LES によるドライガーゼ法飛来塩分捕集装置の捕集性能評価
Evaluation of Collection Efficiency of Airborne Salt Collector for Dry Gauze Method by LES
○坪倉 佑太1) 野口 恭平2) 八木 知己3)
Yuta TSUBOKURA1) Kyohei NOGUCHI2) Tomomi YAGI3)
1.はじめに 塩分は鋼材の腐食を促進する因子の 1 つであるため、 橋梁の維持管理に際しては、架橋地点の塩分環境を正 確に評価する必要がある。日本国内における飛来塩分 量の観測方法としては、JIS で規定されたドライガー ゼ法(以下、ガーゼ法)がよく使用される。この方法 では、Fig. 1 に示すように外径 150 mm 四方の木枠の内 部に 100 mm 四方のガーゼを二重にはめ込んだ装置を 用いる。装置が単純で、計測も容易であることから観 測実績が豊富であるが、ガーゼ法はその捕集効率が明 らかになっておらず、真の飛来塩分量を獲得できてい るのかも不明である。この原因として、気流とともに 塩分粒子が捕集装置を迂回する効果や、一部の塩分粒 子がガーゼの網目をすり抜ける効果が考えられる。こ のうち本研究では、1 つ目に挙げた捕集装置近傍での 塩分粒子の迂回効果に関する知見を得る目的で、CFD によって捕集装置周りの流れ場を算出し、木枠とガー ゼの組合せで生じる複雑な流れ場特性を調べた。また、 算出された流れ場中で粒子追跡を行うことで、捕集装 置近傍での粒子の挙動を明らかにし、粒子の迂回効果 を検討した。 2.ガーゼ法捕集装置周りの流れ場解析 ガーゼ法捕集装置近傍での粒子の迂回効果を検討す るため、まずガーゼ法捕集装置周りの非定常流れ場を OpenFOAM を用いた LES によって算出した。尚、ガ ーゼは多孔質体モデルによってモデル化しており、 Navier-Stokes 方程式に Darcy-Forchheimer 則1)に基づく 多孔質体による抵抗 Si (式 (1)) を付加した。ただし、 多孔質体外部の領域では Si = 0 である。 抵抗 Siは、多孔質体内の圧力勾配に寄与し、流入す る流体速度に応じた圧力降下を生じさせる。ここで、 (1)式中の抵抗係数 Dijおよび Fijは、次の様に表される。 𝐷𝑛:法線粘性抵抗係数、𝐷𝑡:接線粘性抵抗係数、𝐹𝑛:法 線慣性抵抗係数、 𝐹𝑡:接線慣性抵抗係数。本研究では、 ガーゼ法線方向の抵抗係数は、ガーゼを気流が通過す る際に生じる圧力損失量を風洞実験により測定するこ とで決定した。一方、ガーゼ接線方向の抵抗係数につ いては、ガーゼ法捕集装置周りの流れ場可視化実験を 行い、得られた流れ場に CFD による解析結果が一致す るように定めた。ガーゼ接線方向の抵抗を考慮するこ とでガーゼ内部での気流の流れ方向の変化を再現でき る。以上の検討より、Dt = Dn = 4.65×10 5、F t = Fn = 5.62 とした。Fig. 2 にガーゼ法捕集装置周りの流れ場計算 領域を示す。本解析では、ガーゼ法捕集装置の木枠の 外径を 150 mm ( = D )、木枠厚さを 18 mm ( = 0.12D )と した。計算領域は捕集装置から上流側に 10D、下流側 に 20D、上下左右の各方向に 10D を確保した。最小格 子長は壁面部で D/400 以下 であり、総格子数は約 1,000 万である。境界条件として、流出面は勾配なし条 件、上下左右の遠方境界は Slip 条件、捕集装置木枠部 は滑りなし壁面とし、ガーゼ部には式(1)で定義される 抵抗を与えた。流入風は一様流とし、0.5、1、3、5 m/s の 4 ケースとした。このときのガーゼ法木枠外径基準 のレイノルズ数 Re は、0.5×104、 1.0×104、3.0×104、5.0×104 となる。また、ガーゼに対して風が直交する場合を 0° として、22.5°、45°、67.5°と 4 ケースの風向について Fig. 1 ドライガーゼ法 𝐷𝑖𝑗 = ( 𝐷𝑛 0 0 0 𝐷𝑡 0 0 0 𝐷𝑡 ) 𝐹𝑖𝑗 = ( 𝐹𝑛 0 0 0 𝐹𝑡 0 0 0 𝐹𝑡 ) (2) 1) 京都大学大学院工学研究科 大学院生
