれに従属してその納付月数についての質問 がなされ,20ヵ月がインプットされている。 10.老齢基礎年金の繰り上げ支給についての質問 老齢基礎年金の繰り上げ支給を (1)希望する (2)希望しない ここでは,(1)希望する,が選択されている。 11.老齢基礎年金の繰り上げ支給の希望年令についての質問 老齢基礎年金の繰り王げ支給め請求をしたときの年令は (1)60歳 (2)61歳 (3)62歳 (4)63歳 (5)64歳 質問9の回答:が,(1)希望する,であったのでそれに従属してその希望年令についての 質問がなされ,②61歳,が選択されている。 12.老齢基礎年金の繰り下げ支給についての質問 老齢基礎年金の繰り下げ支給を (1)希望する (2);希望しない ここでは,(1)希望する,が選択されている。 13,老齢基礎年金の支給繰り下げの申出期間についての質問 老齢基礎年金の支給繰り下げの申出期間は (i) (2> (3) ︵4︶ ’(5) 1年を超え2年に達するまでの期間 2年を超え3年に達するまでの期間 3年を超え4年に達するまでの期間 4年を超え5年に達するまでの期間 5年を超える期間 質問11の回答が,(1)希望する,であったのでそれに従属してその希望する期間,(申 出期間)についての質問がなされ,(1)1年を超,Z 2年に達するまでの期間,が選択され
年金エキスパート・システム 139 ている。 14.判定結果 (1.・01) あなたの受給する年金は老齢基礎年金(繰上げ,繰下げを含む) (2.01)老齢基礎年金受給支格期間は満たしている 受給資格期間=300月 適用受給資格: (4.01) あなたの老齢基礎年金の受給資格期間の判定条件一(1)老齢基礎年金受給 資格期間 25年 (4.02) あなたの老齢基礎年金の受給資格期間の判定条件一(2)特例1 の特例 国共2 給付th == 63050e円 内訳:1.基本額 =626500円 2.付加年金額 = 4000円 3。高齢者および障害者の画定保障額= 0円 (9.01) 老齢基礎年金の繰上げは可能 [減額率の表示および支給開始年令] 支給開始年令窩61才から可能 [支給希望年令==61才一減額率=0.3500] (13.01)老齢基礎年金の繰下げは可能 [加算率の表示および支給開始年令] 支給開始年令:65才以上, 老齢基礎年金の支給繰り下げの申出期間は 1年を超え2年に達するまでの期間(ただし, カロ算率=0.1200 全年金 5年以上は加算率は同一) 〈説 明〉 (1.01)……受給可能な年金を示している。 (2.01)……老齢基礎年金の受給資格の判定を表わしている。そして,その判定に使 用された被保険者の受給資格期間が示されている。 (4. 01)(4.02)……受給資格期間の判定に適用された特例を示している。 (9.01)……繰り上げが可能であることを示している。 (13.01)…繰り下げが可能であることを示している。 (11)障害保障(障害年金)
㈲ 概 要
肝障害年金は,各年金共通の障害基礎年金および各年金独自の年金(障害厚
生年金,障害共済年金,ただし自営業者およびサラリーマンの妻には支給されない)からなり,それぞれの基本構成要素は,受給要件,障害状態,支給金額等である。 (障害基礎年金)
a.受給要件
障害の原因となった病気,けがの初診日の属する月(初診月)の前々月ま
でに,保険料納付済期間(保険料免除期間も合算)が全被保険者期間の2/3以 上あることが必要である。ただし,経過措置がある。b.障害状態
1級,2級の障害状態にあること。
c.支給金額
1級障害……783,100円(月額65,258円)(昭和62年4月1日現在) 2級障害……626,500円(月額52,208円)(昭和62年4月1日現在) (各年金独自の障害年金)a.受給要件
国民年金の障害基礎年金を受けられる保険料納付要件を充足していること.。b.障害状態
1級,2級,3級,障害手当金あるいは障害一時金に相当する障害状態。
c.各年金独自の算式による。 (B)運用例 システムとユーザーの会話例を用いて説明する。 図2.障害年金の運用例 1,会話のための説明 (老齢年金の場合と同一) 2,障害年金についての質問 あなたの知りたい年金は (1)老齢年金 (2)障害年金 (3)遺族年金 (4)年金の併給 ここでは,(2)が選択されている。 3.障害に起因する傷病の初診日に加入していた社会保険についての質問年金エキスパート・システム 141 初診日に加入していた社会保険は (1)国民年金 (2)厚生年金 (3)共済年金 ここでは,(2)が選択されている。 4.障害状態についての質問 障害状態についての要件は (1)障害認定日に1級または2級の障害状態にある (2) 1でない人が認定日以後65才までに同一傷病により1・2級に至ったとぎ (3)既障害者が基準傷病認定日以後65才までに既障害と併合で1・2級になった (4)20才未満が,障害認定日以後20才の時又は65才までVC 1・2級になった (5)満たしていない
