ところ, invasive ductal carcinomaの診断を得た. 増大傾 向にあることから手術を急ぎ, 胸筋温存乳房切除術+腋 窩リンパ節郭清を施行した. 手術に先立ち血性囊胞内容 液を 900ml吸引したが細胞診は ClassⅡであった. 摘出 標本の割面では出血壊死巣はなく, 囊胞腔上部に 14cm の灰白色で 一な充実部 を認めた. 病理所見では, 胞 巣状に配列した癌細胞が周囲組織に浸潤し充実腺管癌の 像であった. 囊胞壁には乳管上皮はなく, CD31, CD34, Factor VIII で染色される部位があり, 特に D2-40で染 色されることからリンパ管由来と えられた. 元々のリ ンパ管腫やリンパ管が腫瘍によって閉塞され, 急速に増 大したことが今回の病態と推測された. リンパ節転移は 陰性で,ER (+)PgR (−)HER2(−)のため,anastrozole の内服で follow upしているが, 現在術後 10ヵ月で再発 の兆候はない. 奇異な病態を呈した, 浸潤癌を経験した ので文献的 察を加えて報告する. 8.乳癌に起因した膜性腎症の1例 関根 理, 原 一茂,櫻木 雅子 小西 文雄(自治医科大学附属さいたま 医療センター 消化器一般外科) 【はじめに】 乳癌に起因した膜性腎症の報告は非常に稀 で今回我々は集学的治療で軽快した膜性腎症の症例を経 験 し た の で 報 告 す る. 【症 例】 66歳, 女 性 【主 訴】 右乳腺腫瘤 【既往歴】 高脂血症, 32歳 : 乳腺腫 瘤摘出術 (良性) 【家族歴】 特記事項なし 【現病歴】 2007年 2月, 右乳腺腫瘤及び右腋窩腫瘤に気付くも放 置. 8月頃, 腫瘤の増大傾向を認め, 疼痛も伴っていたた めに近医受診後, 当センター紹介となる. 精査にて右乳 癌, T4bN1M0 StageⅢBと診断された. 初診時, 軽度の 低アルブミン血症, 糖尿病, 高脂血症, タンパク尿を認め たが, 腎機能障害は認めなかった. 3年前の尿タンパク定 性は陰性. 同年 10月に手術目的に入院したが, 著明な下 肢浮腫, 体重増加, 低アルブミン血症の悪化, 尿タンパク 1日量 10750mg を認め, ネフローゼ症候群と診断された. 腎生検で膜性腎症と診断され, ネフローゼ症候群の治療 を先行した. ステロイドパルス療法を行った後, プレド ニゾロンを 10mg まで減量した時点で右胸筋温存乳房切 断術+腋窩廓清を施行した. 病理所見は Invasive ductal carcinoma, 40mm, リンパ管侵襲 (+), 核グレード 1,n+ (11/22),ER (+),PgR (+),HER2: score1.術後,尿タン パク 1日量, 血清アルブミン値は改善傾向を認めたが, 膜性腎症は完全寛解しなかった. 術後補助療法として Docetaxel (60mg/m ) +Cyclophosphamide (600mg/m ) を 8コース施行し, Exemestane内服は併用して投薬し た. 2008年 8月頃より腫瘍マーカーの再上昇を認め, ホ ルモン療法を Exemestane→ Toremifene→ Letrozole に
変 し, 2009 年 1月 か ら capecitabine+cyclophos-phamideを併用して投薬し,外来通院中であるが,膜性腎 症の悪化は認めていない. 【結 語】 乳癌に起因した 膜性腎症の治療は, 発見契機により様々であるが, ステ ロイドパルス療法及び原発巣摘出により著明に改善され た症例は 25%であり, ネフローゼ症候群が長期間であっ た症例, 進行乳癌症例では部 寛解が多く, 予後が悪い 傾向にあると報告されている. 乳癌による膜性腎症の報 告は検索しうる範囲で 6例と非常に稀であった. 若干の 察を加えて報告する.
