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Smithの「国際語としての英語」の思想について

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Smithの「国際語としての英語」の思想について

On Smith's ldea of 'English as an International Language'

I

は じめに

英語がその母語 ・非母語話者を問わず、世界の 多数の人々に よって広範な地域で使用 され、その 用途 も拡大の一途をた どっているのは動か し難い 事実である。 この原因は、歴史的には、19世紀の イギ リス帝国主義 と20世紀のアメリカ合衆国の政 治 ・経済的影響力に求め られ るが、その所産 とし ての英語の今 日的状況は、世界の共通語あるいは linguarrancaの性格をおびるに至 っている。 し か しその反面、英語の数的、地理的拡大 と使用量 の増大は他のどの言語に も見 られない数多 くの変 種を生み出す ことにもなった。 従 って英語の もつ、この 「標準化」 と 「多極イb とい う相反す る2側面か ら様々な問題が生 じるの も当然なことである。 この点に閑 し、Strevens (1980:61)は次 の5つ の懸念をあげている。 (1)英語変種の受容基準をどうす るのか。 (2) 英語に よる国際的相互理解は維持できるのか。 (3) 多様な非母語変種にどのような価値判断を下 すのか。 (4)記述 と類型化 とい う専門上の問題をどうす る のか。 (5)英語変種のい くつかは教育的モデル として適 切か。 これ らはいずれ も英語教育の 目的 と方法に関わ る重要な問題を含んでいると思われ、早急に解決 を迫 られ る懸念である。 ところでSmith(1983)は「国際補助語 としての英 語」(EnglishasanInternationalAuxiliaryLan一

guage)の考えを提唱 して、世界における英語を新

たに見直 し、その体系のなかで 「国際語 としての 英語」(EnglishasanInternationalLanguage)の 概念を明確に打出している。1この 「国際語 として

Takumi lhara

の英語」は、エスペ ラン ト語 といった作 られた1 つの人工言語を志向す るものでもなければ、Ba

-sicEnglishやNuclearEnglishといった自然語を 縮少 した言語の必要性を唱えるものでもない。 こ れは世界におけ る英語使用の今 日的状況のなかで、 国際的な 目的で使用 されている英語の存在に意義 を認めることか ら案出された ものであ り、上記の 懸念 を解決 してい く上で有効な手だてになるので はないか と思われ る概念である。 そ こで本稿では、まず、 「国際補助語 としての 英語」 と 「国際語 としての英語」の概念を明瞭に す る必要か ら、世界における英語の現状を、従来 よくとられてきた視点で概観 してみ る。次に、「国 際補助語 としての英語」の概念について詳述 した 上で、 「国際語 としての英語」の概念を整理 して み る。さらに、 「国際語 としての英語」の概念の 妥当性 と問題点を国際語の条件に照 らして論 じ、 最後 に、Strevensの懸念に1つの解決を試み るこ とにす る。

世 界 にお け る英語 の現状2 1. 英語の使用状況 母語 としての英語は、3億以上の人に よって話 されてお り、その話者の大部分は北米、イギ リス 諸島、オース トラ リ7、ニュー.)I-ラン ド、カ リ ブ諸 国、南アフ リカの住民である。 この母語 とし ての英語に も、他のどの言語 とも同様、地域的、 社会階層的な変種は数多 く存在す る。 ところで、 これ らの地域の国のなかには、英語を唯一 の使用 言語 としていない国もある。例えば、カナダのケ ベ ックではフラソス語が話 されているし、南アフ リカの大多数の住民はアフ リカ-ソスや/ミソツー 語を話 している。 さらにアイル ラン ド人や ウェ-- 75

(2)

-ルズ人の多 くは ケル ト語話者である。 しか し、 こ れ らの英語の非母語話者 も、それぞれの国内では、 政治、商業、社会、教育 とい った活動の 目的で、 英語を第2言語 として使用 してい る(Quirketa1., 1985:4)

0

他方、英語の母語圏 も含めた世界の英語の非母 語話者 も3億 と言われてお り (Cr.Strevens.1980

:

6

2

)