解説〕
〔傷 病] 疾病にかかり,または負傷し,且つその疾病または負傷およびこれらに起因す る疾病 〔初診日] 傷病について,医師または歯科医師の診療を受けた日 [障害認定日] 当該初診日から起算して1年6ケ月を経過した日。ただし,その期間内にその 傷病が治った場合においては,その治った日。その症状が固定し治療の効果が期 待できない状態に至った日を含む。 ここでは,(1)が選択されている。 5,保険加入状態についての質問 保険加入状態についての要件は (1)被保険者,被保険老であった人で国内に住所があり60才以上65才未満の人 (2)満たしていない ここでは,(1)が選択されている。 6.保険料納付についての質問 保険料納付要件は (1)被保険者期間が有効であり,保険料納付済期間が充足されている(説明参照) (2)満たしていない [解 説〕 [選択肢(1)の説明] 「被保険老期間」初診日の前日に,初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があれば有効 「保険料納付済期間」 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が被保険者期間の2/3 以上あれば充足 L当分の間は,初診月前の直近の基準月(1月,4月,7月,10月)の前月ま でに,保険料納付済期間と保険料免除期間との合算した期間が,被保険者期間 の2/3以上あること(法30条1項)。 2.初診月が昭和71年4月1日前である病気・けがによる障害については,上記 の2/3以上の保険料納付要件に該当しない場合でも,初診月の前々月(当分の 間は,直近の基準月の前月)までの1年間が,保険料納付済期間と保険料免除 期間を合算した期間で満たされていれば障害基礎年金が支給される(改正法付 則20条)。 3.障害の原因となった傷病にかかった日またはその傷病の初診日が昭和61年4 月1日以前である人については,新国民年金法第30条一第30条の4までの規定 を適要する場合における必要な経過措置は,政令(29条一42条)で定める(法 付則23条1項)。 4.初診日が昭和36年4月1日以前である傷病が治らずに,昭和39年8月1日に 旧国民年金法に定める障害の状態になった人が,昭和61年4月1日以後70才に 達する日の前日までに障害等級の1級・2級に当てはまったときには障害基礎 年金が支給されるが,初診日に20才未満であった人および旧国民年金法の適要 除外の人は除かれる(法付則23条2項)。 5.停止条件(36条,36条の2−4) 法30条の4における初診日が,20才前の傷病による障害において障害基礎年 金の停止条件。 ここでは,(1)が選択されている。 7.障害の程度(等級)についての質問 障害の等級は (1)1級 (2)2級 (3)3級 (4)政令に基ずく障害状態(障害手当金または障害一時金) (5)満たしていない ここでは,(1)が選択されている。 8.判定結果 (1.01) あなたの受給する年金は障害厚生年金,障害基礎年金+障害厚生年金 [障害基礎年金1 (2.・01)障害基礎年金の受給要件は満たしている
年金エキスパート・システム 143 [障害基礎年金の受給要件は満たされている] (充足条件) (3.01) 障害状態についての要件は障害認定日に1級または2級の障害状態 にある (4.01)保険加入状態についての要件は被保険老,被保険老であった人で国 内に住所があり60才以上65才未満の人 (5.01) 保険料納付要件は被保険者期間が有効であり,保険料納付済期間が 充足されている(説明参照) (6.01) 障害の等級は1級 (年金額) 1級障害一783,100円(月額65,258円 62年度価格) (法33条,法附則(60)9条,措置令17条,額改定令1条) 子の加算一18歳未満の子忌は20歳未満で1級又は2級の障害の状態にある 子がいる場合は,2人目まで1人目つぎ187,900円(月額15,658 円),3人目以降1人につぎ62,700日目月額5,225円)を加算。 (法33条の2,法附則(60)9条,措置令17条,額改定令1条)。 (給付期間) 終身又は1級・2級の障害状態でなくなったときまで。 (法35条, 36条) [障害厚生年金] (7.01)障害厚生年金の受給要件は満たしている (充足条件) (8.01)障害認定日の条件については被保険田中初診日あり障害認定日は初 診日から1年6月後鼻はそれ以内の治癒日 (9.01) 保険料納付要件は被保険者期間が有効であり,保険料納付済期間が 充足されている(説明参照) (10.01) 障害の等級(障害厚生年金)は1級 (年金額) 1級の障害厚生年金 平均標準報酬金額*7.5/1000*被保険者期間の月数*1.006*1.25+配偶 者加給年金額 ただし,最低保障額469,900円(月額39,158円)(法50条,50条の2,法 附則(60)54条,措置令67条,額改定令3条)。(昭和60年12月以前の被 保険者期間がない場合は,1.006を乗じない。) (給付期間) 受給権者が亡くなったとき又は障害が軽快して障害等級に当てはまらなくな ってから3年以内に障害等級に定める程度の障害の状態にならなかったとき まで(法53条)。 [障害手当金]
(11.01) 障害手当金の受給要件は満たしていない (充足条件) (12.01)保険料納付要件は被保険者期間が有効であり,保険料納付済期間 が充足されている(説明参照) 〈説 明〉 (1.01)……受給可能な年金を説明している。 (2.01)……障害基礎年金の受給資格の判定を表している。 (3.01)・(4.01)・(5.01)・(6.01)……受給資格の判定に使用された各条件の充足あ るいは未充足を表している。 (7.・01)……障害厚生年金の受給資格の判定を表している。 (8.01)・(9.01)・(10.01)……受給資格の判定に使用された各条件の充足あるいは 未充足を表している。 (11.01)…障害手当金の受給資格の判定を表している。 (12.01)…受給資格の判定に使用された各条件の充足あるいは未充足を表している。 (m)遺族保障(遺族年金)
㈹ 概 要
二丁族年金は,各年金共通の遺族基礎年金および各年金独自の年金(遺:族厚生年金,遺族共済年金,ただし自営業者およびサラリーマンの妻には支給され
ない)からなり,それぞれの基本構成要素は,受給要件,遺族の範囲,支給金
額等である。 (遺族基礎年金) a.受糸合要件 9)一定の保験料納付要件を充足している被保険者あるいは被保険者であった
人で日本国内に住所がある60才一65才未満の人が亡くなった場合,または老
齢基礎年金の受給権者あるいは受給資格期問のある人が亡くなった場合。
b.遺族の範囲
死亡当時,亡くなった人に生計を維持されていた「子のある妻」または
「子」。c.支給金額
9)死亡日の属する月(死亡月)の前々月までに,保険料納付済期間(保険料免除期間 も合算)が全被保険者期間の2/3以上あることが必要である。年金エキスパート・システム 626,500円。 (昭和62年4月1日現在)
死亡一時金一保険料納付済期間による。
特別一時金一保険料納付済期間による。
(各年金独自の防守年金) .受給要件 145 a国民年金の遺族基礎年金を受けられる保険料納付済要件を充足している被
保険者,あるいは被保険者資格をなくした後,被保険者期間中に初診月のあ
る病気,けがにより初診日から5年以内に亡くなった場合。1級,2級の障
害年金の受給者が亡くなった場合。老齢年金の受給権者または資格期間を充
足している人が亡くなった場合。b.遺族の範囲
妻,夫,子。父母。孫。祖父母。(受けられる順序は,最初からの順。)c.支給金額
各年金独自の算式による。 (B)運用例 システムとユーザーの会話例を用いて説明する。 図3.遺族年金の運用例 1.会話のための説明 (老齢年金の場合と同一) 2.遺族年金についての質問 あなたの知りたい年金は (1)老齢年金 (2)障害年金 (3)遺族年金 (4)年金の併給 ここでは,(3)が選択されている。 3.加入年金についての質問 (老齢年金の場合と同一) ここでは,(3)共済年金,が選択されている。 4.遺族に該当する人についての質問i遺腰件(遺基)は
