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子育てをする女性の健康と生活の一考察 : イギリスのフェミニストによる健康の不平等(Inequalities in Health)の研究方法を通して

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(1)

子育てをする女性の健康と生活の一考察

―イギリスのフェミニストによる健康の不平等

(Inequalities in Health)の研究方法を通して―

尾 島 万 里

A Study on Health and Lives of Mothers Caring

for Their Children

-Based on British Feminist Research on Inequalities in

Health-Mari Ojima

はじめに

近年 イギ リスでは、女性 の健康問題 をジェンダーの視点か ら解明す る保健社会学や社 会政策論が盛 んである。 イギ リスにお ける健康 の不平等

(

n

e

q

u

a

l

i

t

i

e

si

nHe

a

l

t

h)

の社 会 ・経済 ・環境的原因に関す る研究は

1

8

6

0

年代 に最初の報告書が発表 されて以来の長い 歴史がある。特 に

、1

9

8

0

年の 『ブラック ・レポー ト

(

Bl

a

c

kRe

p

o

r

t

)

』の刊行以後、 イギ リス国内の所得間格差の拡大 と、それ に伴 って中流階級 と労働者階級 間の死亡率の格差 が増大 したことが多 くの研究 によ り指摘 されている。 この レポー ト発表後の

1

9

8

0

年代以 降、 フェ ミニス トたちによる女性 の健康の不平等 に関する研究報告が注 目されるように なった。 一般 に、先進国共通の傾向 として、女性 は男性 よ りも寿命は長いが、決 して健康 な状 態で生活 を続 けているわけではない とい う指摘があ り、 フェ ミニス トたちは、 この間題 はジェンダー特有である と主張 している。特 に、医療経済学者である ドヤル

(

Do

y

a

l

L)

は西洋医学の発達、経済発展 による栄養状態の改善及び妊産婦死亡率の低下が女性 の死

(2)

232 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第20号) 亡率 を減少 させ ることにつなが り、 さらに伝染病か らの脅威や出産時の危険性 の減少 な どが女性が男性 と比較 して長寿 になった と説明 しているが、その反面、女性が不健康な 状態で長生 きすることの社会的要因を強調 している。即 ち、家事労働や家庭 の経済状態 を含めた家庭環境が女性の健康 に影響 を与 えていると主張 している (Doyal1995)。 本論では、家事労働や家庭の経済状態 を含めた家庭環境が 日本の女性の健康 にどの よ うに影響 を与 えているのか を子育て中の母親 に焦点 をあてて、イギ リスの分析方法 を用 いて検討することとした。そこで、実際 に東京近郊で1998年夏 に保育所 に子供 を預 ける 母親 を対象 に実施 したアンケー ト調査結果か ら、女性の労働 (雇用形態 ・職業)、家庭 に おける物質的資源、家族形態、家事労働 とその健康状態 を調べて、それ らの健康の関連 性 を探 ってい くこととす る。

調査の概要

1.調査分析の枠組み 前述 したように、イギ リスでは女性の健康 に影響 を及ぼす社会経済的要 因に関す る研 究 は現在盛 んに行われ.Tいるが、ここではア-バー(ArberS)のモデルを紹介 しつつ、そ れ を参考 に し、分析の枠組み を図示す る。 アーバ ーは、女性の健康 を規定す る社会経済的要因を、物質的環境 、職業や雇用状態 の視点 とともに、家族 (maritalandparental)面での地位 と役割、即 ちジェンダーの視 点か ら捉 えなおす ことが重要である と指摘 している。男性の健康問題の場合 は、その職 業役割が第一義的に影響 を与 えるのに対 して、女性 は家族上の地位 と役割か らも判断 さ れなければな らない (Arber,1991)。そ して、重要 なのは家族役割 (familyroles)、雇用 状態 と物質的環境 (一特 に住宅環境一 )間が どの ような関係で女性の健康 に影響 を及ぼ すのか を分析することが重要であると強調 している。従 って後 にアーバ ーは、第 1に働 く女性 自身の職業上の地位や雇用状況、第2に家庭の物質的資源の状況、 さらに第3に 婚姻状態や家族役割状況 を複合的に考 える有効 なモデル (Arber,1997)を提示 している。 このモデルを参考 に しなが ら調査分析の枠組み を以下 に図示 した。 (図 1参照) そ して最終的には日本 において健康-の関連性 を探 ることが課題 となる。

2.