、英語を第

2

言語 として使用 している場合 と 外国語 として使用 してい る場合 とがあ る。 第2言語 としての英語が存在す るのは、植民地 支配 といった歴史的要因 と深い関わ りがあ り、第 2次世界大戦後独立 したそれぞれの国や地域の置 かれてい る政治、民族、言語の状況に応 じて、英 語の多様な使用状況 と多 くの確立 した変種が存在 す る。Kachru(1985:ll-15)は世 界 の英語を、分 布のタイプ・獲得のパ ターン ・機能の範囲を表わ す円に愉えて眺め、それを3つの同心 円に区分 し て、それぞれinnercircle.outercircle,e xpand-ingcircle と呼 んでいるが、 これ らはそれぞれ 母語、第2言語、外国語にほぼ相当す るとみて よ い。彼に よれは、outercircleであ る第 2言語 と しての英語は多様性 と独特な特徴を もつ大 きな言 語共同体を形成 してい るが、その主な特徴は、英 語が2言語国家や多言語国家において諸言語の1 つにす ぎない場合 と、多言語国家において言語政 策上重要な地位を占めてい る場合 とがある。例え は、ナイジ ェリアでは公用語であ り、ザ ソビアで は国語の1つであ り、 シンガポールでは政治、司 法、教育上の主要言語 となってい る。 またイン ド では憲法で準公用語に扱われてい る。 この円の英語を機能的にみた場合、 3つの特徴 がある。 まず、 この英語が伝統的に英語を母語 と しない文化圏で機能 してい る点である。地域的に みて、英語の異文化に またが る広が りは、かつて の植民地言語 (例、 フランス語、ポル トガル語、 スペイ ン語 )や、宗教言語 (例、 アラビア語、サ ソスク リット語、パー リ語 )や、貿易 ・商業言語 (ビジソ、バザ ール言語 )とい った、広域 コミュ ニケーシ ョンに関わ る諸言語のなかで も先例をみ ない もの とな ってい る。次に、英語使用領域のス ペ ク トルが広い点であ る。様 々な程度の英語使用 能力を もつ社会成員に よって、国内語 として、ま た国際語 として使用 されてい る。 そ して第3に、 地域に よっては、小説、短編 、詩、随筆 とい った ジャンルで、その土地に固有な文学的伝統を育 ん でい る点であ る。 この ように この円の英語は母語 ではないが、社 会、教育、行政、文学 の領域 で幅広い機能範囲を 有 し、 しか も、使用者 の社会階層が広範に及んで い ることか ら、確立 した変種 の根 を土壌深 く降ろ してい ることになる。 外国語 としての英語 に相当す るexpandingcir -cleは、 中国、 ソ連、北欧諸 国、 日本など世界の 多数の国を包括 し、英国の植民地支配 とい う歴史 的要因 とは直接関わ りな くで きた円である。それ ゆえ この円の英語はそれぞれの国内で特別な社会 的地位や機能を有す ることがな く、専 ら国際 コ ミ ュニケ-シ ョソの手段や教科 目の1つ として用い られてい る。 この使用者数は拡大 の一途を辿 って お り、またそれゆえ、英語を国際語 として位置づ け よ うとす るのは この円の使用者 だ とい うことに もなる。 Kachru の言 うこれ ら3つの円が明確に区分で きないの も言語的現実であ る。例 えは、 シンガポ ールの英語は機能拡大 の一途 にあ り、多 くの使用 者に とっては第2言語か ら母語化 あるいは擬似母 語化 しつつあ る。逆 にマ レーシアの英語の ように、 その使用 と機能が縮少 しつつあって、将来第2言 語か ら外国語に転化す る可能性のあるもの もある (Platteta1.,1984:22)oまた、ス リランカの よう に、英語がその社会的、文化的、経済的重要性を 維持 しつつ も、一時期その公的地位を失遂 し、現 在公用語 としての地位を回復 しつつあ る国 もあ る (Quirketa1.,1985:5)。さらに、南 アフ リカや ジ ャマイカとい った国を、英語 の使用者数 と機能か らみて、即座に第1の円に分類 して よいか否か と い う問題 もある。 この ような点を考慮 した場合、 母語、第2言語、外国語 とい った言語使用の区分 は明確な ものではな く、Kachruの言 う同心 円は すべてが実線 で措け るものではな く、各境界線は 破線 で措 くべ きもの とみ るのが よいであろ う。 この同心 円の言語を 「英語」 とい う名で括 るな らば、 この円には数的、地理的分布 と多岐にわた る使用の結果、種類 と機能において実に多様な英 語 の変種が内包 されていることになる。そ こで次 に、世界におけ る英語 の現状 を よ り詳 しくみ るた

(3)

