NII-Electronic Library Service
教 育
入
院
の初 期 段 階
に お
け
る
糖 尿 病
患
者
の
セ ル フケ ア
操作
を
阻害
す
る
要 因 (
追
加
報告)
池
田清子
’
,
西 村 友 希’
,
荒 川靖
子’,首藤
暁
2掌 ,渋谷雄平
2*
,古
田峰子
2廓
,西
尾 里美
Z*
’
神戸市看護大学,
2’
西神戸 医 療セ ン ター
Disturbance
factors
of self care operationfor
diabetic
patients
in
hospital
(additional report
)
SugakQ
IKEDA
水
,Yuki
NISHIMURA
“
,
Yasuko
ARAKAWA
Aki
SHUTOU2
率,
Yuhei
SHIBUTANI2
ホ
,Mineko
HURUTA2
’
,
Satomi
NISHIO
2率喧
Kobe
City
CQUege
QfNursing,
2’
N工SHI−
Kobe Medlcal CenterKey words :
Orem卜
s self care deflcit theory (オレム の セ ルフ ケア不足 理 論 ),
diabetic patient (糖 尿 病 患 者 ),
self care operation (セ ル フケア操 作)
,
disturbance factor(阻害 要因 )は じ め に なっ た 促 進要因 と比 較検討 する
。
前報で は西 村ら (2001
)が,
オ レム の セル フ ケア不 足理論を枠 組み に,
教 育 入 院 中の 9名の患者を対 象に セル フ ケア行 動と その過程 (セル フケア操作 )を明ら かにす るた め に,
半 構 成 的 面 接 調 査を行い,
行 動まで の過 程と実 行に促 進 的に影 響す る要 因を分 析し た。 そ の結 果,
食 事 療 法 や 運動 療 法の実 施な ど の セル フケア 行 動には,
医療 者や家 族・
同室者か らの知 識の獲 得 と 活用,
合 併 症へ の恐れ,
仕 事が あ ること,
運 動に適し た病院周辺の環境,
妻の協力な どの促 進 要 因が み ら れ た。 しか し同 時に,
これ らの促進要 因のな かで も, 例 え ば 知 識の 種 類 や 活 用の適 切さ,
仕 事が あ るこ と な ど の要因は,
対 象のおかれた状 況に よっ て は阻 害 的な影 響も考え られ た。
そ こ で今 回の 目的は,
前 報で収 集し た デー
タ を も と に,
阻 害 要 因を分 析し,
前報で明 らか に なっ た促 進 要 因 と比 較 検 討 することに よりt 促 進 要 因 と阻 害 要 因に つ いて の理解をさ らに深 める ことであ る。 研 究 目的 教 育 入 院 中して い る糖 尿 病 患 者の セル フ ケ ア操作を 阻害する要 因を 明 らかにす る ため に,
前 報で明 らか に 研究方法 研 究 方 法は前 報と同 様であるた め,
こ こ で は阻 害 要 因を 加 え た 用 語の定 義 と 研 究 方 法の概 要 を 再 掲 す る。
1,
用 語の定義 セル フケア行 動:対 象が健 康と糖 尿 病の 自己管理 の た め に自ら意図的に行う行 動の こと。
行 動には行,
為の実 行と,
それに至る過程での推察や意 思 決 定 な ど を含め る。
セル フ ケ ア操 作 : セ ル フケア操 作に は1
)評 価的 操 作,2
) 移 行 的 操作,3
)生 産的操作の3
段 階が あ り,
セ ル フケア行 動 を実 行 する までの一
連の 過 程 とする。
1) 評 価 的 操 作: 「現 在〜
で ある。
そ の原 因は〜
だ と思 う。」という現 状の把 握の た めの 調査,
お よ び現 状 を引 き起こす 原 因の分 析と評 価を含む内 容 と す る。2
)移行的 操作: 「〜
すれ ば〜
に な る。 だ か ら〜
す る。
」と い う セル フ ケア に関 して行うべ きこと を 決 定す る た めの内省お よ び意 志 決 定を含む内容と する。
N工 工一
Eleotronio Library66 神 戸市 看 護 大 学 紀 要 Vol
.
