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鶏胚肝臓核のポリ(ADP-リボース)化反応に及ぼすNa^+およびK^+の効果

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原 著 〔東女医大誌 第58巻 第12号頁1177∼1184昭和63年12月〕

鶏胚肝臓核のポリ(ADP一リボース)化反応に

及ぼすNa+およびK+の効果

島根医科大学 第一生化学教室(主任:下山 誠教授) イマ イ ヤス キ

今 井 恭 己

(受付 昭和63年7月28日)

Effect of Na+and K+on Poly(ADP・ribose)Synthesis in Chick・embryo・liver Nuclei

Yasuld IMAI

Department of Biochemistry(Director:Prof. Makoto SHIMOYAMA), Shimane Medical University Poly(ADP−ribose)synthetase catalyzes the polymerization of ADP−ribose moiety of NAD to form a homopolymer that is covalently linked to nuclear proteins. Although polyamines, histones and Mg2+ increase the enzyme activity the effect on the activity of monovalent cations such as K+and Na+, which are known to induce the conformational change of chromatin, remains to be determined. In the present work, the effect of Na+and K+on the poly(ADP−ribosyl)ation reactions in 14day chick・embryo−1iver nuclei was studied and following results were obtained.

When the nuclei were incubated with labeled NAD in the presence of 200 mM NaCl or 150 mM

KCI, about 5−fold increase in poly(ADP−ribose)formation was observed. Chromatographic analyses of the polymer showed that an increase in the polymer formation by the salts was the result of an increase in chain number of the preformed polymer which should be elongated. Furthermore, kinetic analyses of poly(ADP−ribose)formation showed a decrease in Km values for NAD with the addition of NaCl or KCI. Poly(ADP・ribosyl)ation reactions in polyamines,Mg2+or DNase−treated nuclei, in which the polymer formation is induced, was not further stimulated by the salts.

Because the intracellular concentrations of K+are much higher than that of Na+, I presume that K+ may stimulate the poly(ADP−ribose)synthesis through the salt−induced conformational changes of chromatin and that the polymer thus formed may contribute to maintain the chromatin structure.

緒 言 ポリ(ADP一リボース)化反応は細胞核クロマチ ン結合ポリ(ADP一リボース)合成酵素に依って触

媒される反応であって,細胞核をNADとイン

キュベートすると,酸不溶性画分にNADの

ADP一リボース部分が取り込まれる勿麗〃。の実 験によって見出された1)2).すなわち〔アデニレー トー32P〕NADと核をインキュベートすると酸不溶 性三分に32Pの取り込みが認められ,これを分析 した結果,ADP一リボースのホモポリマーが生成 していることが明らかとなった.ついで,この反 応を触媒するポリ(ADP一リボース)合成酵素が精 製され,その性質の詳細な研究がなされた結果, 本酵素は分子量約12万のシングルペプチドからな り,その活性発現にはニッタの入った二重鎖 DNAを必要とすること,酵素自身のほかピスト ンなどの核タンパク質がポリ(ADP一リボース)の 受容体になることが明らかとなった1)刈.本酵素 および,その生成物ポリ(ADP・リボース)が核に 存在することは蛍光抗体法を用いて明らかにさ れ,ポリ(ADP一リボース)は分岐鎖構造をとって いることも示された5>∼7).このポリ(ADP一リボー

(2)

2 ス)合成酵素は真核細胞核に広く分布しており, その活性は二叉および多価陽イオン(Mg++やポ リアミンなど)やヒストソなどの塩基性たんぱく 質の添加によって上昇することが知られている が8)∼10),一価の陽イオンの効果についての報告は ない. 1979年WhitlooklDはク・マチンの高次構造の 変化に及ぼすイオン強度の効果についての研究を

行ない,コァヒストンとDNAとの相互作用は

NaClやKCIによって著しく変化することを報告 した.ポリ(ADP一リボース)合成酵素はクロマチ ソ結合酵素であり,その活性発現にDNAを必要 とし,ピストンがその活性に変化をもたらすこ と1)2)から,著者はKCIやNaClが本酵素の活性に 影響を及ぼすのではないかと考えた.そこで鶏胚 肝臓核を用いてポリ(ADP一リボース)合成酵素活 性に及ぼすNaClやKCIの効果を検討した.その 結果,生理的等張濃度のNaClやKClで著しい活 性の増加を認めた. 材料と方法 1.材料 ロードアイランドレッド種の14日目鶏胚は原養 鶏場より入手した.〔アデニレートー32P〕NADは