めに、英語の変種を社会言語学的観点か ら検討 し てみ ることに しよ う。 2. 英語の変種 英語 の母語圏 と非母語圏におけ る地域的ない し は、社会階層的な言語変種のことを ここでは、英 語 の局部形 と呼ぶ。英語の局部形を分析 した もの にStrevens(1980)があるが、彼 は英語の局部形を

DefiningparametersとDirrerentiatingparame

-tersとに分け、前者 は英語の局部形を決定 し、後 者は局部形をそれぞれに区分す る変数であるとし ている。 (1) DEFININGPARAMETERS a.Dialectandaccent b.Rangeorvarieties c.Discoursalrules

d.Existenceor`standard'andnon-standard rorms

e・Primary-languageandsecondary-language rorms:(Ll/L2)

r.Foreignlanguage/secondlanguageforms: (FL/SL)

(2)DIFFERENTIATINGPARAMETERS a.Statusandusesinthecommunlty b.Whetherthevehiclefor:

1・publiceducation

2・scienceandtechnology

3・internationalnews,entertainment, publicity

4.literature

c.Attitudesofthelocalintellectualandeduca tionalleaders

d.socio-culturalaffinitiesandaversions: 1・geographica1 2.historical 3・socio-political 4.cultural (Strevens,1980:66) 以下Strevensの主張す る変数に沿 って英語の変 種をみてい くことに しよう。 まず (1a)の方言 と発音であるが、方言の差 異は文法 ・語東的な ものであるのに対 し、発音 の 差異は音韻的なものである。通例、局部方言 Xと Yはそれぞれ発音 XとYで話 され、発音 XとYは

それぞれ局部方言 XとYで話 され る。 また英語に は、標準英語 と呼ばれ る、地域や社会階層に局限 され ない方言が少な くとも1つあ り、それは事実 上様 々な発音 で話 されてい る。 さらに、発音に も RPやGeneralAmericanと呼ばれ る非地域 ・非 社会階層的発音がある。従 って英語使用者 は、(i) 局部方言 と局部発音、(ii)標準英語 と非局部発音、

d

I'

D

標準英語 と局部発音、の組み合わせの うち、少 な くとも1つ以上を用いて話 していることになる。

(1b)に関 しては、Strevensはlectalrangeと va-rietalrangeがあるとしてい るが、英語に より特 徴的 なのはlectalrangeで あ ろ う。 これは、通例、 社会階層的言語変種の範囲を示 し、acrolect.me -solect,basilectに区分 され るが、英語の場合には、 この区分がポス ト・ク レオール連続体に も明確に 存在す る。 しか し英語のポス ト・クレオール連続 体は流動的な もので もあ り、将来脱 ク レオ-ル化 の過程を経て標準英語に近づ くのか、それ とも分 化 して別の言語にな るのかは各 ク レオール語の置 かれてい る政治的 ・社会的状況に よって異 なる。 例えは、Todd(1974)に よれ は、威 信語 で あ る英 語に よる義務教育 とい う政策が とられた酉 イン ド 諸島のク レオールは脱 ク レオール化が最 も進 んで いるが、オ ラソダ語が公用語であるス リナムのス ラナ ン語、サ ラマ ッカソ語、デ ュカ語 とい う3つ の英語 クレオールは最 も脱 ク レオール化 されてお らず、英語 との間に明確 な境界線が存在す ると言 う。 また ピジンも流動的な ものである。初歩的な意 思の伝達に用い られ る限定 ピジンは、例 えは朝鮮 戦争 のころ生 まれた韓国のバ ンプ一 ・イ ング リッ シュの ように消滅す るもの もあれは、例 えは多言 語国家に よくみ られ るよ うにその素材を拡大 して い くもの もある(Toad.1974)。 この拡大 ピジンは、 母語化 して クレオールにな った として も、先にみ た よ うに威信語のあ るな しでその後の発展過程に 大 きな相違が生 じる。 この よ うに限定 ピジソか ら acrolectの極限にある標準英語 までの過程 はたえ ず流動 してお り、英語の変種か否かの境界線を ど こに引 くか とい う問題は容易に解決できるもので はないが、 ピジン英語であれ、 ク レオール英語で あれ、いずれ も英語を基盤 としている点 で、 ここ では英語の局部形 とみなす ことにす る。

(4)

