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(1)

環境問題解決の条件としての心の成長

著者

岡野 守也

雑誌名

「エコ・フィロソフィ」研究 別冊

4

ページ

105-108

発行年

2010-03

URL

http://doi.org/10.34428/00005208

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

持続可能な発展と自然・人間一西洋と東洋の対話から新しいエコ・フィロソフィを求めて一

研究発表

環境問題解決の条件としての心の成長

サングラハ教育・心理研究所主幹

岡野守也

 環境問題は、人類が直面しているグローバル=全地球的な問題の代表的なものの一っです=問題がグロ ーバルである以上、解決策もグローバルでなければなりません。具体的にはユコロジカルに持続可能な全 地球的な政治経済システムの構築が必須だと思われます,では、そうした政治経済システムを構想し構築 しうる心のあり方とはどういうものか、アメリカの思想家ケン・ウィルバーの4象限理論を参照しながら 考えてみたいと思います。ウィルバーは、人類は一より大きなスケールで言うと宇宙そのものも  4 象限にわたって進化し続けており、進化は後戻りすることはないと捉えています, 藁よ、

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とが見えてきます.  まず第1・右上象限では「環境に調和した個別の技術や個人の行動」が必要です,  次に、第2・左E象限の、環境と調和した生き方が論理的にも倫理的にもそして何より心情的にもいち ばんいい生き方だと思うような個人の心です/:これが今日のテーマでず,  それから第3・左下象限の、環境との調和は絶対に不可欠であるという価値観が共有されている文化で、 これはもちろんグr一バルである必要がありますr  そして言うまでもなく、第4・右下象限の、環境と調和した社会システム、特に経済システムが決定的 に必須であり、これも地球規模でなければなりません.  この4つの象限の条件のどれが欠けても、「エコロジカルに持続可能な社会」は実現しないでしょう、ウ ィルバーは、この4つが満たされていくのは、まず個人の心がそうなり、個人の行動もそうなり、それが 社会に共有されて文化・価値観となれば、その結果新しい社会システムが構築されるという順序になると 想定しています:t  個人の内面の進化と外面の対応  ウィルバーは、発達のある段階までについて発達心理学者ピアジェを援用しています 感覚運動期 心の成長は、まず自分と世界の差異化(di旋rentlatlon、区別)ができていない乳幼児の段階 から、体を動かすことで自分の体と外界は違うことをわかっていくと「感覚運動期」との段階を経ていき ます.平均的に○歳から二歳までです 前操作期 さらに二歳から七歳までに、言語を獲得しながら自分自身の体と気持ちが一つのまとまりを持 った「私」だという感じが次第に形成されてきますが、まだ自分の心と外界との差異化・区別が十分でき ていません、例えば、夕方歩いていると「お月さまがついてくる」と思うような心の段階です,  この段階は集団の内面と対応させると「呪術段階」に当たり、その外面は「狩猟採集社会」です。 具体的操作期 徐々に自分と他者や外界の差異化ができ、社会的な役割を担える段階になっていきます. 七歳から一一一歳くらいまでです.例えば高い山と低い山があるところで、この年齢の子どもに「どうして 高い山と低い山があると思う」と聞くと、「高いお山は大人が登るためにあるの、低い山は子どもが登るた めにあるの」と言います。世界には自分の主観と直接対応した構造があると信じているわけです。  これは、集団の内面の「神話段階」に対応し、外面は「農耕社会」に対応しています. 形式的操作期 「形式的操作」とは物事をはっきりと差異化して捉えた上でどうコントローノレできるかと いう形を心の中でシミュレーションできる、というふうな意味です。この段階は一二歳以上成人まで続き ます.  例えば五種類の色の入ったグラスの中の二つを混ぜると黄色ができることを見せ、自分でやってみるよ う言いうと、具体的操作段階の子どもは、具体的にアトランダムにやって、たまたまうまくいくか、うま くできないといやになってやめてしまいます.ところがこの段階に達した子どもは、心の中で「グラスは 五つあるから、これとこれ、これとこれ...という組み合わせができる。では、一つ一つ試してみよう」と いうふうに考えることができます。この発達段階を「形式的操作」あるいは「形式合理性」といいます。  集団の内面としては近代の「合理主義」に、外面は「工業社会」に対応しています.

