84 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(9) イ ノウ ユ キ コ稲生由紀子(昭和
医学博士 乙第935号 昭和63年4,月22日 学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者) 卵巣癌患者の末梢血,卵巣静脈血中凝固線溶因子の解析 (主査)教授 武田 佳彦 (副査)教授 浜野 恭一,教授 石井 哲夫論文 内 容 の 要 旨
目的 卵巣癌は比較的早期より慢性DICを発生しやすく 血行性転移の比率も高い,本研究では卵巣癌の凝固線 溶系異常の機序を解明し臨床病態との関連を追求し た. 方法 1)対象:1985年1月より1987年2月末までに治療 した初回治療時の卵巣腫瘍患者52例及び正常非妊婦人 8例を対象とした.2)材料と方法:凝固線溶系の液相 系は末梢血々二二fibrinogen(Fbg.),α、 antitrypsin (α、AT), antithrombin III(ATIII), plasminogen (plg.)をsingle radial immunodiffusion法,α2 plas- min inhibitor(α2PI)は吸光度法, tissue plasminogen activator(tPA)はELISA法で測定した. Fibrinope- ptide A(FPA), Fibrinopeptide Bβ15_42(FPBβ15-42)はヘパリン・トラジロール入り採血管で採血しRIA法
で測定した.固相系の機能を表現する血管内皮機能は,
肘静脈を10分間駆血前後で採血(VOテスト)し,血奨
中tPAを測定して評価した. tPA, FPA, FPBβ15.42
は手術時腫瘍側卵巣静脈からも採血し同様に測定し た. 結果及び考察 1)治療前卵巣腫瘍患者の末梢血凝固線溶因子の中 で一般的な指標とされるFbg.,α2 PI,α、AT, plg,, ATIIIは悪性群,良性群,正常対照群各群間に有意差 を認めなかった.しかし特異性が高く高感度な凝固の 指標FPAは,末梢血中では対照群に比し良性群,悪性 群ともに有意に高値Φ〈0.01)であり,同様な線溶の 指標であるFPBβ、5-42は悪性群で良性群,対照群に比 し有意に高値であった(p〈0,01).2)凝固線溶能の平 衡動態を示すFPA/FPBβ5.42は,悪性群では進行期 が進む程二値であった.卵巣癌患者末梢血中では凝固 線溶共に二進し平衡状態を保とうとしているが,進行 例では凝固に比べ線溶がより充進ずることが示され た.3)血管内皮細胞の線溶機能予備能を表現するVO テスト後のtPA(VOtPA)は,末梢血中では三群山に 有意差を認めなかったが,テスト前後のtPA上昇率 (VOtPA/tPA)は悪性群が有意に高値であった(p<
0.05).卵巣癌治療後寛解例では治療前に比し
VOtPA/tPAは有意に低下した(p<0.05).即ち卵巣 癌患者では末梢血管内皮細胞のtPA産生機能の三二 が示されこの機序は腫瘍切除により消失することが示 唆された.4)悪性群卵巣静脈血中ではFPAのみが有 意に高値で(p<0.01)凝固充進状態であることが示さ れた.また卵巣静脈血中tPAは悪性群が有意に低値 (p<0.05)で進行例程低値であった.このことから卵 巣腫瘍組織より凝固促進物質が多量に放出されたため に卵巣静脈血管内皮からのtPA産生機能は抑制され 局所的なDIC準備状態が形成されることが示唆され た. 結語 1)従前の測定系では凝固線溶因子が変化を示さな い卵巣癌初回治療例を対象としFPA, FPBβ15.42及び 血管内皮機能を示すtPA, VOtPAを測定した. 2)卵巣癌組織から放出される大量の凝固促進物質 により卵巣静脈血は相対的凝固充進状態でありこのた 一974一85 め卵巣静脈血管内皮細胞機能は抑制される.一方末槍 血中では希釈された凝固因子による持続的な」血管内皮 細胞刺激によりtPA産生能が充進し凝固と平衡して 線溶も充進し生体の恒常性を保ち顕症のDIC発症を 防御していると考えられた.
論 文 審 査 の 要 旨
本研究は,卵巣癌患者の初回治療時,末梢静脈血,卵巣静脈血について,凝固線溶機能を極めて鋭敏な測定 系を用いて計測し,局所的なDIC準備状態にあり,更に,進行期癌では局所的な凝固充進に加えて全身的な相 対的線溶充進が生じることを明らかにした.学術上価値ある論文である. 主論文公表誌 卵巣癌患者の末梢血,卵巣静脈血中凝固線溶因子の解 析 日本癌治療学会誌 第22巻 第10号 2417頁~2426頁(昭和62年12月20日発行) 副論文公表誌 1)卵巣腫瘍関連抗原(CEA, CA19-9,および CA 125)の病理組織型別血清プロフィール 産婦人科の実際 36(10)1499~1505(1987) 2)卵巣悪性腫瘍に対するsecond look operationの意義と問題点 日産婦関東連会報 45号 5~9(1987) 3)Mitomycin C腹腔内投与の副作用と抗腫瘍効