New England Nuclarから,全ピストンとNAD はSigma Chemical Companyから,他の試薬は

宮田薬品K.Kより購入した. 2.肝臓核の調整

谷河らの方法10)に従って核を調整した.すなわ

ち肝臓を鶏胚から分離し,5gの肝臓を0.25M庶 糖溶液,5mMトリス緩衝液(pH 7,5),3mM

CaC12,1mM EDTAおよび0.5mM EGTAを含

むホモジナイズ用緩衝液で洗い,テフロンホモジ ナイザーを用いて肝臓の4倍量の同溶液と共にホ モジナイズした.以下の操作は全て4℃で行なっ た.ホモジネートは3,000×g15分遠心沈殿を行な い,沈渣を5倍容量のホモジナイズ用緩衝液を含 む2.2M庶糖溶液と共に再びホモジナイズして, 70,000×g1時間超遠心分離を行なった.沈殿核 は3回ホモジナイズ用緩衝液で洗い,ついで50 mMトリス緩衝液(pH 7.5),1mM EDTAおよ び0.5mM EGTAを含む30%グリセロール溶液で 洗って同溶液に懸濁,使用前までは一20℃に保存 した. 3.酵素活性測定法 ポリ(ADP一リボース)合成酵素活性測定のため の反応液は0.2ml中に肝臓核(26∼30μgDNAを 含む),50mMトリス緩衝液(pH 7.5),100μM〔ア デニレートー32P〕NAD(0.1μCi/反応液),1mMジ チオスレイトールおよびそれぞれに示した濃度の NaCl, KCI,ポリアミンまたはMgC12を加えて調 整した.反応液は15分間25℃でインキュベートし た後,氷冷した25%三塩化酢酸2,5mlを加えて反 応を停止させ,酸不溶画分をグラスフィルターに 集め,25%三塩化酢酸15mlで,次いで充分量の 95%エタノールで洗浄したサンプルにシンチレー ション液を加えて,その放射能を液体シンチレー ションカウンターで測定した. 4.鎖長によるポリ(ADP一リボース)鎖の分離 と鎖長の測定 年豆肝臓核を用いて生成した〔32P〕ポリ(ADP一 リボース)鎖をFarzanehとPearsonの方法三2)に

従い受容タンパク質からNaOH,膵臓DNase I

およびプロテアーゼK処理によって分離した.こ のようにして得た放射性サンプルを1mMリソ酸 カリウム緩衝液(pH 6.8)で平衡化したハイド蹴 爪キシルアパタイトカラム(0.9×2cm)クロマト グラフィーにかけ,12mlの同緩衝液で洗浄後,各

10mlの!∼500mMリン酸カリウム緩衝液(pH

6.8)の直線濃度勾配法によって分離溶出した.そ して各虚妄に溶出したポリ(ADP一リボース)鎖の 長さの算出は,先に谷河らが報告したデータ10)を そのまま適用した. 5.放射性ポリ(ADP・リボース)鎖の数の算出 ハイドロオキシルアパタイトカラムクロマトグ ラフィーによって得た鎖長の異なる放射性ポリ (ADP一リボース)分子を含む各画分の一部を

YamadaおよびSugimuraの方法13>に従ってホ

スポジエステラーゼ処理を行ない,その消化物を ペーパークロマトグラフィーにより分析した.即 ち,放射性ポリ(ADP一リボース)を含む酸不溶性 画分(ADP一リボースをユニットとして50∼400 pmol含有)に2μmolトリス緩衝液(pH 7.4),1

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μmol MgC12,0.01μmol 5!一AMPと4.5unitの蛇 毒ホスポジエステラーゼを加え,37℃で60分イン キュベート後,キャリアーとして5〆一AMPとイソ ADP一リボースを加え,その混合液をToyo filter paper no.51Aに塗布して,イソ酪酸一水酸化ア ンモニュウムー水(63:1:33,v/v)で展開した. ペーパーを風乾して後,5’一AMPとイソADP・リ ボース部分を切り取り,その放射能を液体シンチ レーションカウンターで測定した.そして放射性 ポリ(ADP一リボース)鎖の平均の長さは, Tanaka らの方法14), 平均鐵一〔イソAD

ル無1+〔5棚P〕

の式により算出した.