調査の対象 1998年9月に神奈川A市 と東京B区にある保育所6ヶ所 に依頼 し、そこに子供 を通わ

(3)

図1 調査分析 の枠組み (矢印は関連がある と事前 に仮定 した方向 を示す)

労働

家庭 の物 質的資源 Ⅲ 夫の労働 ・雇用形態 ・職業 ・所得・住宅形態 ・雇用形態・職業 (.学歴) ・家庭用品 (.学歴) Ⅳ 家族形態 Ⅴ 家事労働 の負担 ・世帯構成 ・夫のサポー ト ・子供の数 ・育児負担・家計管理 Ⅵ 健康状態 せ ている母親

5

5

0

名 を対象 に して、質問紙 ア ンケー ト形式で郵送 による方法で実施 した。 有効 回収率

5

4

.

5

%

であ り、分析対象者 は

2

6

7

名である。 アンケー トの内容 については図

1

の調査分析の枠組みで示 した Ⅰか らⅥの領域 の中で関係する と思 われる48項 目の質問項 目を作成 した。 そ して、各項 目間の間で常識的 に関連すると思われる項 目に関 して全て クロス集計 を行い、その相関係数 をとった。 (表 1参照) 詳 しい調査結果 については、

1

9

9

8

年度財 団法人東京女性財団 自主研究報告書』 を参照 して頂 くことに して、 ここで は、特 に各要因の健康への関連性が見 られた もののみ取 り上げて、考察 してい くことと す る。

Ⅲ 調査結果の要約

まず、本調査では、母親の年齢 は30歳代 に集中 し、約74%を占めている。次 に25歳か

(4)

234 清泉女学院短期大学研究紀要 (第20号) ら29歳が13.9%である。父親の年齢 は30歳代が約55%を占め、次 に40歳か ら44歳が多 く 17.2%を占めてお り、夫の年齢の方が若干高い傾向にあった。次 に母親本人の健康状態 については、実際 になん らかの病気 を抱 えている者が全体 と しては27.5%いた。病気の 種類 としては全体ではば らつ きがある ものの、耳鼻科系 と筋骨格系が若干多 く、それぞ 表1 クロス集計 クロス集計の中で相関関係があると認められたもの (独 立性の検定による) Ⅹ2分布 Y Ⅹ Ⅹ2値 自由度有意差判定確率 判定マーク n 独立係数 (99)Q51学歴 (275)Q49職業 90.67 20

0

.0000 [***] 231 0.31325 (96)Q48雇用形態 (103)Q55年収 176.68 28

0

.

0

0

0

0

[

*

*

*

]

257 0.41457 (99)Q51学歴 (103)Q55年収 76.18 35 0.00 0 1 [

*

*

*

]

257 0.24348 (276)Q50夫の職業 (278)Q56夫の年収 34.75 12 0.〔氾05

[

*

*

*

]

226 0.22639 (35)Q21B労働時間(夫)(191)Q56夫の年収 15.23 6 0.0186

[

*

]

223 0.1&178 (100)夫の学歴 (276)夫の職業 91.74 20

0

.

(

X

)

(

[

*

*

*

]

232 0.31442 (264)世帯構成B (106)Q58住宅 67.26 16

0

.

0

0

0

0

[

*

*

*

]

267 0.25095 (264)世帯構成B (107)Q59住居の広さ 142.5生 16

0

.

0

0

0

0

[***] 265 0.3667 (264)世帯構成B (154)家庭用品 28.09 4

0

.