6,
20023
)一
生 産 的操 作 : セ ル フケア操 作を実施する た め の 「環 境,
自己,
物 品などの準 備 」と 「実 施」 までを含む内 容 とする。 3)一
生 産 的・
評価 的 操 作 :次の新しい一
連の評価 的操 作を開 始する前の段 階と して
,
生 産 的評 価の第2
段 階の 「実 施してみて〜
だっ
た」を含む 内容と する。
阻 害要 因 :対 象の健康の維 持増 進にとっ て主 観 的,
客 観 的に必 要で あ る と査 定さ れる食 事 療法,
運動療 法,
薬 物療法な どの治 療 法 を含 むセ ル フケァ行動を 阻 害 して い る要 因。 客 観 的と は看護者か ら みて とい う意 味である。 した がっ て, 対象が査 定して い るセ ル フケ ア行 動と客 観 的に査 定さ れ たセル フ ケア行 動 は一
致する場 合 も相 違す る場 合も ある。
2.
調査 期 間 平成11
年11月24日か ら平 成/2
年 4月19日ま で3 .
調査 対 象 神 戸 市 内 中規 模 病 院の糖尿病 内科 病 棟に教 育 入 院 中の9
名の 患 者。
4 調査 方 法 まず,
研 究の承諾 が得ら れ た対 象に,
フ ィ ル ム10
枚 入 りの ポ ラロ イ ド カ メ ラを手 渡し,
「一
日の 生 活 の中で健 康や糖 尿病を意 識し てとっ て い る行 動,
或 いは意 識し た場面」を 写して もらっ た。 っ ぎ に,
写 真 撮 影 終 了日も し く は 翌 日に,
対 象が写 した写真を 見な が ら 「被写体は何か1
「なぜ写 したのか」とい うこと を中心に,
半 構 成 的面 接を行っ た。 対 象の 了 解が得 られた場 合に は面 接 内容を カセ ッ トテー
プに 録 音し、
逐語 録と しておこ した。
な お,
面 接の時 期 は,
教 育 入 院の効 果 を 見るた めに入 院2 〜3
日目と 退 院 間近の2
回と し た が,
今 回は入 院 初 期に行っ た ものを分 析 対 象と し た。5 .
分析 方 法 1)対 象が写した写真と逐語録を分 析の資料 と した。 対 象 ご とに逐 語録を文 脈ごと に区切り,
用 語の操 作 的定 義に基づき,
セル フケア行 動と4
っ のセル フケ ア操 作に対応 す る 文 脈 を 抽 出 し た。
2
)セ ル フ ケア操 作に対 応 する文 脈の な かで,
阻 害 的に影 響 して い る内容を阻害 要 因と して抽 出し,
その 影 響がセ ル フケア行 動に い た る セル フ ケ ア操 作 (評 価 的,
移 行 的,
生産的,
生 産 的・
評価 的 操 作 )の どの段 階にあ るか を分 析した。3
) 前 報で抽 出した写 真の被 写 体と被写体に は ない が,
逐 語録か ら汲み取 れた セル フケア行 動と その 促 進 要 因に,
今 回阻 害 要 因 を加え比 較 検 討 し た。 結 果 1.