6.DNAの測定

肝臓核のDNA量はBurton15)の方法によって 測定した. 結 果 1.鶏胚肝臓核における〔アデニレートー32P〕

NADからの酸不溶性画分への32Pの取り込みに

及ぼす一価陽イオンの効果 14日鶏肉肝臓核を〔アデニレートー32P〕NADと 共にインキュベートすると,図1に示すごとく酸 不溶性画分への32Pの取り込みはNaC1あるいは KCIの添加によって著明に上昇することを見出 した.これらの効果はNaClでは200mM, KCIで は150mMで最高値を示した.著者は鶏胚肝臓核 を用いた実験10)でMg++やポリアミンによるポリ (ADP一リボース)合成酵素活性の上昇は,これら の2価あるいは多価陽イオンに起因するものであ ろうと考えたが,K+やNa+の1価陽イオンもま た,同様な効果を示すことが明らかとなった.ま た,K+やNa+以外に, NH4+もポリ(ADP一リボー ス)合成を促進した(図1). 2.NaC1, KC1とMgC12およびスペルミンの単 独あるいはそれらの組合わせによるポリ(ADP・ リボース)合成の変化 著者は先にスペルミソやMgC12が鶏胚肝臓核 のポリ(ADP一リボース)化反応を著明に上昇させ ることを報告10)したが,その作用機構とNaC1や KCIによる上昇のそれとが異なるか否かを知る § ) 興 600 500 400 300 200 100 △ 0 250 500 塩濃度(mM) 図1 鶏胚肝臓核のポリ(ADP一リボース)合成酵素活 性に及ぼすNaCl, KC1および(NH、)、SO、の効果 100μM〔アデニレート・32P〕NAD(0.1μCi)と肝臓 核(26μgDNAを含む)を0.2ml反応液に加え, 25℃,15分インキュベートし,実験方法に示した方 法で酸不溶性二分への放射能の取り込みを測定し た.塩無添加の場合の活性は0.14nmol/15分/反応液 で,塩添加の場合の値は無添加の場合を100として %で示した.●一●二NaCI,○ ○:KC1および △一△:(NH4)2SO4. 表1 鶏胚肝臓核のポリ(ADP一リボース)合成酵素 活性に及ぼすNaCl, KCI,スペルミン, MgC12およ びそれらの同時添加の効果 添 加 物 質 生成ポリ(ADP一リボース) nmol/15min/反応液 無添加 0.13 200mM NaCl 0.62 150mM KCl 0.67 200mM NaCl十150mM KCl 0.57 1mMスペルミン 1.18 十200rnM NaCI 0.88 十150mM KCl 1.00 10mM MgCl、 1.13 十200mM NaCl 0.74 十150mM KCI 0.84 測定条件は図1の説明に記した通り行なった.スペルミン は使用前pH7.5に合わせた. 目的で,鶏胚肝臓核に一価陽イオンのほかに二価 あるいは多価陽イオンを同時添加して,ポリ (ADP一リボース)合成を検討した.添加物質はい ずれも単独添加でポリ(ADP一リボース)合成が最 高値を示す濃度に調整した.表1から明らかなよ

(4)

4 うに,ポリ(ADP一リボース)の合成は200mM

NaClまたは150mM KCIにより約5倍増加する

が,この両者の同時添加はそれぞれの単独添加に 比較して,やや低値を示した.次に以前の報告10)と

同様,1mMスペルミンまたは10mM MgC12に

よって活性はそれぞれ約9倍に増加したが,これ

らにNaClあるいはKCIを同時に添加するとい

ずれの場合も,それぞれ単独で得られた値より診 査を示した.従って,スペルミンあるいはMg2+と Na+あるいはK+の作用機構は少なくとも一部は 同じであろうと考えた. 3.放射性ポリ(ADP一リボース)鎖の数と周長 に及ぼすNa+とK+の効果 鶏胚肝臓核で生成するポリ(ADP一リボース)鎖 の数と鎖長に及ぼす1価陽イオンの効果を知る目 的で,鶏胚肝臓核を〔32P〕NADと150mM KCIあ るいは200mM NaClと共にインキュベートし,酸 不溶性画分を実験方法に示した方法で混在するタ ンパク質と核酸を除去し,生じたポリ(ADP一リ ボース)の1部を蛇毒ホスポジエステラーゼで処 理し,この消化物をペーパークロマトグラフィー により分析した.その結果は,表2に示すごとく ホスポジエステラーゼ処理によって生じた5ノー

