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中国・深圳 (シェンヂェン) 市 -- 「デザインド・イン・シェンヂェン」 (フォトエッセイ)

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Academic year: 2021

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(1)

中国・深? (シェンヂェン) 市 -- 「デザインド・

イン・シェンヂェン」 (フォトエッセイ)

著者

木村 公一朗

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

253

ページ

32-35

発行年

2016-10

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002856

(2)

  「 メ イ ド・ イ ン・ チ ャ イ ナ 」 の 製 品 が 身 の 回 りに溢れるようになって久しい。一九七〇年代 末の改革開放以降、中国の製造業は、廉価で豊 富な労働力を活かした加工・組立によって急速 に発展してきた。   しかし、二〇〇〇年代半ばからの賃金高騰に よって、それまでの成長方式が限界を迎えるよ う に な っ た。 そ こ で、 中 国 政 府 は「 創 新 」( イ ノベーション)をスローガンに掲げ、企業によ る研究開発(R&D)や、高付加価値製品の開 発・設計を促すような政策を打ち出してきた。   その成果もあって、GDPに対するR&D投 資の比率は上昇しているが、R&Dを積極的に 行う企業は一部に限られている。つまり、製造 業全体が「デザインド・イン・チャイナ」の製 品を数多く生み出すような体質になったわけで はない。ハイリスクなR&Dよりも、製品コン セプトがほぼ固まったものを製造・販売する方 が合理的なことも多いからだ。   既存企業が新しい成長方式を模索する一方で、 中国における起業熱は依然高く、多くのスター トアップが生まれている。中国政府も経済構造 の改革の一環として、起業を通じたイノベーシ ョンを実現するため、 「大衆創業、 万衆創新」 (大 衆 の 創 業、 万 人 の イ ノ ベ ー シ ョ ン ) 政 策 を 二〇一五年に打ち出した。   いま、多くのハードウェア系スタートアップ が生まれている街として、世界の注目を集めて いるのが、珠江デルタに位置する深 シェンヂェン 圳(日本語 読みでシンセン)市だ。香港に隣接する深圳は かつて小さな農村だったが、一九七九年に輸出

  

■フォトエッセイ■ 華為が中国で取得した特許の数々 通信機器大手・華為の坂田キャンパス(本社所在地)。坂田キャンパスは写真のビルを中心に、 南北約 2 キロメートル、東西約 1 キロメートルの広さだ

中国・深

シェンヂェン

圳市

―「デザインド・イン・シェンヂェン」―

Koichiro Kimura

写真・文 木村公一朗

  

(3)

特区、一九八〇年に経済特区のひとつに指定さ れ て か ら、 改 革 開 放 と と も に 急 成 長 し て き た。 とくに電機・電子産業の発展が著しく、通信機 器大手の華為や中興通訊(ZTE)は一九八〇 年代に深圳で創業した企業だ。近年は賃金高騰 や宅地・商業用地開発によって工場の移転が相 次 ぎ、 経 済 の サ ー ビ ス 化 が 進 ん で い る も の の、 珠江デルタの産業集積を活かした製品開発・設 計を進めていこうという動きも大きくなってい る。   二〇〇六年創業の商用ドローン大手・大疆創 新(DJI)は、すでに世界的に有名になった 企 業 の ひ と つ だ。 杭 州 出 身 の 汪 滔( フ ラ ン ク・ ワン)氏は、香港科技大学在学中に友人とドロ ーンの関連技術を開発した後、深圳に拠点を構 え、事業を急拡大させてきた。DJIは飛行技 術の継続的な開発に加え、カメラや撮影時のブ レを防ぐジンバルをはじめとした撮影機能の開 発も重視することで、製品の魅力を高めてきた。   近年は、このような「デザインド・イン・シ ェンヂェン」の動きを後押しするスタートアッ プ・エコシステムも充実している。その源流の ひとつは、二〇〇八年に潘昊(エリック ・ パン) 氏が、ハードウェア系スタートアップ/メイカ ー を サ ポ ー ト す る た め の Seeed を 設 立 し た こ と に 始 ま る( 参 考 文 献 ① ) ⑴ 。 Seeed の 事 業 は 製品の設計から製造、販売にいたるモノ作り全 体に及んでいる。また、モノ作りの楽しさを広 めるために柴火創客空間というメイカースペー スを運営したり、メイカーの交流を促進するた めに柴火創客空間が中心となってメイカー・フ 2 象の孤児院