対 象 者の概 要 阻害 要 因が み られた の は,
前 報と同じ対象9
名の う ち6
名であっ た。 表 1には,
阻害要 因がみ られ た 対 象の概要を示 した。 阻 害要因が み ら れ た 6名の対 象の概 要は,
性 別で は,
男 性2
名,
女性 4名,
世 帯 構 成は一
人 暮 ら し1
名,
夫 婦のみ2
名,
家 族と同居3
名,
職 業で は無 職 が1
名,
常 勤が 2名,
主 婦3名であっ た。 ま た,
年 齢は50〜68
歳,
診 断名は イン ス リン分 泌 不 足のため イン ス リン治 療が必 要で ある1
型が 1名,
イン ス リ ン分 泌 不 足と作 用 不 足が組み合わ さ りイ ン ス リン作 用が 減少してい る2
型が5
名で あり,
罹 病 期 間は,
1
年か ら3 ,
4年が5
名と多く,1
名の み が12
年で あっ た。
合 併 症で は,
合併 症な しが2
名,
網 膜 症の み1
名,
網膜 症に よ る視 力 低 下と神 経 障害によ る下 肢や手 足の し び れ を有す るもの が2
名,
不 明1名で あっ た。
教 育 入 院の回 数は,
今回の入 院が初 回 とい う ものが5
名と多かっ た。 ま た今回阻害 要 因が みられなかっ た3
名は,
いず れ も男 性であっ た。 う ち土名は イン ス 1丿ン 治 療を し て お り,
血 糖 値は高く な かっ た が頻回の低 血 糖 発 作 があっ
た ため,
イン ス リンの種 類と量の調 節の ため 入 院して い た。
この対 象は26
年にわ た り糖 尿 病と と もに生活 して き た。 糖尿 病の受け 入 れ も自分な りに あ り,
治療 法の実 施に関 して も生 活のな かで蓄 積し た経験 的 知 識 を持っ ていた ため,
セ ル フケ ア操作を 阻 害 する要 因は みられな かっ
た。 残 り2
名はいず れ も家 族の サ ポー
トが あり,
う ち1
名は糖 尿病を発 症 する以 前に高 血圧の既往が あ り,
血 圧コ ン トロー
ル の た め食 事や運 動に気 をっ けた生 活を送っ て いた。 生 きがい は趣 味の ゴル フ や孫の顔を見ることで,
そ の た めには糖尿病の 治療法の 実 施がもっ と も重 要 と 考え て い た。 入 院 後は積 極 的に学 習に取 り組み,
食 事 や 運動に対 する知 識 も豊 富で あっ た ため,
セル フNII-Electronic Library Service 教育入院の初期段階にお ける糖尿病患者の セ ルフ ケ ア操作を阻害する要 因 (追加報告 )
67
表1 阻 害 要 因 が み られ た 対 象 者の概 要 対象 年齢 性別 職 業 世帯構成 診 断 名D 教育入院 の回数 罹 病 期 間 入 院 時の 血 糖値と HbAlc 合 併 症 と 自覚症状 現在行わ れ て い る治療 A68 男性 無職 妻と2人12
型 1 初回 l Ii433
1d
[ 3−
4年 な し 1HbAlclO,
3%1 1 食 事 療 法 ;18DOkcal 運動療法 薬 物 療 法 ニオィグルコン2錠 /目→
ノボリンN C61 男性専門学校 の管理者 実 母 妻,
長 男 次 女の 5人 2型 初回 1年 血糖値不明 HbAlc15、
8% 網膜 症 食 事 療 法 :1800kcal
薬 物 療 法 :オイグルコン2,
5
/日→
ノボIlンNi
D ヨ 50E 女性 … 主婦 夫,
長 男,
次男 の4
人 2型 初 回 3年 181 〆d[ HbAlc9.
6
% 神経 障 害に よ る 手指の し び れ 網 膜 症によ る視 力低 下 食事療法 :1400kcaI
運動療法 薬物療 法 :オイグ加 ン2.
5 E64 女性 旨 主婦 夫 と2
人 2型 初 回 1年 164 /d[ HbAlc不明 不 明 食事療 法:1400kcal 運 動 療 法 薬物療 法 :ペイスン2錠/日→
スター
シス90 F 56 汝圏 i看護婦 1 夫,
長女,
次 女 の 4人 1型 不 明 … 12年1209 ノ
dlHbAlc10
.