セッション3>
進行再発1 座長:藤澤 知巳 9.水腎症により発症した再発乳癌の1例 王 宏生,有澤 文夫,齋藤 毅 (さいたま赤十字病院 乳腺外科) 通常乳癌の再発形式は肺, 肝, 骨への転移が主であり, 腹膜への再発が初発であることは非常に稀である. 当患 者は水腎症により発症し, 乳癌再発の確定診断に苦慮し たので,これを報告する.40歳代女性.平成 17年 2月,右 頚部腫瘤にて当科初診した. 右乳房内巨大腫瘍及び腋窩, 鎖骨上リンパ節腫大を認めた. 乳腺腫瘍に対し CNB施 行し, 浸潤性乳癌の診断を得た. T4bN3cM0 stage IIIcの 診断にて,術前化学療法として,W-TXL を 6クール施行 した. 著明な腫瘍の縮小が認められ, H17年 8月乳房切 除術を施行した. 術後局所放射線治療及び内 泌療法を 施行した. 平成 20年 4月, 両側腎盂の拡張・尿管の狭窄 を認め, 5月尿管ステントを留置した. 乳癌再発も えら れたが, 後腹膜繊維症も鑑別診断に挙げられ, 確定診断 に至らなかった. 平成 21年 2月, 十二指腸狭窄にて開腹 手術したところ, 広範囲の腹膜播種を認めた. 播種巣の 病理組織は, 乳癌の転移に矛盾しない. 術後, EC を開始 し, 軽度の通過障害症状を認めるも, 通院加療が可能と なっている. 10.インプラント再 後に局所再発した症例の検討 口 徹,武井 寛幸,吉田 崇 石川 裕子,林 祐二,二宮 淳 (埼玉県立がんセンター 乳腺外科) 黒住 昌 ,大 華子(同 病理診断科) 田部井敏夫,井上 賢一,永井 成勲 (同 乳腺腫瘍内科) 乳癌手術における乳房再 術の普及に伴い, インプラ ント挿入後の補助治療および経過観察に携わる機会は決 して少なくない. エキスパンダーおよびインプラントは 81乳房切除後に大胸筋下へ挿入されるために術後の局所再 発は少ないと えられる. 今回, 我々はインプラントに よる一期的乳房再 手術の 1年 2カ月後に患側大胸筋内 に再発が認められた稀な症例を経験したので報告する. 【症 例】 42歳女性. 右乳房腫瘤を自覚 1年間放置後, 前医より当院紹介受診となった. Stage I 乳癌と診断, 乳 頭温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検+大胸筋下 へのエキスパンダー挿入を施行した. 病理診断は 2a1, g, ly0, v0, pT1a, pN0(sn), M0 stage I/ER+, PgR+, Her2 score 1, 切除断端は陰性であった. 術後補助療法として LH-RH アナログ+タモキシフェンを開始し, 手術 4カ 月後にエキスパンダーをコヒーシブシリコンバッグに入 れ替えた. 術後 1年 2カ月後の超音波検査にて患側再 側の大胸筋内に腫瘤性病変が同定された. 局所再発の診 断で, 再発腫瘍切除+再センチネルリンパ節生検を施行. 再発腫瘍はバッグ挿入に伴って薄くなった大胸筋内に限 局性に存在し, 大胸筋膜および大胸筋の下層に形成され た厚い被膜を越える浸潤は認めず, 筋膜および被膜を含 め大胸筋の部 切除を行った. シリコンバッグは本人の 希望もあり小さいサイズのものに入れ替えた. 最終病理 診断は局所再発, 切除断端陰性, センチネルリンパ節転 移陰性であった. 現在, 化学療法を施行中である. 【 察】 インプラントを摘出せずに腫瘍切除を行った局所 再発症例を経験した. 本症例に対してインプラント保持, 化学療法, 放射線治療の妥当性について 察を加える. 11.術後10年を経て,対側乳房転移をおこしたと えら れる Triple negative高度進行授乳期乳癌の1例 星野 和男,仲村 匡也,岡部 敏夫 (杏林会今井病院 外科) 土屋 眞一 (日本医科大学付属病院 病理部) 【症 例】 40歳, 女性 【臨床経過】 30歳時, 後 11ヵ月 目 の 授 乳 中 に 右 乳 房 腫 瘤 に 気 づ き, 当 院 で T2N2M0の StageⅢa右乳癌の臨床診断のもとに拡大乳 切 (Ps) 施行, 充実腺管癌, n2 (24/29), ER (−) と診断さ れた. 