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持続可能な発展と自然・人間一西洋と東洋の対話から新しいエコ・フィロソフィを求めて一  理性とエコロジー的認識  ここで重要なのは、しばしばF近代的理性によって科学一技術一産業が発達しその結果環境が破壊され た」という言い方がありますが、実は近代的理性が発達したことによって初めてエコロジーという学問がで き(E・ヘソケル、1866年)、エコシステムの客観的な認識も可能になったことです、  エコシステムがどうなっているか、そしてなぜ破壊されるのかを認識できる合理的な段階に達し、さら にその段階を超えて次の進化の段階に達して初めてエコロジカルに持続可能な社会を構想し構築できるの であって、神話と農耕の段階や呪術と狩猟採集の段階に後戻りしても問題は解決しないし後戻りはできな いのだ、とウィルバーは言います、  狩猟採集では環境破壊をする能力がなかったからしなかったのであり、農業では小規模の間は環境破壊 をできなかったのですが、「文明の後に砂漠が残る」といわれているとおり大規模な農業文(4大文明)明 は環境を破壊して自滅しています。  環境を壊さない・壊せないところだけを見るといいようですが、近代的な自由、合理的な認識、利便性、 豊かさなどは時代を遡れば遡るほどありませんf,  現代は社会集団の心の水準が理性段階に達することで国民国家を形成するという段階にあり、理性以前 に戻すことはできないし、戻ることで問題が解決するとは思えません, ヴィジョンロジックと全地球的な社会  合理性が、単なる個人にとってとか、特定集団にとってとか、国にとっての個別合理性ではなくて、人 類全体さらには生態系全体にとっての合理性を展望できる、より高次な合理性に達した段階を「ヴィジョ ンロジソク段階」とウィルバーは呼んでいます,  現代の国際社会のリーダーは何かにつけて「国益」と言います,これはいわば「自国合理主義」です しかし、自分の国にとっての利益・合理性だけでなく、もう一段上から展望しながら、そのことと、他の 国にとって、世界そして環境にとって合理的な二とは何か、自国にも他の国にも世界にも環境にも都合よ くするにはどういうやり方がありうるのかを展望しうる意識のレベルに集団がならないと、人類の未来は 開けないけれども、そういう可能性はある、と言っています,  現代の先進国では個人の内面の平均的水準は、自分や自分たちに都合がいいことを考えるという個別合 理性にあり1すが、ノK間にはそれを超えて人類全体、生態系にと・って都合のいいことを考えることができ るような、より高次の合理性・理性に発達する可能性があり、まず目覚めた個人がそこに到達し、それが 集団的にフィードバックされて、そういう価値観を持った集団が出来、それが国全体をリードするところ までくろ必要があり、そうなればその先の全地球的な社会の可能性も出てきます,  人間の発達可能性と環境問題の根本的解決  まとめると、個人の心にはヴィジョンロジックまで成長・発達する可能性がある、とttある程度の合理 レベルに達した人たちは、ヴィジョンロジックの話を聞いたら、「それはそうだ」とすぐに思えます.個々 人がそうなり、その中からさらにヴィジョンロジソクを駆使しながら政治や経済や環境の問題についてリ

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に任せればうまくやってくれそうだ」といった雰囲気を作れれば、議会制民主主義の国では国民的支持を 得れば誰でも政権の座に就いていいという制度はすでにあるわけですから、それを社会制度化することが できます.  社会制度化できれば、続いて社会の構成員全部をそのレベルに引き上げるための教育システムが公教育 として行なえるようになります。今の日本の公教育は、個人レベルの競争合理主義への適応が到達目標に なっているようですが、そうではなく、高校を出る頃には、協力合理主義というかヴィジョンロジックま で発達していることを目標にしたカリキュラムを、文科省が考える、教師はみんな大体その程度のレベル になっている、というふうになれば、国民全体の平均がそこまで上がります。そうすると、さらにヴィジ ョンロジック段階に達した次世代のリーダーもどんどん育ってくる、という好循環が起こります。  実例として、スウェーデンはすでにかなり近いところに到達していると思われます。スウェーデンのリ ーダーたちの発言や行動を観察していると、ヴィジョンロジック的な考えで国内外の政策をやっているこ とは確かなようです。  そういうふうに世界各国でも、ヴィジョンロジック段階に達したリーダーたちが育ち、主要国がそこに 達して、まだ個別合理段階や神話段階にいる国をも誘導一説得しながら発達させていくというシナリオが 描ければ、やがてグローバルに持続可能な政治・経済システムができる可能性もまちがいなく出てくるの ではないか、と考えています。

(詳しくは大本山永平寺の『傘松』誌に連載中の拙稿「環境問題と心の成長」およびプログ

〔http://blog.goo.nejp/smgrh l 992〕への転載記事を参照)

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