1% 網膜 症 以 前に神 経障害 によ る下 肢の し 、び れ』
ゴ
广
一一一一一
食 事療法 :1500kca1
運動療法 インスリン量の調 節 G50 女性 主矧
一
雁 ら し 」 2型 初 回 4年 261 /d[ HbAlc9,
3旡 な し 食 事 療 法 :1600kcal 運動療法 薬物療 法 :グリミ知ン1錠/日 1)1型は イ ン ス リン の分 泌が不足して い る た め イ ン ス リン治療が必要,
の組み合わ せ で,
イン ス 丿1ンの作用 が減 少し ている状 態。
2型は イン ス リンの分泌 不足と イン ス1丿ンの作用不足 ケ ア操 作を阻 害する要 因は み ら れなか っ た。 もう 1 名は, 若い こ ろか ら転職を 重ね, や っ と め ぐりあ え た 現在の仕事を継続す るこ と が生き がい であ っ た。 その た めには,
確 実な治 療 法の実 施が必 要と考え,
入院中も退院 後の生活を想像しな が ら積 極 的に学 習 に取 り組んでい た た め,
セ ル フ ケア操作を阻 害す る 要 因が み ら れ な か っ た。2 ,
阻害要 因が影響し ている セ ルフケア行 動と セ ルフ ケア操 作の段 階1
) 全ての阻害要因は, 現 状の把 握と その原因の分 析とする 「評 価 的 操 作」 に影 響を及ぼ して い た。
表2
は前 報で明らかに なっ たセ ル フケア行動とそ の促 進 要 因に,
今回 明ら かになっ
た阻害 要因を加 え,
両 方の要 因に対 応 して い る要 因 と,
いず れ か一
方の みにみ ら れ る要 因につ い て示し た。2
) 食 事療法の実 施 と評価にっ い て促 進と阻 害 要 因 を比較する と,
いず れの要因におい て も知識が重 要であっ た。 入 院 初期段 階にある対 象は,
ビデオ や医療者か らの知 識 提 供によ り食事 療法の 目 的や 意 義にっ い て の理 解がす すみっ っ あっ た が,
依 然 と して 「バナ ナ やヨー
グル トな ど の甘いもの や天 ぷ らや肉な どの脂っ こ い もの は食べて は いけ ない,
野 菜や豆 な らよ い」な ど,
食 品のエ ネルギー
にっ いての知 識不足や, 「痩せ た ら血糖は下がる」 「グ ル コ バ イ を内服 し,
痩せ たの で 臼己 判断で中止」 な ど,
インス リン の作 用と自覚 症 状にっ い て の知 識 不 足 がみ られていた。 ま た,
本報で は民 間療法 を医師が指 示 し た治 療法以外の治療法を全て含む もの と と ら え分 析 し た結 果,
「女 房の友人 が糖 尿 病に よ い と, プ アー
ル茶, パ ナ マ茶, うこ ん, ミ ル クきなこ,
卵 油,
黒酢,
生野 菜と果物の ジュー
ス で,
血 糖 が200
〜
280
になっ た。
これ を4
年 間 続 けて いま し た。 素人 考えか もし れ ない け ど, いろ い ろな (民 間 療 法の) 要 素が血 糖を抑 制して いた の で はない か と」「娘も整体をや っ てい る,
色々 な病 気が治っ たの は,
整体の お か げ も あ る」な ど 入 院 前に実 施 して いた 民 間 療 法にっ いて,
その 治 療 法の効 果につ い て の科学 的な根拠や効果があっ た と判 断 する たth
の デー
タが不 足して いた。 そ の ほか,
過 去に体重や血糖コ ン トロー
ルが成功し た 体 験 を評 価 した 結 果,
その理 由 を 「高 血 圧の と き 体重 減ら し た が,
帰る と リバ ウン ド。 だ か ら食事 が我が家に帰っ てからが一
番 心 配 」 「(突 発 性 難 聴 で)入院し てい る間に ね,一
緒に血糖コ ン トP一
ル して も らっ て」「去 年の夏,
暑 くて食べれ な く N工 工一
Eleotronio Library68
神 戸 市 看 護 大 学 紀 要 Vol.