AMP量は200mM NaClにより約8倍,150mM

KCIにより約9倍に増加した,これは, KCIや NaClによってポリ(ADP一リボース)鎖の数が著 明に増加したことを示すものである.また,ホス ポジエステラーゼ処理によって生じたイソADP一

リボース量はNaClおよびKCIいずれによって

も約3倍に増加した(表2).このイソADP一リ ボースの増加は,塩の添加によって放射性ポリ (ADP一リボース)鎖の数が増加したものか,ポリ (ADP一リボース)鎖が有意に延長したことによる ものか,あるいはその両者によるものと考えられ る.しかしながら放射性ポリ(ADP一リボース)の 平均鎖長は表2に示すごとく塩の有無にかかわら

ず2∼3であった.そこで,どの鎖長のポリ

(ADP一リボース)が主に延長されているかを知る 目的で,次の実験を行なった.先ず,生成した放 射性ポリ(ADP一リボース)をハイドロオキシアパ タイトカラムにかけ,1∼500mMリソ酸緩衝液の 表2 鶏胚肝臓核による生成ポリ(ADP一リボース) 鎖の長さと数に及ぼすNaClとKC1の効果 添加物質 イソ(ADP一リボース)

AMP

平均上長 無添加 Q00mM NaC1 P50mM KCl nmol n.07 O.23 O.23 nmo1 O.03 O.25 O.27 units R.33 P.92 P.85 表1の実験方法に従って鶏胚肝臓核と[32P]NADを含む 反応液を25℃,15分間インキュベートして,鶏胚肝臓核タ γバク質のポリ(ADP一リボース)化反応を行ない,酸不溶 性画分を実験方法に示した手順に従って処理し,放射性ポ リ(ADP一リボース)鎖を分離,ホスポジエステラーゼ消化 物をペーパークロマトグラフィーにより分析して,鎖の数 と平均鎖長をTanakaらの方法14)により算出した. 直線濃度勾配法によって,ポリ(ADP一リボース) を溶出した.この方法は,ポリ(ADP一リボース)

を鎖の短いものから順次溶出するものであっ

て12),図2に示すごとく塩無添加で生成したポリ (ADP一リボース)は,その塾長がADP一リボース12 ユニット位のものが最も多いが,200mM NaCl添 加では27ユニットのポリマーが,そして150mM KC1では無添加の場合よりやや長いものと副長 27ユニット位のものが主に生成することが明らか となった.そこで図2の実験で得た各フラクショ ンのポリ(ADP一リボース)を鎖長に従って8つに 区分し,それぞれの伽〃伽。で伸長させた放射性 ポリ(ADP一リボース)鎖と勿〃勿。で既に生成し ていた非放射性ポリ(ADP一リボース)鎖のADP一 リボースユニットの数,すなわち各々のポリマー の鎖長を実験方法に示した式により算出して両老 の関係を検討すると,図3に示すように,塩無添 加では既存のポリマー,つまり用いた鶏胚肝臓核 に既に存在していた非放射性ポリ(ADP一リボー ス)全てに,その面長とは関係なく1∼2ユニッ トのADP一リボースが結合し,この傾向はNaCl やKCIの添加によっては変化しなかった.この事 実は表2の実験結果とよく一致している.従って,

鶏胚肝臓核をNaClやKCI存在下に〔32P〕NAD

で処理すると,〔32P〕ADP一リボースによって伸長 される既存のポリ(ADP一リボース)鎖の数が増加 するのであって,特定の鎖長を持ったポリマーが 塩によって有意に伸長するものではないことが明