-77-次のvarietalrangeには、言語使用域、文体の フォーマル ・イ ソフ ォーマル性、俗語 ・口語 ・卑 語な どの適切性の問題 が含 まれ るとし、 これ ら3 つが言語共 同体 におけ る社会 的行動 の一 部を形 成す ることか ら、 これ らも英語 の局 部形 を決定 す る変 数 とみ な して い る。 しか し、言語使用者 が関与す る社会的行動 の種掛 ま、 その人が属 し てい る地域、社会的階層によっておのずか ら限定 され る。そのために、社会的行動の幾つかは常に 特定の地域 ・社会階層 的方言 と結びつ くことにな り、 これ ら3つの選択 の問題は方言の選択の問題 と重複 す るとみて よい であろ う。 (1C)については、Strevensは談話のル ールの細 部において英語の局部形間にかな りの違いがあ る としている。す なわ ち、発話の力を遂行 してい く 手順、会話に参加 した り会話か ら言外 の意味を選 択 した りす るためのル ール、人を説得 させ るため のテクニ ック、対人 との談話を調整す るための メ カニズムな ど、話 し手 と聞き手 との問で発話行為 を成立 させてい るメカ ニズムの違いやずれ も、英 語 の局部形の違 いを生む と言 うのである。例えば、 あるイ ソ ド人が ヒンズ ー教の導師 と思われ る人 と 話 しをす る時 の英語や、ある日本人が、外国人との 会話中に、 自分 とは明 らかに社会的地位の異なる 日本人が加わ った場合 に用い よ うとす る英語には、 それぞれの社会 の慣用 がかな り反映す ると言 う。 要す るに、談話のル ールはある特定の文化におい て、言語を習得す る以前のかな り幼 い時期か ら生 涯にわた って学習 され るものなので、英語の局部 形の決定に も文化の違 いが大 きな意味を もってい るとい うことになる。 (1d)に関 しては、英 語の局部形には標準形 と非 標準形があるとい うこ とである。Strevensは英語 の標準形の特徴 として、(i)それはいかなる発音 で もって も話 され、それ と義務的に対をなす発音が ない、(ii)世界の どの英語使用地域において もその 文法 と語愛には徴少 な差異 しかみ られない、diDそ れは英語の母語話者 に よって、 自国の子供や外国 人に英語を教 える場合 の適切なモデル として広 く 認め られてい る、の3つを挙げている。 ここで注意すべきことは、標準英語はAc ad6-mieFrancaiseとは異 な り、言語の純粋性維持の ために標準化 された ものではな く、それゆえ、 こ の 「標準」 とい う言葉 は、 「義務的に到達すべ き 絶対的な基準」 とい う意味ではない とい うことで ある。英語使用地域 で標準英語だけを常に使用 し ている話者 は極めて少数であるし、その話者 の標 準英語 もそれぞれの局部に特有な発音 ・語愛 ・表 現が多少湿 った ものである。従 ってRichards(19 79:102-103)が 言 うよ うに、教養 のあ るナイジ ェ リア人やイ ソ ド人の使用す る英語は、イギ リス英 語や アメ リカ英語 と違 っていて も、標準的で受容 され得 る話 し方であるとい うことにな る。 (1e).(1r)では、英語 の局 部形 にはLlとL2、FL とSLの区分が可能であることが述べ られてい る。 Ll/L2 の区分 は個 人に関わ り、FL/SLの区分 はその個人が所属す る言語共同体に関わ る。英語 の場合、Ll 使用者問 よ りもL2使用者問に よ り 多様な伝達校能が生 じるのがその特徴である。例 えば、イン ド亜大陸、酉イ ン ド諸島、 アフ リカの 多 くの国々では、英語が、その土地に固有の生活 や文化 のパ ターンを教授 ・維持す るための道具 と して、 また、文化的、言語的に複数の社会をつな ぐ懸 として、 さらには、教育、行政、司法上の統 一性堅持の手段 として使用 されてい る(Kachru. 1976)

0

FLはそれが教え られ る共同体で、共 通 語 や 公 用語や教育用語 とい った特別な地位を もっ ことが ないが、SLはその共同体で内在的社会的機能を 有す る(Wilkins.1972)。 また、FL/SLの区分 は 英語の教授上、重要な意義を もつ。EFL国家 で は、通例、教育のモデルが母語話者 のLl、それ も標準形であ り、極少数の学習者 しか高水準に到 達す ることがないが、ESL国家 では、全体的傾 向として、学習者の多 くがその地域 の コ ミュニケ ーシ ョンに役立つ程度 までは到達す る。 次に英語 の局部形をそれぞれに区分す る変数を みてい くことに しよ う。 まず(2a)に関 しては、英 語の各局部形はそれが使用 され る共同体に よって、 その地位 と使用範囲が一様でない とい うことであ る。例えは、英語が第2言語であるケベ ックとナ イ ロビを比較 した場合、ナイ ロビよ りもケベ ック の方が英語使用能力の水準が高い し、その使用範 囲 も広い。 しか しナイ ロビでは、英語が 自国の多 文化共 同体 内だけでな く、対外的に もコミュニケ ーシ ョンの道具 として受容 されてい るのに対 し、