6,
2002 表 2 セ ル フケア行 動の促 進 要 因 と阻 害 要 因 セ ル フ ケ ア行動 (人 数) 促 進要因 (個数)D 阻害要因 (個数) 食事 療法の実施と 評 価 医師・
看 護 婦、
栄 養 士などか ら の知識提供 (6) 食 物、
病 態や薬物療 法に関す る知 識 不 足 (5) (8) 家 族や同室者か らの民 間療 法の知 識 (2) ⇔ 民間療法の効果に っ いて の知 識 不足 (2) 血 糖や体 重コ ン トロー
ルの成功 要 因を評 価 す るた めの知 識 不 足 (3) 食事内容へ の満足 (2) ⇔ 嗜好・
食習慣の変 更に対す る不満足 (4)一
人 暮 ら し (1) ⇔一
人 分の調 理 が 面 倒 (3) 調理者で あ る妻の協 力 (1) 運 動療法の実施と 評価 環境が 運 動に適し て いること (8) 時 間があるこ と (2) ⇔ 仕 事に よる 時 間のな さ と疲 労 感 (1) 医師や看護婦か ら の指示 (3) ⇔ 医療者か ら の指示が な い こ と (1) 性格 (2) ⇔ 自己 否 定 的 な 性 格・
傾 向 (1) 自覚症 状の改 善 (2) ⇔ 運動にともなう疲 労感 (1) もともと運勤 習慣がある (3) 妻 が一
緒 に やって くれ る (D 行 政の サー
ビ スや 私 的な趣 味の会の活用 (1) 仕 事 に 運 動 が 必 要 (D 入 院 して治 療 を 受 け る 医療者との信 頼 関 係 (5) こ と (7) 医 師か ら の助言、
指示 (5) ⇔ 医療者か ら の説 明不足 (2) 専門家か ら得 られる指 導 や 安 心 感 (2) 家族に迷惑 をかけたくな い気持ち (1) ⇔ 家 事仕事の協力 者が い な いこと (1) 夫からの励 まし (1) 食物、
病 態や薬物療 法に関 する知 識 不 足 症 状 悪 化の自 覚 (1) 自己否 定 的 な 性 格・
傾 向 治療 法へ の実施と継 続 合 併症へ の恐 れ (5) 自己否定的 な 性 格・
傾 向 への意 思 (6) 医療者へ の信 頼 (1) 仕 事の遂 行によ る時 間のな さ (1) 過 去に治療して 効 果があった (1) 家族 に 迷 感 を か け た くないという気持 ち (1) 子 供が小 さい の で頼られ る (D 薬 物 療 法の実 施 (2) 主 治 医へ の信 頼 (2) 仕事の逐 行によ る時 間のな さ 1型であ ること (D 他 者 に イン スリン自己注 射 を知 られ た くない イン スリンは大切 という知 識 (1) 安 心して自己注射でき る掲所がない (1) 血圧コ ン トロー
ル (1) 医 師への信 頼 (D 体重コ ン トロー
ル (1) 医療 者か らの指示 (D 血 糖 や 体 重コ ン トロー
ル の成 功要因 を 評 価 す るた め の知 識 不 足 (1) 引 用文献1)
西 村友希,
池田清子,
荒川 靖子 他,
〔2001) 1教育入院の初期 段 階lca’
け る塘尿 病患者の セ ル フ ケ ア行動とその促 進要因,
神戸市看護大学紀要,
5,
19−
28 ⇔ は促 進 要 因と阻害要 因に対 応が み ら れ る要 因。
太字は いずれ か一
方の要因の み に あ る要因。
て,
血糖が130,
これ が一
番よい とき」な どの入 院や季節な ど外的な要因として いた。 血糖や体重 の コ ン ト V一
ル に は,
食事 内容や運 動量,
ス ト レ ス感 情な どの内 的な要 因 もある。
内 的な要 因が コ ン トロー
ル で き ない た め,
外 的な要 因を述べ て い る可 能 性 もある が,
内 的な要 因につ い て の知識不 足の場 合, 退院後に再びコ ン トロー
ルが不 良に な る可 能 性が ある こと を示 して いた。 ま た,
知 識 以 外の要 因にっ い て,
促 進 と阻 害 要 因を比較する と, 食事内容へ の満足と不満足があっ た。 不満 足の 内容は,
「薄 味が耐え ら れ ない。」 「パ ンが好き や か ら (ご飯 少な くて もよい。)」「甘 い もの が好 きだ が,
食べ ないよ うに して い る。」 な どで あっ た。 そのほ か,
着 目し たい点は,
男 性 患 者で は調理者で あ る妻の協 力が あ ること,一
人 暮ら しであ るこ と が促進 要因で あっ た が,
今回3
名の女 性患者で は, 「一
