ミツバ チ科 学
(
2
0
0
3
)2
4(
1
):41
-4
3
ニホンミツバチの自然群の生態
一分蜂蜂球
の温度測定-菅原
道夫 ・東
克
は じめ に セイヨウミツバチ同様 ニホ ンミツバチも分蜂 時には,多数の蜂が巣を離れ,空を飛ぶ.直接 新 しい営巣場所 に向か うのではな く,飛び出 し た巣の近 くに一度集合 し,偵察蜂の情報を得て 新 しい営巣場所 に向か う. この集合 した蜂の群 れを分蜂蜂球 と呼ぶ.セイヨウ ミツパテの分蜂 蜂球 は,細長 い枝が密集 し垂れ下 るような場所 に 「あごひげ」状に形成 される.-イ ンリッヒ は, この分蜂蜂球の温度調節を詳 しく研究 し報 告 した(
He
i
nr
i
c
h,1
98
1).その報告 によると, 蜂球 の中心部分 は常 に36
℃ に保 たれ,群れが 新 しい営巣場所に向か う (takeoff)直前 に群 れを構成す るすべての蜂 の体温が36
o
C
に収欽 するという.二ホンミツパテの分蜂蜂球 は,市 街地では表面がざらざらした木の太 い枝,石灯 寵,家の梁等 に形成 され る. これ らの蜂球の中 心部分 は,セイ ヨウ ミツバチ同様36
℃ に保 た れていた (菅原,20
00
)
.形成 される場所が多 様であるためこれ ら自然 に形成 された峰球の温 度調節を詳 しく研究することは困難である. ニホンミツパテ分蜂群 の捕獲を目的 としたい ろんな形の分蜂群誘導器が,伝統的な養蜂技術 として,考案 されている (吉田,2000
)
.
それ ら を参考に して分蜂蜂球の温度を測定するために 好都合な分蜂群誘導板を作 った.そ して,そこ に集合 し,蜂が形成 した分蜂蜂球の温度 を赤外 練熟画像装置 (サーモグラフィ) と多チャンネ ル温度記録計を使 い測定 したのでその結果を報 告する. 方 法 図1 分煙群誘導板に形成された蜂球 (a一形成直後 b一昼間 C一夜間) 枚方市内で捕獲 し,守 口市内でハチ ミツの採 取を目的としないで飼育 している群れか ら分蜂 した分蜂群の蜂球の温度測定を した. 厚 さ5mm,45×45c
m
のベニヤ板 にステ ン レス製の金網 (網戸用)を短 い釘で張 り,表面 に蜜娘を溶か して流 し,分蜂群誘導板 とした.1
m
程の柄 を取 り付 け巣箱の近 くの木の枝に網 面を下 に設置 した. サーモグラフィ (赤外練熟画像装置) は, 日 本 ア ビオニ ックス株式会社製,TV-
61
0
(測定 温度範図-20-300
℃,測定波長8-1
4
i
L
m
,自 動室温補正の機能を持っ)を使用 した.蜂球の.12 ilm5:'25 i i1m 托:Orl 図 2 蜂の飛散 までの蜂球の裏面温度変化 (2001年5月 5日早朝か ら飛散 までの記録) 温度測定 には,長 さ
4m
の熱電対(
Tc
-
T 0
.