(

)

[

*

*

*

]

267 0.32438 (40)Q25家計管理 (43)Q28おこずかい 15.36 3

0

.0015

[

*

*

]

258 0.24399 (35)Q21B労働時間(夫)(260)Q9C家事時間(夫平日) 22.77 9

0

.0067

[

*

*

]

210 0.19012 (35)Q21B労働時間(夫)tZ抑Q10C子供と遊ぶ時間戊平別 27.00 6 0.0001

*

*

*

]

214 0.25117 (99)Q51学歴 (40)Q25家計管理 34.98 15

0

.0025

*

*

]

260 0.21178 (275)Q49職業 (43)Q28おこずかい 14.52 4

0

.0058 [**] 231 0.25071 (275)Q49職業 (151)Q44症状点数 25.37 12 0.0132 [*] 231 0.19134 (14)Q10B子供と遊ぶ時間豚日 (151)Q44症状点数 48.37 27 0.0070

[

*

*

]

241 0.25865 (23)Q11G家事仔供の世話)(151)Q44症状点数 30.70 12

0

.(氾22

[

*

*

]

266 0.19614 (305)家事分担 (151)Q44症状点数 8.85 3 0.0314

[

*

]

265 0.18272 (151)Q44症状点数 (93)Q45症状への対処 27.33 15 0.0262

[

*

]

284 0.1791 (49)Q34長期の病気 (151)Q44症状点数 22.82 3

0

.

(

(

[

*

*

*

]

265 0.29345 (49)Q34長期の病気 (344)自覚症状回答パタン 10.89 4 0.0279

[

*

]

265 0.20268 (264)世帯構成B (49)Q34長期の病気 14.87 4

0

.0050

[

*

*

]

265 0.23687 (25)Q13子供の病気、障害 (49)Q34長期の病気 8.81 1

0

.0030

[

*

*

]

264 0.18272 (96)Q48雇用形態 (49)Q34長期の病気 30.61 4 0

.

0

000

*

*

*

]

265 0.33985 (34)Q21労働時間 (49)Q34長期の病気 10.74 3 0.0132 *] 244 0.20984 (103)Q55年収 (49)Q34長期の病気 27.10 7 0.00 0 3

[

*

*

*

]

255 0.32599 (190)Q55年収 (49)Q34長期の病気 20.22 2

0

.

0

0

0

0

[

*

*

*

]

255 0.28156 (277)Q55年収 (49)Q34長期の病気 23.39 3 0.0000

[

*

*

*

]

255 0.30289 (311)年収(本人+夫) (49)Q34長期の病気 18.53 5 0.(氾24 [**] 225 0.28695 17)Q11A家事(朝食の支度)(49)Q34長期の病気 12.09 4 0.0167

[

*

]

264 0.21402

(5)

表2 病気の種類 (MA)

No

.

病気 の種類 n %

1

循環器系 9 6.7 2 呼吸器系 8 5.9 3 消化器系 . 6 4.4 4 婦人科の病気 4 3.0 5 歯の病気

l

l

8.1 6 精神 .神経系 9 6.7 7 眼の病気 4 3.0 8 耳 .鼻の病気 29 21.5 9 皮膚の病気 14 10,4 10 泌尿 .生殖系 1 0.7

l

l

外傷 0 0.0 12 代謝障害 3 2

.

2 13 筋骨格系 27 20.0 14 貧血、血液の病気 7 5

.

2

15 その他 3 2.2 不明 0 *長期の病気 のある人のみ対象 れ20%を超 えている。そ して、その病 気 のため に生活の支障が 「ある」 と回 答 した者が21人 (31.8%)、「ややある」 と回答 した者が34人 (51.5%)いた。 (表2参照)。 自覚症状 に関 しては頭痛、疲 れ、い らい ら、肩 こ りな ど34項 目を設定 し、 それについて 「な し

「時々あ り

「頻 繁 にあ り」で答 えて もらい、各 々 0点 ・ 1点 ・2点 として各 自の総点数 を計算 した。平均 は15.4点であ り、 9点以下 の健康群が約3割 (31.1%)、10-19点 の平均群が約4割弱 (38.2%)、20-29 点 の 自 覚 症 状 の 多 い 群 が 2割 強 (22.8%)、そ して30点以上が7.9% と比 較的分散 した割合 となった。 (表

3

参照)。 以上の ことを踏 まえて、各要因の健康 の関連性 において、大 きく分けて4つの傾向が 見 られた。第1に職業別での健康状態の差 に関 して、販売 ・サ ービス業 に従事 している 者 に自覚症状 に訴 えが多い傾向にあった(図2参照)。次 に関連性 を示 していたのは長期