人暮ら しになっ て , 料理 ら しい料理は作ら な く なっ て し まっ た。」 「家族の 食 事は自分が作る けど,一
人の と きはある物です ま せ る。」な ど,
家族の た めに料理は して も,
自 分一
人分だ と面 倒で料理 し ない とい う点で あっ た。3
) 運 動 療 法の実 施と評 価にっ いて促 進 と 阻 害 要 因 を比較す る と,
「時間が あ るこ と/や ること が な いから仕 方な く」 「散 歩に適 し た コー
スがあるこ と」 「自覚症状の改善」などの促進要因が, 生 産 的 操 作お よ び生 産 的 ・評 価 的 操 作に影響して い た が,
これ らの要 因は同 時に,
「退 院 俵 は 仕 事で忙 しく時 間が と れ ない。 疲れて いるので , 運動の継 続はむ ずか しい。
」「運動すると足が疲れる。
」 と 退院 後の 運動療法を考え る 評価 的 操 作の段 階で阻NII-Electronic Library Service 教育 入 院の初 期 段 階にお け る糖尿病 患者の セル フケ ア操作を阻害する要因 (追 加報告 )
69
害 要 因とな っ て い た。
その ほ か,
性 格は両 方の要 因でみ ら れ た。 促進で は 「決め た らや る」とい う性 格
,
阻 害で は 「ず ぼ ら,
意思 が弱い,
人に言われて や るの は好 きで は ない」とい う性 格で あっ た。4
) 入院して治療を受け ることにつ い て促 進と阻害 要 因 を比 較 する と,
医療 者との信頼 関係の有 無 と 家 族か らの期 待の有 無 とい う2
っ の点が共通して い た。 その ほ か,
阻 害 要 因のみにみ ら れ た もの に, 食 物 や 病態,
薬 物療法に関する知 識 不 足と自己 否 定 的な性 格が あ っ た。 自己否定 的な性格は,
前 報で 示唆さ れ てい る糖 尿病 を 認めた くないとい う否 認 の感 情に関 連 す る要 因で あっ た。5
) 治 療法の実 施と継 続へ の意 思で は,
促進 要因と 阻 害 要 因に相 違が み ら れ た。 促進要 因のみ に み られ たの は 「合 併症へ の恐 れ 」 「過 去に治 療 して効 果が あっ た」な どで あっ た。 今 回 「合 併 症へ の恐
れ」が阻 害 要 因に抽 出 されな か っ たこ と か ら, 合 併 症は対象に とっ て脅威ある い は強い情 緒 反応 を 引 き起こす まで に は至っ て いない ことが わかっ た
。
阻害要 因の み に みられ たの は
,
自 己 否 定 的 な性 格と家 事 仕 事の協 力 者がいない こ とであっ た。
6
)薬 物療 法の 実 施 と評 価で促 進 要 因と阻 害 要 因が 抽出で きた の は,
イン ス リン療法 を行っ て いる対象であっ た。 促 進 要 因と阻 害 要 因を比較し て み る と
,
主治医を信 頼し イン ス リンが 生 命に とっ て不可欠 とい う知 識が促 進 的に影 響 して い る
一
方で, イン ス リン自己注 射の実 行 段 階におい て,
仕 事に よ る時 間や安 心して注射で き る場所が ないことや,
他 者に知 ら れ た く な い とい う負い目 が 阻 害 的に影 響して いた。 今回の結果よ り,
イン ス リン 自 己治 療 を行っ て い る対 象は,
その実 行 段 階で技術 的にも心 理 的に も,
経口血糖 下降剤の対 象に比べ,
よ り多 くの困難さ を 感 じや すい こと が わ か っ た。考 察
今回の結 果 よ り阻 害 要 因の 影響は
,
すべ てセ ル フケ ア操作の 評価 的 操 作に み られて いた。 こ の理由の一
っ と して,
前 報で も明ら か な よ う に教育入院中の対 象に とっ て医療者か らの指示や助 言は,
セ ル フケア操 作の 移 行 的 操 作を促 進さ せ る決 定 的な要 因で あ り,
し た がっ て何らか の阻 害 要 因が あっ
て も,
対 象は 必 然的にセ ル フケア行 動 を 実 施 して いた と考え ら れ る。 そこ で促 進 要 因と阻害 要因の比 較か ら,
評 価 的 操 作におい て阻 害 要 因が ど の よ うな影 響を及ぼ してい たのか を分 析し,
セ ル フケア操作が 先にす す むた めに は,
どの よ う な点 に援 助が求め ら れ る か にっ いて考 察する。一