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1.0 O.5 ぞ 9 1.0 = 巡 ヰロロ 蕊O,5 1.0 O,5 A B C 20 40 60 0.5 0、5 0,5 ε 餐 瞥 駆 窪一2 6 12 16 22 2731 3640 ADP一リボース鎖長(ADP一リボースユニット) 図2 ハイドロオキシアパタイトカラムクロマトグラ フィーによるポリ(ADP一リボース)鎖長の測定 表2の実験で用いたポリ(ADP一リボース)化鶏胚肝 臓核をNaOH, DNaseおよびプロテアーゼKで処 理し,生じたポリ(ADP・リボース)鎖を実験方法に 記した条件でハイドロオキシアパタイトにかけ,リ ソ酸緩衝液の濃度勾配によってポリ(ADPリボー ス)を溶出した.溶出は0.5ml/分の速度で行ない, 試験管当たり0.5mlを集め,その放射能を測定した. カラムにかけたサンプルの放射能は対照2,829cpm (A),200mM N aCI添加11,206cpm(B),150mM KCI添加10,799cpm(C)であった. らかとなった.恐らくは,勿θ勿。では,NaC1や KCIが核のポリ(ADP一リボース)化反応を非常に 起こし易くしているものであろう. 4.ミクロコッカスヌクレアーゼで処理した核 におけるポリ(ADP・リボース)生成に及ぼす1価 陽イオンの効果 ポリ(ADP一リボース)合成酵素活性の発現には ニッタの入った二重鎖DNAを必要とする.従っ } ま 暑 乙

杢 乏 暑 乙 ポリ(ADP一リボース)鎖長(ADP一リボースユニット) 10 20 30 40 無添加 200mM NaC1 150mM KCI 図3 勿加ooおよび碗碗”で生成したポリ(ADP・ リボース)鎖の比率 図2の実験で得た種々なる鎖長を持つポリ(ADP一 リボース)に含まれる放射能から切碗γoで生成し たADP一リボースユニットを算出した.図2で得た 試験管番号5∼10,21∼25,26∼30,31∼35,36∼40, 41∼45,46∼50および51∼58は,この表では1,2, 3,4,5,6,7,および8として表わした.□;勿 伽。で生成した非放射性ポリ(ADP一リボース), %;勿θ伽。で生成した放射性ポリ(ADP一リボー ス)。 てエンドヌクレアーゼ処理核を用いるとポリ (ADP一リボース)合成が上昇することが知られて いる1)2).そこで,今回見出したKCIやNaClの効 果がヌクレアーゼ処理核にどのような影響を及ぼ すかを見る目的で,ヌクレアーゼ処理核にNaC1 やKCIを添加してポリ(ADP一リボース)の合成を 測定した.表3に示すように,ヌクレアーゼ処理 により活性は約8倍に上昇したが,ヌクレアーゼ

処理核にNaClやKCIを添加すると酵素活性は

更に上昇することはなく,かえって低値を示した. このような結果からヌクレアーゼでDNAにニッ タを入れた場合も一価,二価および多価イオン添 加の場合も,結果としては同じ機構で鶏胚肝臓核 のポリ(ADP一リボース)合成を促進しているもの と思われる. 5.ポリ(ADP・リボース)分解活性に及ぼす

KC1およびNaC1の効果

先に述べたKCIおよびNaClの酵素活性促進

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6 表3 ミクロコッカスヌクレアーゼ処理鶏胚肝臓核 のポリ(ADP一リボース)合成に及ぼすNaClと KCIの効果 生成ポリ(ADP一リボース) 添加物質 ヌクレアーゼ未処理核ヌクレアーゼ処理核 無添加 Q00mM NaC1 P50mM KCl nmol/15min n.15 O.72 O.77 1.17 O.64 O.60 鶏胚肝臓核(2mg DNAを含む)とミクロコッカスヌクレ アーゼ(20μg)を実験方法に記した条件で37℃,10分間イン キュベートし,その一部(30μgDNAを含む)とヌクレーア ゼ未処理核(同量のDNAを含む)を200mM NaC1または 150mM KClを添加あるいは無添加でポリ(ADP一リボー ス)化反応を行ない,生成したポリ(ADP一リボース)量を測 定した. 表4 NADに対するKm値に及ぼす塩の効果 添加物質 NADに対するKm値 無添加 Q00mM NaC1 P50mM KCl μM Q50 S3 S0 反応条件は[32P]NAD濃度以外は表1と同じで ある.NADは5μMから1mMの種々の濃度に調 整した.Km値はLineweaver・Burkのプロット から求めた. 効果が,これらの塩によるポリ(ADP一リボース) 分解活性の低下によるものでないことを確かめる ために,鶏胚肝臓核を〔32P〕NADと共にインキュ ベートし,核を洗浄して未反応の〔32P〕NADを 除いた後,150mM KC1あるいは200mM NaC1と 共に再びインキュベートして酸不溶性画分の放射 能を測定し,ポリ(ADP一リボース)の分解活性に 及ぼすKCIおよびNaC1の効果を検討した.その 結果,図4に示すごとくKCIやNaClいずれもポ リ(ADP一リボース)の分解速度には影響しなかっ た.