65
DEEP30.000)を 4本用意 した.3本の先端を 間隔が2cm になるよ うに平行 に束ね蜂球 に挿 入 した.残 りの 1本は,外気温測定用 として蜂 球の近 くに置いた.熱電対の他端 は, 日置電気 株式会社製 メモ リ-イロガー8420
につなぎ温 度情報を記録 ・保存 した.内部温度の連続測定 と平行 してデジタル ビデオカメラで画像を連続 撮影 した. 結 果 1.分蜂群誘導板上での分蜂蜂球 分蜂群誘導板に集合 した直後の蜂球 は扇平な 形状である (図 1a). 1時間 もするとその形 は 半球状になる (図1b).春にみ られる分蜂群の 多 くは,次の日飛 び立っ.夜は外気温が低いた め,蜂球は日中より一回 りコンパ ク トになり球 形 に近 くなる (図1C).蜂球の中心温度を 36℃ に保つため熟の放散を防 ぐ方策がとられている.13 5 0 5 3 3 2 ( u o ) 髄 娼 ,A A ・.. .A..ち ム △AA Ti+△A旦撃 Jム Aム 叫.-A△A△AAH_biTSA △色 A LA腰飴 △A色誌'hA'if-笹 .・.∠5鰻A,-AAbムA等 ム△d▲ △ ▲ tlもムー AAA 機 二.._._:;"t_.ヽ.:.teI..誌 .tiLtkl.:..._ ●..!.i.、●●8三●嘉 .●■三fL遍 謝 ` 800 820 840 860 880 集合 か ら飛散 までの時 間 (分 ) 図3 蜂球の中心温度の測定記録 (飛散 85分前から飛散直後までの記録) △-中心温度 〇一外気温 と考え られる. 2.集結から飛散までの蜂球の裏面温度 集結 した直後,多 くの蜂の体温 は 40℃近 く にあるが,す ぐに下 が る.外気温が 10℃の夜 間,蜂球表面 は温度が 18℃ まで下が る.次の 日,気温が上が り偵察蜂が蜂球か ら出入 りする よ うになると,蜂球の表面温度が 25℃ まであ が り.飛 び立っ直前には 40℃を超える (図 2). 3.集結から飛散までの蜂球の中心温度 集結 した直後 は,蜂球の形状が一定 しないた め,蜂球の中心温度の連続測定が困難である. 表面温度の測定か ら考え集結直後 には,中心温 度 は 40℃近 くにあ り, しば らくす ると温度が 36℃になると考え られる.夜間,蜂球の中心の 温度 は 36℃ に維持 され,周辺部 になるにつれ だんだん低 くなる.午前中,気温が上昇する時 も,蜂球の中心温度 は変わ らない.群れが飛散 する1時間はど前か ら温度が上が りだ し,飛散 直後には蜂球全体の温度が 41℃になる (図 3).
考
察
セイ ヨウ ミツパ テの分 蜂蜂 球 の中心 部 は 36℃に保たれる (Heinrich,1981). 同様にニ ホ ンミツバチの分蜂蜂球 の中心部 も 36oCに保 たれている (菅原,2000).ところが,分蜂群が 飛散するときの温度 は両種で大 きく異なる.セ イ ヨウ ミツバ チで は 36℃ で あ る (Heinrich, 1981) のに対 して, ニホ ンミツバチでは 41℃ と 5℃ も高い. この差が何 に由来するかは明 ら かでないが,飛行 に対す る生理的機構 に温度差 が あ る の で は な い か と思 わ れ る.Seeley (1985)は,
「働 き蜂が飛和するには蜂の胸の温 度が約 27℃以上 に維持 されなければな らない」 と 「ミツバチの生態学」の中で述べている.彼 の研究 はセイヨウ ミツバチでなされている. ニ ホンミツパテではこの温度がより高 いのか もし れない.今後追求 してみたいものである. 謝 辞 本研究の一部 は藤原ナチュラル ヒス トリー振 興財団学術研究助成 による. (菅原 :〒573-1187 枚方 市磯 島元 町20-1大 阪府 立磯 島高校,秦 :〒569-8585 高槻市大学 町2-7 大阪医科大学生物学教室) 引用文献 Heinrich,B.1981.SclenCe212:565-566. Seeley,T D.1985HoneybeeEcology PrlnCetOnUniv.Press.
菅原道夫 2000. ミツパ テ科学21(1):35-39.
吉田忠晴.2000.ニホ ン ミツバ チの飼育法 と生態.玉 川大学 出版部 .