IRUCAA@TDC : 口腔がん患者に対する歯科衛生士の関わり : 専門的口腔ケアによるがん緩和療法への取り組み
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(2) 口腔がん患者に対する歯科衛生士の関わり ―専門的口腔ケアによる がん緩和療法への取り組み― おくい. さおり. ○奥井 沙織1) 雨宮 朋美 2) 大屋 朋子 2) 多比良 祐子 2) 清住 沙代 2) 高柳 奈見 2) 前田 愛 2) 馬場 里奈 2) 藤平 弘子 2) 岡崎 雄一郎 1) 山内 智博 1) 山根 源之 1,2, 3) 1)東京歯科大学口腔がんセンター,2)東京歯科大学市川総合病院 歯科・口腔外科, 3)東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 【要 約】 口腔がん患者は、治療全期にわたり口腔に関する機能的、器質的な障害を抱え、これらは永続的に続くこととなる。 当センターでは、口腔がんの診断から治療、そして経過観察の時期を含めて、専任の歯科衛生士が関与できる施設と なっている。手術前後のみならず放射線療法および化学療法による副作用としての口内炎に対しても口腔清掃指導を 継続的に行っている。歯科衛生士的立場から継続的な専門的口腔ケアを行うことは、心理的ケアも含めた口腔機能の 回復、患者の QOL の向上に貢献できるものと考えられ、がん緩和療法の一つとして、その役割は非常に大きいもの と思われる。 【引用用語】 口腔がん 歯科衛生士 専門的口腔ケア がん緩和療法 【目 的】 口腔がんの治療は、手術療法、放射線療法、化学療法などの3大治療を単独もしくは組み合わせて行われている。 手術後は後遺症として、口腔諸器官の運動障害、感覚障害、嚥下障害をはじめ様々な機能的損失を与える。また、放 射線治療に伴う口腔合併症の発現により器質的損失も与える。このような症例の場合、機能的、器質的損失を回復さ せるためには、治療前から周術期、そして経過観察期にわたり継続的な専門的口腔ケアが必要不可欠であり1)、また 全身の健康増進に大きく関与し、患者の QOL を高めることは周知の通りである2)。 今回私達は、口腔がん患者の QOL の向上を目的とした専門的口腔ケアについての概要、ケア方法、症例を提示し、 口腔がん患者に対する歯科衛生士の関わりの重要性を報告する。 【対象および方法】 対象は、東京歯科大学口腔がんセンターが開設された平成18年4月1日から平成19年5月までの、当センター を受診した94名のうち専門的口腔ケアを施行した口腔がん患者(原発部位別では、上・下顎歯肉29名、舌22名、 頬粘膜7名、口底5名、上顎洞3名、その他11名)77名とした。手術症例を中心とし、その他、放射線療法およ び化学療法による副作用として口腔合併症を有する症例も専門的口腔ケアの対象としている。当センターでの標準プ ロトコールを図 1 に示す。口腔ケア施行症例の治療法別内訳として、手術症例68名、放射線療法(手術療法併用症 例を含む)18名、その他6名であった。 術後は劇的な形態の変化、機能障害が出現し、口腔内、特に患部の清掃性の悪化やセルフケアが困難となる。これ らに対し、歯科衛生士により、入院前、術直前に口腔清掃指導、PCR、歯石除去、術後の機能的、器質的変化の説明 を行っている。特に術直後は、病棟へ往診し個々に応じたセルフケアの指導を行い、術後、軽快退院後も継続的な専 門的口腔ケアを行っている。 また、放射線治療による放射線性口内炎や口腔乾燥症、化学療法の副作用による口腔合併症の発現に対しても治療 開始前より、歯科衛生士による積極的な専門的口腔ケアを行い、二次感染予防に努めている。そして、治療中は徹底 した口腔衛生管理と局所麻酔薬入り含嗽剤やアイスボール等による疼痛のコントロールに努めている。.
(3) 針. 術後. 軽快退院後. 観. の 決. 治療中. 察. 定. 治療前. 放射線・化学療法. 術前. 治療後. 継 続 的 な P O H C. 過. 方. 図1. 経. 退 院. 手 術. 療. 入 院. 治 入院前. 手術・放射線・化学療法における専門的口腔ケアプロトコール. 【結果および考察】 舌がん切除後の患側歯牙の PCR 推移では、術前平均21%だったのに対し、術直後は、疼痛や手術創に対する恐 れ、口腔内の構造が複雑になるなどの理由から PCR は平均41%と悪化した。しかし、その後、創部が落ち着いて くると、術前からの継続的な口腔清掃指導が生かされ、PCR は平均25%へと改善がみられた。入院前、術直前から 歯科衛生士による継続的な専門的口腔ケアを開始することにより、術後の口腔機能の変化について患者に十分理解さ せるとともに、セルフケアに対するモチベーションの向上につながっているものと思われる。 放射線療法および化学療法による副作用の口腔合併症に対しても、治療開始前から専門的口腔ケアを行い、特に放 射線性口内炎に対しては、週に数回歯科衛生士による口腔衛生管理を行うことで、口内炎の症状緩和につながった。 また疼痛により、食事、会話、ブラッシングが困難な場合は、局所麻酔薬入り含嗽剤の使用、ガーゼにて粘膜を保護 しながらのブラッシング方法やタフト型ブラシ、軟毛歯ブラシ、スポンジブラシ等を使用してのセルフケアの指導に より疼痛のコントロールを行うことができた。特に食前、食間中に局所麻酔薬入り含嗽剤を用いたアイスボールの併 用により疼痛の軽減が図れ、食事摂取量の増加へとつながった。これらのことからも、歯科衛生士による専門的口腔 ケアが、口腔がん患者の全身状態の改善に大きく関与しているものと考えられる。 【結 論】 東京歯科大学口腔がんセンターでは、専任歯科衛生士の立場として、口腔がん患者を一貫して診ることが可能とな っている。口腔がん患者は、治療全期にわたり口腔に関する機能的、器質的な障害を抱え、これらは永続的に続くこ とから、継続的な専門的口腔ケアが心理的ケアも含めた口腔機能の回復、患者の QOL の向上に貢献できるものと考 える。口腔がん患者に対して歯科衛生士が積極的に関わりを持っている施設は未だ希少であり、今後は、がん緩和医 療としての専門的口腔ケアプロトコールのさらなる確立が必要と思われる。 【引用文献】 1)菊谷武:口腔・中咽頭がんの患者さんに行う POHC. プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケア, デンタルハイジーン別冊,58-61,2002 2)山根源之:口腔ケアに必要な口腔粘膜疾患の基礎知識,老年歯学,第 18 巻,第 3 号,222-224,2003 連絡先:奥井沙織. 〒272-8513 千葉県市川市菅野 5-11-13 東京歯科大学市川総合病院 東京歯科大学口腔がんセンター 電話 047-322-0151(代) Fax 047-324-8533 内線 3340.
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