っ めの阻 害 要 因の うちく運 動療法に適し たコー
ス や時間〉 〈家事 仕事にお ける協 力 が ない こと〉 〈イ ン ス リン自 己 注 射の た めの 時 間や安心で き る場 所が ない こと〉は,
退院後の生 産 的 操 作に関 連 して い る困難な 事 柄が,
評価 的操作をす すめ る にあた り阻 害 的に影 響 し ていること がわかっ た。 これ らの阻 害 要 因は,
対象 自身が生 活 時 間を調 整 し たり,
家族に サポー
トを 求め ることに よ り改 善 が 期 待でき る 要 因である。 な かで も 家 族の協力が ない こと は, 今 回女性患者のみに み られ た。 この 理由の一
っ と して,
対 象の糖 尿 病の合 併 症の程 度 が まだ軽 症であ るた め,
糖尿病を否認し な が ら で あっ て も家 族か ら期 待される性 役 割を遂行するこ と が可能 で あ ること が考え ら れ る。 ま た, 男性 患 者で は妻や子 供か らの協力や期 待が促進 要 因にみ られ たこ と と比較 する と,
女性患者は男性に比べ 家 族にサ ポー
トを 求め る技 術が不 足 して いることも考え られ る。 あ るいは, 糖尿病 患者の ソー
シャル サポー
ト に関 する調 査におい て福 西 (1997
)は,
自己管理能力が劣る人の特徴に,
家族や友人か ら サ ポー
トが与 え られてい るに もか かわ らず,
患 者がそれ らの サポー
ト に気づ い て いない こ と を明ら かに して いる。
こ の点か ら考え る と,
女 性 患者 の う ち何 人か は家族の サ ポー
トに気づ くこ とができ る よう援助 すること が 必要かも しれない。 二っ めの阻害 要 因の うちく良 好で ない医 療 者との関 係〉は, 知 識 不 足に より現 状の把 握が十 分で ない こと とセ ル フケア行 動 全般に わ た る動 機づ けが低い とい う 理 由で 阻 害 的に影 響 して いること が わ か っ た。 教 育入 院の 目 的は,
セル フケア の動 機づ け であると さ れて い る が, 今回の結 果よ り医 療 者との 関係 が大き く影 響し て いるこ とを再認 識した。 医 療 者 との関 係 は,
中西 ら (1987
)や宗像 ら (1996
) も述べ て い る ように糖 尿病 患 者の コ ン プライア ン ス に とっ て重 要な社 会 的 媒介因 子で ある。
しか し,
前 報で も明ら か な よ う に,
日本に おい て患者は医療者に対して 「お ま か せの心 理 」 が 働 き やすい。 今 回の対 象の う ち2
名は お ま か せの結果,
N工 工一
Eleotronio Library70
神 戸 市 看 護 大 学 紀 要 Vol,
6,
2002 現 状の把 握 と原 因の分 析に必 要 とな る知 識が不 足し た ま ま 通院を続け,
除々に血糖コ ン トロー
ル が不 良とな り教 育入院と なっ た。
医療者に とっ て患 者との関係を 良好に維持する た め のコ ミュ
ニ ケー
シ ョ ン技術の 向上 は,
今 後 も重 要 な 課 題で あ る。3
つ め の阻 害 要 因の うち〈知 識 不 足〉 は,
食 事療法 の実施と評価に お い て, 自分なりに実 行して い ても効 果が あ が ら ない とい う結 果,
現 状の把 握やその原 因の 分析 が進 ま ないとい う理 由で阻 害 的な影 響を及ぼ して い た。 今回の知 識不足に は, 食物や病 態, 薬物 療 法に 関 する前 提 的 知 識,
民 間 療 法の効 果に関す る 知識,
過 去の成 功 体 験 を評 価 するための知 識の3
種 類があっ た。 食物や病態に関する前提 的知 識は, 教育入 院のプログ ラムで提供さ れる学 習の機会に習得で きる知識である。 しか し,
民 間療法の効果に関する知 識や, 成 功 体 験の 要 因 を 評 価 す るた めの知識は,
医療 者が意 識して提供 し てい く必 要 が ある。
と くに後 者は,
生 活で得 られる 貴重な経験 的知識である。 自己評価の能力はセ ル フケ ア能 力のな かで も,
行 動の 実 施の レベ ル の う えに位置 つく難 易 度の高い レ ベ ル である。
野口 (1983
) も述べ て い る よ う に,
自己の客観視ほ ど む ず か しい こ と は な く,