6.NADに対するKm値に及ぼす塩の効果

NaClやKCIの効果がNADと核のポリ(ADP一

リボース)合成酵素との親和性に関係しているか 否かを知る目的で塩添加と無添加におけるNAD に対するKm値をLineweaver−Burkのプロット から求めた.その結果,表4に示すようにNADに 100 § 盗 奪5。 齪 、、 、 、 、 、 、Qこ、\ 、 、 =△・一一一一一一一一△ 0 30 60分 反応時間(37。C) 図4 鶏胚肝臓核のポリ(ADP・リボース)分解酵素活 性に及ぼすNaC1およびKC1の効果 鶏胚肝臓核(3.9mgのDNAを含む)と100μM 〔32P〕NAD(0.1μCi)を含む反応液(1.Oml)を25℃, 15分間インキュベートし,核を1mMジチオスレイ トールと20mMニコチン酸アミドを含む501nMト リス緩衝液(pH 8.0)で5回洗浄し,未反応のNAD を除いた後,ポリ(ADP一リボース)化核の一部(70 μgのDNAを含む)を更に10mM MgC12を含む0.1 mlの50mMトリス緩衝液(pH 7.5)に懸濁して, 25℃で図に示した時間インキュベートし,酸不溶性 画分の放射能を測定した。なお,分解反応時間0分 の酸不溶性画分の放射能は5,890cpmであり,これ を100としてインキュベート後のサンプルの放射能 の値を%で示した.○…○;無添加,●一●;200 mM NaCl,△一一一△;150mM KCl. 対するKm値は塩によって約1/6に低下した. 考 察 著者は鶏胚肝臓核を用いてポリ(ADP一リボー ス)合成酵素活性に及ぼすKCIやNaClの効果を 検討した.その結果,これらの塩は核のポリ (ADP一リボース)合成を著しく促進することを明 らかにした.ポリ(ADP一リボース)合成酵素はク ロマチン結合酵素の1つで,哺乳動物細胞核に広 く分布していることが知られている1)2).本酵素は

DNA結合タンパク質であって,二重鎖DNAが

損傷を受けると直ちに活性化され,生じたポリ (ADP一リボース)がりガーゼを活性化して,損傷 DNAの修復に関与することが報告された16).こ れらの実験は,細胞にUVを照射したり,アルキ ル化剤処理によって,DNAに損傷を与えた場合

(7)

に認められる現象であるが17),生理的条件下でポ リ(ADP一リボース)合成酵素活性が発現する条件

については知られていない.最近Yamanaka

ら18)は培養細胞を用いた研究でS期に本酵素レ ベルがほぼ2倍に増加することを示した.ここに 述べたように,生理的等張濃度の塩によりポリ (ADP一リボース)合成酵素活性が上昇することを 明らかにしたが,細胞内ではK+濃度がNa+のそ れよりも非常に高いことから考えると,Na+より もK+がポリ(ADP一リボース)合成酵素の活性発 現に重要な役割を果たし,その結果クロマチンの 構造と機能の維持に役立っているものと考えられ る.そして汽罐γoで得たNa+の効果は一価カチ オンに基づくものであって,細胞内では有意義な 効果を示すものとは考え難い. 1979年Whitlock1DはHeLa cellを用いた実験 でNaCl濃度の変化は,クロマチンの高次構造を 変化させ,これによって核タンパク質とDNAと の結合が流動的に変化することを報告した.恐ら く,このようなクロマチンの高次構造の変化がク ロマチソの機能に密接な関係を与えているものと 思われる.また,ポリ(ADP一リボース)化反応は