(3

ケ月以上)にわたる病気 の有無 と雇用形態である (図

3

参照)。それは専業主婦 の中 で

3

ケ月以上 にわたる病気が 「ある」 と回答 した者が半数以上 に及 び、他の形態 に比べ て多 く、次 にパ ー トタイム就労者の中で 「ある」 と回答 した者が多 く、 フルタイム就労 者 は最 も少 なかった。 第2の特徴 としてあげ られるのは、長期の病気の有無 と年収 との間に相関関係が見 ら れた。本人の年収で見 ると、130万円未満の者の中で病気が 「ある」と回答 した者 の割合 が最 も高 く、400万円か ら500万 円未満で病気が 「ない」が100%になるの を境 に、それ以 上の収入 になる と、逆 に 「ある」が増 える傾向が見 られた。 (図4参照)。夫の年収 と合 計 した ものでは、(ここでは、本 人の場合300万円未満 を 「低」、それ以上 を 「高」に した。

(6)

236 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第20号) 全体 な し 時々あり頻鮒二あり Q44ア症状 267 97 1

3

5

35 (頭 痛 ) 100.0 36.3

5

0

.

6

1

3

.1 Q44イ症状(疲 れ) 1020.670 1746.2

3

7

9

.

9

1

4

1

5

2

.

7

2 Q44ウ症状(の ど) 10.02607 61164.4

3

5

9

.

4

2

3

.

9

4

Q44エ症状(動博 、息切 れ) 1020.670 823.294

1

0

2

.

8

5

5

1.65 Q44オ症状(発疹 、か ゆみ) 1020.670 710.870

1

7

4

.

6

7

1

2

3

.34 Q44カ症(集中力低下)状 10.02670 710.870

2

3

6

.

3

6

6

1

.74 Q44キ症状(朝方気分落 ち込み) 10.0267

0

8210.55

1

2

3

.

4

7

6

1

.87 Q44ク症状(耳が痛い) 10.02670 8252.70

1

0

2

.

9

9

4

l.l1 Q44ケ症状(せ き、たん) 1020.670 7219.10

1

3

3

.

5

1

7

21.9 Q44コ症状(不眠) 1020.670 724.090

1

9

5

.

1

1

6

1.60 Q44サ症状(食欲不振 ) 1020.670 7219.01

1

6

4

.

4

5

4

1..25 Q44シ症状(生母痛 ) 1α)26,70 6126.26

2

1

5

.

3

7

1

6

4.45 Q44ス症状(瀕 尿) 1(X2)6.07 9255.55

3

1

.

0

7

0

.27 Q44セ症状(い らい ら) lo2o.670 3081.3

4

1

3

1

,

6

4

2

6

7.02 Q44ソ症状(吐 き気) 10.02670 829.395

8

2

.

2

2

2

6

.2 Q44夕症状(歯 痛 ) 1020,670 71191.5

2

0

5

.

4

2

8.222 Q44チ症状(疑 り深い) 1020.670 8252.48

l

l

3

.

0

2

3

.94 Q44ツ症状(人の 目が気 になる) 10.02670 614.738

2

5

6

.

8

5

926.7 Q44テ症状(便秘) 1020.670 516.529

2

3

6

.

6

3

1

9.525 Q44ト症状(下痢) 267 214

4

1

12 全体 な し 時々あり頻矧二あり Q44ナ症状(手足 の動 きが悪 い) 10.02607 829.490 61.78 3.94 Q44ニ症状(肩凝 り)

1

(X)26.07 236,63 20.524 516.502 Q44ヌ症状(め まい) 1∝)26.07 5195.28 3081.3 102.85 Q44ネ症状(手足 の しびれ) 10.02607 823.221 123.02 4.139 Q44ノ症状(腰痛) 10.02670 3180.22 318.85 30.800 Q44ハ症状(何もする気にならか ー) 10.02607 610.627 328.26 71.91 Q44ヒ症状(迷 う) lo2o.670 614.710 225.91 1337.9 Q447症状(胃の もたれ、胸やけ)