経 験 を 知 識 化 する た めに は,
医 療 者か らの観察や フィー
ドバ ッ クが 不 可 欠であると考 える。4
っ めの阻 害 要 因の うちく嗜 好や食習 慣を変 更す る ことぺ の不満足〉は食事 療法に関して,
またく自己否 定 的な性 格や傾 向〉は運動療法や治療法の継 続に関 し て,
対 象が実 施で き る か否か を見通 す と き に 「で き な い。
で きそ う もない。
」 と感じて しま うとい う理由か ら評価 的操作に おいて阻害的に影響を 及 ぼ していた。
食事療 法にと も な う空腹 感や味覚の不満足 感は,
対 象 にとっ て自 己効力感を 低める生理的・
情動 的状態に関 する情 報と考え られる。 服部ら (1999
)は, 食事の 自 己効 力 感にっい て罹 病 期 間が長い ほど高い理由を,
時 間経 過にと もな う 自 己 管 理 行 動の慣 れ や 成 功 体 験の蓄 積,
糖 尿 病の受 容と して い る。 今 回の対象は, いず れ も罹 病 期 間が1年か ら3 , 4
年で あっ た た め,
まだ 嗜 好や食習慣 を 変え ることに慣 れるまで成 功 体 験 を積ん で いない こと が要 因と し て考え られる。 また,
目 己 否 定的な性格や傾 向は,
自己信頼で きず 自尊感情が 低 下 してい る状態であ る。 自 己 信頼を 回復 する た めに は,
食 事 療 法,
運動 療 法な ど につ い て,
成 功体 験を積ませることが 有効で ある。
先に も述べ た よ うに,
食事 療 法を成 功さ せ る た めに求め ら れ る援 助は,
知 識の提 供と味覚の不 満 足 感にっ い て のっ ら さ を 理解 する態 度で あろ う。
運 動 療 法を成 功させ るた めの援 助 には,
運動のた めの 時間を確保する た めに生 活の時間 調 整 すること,
散 歩の コー
スを見っ けるよ う促 すこと,
運動に ともな う自覚症状の改善に対 象の意識を向け さ せ る こと な ど が ある と考え る。 研究の 限 界 本報は前報と同様,
研究 方 法においてい くつ かの間 題が あ る。 そ れ は,
対 象数が少ない こと,
教 育 入 院 中 の患 者に限 定し たこと,
ポラロ イ ドカメ ラを使用 する こ とから,
重 度の視力 障 害や運 動 機 能 障 害が ある患 者 は対象の選 定条件に含めてい ない ことで あ る。 従っ て,
今 回 抽 出 さ れ た阻 害 要 因やセ ル フケア操作は,
環境要 因や身体状態の影響を受けて いる。 前報および本 報で 得られ た結 果を さらに確 実なもの にする ために は,
今 後 対 象 数 を 増 や すこと が必 要であ る。 また,
多 様な糖 尿病患者の セ ル フケア行動お よ びセ ルフ ケア操 作 を と ら え る た め に は,
教 育入 院の み な らず,
外来通院の患 者にも対象を 広 げ,
さ ら に複 雑で多 様 な 環 境に お ける 促 進要因と阻害要 因を探っ て い くこと が重要で あ ると 考 え る。結 論
前報と同じで あ る教育入 院 初 期の 9名を対 象に,
オ レムのセ ル フケア理論を枠組みに,
セ ル フケア行動,
セ ル フケア操 作の操 作 的 定 義,
阻 害 要 因に基づ きデー
タを分 析し,
促 進 要 因 と比 較 検 討 した結 果,
っ ぎの こ と が明らか に なっ た。1
.
阻 害 要 因がみ られたのは,
9
名中6
名で あっ た。 ま た,
阻害要 因は全て評 価 的操作に影響して いた。
この 理由の一
っ と して,
前 報で も明ら か な ように教 育入 院 中の対 象に とっ て医 療 者か らの指 示や助 言は,
セ ル フ ケア操 作の移 行 的 操 作 を 促 進さ せ る決 定的な 要 因で あり, し た が っ て何ら か の阻害要因 が あっ て も,
対 象は必 然 的にセ ル フケア行動を実施して いた と考 え られる。
2.
評価 的操 作へ の阻害 的な影響に は, っ ぎの4
つ が あっ た。
1
)阻 害要 因の う ちく運 動療法に適 したコー
スや 時 間〉 〈家 事 仕 事における協 力が ない こと〉 く イ ンNII-Electronic Library Service 教育 入院の初期段 階に お け る糖尿病患者の セ ル フケ ア操 作 を阻害する要因 (追加報 告)