酵素自身のほかヒストソH1とH2aおよびH2b

を修飾することが報告された1)2).従って,Whit− lockの報告’D,すなわち生理的等張濃度の塩の存 在下にピストンH2aおよびH2bが添加されたリ ガンドに特異的に結合することから考え合わせる と,ピストンH2aおよびH2bが生理的条件下で ポリ(ADP一リボース)化を受け易くなっているも のと思われる.ポリ(ADP一リボース)化反応は, クロマチンの構造維持やDNAの修復のほかに, 細胞増殖,ガン化や分化の過程にも関係している ことが示唆されたD2).著者ら10)は先にポリアミン が鶏胚肝臓核のポリ(ADP一リボース)合成酵素活

性を著しく上昇させることを,またKawamura

ら9)は,ポリ(ADP一リボース)合成上昇のための ポリアミンの至適濃度は添加DNAの濃度に依存 することを報告した.従って,DNAの陰イオンに ポリアミンが結合することにより,NADの酵素 への接近を高め,これがポリ(ADP一リボース)合 成を上昇せしめたものと考えたが,ここに示した 一価イオンの効果は,恐らくはDNAと核タンパ ク質との結合を緩め,その結果ヒストソなど塩基 性タンパク質の陽イオン,あるいはDNAの陰イ オンの酵素あるいはNADへの影響が低下して, ポリ(ADP一リボース)合成酵素活性が促進された ものと思われる.この点,アルキル化剤による活 性の上昇とは一部異なったメカニズムで酵素活性 に影響するものと考えた. また,ポリ(ADP一リボース)の内在性受容タン パク質には多くの酵素が含まれている.先に述べ た数種ピストンの外,ポリ(ADP一リボース)合成 酵素はDNAリガーゼ, DNAトポイソメラーゼ 1およびII, DNAポリメラーゼαおよびβや Ca2+/Mg2+依存性DNAエソドヌクレアーゼなど を修飾し,それらの酵素活性に変化をもたらすこ とが報告された1)2).また,本論文作成中に

Weiserska−GadekとSauermannら19)はポリ

(ADP一リボース)分子そのものが非酵素的に生理 的塩濃度でピストンと結合することを報告した. これらを考え合わせると肝臓核では生理的等張塩 濃度でポリ(ADP一リボース)合成酵素とNADと の親和性を高め,ポリ(ADP一リボース)鎖長とは 関係なく,全てのポリ(ADP一リボース)鎖にADP一 リボースユニットの延長が起こり,あるいはこの ポリマーの核タンパク質への結合を容易にして, cellular processに重要な意義をもたらすものと 考えた. 結 論 肝臓核のDNAと核タンパク質との相互作用が 塩によって影響されることが知られているので肝 臓核ポリ(ADP一リボース)合成酵素活性に及ぼす

塩の効果を知る目的でNaClまたはKCIと鶏胚

肝臓核を〔アデニレートー32P〕NADと共にイン キュベートし,酸不溶性画配のポリ(ADP・リボー ス)を分析した.その結果,NaClおよびKCIは

それぞれ200mMおよび150mMの濃度で約5倍

に核タンパク質のADP一リボース化を促進した. これらの塩の効果は核タンパク質に結合している 既存のポリ(ADP一リボース)鎖のうちで,鎖長の 延長を被るポリ(ADP一リボース)鎖の数を増加さ せるものであって,ポリ(ADP一リボース)鎖の分

(8)

8 解に関与しているものではないことが分かった.

さらにNADに対するKm値は塩の添加により

1/6に低下した,この事実と,細胞内のNa+とK+ の濃度の相違から考えると,生体内ではK+がク ロマチンの形態に影響して,DNAと核タンパク 質,更にはポリ(ADP一リボース)合成酵素との相 互作用に変化をもたらし,ポリ(ADP一リボース) 合成を促進して,これがクロマチソの構造の維持 に役立っているものと考えた. 稿を終えるにあたり,本研究の御指導を頂いた島根 医科大学生化学教室下山出先生および谷河精規先生 と本論文を御校閲頂いた東京女子医科大学生化学教 室降矢榮教授に厚く御礼申し上げます. 文 献

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