1

020.607 7139.46 225.91 4.125 Q44へ症状 267 166 70 31 (腹痛 、 胃痛 ) 1(泊.0 62.2 26.2 ll.6 Q44ホ症状(眼の疲 れ)

1

(2刀.670 5103.56 318.13 184.94 Q44マ症状(手足 の関節痛 ) le2o.670 714.959 195.39 51.56 Q44ミ症状(身体が熱い、だるい) 1020.670 616.778 256.71 82.22 Q44ム症状(I-トHlTfに張 りが ない) 10.02670 710.898 195.93 92.54 Q44メ症状(鼻づ ま り、鼻水) 267 181 60 26 全体 04-4症状瓜数9 10-19 20-29 3 0-合計 267 83 102 61 21 1(泊.0 31.1 38.2 22.8 7.9 神奈川A市

1

165 57 65 34 9 0 0 .0 34.5 39A 20.6 5.5 東京B区 102 26 37 27 12 汁)ilr'ii.Jl.F状の点数は、各項 目の 「な L」-0,EJ】、 「時 々あ り」 -1,EJ】 「頻繁 にあり」-2[1.として各ケースごとに給.lJl数をT,卜や した ものo 夫の場合 は600万円未満 を 「低」、600万円以上 を 「高」 に した。)本人がパ ー トタイム就 労で夫の年収が高い者が長期 の病気が 「ある」 と回答 した者の割合が最 も高かった。本 人 と夫の収入がほぼ同 じ程度 な均等型 は収入の高低 に関わ らず、「ない」と回答 した者の 方が圧倒的に多かった。 (図

5

参照)。 第3の特徴 は、育児 と健康 についてであるが、休 日に子供 と遊ぶ時間が長い者は症状 点数 も少なかった。 (図6参照)。その他では、家事分担 と自覚症状点数でわずかなが ら の関連性 は見 られた ものの、母親本人の家事時間の長 さ、夫の家事時間の長 さ、家計管 理の主体者 と病気の有無や 自覚症状点数 との関連性 は見 られなかった0

(7)

第4の特徴 は、母子世帯 及 び母子世帯 と母 の親族 で同居 している世帯 は全体 の13.1

%

であるが、この世帯で長期の病気が 「ある」 と答 えてい る者 の割合が高か った。(図7参 鰭)。母子世帯 で長期 の病気が 「ある」 と答 えた者 の職業、雇用形態、年収 を見 てみ る と、 約8割がパ ー トタイム就労者 で販売 ・サ ー ビス業従事者が他職種 に比べ て最 も多 く、半 数以上 を占め、 しか も年収130万 円未満が 7割 に上 った。 特 に母子 と母 の親族 と同居 している者 の中で長期 の病気が 「ある」 と答 えた者 が多 く、 約7割 を占めているが、この うちの約 8割が年収130万 円未満 で、病気 による生活 の支障 があった。 図2 職業 *自覚症状点数 9

(8)

238 清泉女学院短期大学研究紀要 (第20号) 図3 雇 用 形 態 *長 期 の 病 気 恒 =∴叫 合計

る J

Jな

211n02611806295 ■■27.5■■ 72.5 圏 専業主婦その他パートタ正規の職員.家業手伝 いイム.ア従業員ルバイト 12.7 87.3

㌔-

39

.

2

-

60.8 \

5

5

.

6

44.4

.

..■■■.‥ 22.2 77.8 \、\ 50.0- 50.0 図4 年 収 *長 期 の 病 気 ト 日下 「 合計

J

Jな

21n4231611229525735 I 27.5■■ 72.5 宮 36479151030000300-90000000-3万 円以上-5-4-6-7万円0000万 円未満00000000未満万 円未満万 円未満万 円未満万 円未満万 円未満 41.7

-

58.3 _

/

14.9

85.1

2

2

.

9

-

77.1

100.0

1

5

.

8

84.2 \

3

3.3- ■ 66.7 \ 50.0丑■■■■ 50.0 100.0

(9)

また、障害及び病気の子供 を持つ母親では半数が母親本人の長期の病気が 「ある」 と 答 えていた。 この母親本人たちの雇用形態や職業見 ると、半数以上 はパ ー トタイム就労 者で販売 ・サービス業 に従事 していた。 さらに年収でみる と、 4分 の3が130万 円未満 で あった。 図

5

年収 (本人+夫) *長期の病気 匝 司

l

合計

ある

JJ ない 2n23567225205215

■2

7

.