(i) (2) 吉井典章教授退官記念論文集(第253・254号) 死亡時にその人に生計を維持されていた(「子のある妻」又は「子」(37条2) 満たしていない ここでは,(1)が選択されている。 5.死亡した人についての質問 死亡要件は (1)被保険者が死亡したとき (2)過去に被保険者で日本国内に住所有り且つ60才以上65才未満の人が死亡し た時 (3)老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき ④ 老齢基礎年金の受給資格期間のある人が亡くなったとき (5)満たしていない ここでは,(1)が選択されている。 6.保険料納付についての質問 保険料納付要件(遣基)は (1)満たしている(下記の説明を参照して下さい) (2)満たしていない 〔解 説〕 (保険料納付要件) 死亡日の前日において死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり,か っ当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間 が当該被保険者期間の2/3以上を満たしていること(法37条,37条の2)。 (経過措置) 1.当分の間は,死亡山前の直近の基準月(1月,4月,7月,10月)の前月 (法37条)。 2.死亡日が昭和71年4月1日前であるときは,上記の2/3以上の保険料納付 要件に該当しない場合でも,死亡月の前々月(当分の間は,直近の基準月の 前月)までの1年間が,保険料納付済期間(保険料免除期間も合算)で満た されていれば遺族基礎年金が支給される。つまり,昭和61年4月1日以後10 年間は,その1年間に保険料未納がなければ受けられることになる(改正法 附則20条2項,21条)。 ここでは,(1)が選択されている。 7.遺族の範囲(遺族共済年金の受給に関して)についての質問 三族要件 (声誉) は (1)満たしている(下記の説明を参照して下さい) (2)満たしていない
年金エキスパート・システム 147 〔解 説〕 (喧騒要件の説明) 遺族共済年金を受けることができる遺族は,組合員又は組合員であった人の死亡 の当時その人の収入によって生計を維持していた次の人とされている(法2条1 項3号,2項,3項)。 1.配偶老と子(子については,18歳未満であるか,1,2級の障害の状態に ある人に限る) 2.父 母 3.孫(18歳未満であるか,1,2級の障害の状態にある人に限る) 4.祖父母 ただし,夫,父母又は祖父母については,60歳未満であるときは,60歳に達する か,1,2級の状態になるまでの間,遺族共済年金の支給が停止される(法91条 1項)。 60歳という支給開始年齢については経過措置がある(法附則12条の11)。 遺族が2人以上いる場合には,1から4の順序で支給される(法43条1項)。 同順打者が2入以上いる場合は,その人数で等分して支給される(法44条)。 こでは,(1)が選択されている。 8.判定結果 (1.01) あなたの受給する年金は遺族共済年金,遺族基礎年金+遣族共済年金 [遺族基礎年金] (2. 01)遺族基礎年金の受給要件は満たしている (充足条件) (3.01) 死亡要件は被保険者が死亡したとき (4.01)保険料納付要件(遺基)は下記の説明を参照して下さい (5.01)遺族要件(遺基)は死亡時にその人に生計を維持されていた「子の ある妻」又は「子」(37条2) (年金額) 626,500円 (子のある妻の場合の子の加算額)
第1子,第2子一各187,900円
第3子以降 一定62,700円
(子が受ける場合の子の加算額) 2人の時 一 187,900円 3人以上の時 一 62,700円 [遺族共済年金] (6.01)遣族共済年金の受給要件は満たしている (充足条件) 死亡要件(遺共)は(7.01)組合員が死亡したとき (8.01)遺族要件(遺共)は下記の説明を参照して下さい (年金額)
L遺族共済年金額
短期の遺族共済年金 平均標準報酬月額*7,5/1000*組合員期間の月数(300月未満のとぎは 300月とする)*3/4 (報酬比例部分) +平均標準報酬月額*1.5/1000*組合員期間の月数(300月未満のときは 300月とする)*3/4 (職域加算額) (法89条1項,改正法附則15条1項,2項) 2.公務災害等による場合の特例 (法89条2項,改正法附則15条2項) (法89条3項) (令11条の62項) (法93条の3,改正法附則15条2項) (給付期間) 遺族共済年金の受給権者が,次のいずれかに該当したとき,その権利を急なう (法93条の21項)。次順位者がいる場合は,その人に支給される。 1.死亡したとき 2.結婚したとき 3.直系血族及び直系姻族以外の養子になったとき 4.死亡した組合員であった人との親族関係が離縁によって終了したとき 5.その他(法93条の2第2項) (中高齢の子のいない妻の加算) (1)40歳以上65歳未満の妻の場合 18歳未満の子等がいないことにより遺族基礎年金を受けることができないと きは,遺族共済年金の額に467,100円(月額38,925円)が加算される(法90 条,93条1項)。この加算額を「中高齢寡婦加算」という(経過措置政令10 条1項)。