DJI 本社内の展示コーナー。DJI を代表する Phantom シリーズが並ぶ。 右端は 2016 年 3 月発売の最新機 Phantom 4

華為が中国で取得した特許の数々

深圳のドローン大手は DJI だけではない。写真は一電航空(AEE)の主力機 F100。 無線技術を強みとする AEE(1999 年創業)は政府(警察、軍)向けドローンで事業 を拡大させてきた。さらなる成長のため、商用ドローンにも力を入れている

(4)

ェ ア・ シ ェ ン ヂ ェ ン を 開 催 す る な ど、 取 組 は 多 岐 に わ たる。   潘 氏 も 設 立 に 関 わ っ た の が、 二 〇 一 一 年 設 立 の ハ ー ド ウ ェ ア 系 ア ク セ ラ レ ー タ H A X だ。 H A X は 半 年 ご と に 一 五 チ ー ム を 選 ん で、 各 社 に 株 式 取 得 の か た ち で 資 金 を 提 供 す る と と も に、 事 業 を 軌 道 に 乗 せ る た め の 各 種 ア ド バ イ ス を 一 一 一 日 間 に わ た っ て 行 う。 卒 業 チ ー ム の 出 自 と 割 合 は、 北 米 が 約 六 〇 %、 欧 州 が 約 二 〇 %、 ア ジ ア が 約 二 〇 % で あ り、 世 界 中 の 起 業 家 が 深 圳 の サ プ ラ イ チ ェ ー ン を 活 用 し な が ら、 新 製 品 を 開 発 し てきた。   二 〇 一 四 年 ご ろ か ら は、 ハ ー ド ウ ェ ア 系 ス タ ー ト ア ッ プ / メ イ カ ー を 支 援 す る た め の 組 織 や 施 設 が 急 増 し て い る。 二 〇 一 四 年 に は 深 圳 市 の 政 府 関 係 機 関 な ど が 深 圳 国 際 創 客 中 心 や そ の な か に 中 科 創 客 学 院 を、 二 〇 一 五 年 に は 深 圳 大 手 が 電 気 街( 華 強 北 ) の 一 角 に 華 強 北 国 際 創 客 中 心 や 賽 格 創 業 匯( SegMaker ) を 設 立 した。また、世界中の起業家と中国製造業を結 び つ け る こ と を 目 的 と し た 硬 蛋( IngDan ) が 二〇一四年に誕生しており、深圳が世界の製品 開発・設計を製造面から支える動きも広がって いる(参考文献②) 。   充実するエコシステムのなかで急成長してき た企業のひとつが、 創客工場 ( Maker Works ) だ。 創業者の王建軍氏は、前述の柴火創客空間やH A X で ロ ボ ッ ト 作 成 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム Makeblock を 育 て て き た。 ユ ー ザ ー は 各 種 パ ーツやプログラミング・システムを利用するこ と で、 ロ ボ ッ ト や 3 D プ リ ン タ ー な ど の 組 立・ コ ン ト ロ ー ル が 可 能 と な る。 世 界 各 地 に Makeblock の フ ァ ン が お り、 な か で も 欧 米 市 場は売上の約七〇%を占める。   Banana Pi な ど の オ ー プ ン ソ ー ス の 小 型 コ ン ピ ュ ー タ( S B C ) を 開 発 し て い る 楽 美 客 ( LeMaker   二 〇 一 四 年 創 業 ) も 急 成 長 中 の 企 業 だ。 先 発 製 品 で あ る イ ギ リ ス の Raspberry Pi とスペックなどは異なるが、互換性も備えてい る よ う だ。 同 社 も 深 圳 で 生 ま れ 育 っ た 企 業 で、 中科創客学院を活用したり、華為からの出資を 得ることで成長の基盤を築いてきた。   深圳は約四〇年前、輸出特区・経済特区に指 定 さ れ る こ と で、 「 メ イ ド・ イ ン・ チ ャ イ ナ 」 を牽引してきた。中国経済の成長方式が転換期 にあるいま、深圳は世界中のハードウェア系ス タ ー ト ア ッ プ / メ イ カ ー と も つ な が り な が ら、 「 デ ザ イ ン ド・ イ ン・ チ ャ イ ナ 」 を 牽 引 し よ う としている。中国のなかで、また、世界のなか で、深圳がどのような役割を発揮していくのか、 引き続き注目していく必要がありそうだ。 華強北という電気街ではおもちゃのドローンも含め、さまざまなドローンが売られている Seeed の本社受付。多くの工場が立地していたエリアで、Seeed も 含めた新しい深圳経済の担い手が数多く生まれている Seeed のサポートは部品から販促まで幅広い。写真は メイカー・フェア・シンガポール 2016(シンガポール 工科デザイン大学、2016 年 6 月 25 日・26 日)に出展 していた同社のブース。多くのハードウェア系スター トアップが世界のエコシステムとつながっている 工場跡地を再開発して作られた文化・クリエイ ティブ産業の拠点、華僑城創意文化園。Seeed の柴火創客空間もここに入居している 電気街(華強北)のオフィスビルに入居する HAX。各チームが電気街をめぐりながら製品開発・設計にいそしむ