5

-

72.5 午 収 禾人 塞 本人.本人パート本人.本人パート均等型(均等型(常.常.常.常.高+夫.低+夫.+夫.+夫.低)高)高低高低

-3

1

.

9

-■

68.1 \

5

2

.0 48.0

-

/ 14.0 86.0 ■■ 14.3 85.7 \ 23.8- 76.2 / 13.6 86.4

考察

1.物質的資源 と健康 との関連性 イギ リスにおける健康の不平等の数多 くの研究では、それが起 きる原因 として、社会 ・ 経済 と物質的環境が人間の健康状態 を規定する一番の要 因であるとしている。その第1 人者 であ るタウ ンゼ ン ド(TownsendP)は、特 に物 質的剥奪 (materialdeprivation) と健康 の関連性 に焦点 をあてて きた。 タウンゼ ン ドは住環境 ・労働状態 ・雇用状態 ・所 得 を生活の物質的環境要素 として捉 え、 これ らが劣悪 な状態、つ ま り物質的剥奪が最 も 個人の健康状態 を規定す る と主張 して きた (Townsend1990b)。そ して、アーバ ーは前 述 したそのモデル (図1参照)において、女性の場合 は、物質的資源 は Ⅰの本人の職業

(10)

240 清泉女学院短期大学研究紀要 (第20号) 図6 子供 と遊ぶ時間 (休 日) *自覚症状点数 図7 世帯構成 *長期の病気

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合計 ある J ない 21n238116134525

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72.5 囲 三世代家族 (母子世帯+妻親族核家族 (母子世帯三世代家族 (夫.秦.夫親族)妻親族)千)

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(11)

とⅢの夫の職業 に規定 されているもの として位置づけている。つ ま り物質的資源の安定 は職業上の地位 に密接 に結 びついている。 この調査では物質的資源 を表す もの として収 入 と住宅 を変数 とした。物質的資源の一要素 として、住宅 については、イギ リスの場合、住 宅形態 と健康の関連性 についての多 くの報告があ り、劣悪 な住環境 は人間の健康 に影響 があると考 え られている。例 えば、湿気が多かった り、暖房設備が十分でない住宅 は悪 影響 を与 えている とい う証拠がある(Graham 1991)。 また、イギ リス国内では生命 にか かわる事故の40%が家庭 内で起 きてお り、特 に女性 は家庭内で過 ごす時間が男性 よ りも 長いので、劣悪 な住環境 は女性 によ り大 きな影響 を与 える (Graham 1991)と住宅形態 と女性 の健康いついては明確 に関連性 を示 している。 しか し、本調査か らは住宅形態 と 健康の関連性 は統計上か らは見 られなかった。 また、質問紙の中で、子育 てをす る女性 の健康状態 に影響 を与 えていると本人 自身が感 じている主観的要素11項 目 ((∋地域 の環 境、②経済状況、③住宅状況、④家事 の負担、⑤子育ての負担、⑥夫の支 え、⑦家族関 係、(参近所づ きあい、(9夫の親 との関係、⑲仕事 の負担、⑪ その他)の中で複数回答 を 求めた ところ、住宅状況 と答える者は2番 目に少 な く、主観的判断か らも明確 に示す こ とはで きなかった。 ところが、収入 においては関連性が見 られた。Ⅲの調査結果の ところですでに述べ た が、本人の年収が130万 円未満の者 と高収入の者が病気が 「ある」と回答 した者の割合が 高 く、中程度の年収で 「ない」 と回答する者の割合が高かった。次 に、夫 と本人の所得 のバ ランスが女性 の健康 に影響 を及ぼ しているのではないか とい うことである。つ ま り、 夫 と本人の収入の差が高い者 に長期の病気が 「ある」 と回答する者の割合が高い こと、 夫 と本人の収入がほぼ同 じ程度 にある者 に 「ない」 と回答す る者が多かったことは注 目 すべ き点である。 イギ リスの健康 と不平等の研究の中では所得 と女性の健康の関連性 を その配偶者 の属す る社会 階級別で長年 にわた り測定 されていたが、アーバーやペ イ ン (PayneS)は従来の測定方法では、結婚 している女性 は夫の職業で分類 されて しまう と高い階層 に位置付 け られる場合が多い。 また、家計の中の資源 は (所得分配 を含 めて) 夫婦間で平等 に分配 されているか どうかは疑 わ しい。そ こには夫婦間の経済力の差が反 映 して くる。そのために既婚女性の場合 は女性 自身の職業 と夫の職業や特性 の両面 か ら 押 えてい くこと、家庭 内の資源の分配方法 を見てい くことを主張 して きた (Arber,1997; Payne,1991)。本調査では家計の総所得で見るのではな く、夫婦間の経済力の違いが、そ