(法33条2項)。 (2)65歳以上の妻の場合 中高齢寡婦加算:は打ち切られますが,妻の年齢によっては施行日の妻の年齢 に応じて一定の経過的加算が加算される(改正法附則28条1項,2項,4項 別表第4)。 (みなし従前額保障) 既に改正前の共済組合の退職年金や減額退職年金を受けている人が施行日以後に 死亡した場合や施行日の前日から引きっずき組合員であった人が在職中に死亡し た場合などに支給される遺族共済年金については,その額が,施行日の前日(昭 和61年3月31日)に改正前の遺族年金の給付事由が生じていたとしたならば同日 に受けることができた遺族年金よりも少ないときは,その遺族年金の額が遺族共年金エキスパート・システム 149 済年金の額とされる(改正法附則30条2項,3項,経過措置政令26条1項,2項, 3項,4項)。 〈説 明〉 (L OI)……受給可能な年金を表している。 (2.01)……遺族基礎年金の受給資格の判定を表している。 (3.01)・(4.01)・(5.01)……受給資格の判定に使用された各条件の充足あるいは未 充足を表している。 (6.Ol)……野里共済年金の受給資格の判定を表している。 (7.01)・(8.01)……受給資格の判定に使用された各条件の充足あるいは未充足を表 している。 (1>)併給調整 各年金間(国民年金,厚生年金,共済年金),あるいは各保障間(老齢年金,障害 年金,遺族年金)の併給調整。 図4.併給の調整の運用例 1.会話のための説明 (老齢年金の場合と同一) 2.併給についての質問 あなたの知りたい年金は (1)老齢年金 (2)障害年金 (3)遺族年金 (4)年金の併給 ここでは,(4)が選択されている。 3.併給についての説明(判定結果) (1.01)あなたの受給する年金は併給についての質問 [併給可能な組合わせ] 1.新年金の併給 (法74条1項) (1)老齢基礎年金と退職共済年金,老齢厚生年金 A.老齢基礎年金+退職共済年金(あるいは老齢厚生年金) B.老齢基礎年金+退職共済年金+老齢厚生年金 C.退職共済年金+老齢厚生年金(65歳前) (2)同一の給付事由に基ずく障害基礎年金と障害共済年金,障害厚生年金 A.障害基礎年金+障害共済年金(あるいは障害厚生年金)
③ 同一の給付事由に基ずく遺族基礎年金と遺族共済年金,遺族厚生年金 A.遣口基礎年金+遺族共済年金(あるいは遺族厚生年金) B.遺族基礎年金+遣族共済年金+遺族厚生年金 C.遺族共済年金+遺族厚生年金 (4)65歳以上の人に支給される老齢基礎年金と遺族共済年金,遺族厚生年金 A.老齢基礎年金+遣族共済年金(あるいは遺族厚生年金) 2.新年金と旧年金の併給 (国民年金等外正法附則11条2項,3項,4項) (1)65歳以上の人に支給される遺族共済年金,遺族厚生年金と旧国民年金の老齢 年金 A.旧国民年金の老齢年金+遺族共済年金(あるいは遺族厚生年金) (2)65歳以上の人に支給される遺族共済年金と退職共済年金の1/2
A.遺族共済年金+(退職年金OR減額退職年金OR通算退職年金)*1/2
(3)65歳以上の人に支給される老齢基礎年金と遣族年金,通算遺族年金 A.老齢基礎年金十(遺族年金OR通算遺族年金) 〈説 明〉 (1.01)……併給可能な年金についての質問を表している。III.結
語上記において,エキスパート・システムの発展経緯および需要動向が示され
たが,Harmon[5]によれば,将来アメリカにおいて大規模なエキスパート
・システムが数多く販売され,単純な問題から専門家を解放し,複雑な問題に
ついて専門家を支援するためのパソコン用あるいはワークステーション用ツー
ルが増加することが予測されており,また我が国においても栗林[17],千田
[21]に見受けられるように各種のエキスパート・システムが構築されてきつ
つある。ここで構築されたシステムについては,年金に関する職務を遂行する社会保
険労務士のための意思決定支援システムとして,また生涯計画を設計するため
10) の生命保険の組合せ用システムとして適用することが可能と考えられる。また,今後エキスパート・システムにとり重要とみなされる点の1つに,知
識獲得があげられるが,年金のように各種の法令に基ずいて構築されるような
10)詳細は,野本[19]参照。年金エキスパート・システム 151
システムにおいてはシステムによるシステムの不備を見いだしたり,すなわち
法令の不備をシステムが見いだしたり,新しい法令が知識として追加される場
合に既存の知識体系との矛盾点を発見しうるようなシステムが将来必要とされ