Graduate Student,Kyoto University
2) 京都大学大学院工学研究科 助教
Assistant Professor,Kyoto University
3) 京都大学大学院工学研究科 教授 Professor,Kyoto University 𝑆𝑖= 𝜕𝑝 𝜕𝑥𝑖 = − (∑ 𝜇𝐷𝑖𝑗 3 𝑗=1 + ∑1 2𝜌|𝑢| 3 𝑗=1 𝐹𝑖𝑗) 𝑢𝑗 (1)
解析を行った。流れ場計算時間は、無次元時間 Ut/D = 400 までとした。乱流モデルとして標準 Smagorinsky モデル (Smagorinsky 定数:0.12)を使用し、壁面近傍で は Van Driest の減衰関数を適用した。 3.流れ場解析結果 Fig. 3 に流れ場解析結果の一例として、Re = 3.0×104、 風向 0°および 45°のケースの無次元時間 Ut/D = 400 の 風速コンター図を示す。ガーゼ法捕集装置近傍で徐々 に風速が低下し、ガーゼ部を風が通過していることが 分かる。捕集装置近傍では速度ベクトルが捕集装置を 避けるように変化しており、上流から輸送される塩分 粒子の一部はこの流れに乗ることで、捕集装置を避け るように流下することが予想される。風向 45°のケー スに着目すると、ガーゼ部を流出した気流がガーゼ法 線方向を向いていることが分かる。この現象は、ガー ゼ法周りの流れの可視化実験でも確認されており、こ れは、ガーゼ接線方向の抵抗によって、気流がガーゼ 法線方向に整流されるためである。 4.粒子飛散解析 得られた流れ場中で粒子追跡を行い、粒子の迂回効 果について検討する。流体中での粒子の運動方程式は、 抗力のみを考慮すると次式で与えられる。 𝑚𝑝 𝑑𝐮𝑝 𝑑𝑡 = 𝐶𝑑 𝜋𝑑𝑝2 8 𝜌𝑓(𝐮𝑓− 𝐮𝑝)|𝐮𝑓− 𝐮𝑝| (3) mp:粒子質量 [kg]、up:粒子の速度ベクトル [m/s]、uf: 流体の速度ベクトル [m/s]、Cd:抗力係数、dp:粒子直径 [m]、 ρf:流体の密度 [kg/m 3 ]である。既往の研究2)を参考に粒子 直径dpを20 μm、粒子の単位体積質量を1,110 kg/m 3とした。 また、粒子の初期位置は、ガーゼ中心部より 3D 上流 の位置とし、1 mm 間隔で流入面に平行な平面状に配 置した。Fig. 4 に、上流より飛来するガーゼ投影面積 内の粒子がガーゼ部へ到達する割合の算出結果を示す。 接近風速と到達割合の関係をみると、全ての風向にお いて、接近風速の増大に伴って到達割合も上昇してい る。これは、風速が大きいほど粒子に働く慣性力が大 きくなることで、ガーゼ法捕集装置を迂回するように 変化する気流に追随せず、ガーゼ部へ到達する粒子が 増加するためである。風向の増大によっても粒子の到 達割合は上昇しているが、これは風向が大きくなると 気流がガーゼ法捕集装置に沿うように流下し、風向が 小さい場合に比べて気流がガーゼ法捕集装置上流で大 きく変化しないためと考えられる。以上の様に、粒子 の迂回効果は風況に依存し、ガーゼ法の捕集効率は風 況に応じて決定される変数であることが明らかとなっ た。 5.まとめ ガーゼ法捕集装置近傍での塩分粒子の迂回効果に関 する知見を得る目的で、LES によるガーゼ法捕集装置 周りの流れ場解析、および粒子飛散解析を行った。そ の結果、粒子の迂回効果は、風速、風向に依存するこ とが明らかとなった。 謝辞 本研究の一部はJSPS科研費15H02261 の助成を受け た。 参考文献 1) 吉岡ら、「高透水性多孔質体中の非ダルシー流れ に関する考察」、地下水学会誌、第 52 巻、第 3 号、 275-284、2010. 2) 加藤ら、「簡易型塩分飛散予測モデルの構築と評 価」、農業気象、Vol.57、No.2、79-92、2001. Fig. 2 流れ場の計算領域 Fig. 3 風向 0°、Re = 3.0×104の風速コンター図 (左図:風向 0°、右図:風向 45°) Fig. 4 粒子のガーゼ部への到達割合 0.01 0.1 1 0 1 2 3 4 5 6 到 達割合 接近風速u [m/s] 0deg 22.5deg 45deg 67.5deg