(12)

242 清泉女学院短期大学研 究紀要 (第20号) の夫婦 間の力関係や行動 に影響 を与 え、それが さらに力関係の弱者の方の健康 に悪影響 を及ぼすのか もしれない。 しか し、 これ を把握するためには質的調査 や家計の夫婦間の 分配方法の調査が必要 とな り、今後の課題 としたい。

2.

雇用形態 と健康の関連性 母親本人の労働で一番関連性 を示 していたのが、長期 に渡 る病気の有無 と雇用形態で あった。 イギ リスでは

1

6

歳以下の子供 を持つ母親の

2

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が フルタイム

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がパー トタ イム

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が専業主婦である

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アーバ ーやバー トレイ

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らによれば、フルタイムやパ ー トタイムで働いてい る女性 は肉体 的 に も精神 的 に も専業 主婦 よ り健康 で あ る と述べ てい る

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Bartleyetal,1995)

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ここでの調査 は保育所 に預 けている母親 を対象 とした ものなので、母親が病気である がゆえに専業主婦で子供 を保育所 に預 ける とい うことが十分 に考え られるので、一概 に 専業主婦であることが病気 に影響す る とはいえない。但 し、パ ー トタイム就労者の母親 本人が フルタイム就労者 よ りも長期の病気が 「ある」と答 えた者が多い こと (図3参照)、 その

3

0

.4%が販売 ・サ ービス業 に従事 していることを考 える と雇用の安定性やある程度 の レベル以上の 自分 自身の収入がある とい うことは健康 に影響す るのであろう。

3.

家事労働 と健康 について イギ リスの研究の中では専業主婦が家庭外労働 している女性 よ りも不健康であるとい う数多 くの報告か らもわかるように、家庭外労働 に従事 しているか否かに関係 な く育児 と家事の負担が女性の健康 に悪影響 を与 えると言われている

(

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1

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1

)

。 ところが、 この調査か らは統計上では家事分担 と自覚症状点数のみわずかな関連性が見 られた。育 児 に関 しては自覚症状点数で相関が見 られたが、休 日に子供の遊ぶ時間が長い方 に訴 え が少 なかった。つ ま り、単純 に育児の時間が長いか らとい うことが育児の負担 につなが る とは言い切れず、む しろ夫の協力やその内容が重要である と言 えるか もしれない。

4.

家族形態 と健康 との関連性 母子世帯及び母の親族 と同居 している世帯の母親が長期の病気が 「ある」 と回答 して いる割合が高かった。ポパ イ とジ ョーンズ

(

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によれば、両親が揃 って いる家庭 の母親 よりも母子家庭の母親の方が不健康であると報告 されている。その理由 として、物質的環境 と夫の支 えが な く家事 ・育児 をしなければならないことを挙げてい

(13)

る。 (Popay

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1

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)

。本調査 では、母子家庭 で雇用が安定 してい な くて、低所 得の女性 に病気 を持 っている者が集中 している。 また、単 なる母子家庭 よりも母親本人の親 と同居 している者 の方が病気が 「ある」 と 回答 した者が多かった。前述 したが、この本人たち も年収