(5)

[ 付 記 ] 本 稿 は 以 下 の レ ポ ー ト を 加 筆・ 修 正 し たも のである。 ・ 木村公一朗「中国 :『創新(イノベーション) 』 政 策 が 広 が り、 『 創 新 』 は 広 が る か?」 海 外 研 究員レポート、二〇一六年。 ・ 木 村 公 一 朗「 中 国: 深 圳 の ス タ ー ト ア ッ プ と そ の エ コ シ ス テ ム 」 海 外 研 究 員 レ ポ ー ト、 二〇一六年。   《注》 (1)メ イ カ ー( maker ) と は、 3 D プ リ ン タ ー や オープンソース・ハードウェアなどの新しい ツールやサービスを活用することで、多くの 経営リソースを持つ製造企業(メーカー)に しかできなかったモノ作りを一人や少人数で 行う人たちのことである。 《参考文献》 ① 高 須 正 和 + ニ コ ニ コ 技 術 部 深 圳 観 察 会 編『 メ イ カ ー ズ の エ コ シ ス テ ム   新 し い モ ノ づ く り が と ま ら な い 』 イ ン プ レ ス R&D、二〇一六年。 ② “Special Report: Hi-T ech Shenzhen, ”S ou th C hi na M orn ing P ost , May 12, 2016. 11 トラックで運ばれる象 12 見張り小屋 きむら こういちろう/アジア経済研究所 技術革新・成長研究グループ 最近は中国企業の R&D や海外進出について調査研究。

主著は The Growth of Chinese Electronics Firms: Globalization

and Organizations, New York: Palgrave Macmillan, 2014 など。

電気街には写真のような商業施設がいくつも並ぶ 創客工場(Maker Works)の Makeblock。世界のハードウェア系スタートアップ/

メイカーのあいだで有名であるのみならず、STEM(科学、技術、工学、数学) 教育市場でも大きな注目を集めている Makeblock で様々なロボットを作ることができる 電気街にできた華強北国際創客中心。起業をサポートする施設・組織が急増している 楽美客(LeMaker)の製品。右側は Banana Pi などの SBC。 製品ラインナップは拡大しており、左上の黄色い X 型の製品は、自転車のスポークに装着し、 走行中の車輪部分に動画を表示することのできる Balight

参照

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