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甲状腺内胸腺癌におけるTERTプロモーター変異の同定 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 田原 一平 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博4甲 第 287 号 学 位 授 与 年 月 日 令和 2 年 3 月 19 日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻 学 位 論 文 題 名 甲状腺内胸腺癌におけるTERTプロモーター変異の同定

(Identification of TERT Promoter Mutations in Intrathyroid Thymic Carcinomas) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 榎本 信幸 委 員 教 授 市川 大輔 委 員 講 師 吉澤 邦夫

学位論文内容の要旨

(研究の目的)

胸腺様要素を示す癌腫carcinoma showing thymus-like elements (CASTLE)とも呼ばれる、甲状腺 内胸腺癌intrathyroid thymic carcinoma(ITTC)はまれな悪性腫瘍であり、頻度は甲状腺悪性腫瘍 の0.1-0.15%である。胸腺癌thymic Carcinoma(TC)と組織学的および免疫染色での類似性を示しI TTCと称される。例えば、ITTCはTCと同様の胞巣状増殖形態をとる。また一般にTCのマーカーとして 使用するCD5およびc-KITなどの免疫染色で陽性像を認める。このような組織学的類似性を示すが、T Cの臨床経過が不良であるのに対し、ITTCはより良好な経過をとる。細胞増殖やその性質が類似して いるのにも関わらず、なぜ臨床経過が大きく異なるのか現在のところ明らかでない。加えて、希少が んであるITTCの遺伝子変異検索報告は少なく、それらの検討ではEGFR変異症例を1例認めたという程 度である。今回の研究では遺伝子変異検索を含めてITTCとTCの比較検討を行い、臨床経過の差異に関 与する原因、ITTCの臨床病理学的特徴について検討する。 (方法) 甲状腺専門病院である隈病院からITTC9例を収集し、胸腺癌は当院4例、山梨県立中央病院3例、市立 甲府病院1例の計8例を収集した。年齢、性別、腫瘍径やフォローアップ期間などの臨床情報および、 パラフィンブロックを収集した。これらの症例を組織学的に再評価し、免疫染色を複数種類施行した。 免疫染色はCD5、p63、CD117/c-KIT、Ki67、p53、TTF-1、サイログロブリン、PAX8、EGFR、PD-L1/ C D274であり、EBER in situ hybridization(ISH-EBER)も併せて施行した。またパラフィンブロック からのDNA抽出を行い、PCR、Sanger Sequence法で遺伝子変異の有無を検索した。対象とした遺伝子 はEGFR、KIT、BRAFV600ETERT promoterである。

(2)

(結果) 臨床情報では、年齢においてITTCはTCとの有意差を認めた(54.2±9.3、66.8±9.6、p = 0.043)。 またフォロー期間でITTCは全員生存していたがTCは腫瘍死を2人認めた。 免疫染色においてITTCおよびTCともに、胸腺癌マーカー(c-KIT、CD5、p63)は陽性、甲状腺マーカ ー(TTF-1、サイログロブリン、PAX8)およびISH-EBERはいずれも陰性であった。Ki67・PD-L1では陽 性率などの有意差はなかったが、EGFRでは有意差を認めた。p53過剰発現(陽性率60%をカットオフ 値)症例はITTC(7/9)でTC(2/8)より多く認めた。Sanger Sequence法でEGFR変異はITTCの11%(1 /9)およびTCの25%(2/8)で認められ、KIT変異とBRAFV600Eは、ITTCとTCの両方で特定されなかった。

22%(2/9)のITTCにTERT promoter C228T変異を認めたが、TCでは認めなかった。TERT promoter C 228T変異ITTCを他の野生型ITTCと比較したが、臨床的および組織学的所見に関する有意差は認めなか った。 (考察) 今回の検討ではITTC9例とTC8例の、臨床病理学的特徴を比較検討した。ITTCは組織学、免疫組織化学 においてTCとほぼ同様の特徴を示した。しかしフォロー期間中の死亡例がないなど、過去の報告と同 様にTCと比較しITTCの予後は良好であった。ITTCにおいてもリンパ節転移・遠隔転移はあり、良好な 予後には遺伝子異常を含む他の要因があると考える。特に今回の検討ではITTCにのみTERT promoter 変異が存在し、これがTCとの相違点である可能性がある。事実、TCを含む胸腺上皮腫瘍ではTERT pr omoter変異が報告されていない。TERT promoter変異は、悪性腫瘍において一般に予後不良因子とな りうるが、今回は野生型との比較で臨床的、組織学的に有意差を認めなかった。TERT promoter変異 がその臨床経過に関わるか明らかではなかったが、この結果にはサンプル数の少なさも影響している と考える。

(結論)

ITTC は胸腺上皮細胞分化を伴う甲状腺悪性腫瘍であり、組織学的および免疫組織化学的所見は TC と 非常に類似している。ただし、ITTC は TC に比べ良好な臨床経過を示す。今回 ITTC に認めたTERT promoter 変異が発癌に関与する遺伝子変異の 1 つと考えられ、TC との臨床経過の差異に関与してい る可能性もあると判断する。

論文審査結果の要旨

1. 研究の学術的意義。

甲状腺内胸腺癌intrathyroid thymic carcinoma (ITTC)は胸腺上皮細胞分化を伴う甲状腺悪性腫瘍であり、 組織学的および免疫組織化学的所見は胸腺癌thymic Carcinoma (TC)と非常に類似しているが、ITTCはTC に比べ良好な臨床経過を示す。本研究はITTCに認めたTERT promoter変異が発癌に関与する遺伝子変異 の1つと考えられ、TCとの臨床経過の差異に関与している可能性もあることを示したもので、当 該 分 野 にお いて非 常 に高 い学 術的意 義 を有 する。 2. 研究の争点、問題点、新しい視点。 本 研 究 では以 下の結 果が得 られており、当 該 分野 に研 究における未 知 の問 題 の解決 に貢献 し、新 たな視 点 を提 示 するしたである。ITTC9例とTC8例の臨床病理学的特徴を比較検討、ITTCは組織学、免 疫組織化学においてTCとほぼ同様の特徴を示したがフォロー期間中の死亡例がないなど、過去の報告と同

(3)

様にTCと比較しITTCの予後は良好であった。ITTCにおいてもリンパ節転移・遠隔転移はあり、良好な予後 には遺伝子異常を含む他の要因があると考えられた。特に今回の検討ではITTCにのみTERT promoter変 異が存在し、これがTCとの相違点である可能性をしめした。実際、TCを含む胸腺上皮腫瘍ではTERT promoter変異が報告されていないこれが本研究で新規に見出された点である。TERT promoter変異は、悪 性腫瘍において一般に予後不良因子となりうるが、今回は野生型との比較で臨床的、組織学的に有意差を 認めなかった。TERT promoter変異がその臨床経過に関わるか明らかではなかったが、この結果にはサンプ ル数の少なさも影響していると考えられる。これらの結果 を踏 まえて、今 後 はITTCにおけるTERT promoter変異の役割に関 してさらなる検 討 が期 待 される。 3. 研究及びデータの信頼性。 本研究の検討およびデータ解析は綿密かつ妥当、正確に行われており検討結果の信頼性は非常に高いと 判断された。また、研究の遂行は倫理的にも適切になされていると考えられた。 4. 学位論文の改善、各審査委員の具体的質問内容およびそれに対する申請者の具体的回答など。 (最終試験結果の要旨を参照)

参照

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