1

3

0

万 円未満で、病気 による生 活の支障があった。 この ことか ら、 自分の所得 も少 な く、病気 のため に親 と同居 してい ることが考 えられる。欧米では親 と同居するとい う習慣が 日本 に比べ てない。そのため、 母子家庭で安定 した仕事が得 られず、なおかつ病気 であれば直 ちに貧困につなが りやす い。 しか し、 日本の場合 は、親 と同居 しているか、あるいは同居 を していな くて も何 ら かの親か らの援助 を受 け られる場合が多 く、生活 してい く上での物 質的資源が満 たされ やす く、直 ちに貧困にはつなが らない。つ ま り、親が娘世帯の貧困化 を防 ぐクッシ ョン になっているともいえるのではないか。 また、病気 ・障害 を持 っている子供 を持つ母親 について も母子家庭 同様 に、雇用が安 定 していな くて、低所得の女性で育児の負担が多い者 に病気が集中 している。

まとめ

この調査では、アーバ ーのモデルの検証 とい うよ りも、 このモデルを使用 して女性 の 労働 ・配偶者の労働 ・家事労働の負担 ・家庭 の物質的資源 ・家族形態 と健康 との関連性 探 ることを試みた。 アーバ ーのモデルでは夫の労働 (雇用形態 ・職業)が妻 の病気 の有無や 自覚症状 との 関連があるとい うことであったが、ここでは相関性 は見 られなかった。 しか し、以下の

3

つの点で健康 との関連性が考え られた。 第- に、母親本人 自身の職業、つま りパ ー トタイム就労者で販売 ・サ ービス業従事者 で年収

1

3

0

万円未満の女性が病気や自覚症状の訴 えが他 と比べ て多い ことか らみて も、本 人の労働の特性が直接 に女性 の健康 に影響 して くる。 第二 には、社会福祉 の対象 とな りうる母子家庭や病気 ・障害 をもつ子供の母親 は直接 に女性 の健康 に影響 して くる。 第三 には、夫婦間の経済力の違いが女性 の健康 に影響 を与 えているのではないか とい う可能性が示 された。前述 した、子育てをする女性 の健康 に影響 を与 える11項 目の要因 の中か ら母親 自身が選択する母親の主観的判断では、経済状況 ・家事 の負担 ・夫の支 え

(14)

244 清泉女学院短期大学研究紀要 (第20号) の3つの項 目を選択 した者が圧倒的に多かった。統計上では家事 の負担 は明確 には現れ てこなかったが、母親本人 自身は現実の生活では実感 していることが言 えると思 う。夫 婦 間の経済力の違い と家事分担のバ ランスのあ り方が女性 の健康 に影響 をもつ潜在的な 社会的不平等が隠 されていると言 えるのではないか。 しか し、この3つの要 因が具体的に実生活の中で どの ように絡み合 って健康 に影響 を 及ぼ しているのか、 また、今回は家事労働 の内容や家計構造 については踏み込んでいな いが、 これ らを探 るために今後は質的な調査 を加 えた形での調査研究 を課題 としたい。 (本研究 は財団法人東京女性財団の助成 を受けて実施 した ものである) 参考文献

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研 究名 社会的不平等 と女性 の健康 に関する潜在的問題 -英国のフェ ミニス トによる健康 における不平等 (inequalitiesinhealth)の研究方法 を踏 まえて、 日本の実態 を明 らかにする

-

」 1999年3月29日

図 1 調査分析 の枠組み ( 矢印は関連がある と事前 に仮定 した方向 を示す) Ⅰ 労働 Ⅱ 家庭 の物 質的資源 Ⅲ 夫の労働 ・雇用形態・職業 ・所得 ・住宅形態 ・雇用形態・職業 (.学歴) ・家庭用品 (.学歴) Ⅳ 家族形態 Ⅴ 家事労働 の負担 ・世帯構成 ・夫のサポー ト ・子供の数 ・育児負担・家計管理 Ⅵ 健康状態 せ ている母親 5 5 0 名 を対象 に して、質問紙 ア ンケー ト形式で郵送 による方法で実施 した。 有効 回収率 5 4
表 2 病気の種類 ( MA) No . 病気 の種類 n % 1 循環器系 9 6. 7 2 呼吸器系 8 5. 9 3 消化器系 . 6 4 . 4 4 婦人科の病気 4 3

参照

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