術後 Psと Scに照射治療と CEF 3クールを施行 し, 補助治療として LH-RHaと UFT を 10年間継続し て行い disease freeと判定されていた. 平成 20年 12月, 右乳癌術後 10年 7ヵ月目に左乳房胸壁の固定性隆起を 訴え来院, 針生検で乳癌と診断しタキソールの術前化学 療法で可動性を得てから左拡大乳切 (Ps)施行した.組織 学的に充実腺管癌で ER (−) PgR (−) HER2 (−) で Triple negativeの診断であった. 前回の乳癌も再検した ところ Triple negativeであり, 類似の組織像を呈し, 左 に乳管内成 が認められないことより右乳癌の左乳房転 移が強く疑われた. 当院で治療した妊娠授乳期乳癌全 3 症例の転帰についても検討したので報告する. 12.アロマターゼ阻害剤が有効であった HER2過剰発 現 Stage (肺転移)の1例 高田 護,山下 純男,尾本 秀之 伊藤 博,諏訪 敏一 (深谷赤十字病院 外科) HER2過剰発現の進行再発乳癌に対してはハーセプチ ン療法を施行することが多いが, 今回, ホルモン療法の みを 用し有効であった症例を経験したので報告する. 症例は 73歳女性で, 2ヶ月前に左乳腺腫瘤に気づき, 他院より紹介され受診した. 左 C 領域に径 2.5cmの弾性 の腫瘤を触知した. 可動性は不良で, Dimpling を認め た.MMG にてカテゴリー5,US CT では 2.4cmの辺縁不 整の内部に石灰化を伴う不 一の腫瘤で, 腋窩リンパ節 に転移を認めた. 胸部 X 線, CT にて両側の多発肺転移 を認めた. 肝骨転移は認めなかった. 針生検にて invasive ductal carcinoma ER (+),PgR (+),HER2 (3+)の結果 をインフォームドコンセントし, ホルモン療法 (アロマ ターゼ阻害剤) を先行して治療した. 6ヵ月後の CT にて 肺転移はほとんどが縮小, 消失しており, 乳腺腫瘍も 1.2cmと縮小し, 副作用無く順調に経過している. HER2過剰発現の症例でもホルモンレセプター陽性例 では通常通りにホルモン療法より開始しても有効な症例 があると思われる. 若干の文献的 察を加え報告する. 13.アリミデックスが著効した原発性乳癌,多発肺,骨 転移の一例 君塚 圭,三宅 洋,大原 守貴 康 祐大,菊池 剛 (春日部市立病院 外科) 症例は 75歳, 女性. 2年前に左乳房に腫瘤を触知し近 医受診. 乳癌の疑いを示唆されていたが手術望まず, 放 置していた. また, 約半年前より, 腰痛, 左側胸部痛認め NSAID を内服中であった. H20年 8月上旬, 食欲低下を 主訴に来院. 黒色 , 高度の 血認め入院となった. 内視 鏡検査にて NSAID に よ る 胃 潰 瘍 の 診 断 と な り 禁 食, PPI による治療を行った. また, 左乳房に 4 cm大の腫瘤 を認め, US施行したところ, 40mm大の不整形の腫瘤認 め CNB施行. 病理検査で浸潤性乳管癌 ( 癌), ER+ PgR+ Her2 0の診断となった. 遠隔転移の精査で左肺 に多発肺転移, 多量の胸水を認めた. 骨シンチで肋骨, 椎 体はじめ多数の転移巣あり. アリミデックスの内服と, オキシコドンによる疼痛コントロールを開始した.AI 剤 内服により胸水貯留も無くなり肺転移も消失. 現在, オ キシコドン中止しているが骨痛も認めていない.AI 剤が 著効した 1例を経験したので報告する. 82 第 40回埼玉・群馬乳腺疾患研究会