ると考えられる。 参 照 文 献 〔1〕エー・アイ・ソフト,『創玄マニュアル』,1986。 [2] Al−Ani, 1,. Cooley, R. E., and Awad, E. M., ”From Decision Support to Expert Systems”, ACM, 1987, pp. 10−19. (3) Ben−David, A., and Sterling, L., ”A Protoype Expert System for Credit Evaluation“, Artificial lntelligence in Economics and Management, L. F. Pau (ed.) Elsevier Science Pub. (North−Holland) 1986, pp. 121−128. 〔4〕Feigenbaum, E. A.,「人口知能と知識情報処理の未来」, r事務と経営』,1988年 5月,pp.73−78。 [5] Harmon, P., ”The Commercialization of AI in the United States”, AI 87 JAPAN Abstracts 1987, pp. 599−609. (6) Hayes−Roth, F., Waterman, D. A., and Lenat, D. B. (ed.), Building Expert Systems, Addison−Wesley,1983(邦訳:『エキスパート・システム』, AIUEO訳,産業図書,1985)。 〔7〕ICOT・JIPDEC AIセンター編,『A Iビジョン90年代の技術と需要』,通商産業 省機械情報産業局電子政策課監修,日本経済新聞社,1987,pp.94−103。 〔8〕池田純一,「相続税法エキスパートシステムと特許法エキスパートシステム」, 『AIジャーナル』, No.7,1986, pp.89−95。 (9] lwasieczko, B., Kwiecien, M., and Muszynska, J.,” Expert System in Financial Analysis”, Artificial lntelligence in Economics and Management, L. F. Pau (ed,) Elsevier Science Pub. (North−Holland) 1986, pp. 113−120. 〔10〕加賀山茂,「知識科学と法律」,大阪大学知識科学研究会,第1回年次大会資料集, 1986, pp. 35−45. 〔11〕加賀山茂,「法律解釈エキスパート・システム」,r大阪大学大型計算機センター ニュース』,VoL 16, No.3,1986, pp.23−27。 (12) Kagayama, S., ”Legal Expert System of Torts Law”, AI 87 JAPAN Abstracts, 1987, pp. 157−159. 〔13〕小林玉夫,『生命保険の知識』,日本経済新聞社,1983,pp.78−88。 〔14〕国家公務員等年金制度研究会編『国家公務員等の薪共済年金制度のしくみ』,財 経詳報社,1986。 〔15〕厚生省年金局年金課編集,r年金六法』,中央法規出版,1986。 〔16〕国崎裕,『生命保険』,東京大学出版会,1984,pp.78−88。 〔17〕栗林訓,「AIと金融革命」,『AIジャーナル』, No.5,1986, pp.99−107。〔18〕野本明成,「年金エキスパート・システムの試作」大阪大学知識科学研究会,第 4会報告資料,1987,pp.43−65。 〔19〕野本明成,「生命保険最適組合せエキスパート・システム」,『大阪大学大型計算 機センターニュース』,Vo1.17, No.2,1987, pp.47−61。 〔20〕龍宝惟男編『図説 日本の生命保険』,財経詳報社,1986,pp.一54−55。 〔21〕千田淳,「エキスパート・システムの実用化に入った大手金融機関」,『日経コン ビュー:タ』,1986,10.27,pp.63−78。 〔22〕社会保険庁監修,r’86社会保険手帖』,厚生出版,1986,第2版。 〔23〕上野晴樹,「エキスパート・システム」,科学技術庁編,r知識ベース・システム』, 第7章,1985,pp.140−167。 〔24〕吉野一,「法律エキスパートシステム」,『AIジャーナル』, No.6,1986, pp. 86−960 〔25〕 吉野一,ハフト,F,サーゴット, F.,田中穂積,池田光生,「法体系と知識表 現」,『AIジャーナル』, No.8,1987, pp.89−104。