(5)

ケベ ックの大多数の者に とっては、英語が カナダ の英語話者に よる、 フラソス語話者に対す る支配 の象徴 とな ってお り、政治的感情においで 惜しみ の対象 とな ってい る。 この よ うに英語使用共同体 には、それぞれの共同体におけ る独 自の地位 と使 用範囲が存在す る。 (2b)については、一定の用途 の手段 として用い られ る英語 の意義に、L2共同体問で程度の差が み られ るとい うことである。具体的には、 まず、 公教育の手段 としての意義が挙げ られ る。 これは、 L2共同体では英語が大学や中等 ・初等教育の手 段 として使用 されてい る場合 とそ うでない場合が あ るか らである。 また、主要な公的講演やセ ミナ ーや会議や放送 な どが、当該地域聴衆 の十分なる 関与 と理解の もとに、通例英語 で行われてい るか 否 か とい うことも問題 となる。次に、行政 の手段 としての意義が挙げ られ る。戦後独立 した国では、 英語が母語でないに して も、それが政治、司法、 官庁、警察 な どにおけ る唯一の言語あ るいは諸言 語 の1つに定め られている場合が多いか らであ る。 第3に、科学技術の手段 としての意義が挙げ られ る。科学技術 の伝達や討議に使用 され る諸言語の なかで も、英語 の使用度は最 も高い。それゆえ世 界の多数の国の科学者問では、科学 目的で言語を 使用す る場合には英語に切 り替 えるとい う状況が あ るか らである。次に、マスメデ ィア、国際的催 し、宣伝の手段 としての意義が挙げ られ る。新聞、 ラジオ、テ レビ、映画などのマスメデ ィアには、 それぞれの国の言語で発達 した産業が存在す るが、 同時に、英語に よる国際的な多極ネ ッ トワ-クの 産業 も存在す るか らである。 同様のことは、一定 の国際的催 しや広告や市場について も言えよ う。 最後に、文学の手段 としての意義が挙げ られ る。 英語 のL2使用者問では、英文学の専門家に よる 英語使用以外に、その土地に固有な文学の創造や 批評に英語が使用 されている状況があ るか らであ るO例 えは、ナイジェ1)了やイソ ドでは、L2使 用者 に よるL2使用者 のための文学が発達 してい る。 この よ うにL2共 同体では、一定の用途 の手 段 として用い られ る英語の意義に較差が存在す る。 (2C)に関 しては、英語 の局 部形は各地域の知 識人や教育者の とる態度に よって、その性質が大 き く左右 され る場合があるとい うことであ る。彼 らの態度が一般大衆の態度 と衝突 した り、食 い違 った りす ることもあ り得 ることは意外 と知 られて いない。例 えは フランスでは、 フラソス語-の相 当量 の英語の借入 も含め、英語使用がかな り行わ れている現実がある。 しか し、 フラソス語 も国際 語であって科学や文学 の手段であること、拡張主 義 の政治史を もつため海外に フランス語のLl/L2・ FL/SL変異 も存在す ること、 な どか ら、 フラン スの知識人階級には英語の使用や借入の原則を固 く拒否す る態度がある。 この よ うに、知識人や教 育界指導者の態度は英語 の局部形に も少なか らず 影響 を与 えるものである。 (2d)については、英語 のL2共同体では英語に 対す る親疎性があ り、それ らは地理的要因、歴史 的要因、 さらには社会 ・政治的要田や文化的要因 に よって決定 され るとい うことである。 まず、地 理的に接近 してい ることが親近感を引き起 こす要 因 となることは言 うまで もない。 しか し、政 治的 反感が地理的親近感を凌 ぐ場合 もあ ることか ら、 これは絶対的要因 とはな り得ない。次に、L2共 同体の局部形の大多数は歴史的要因を もつ もので あ った。 ところが歴史の道程は巡 るものであ り、 現在の親近感が過去の憎 しみを圧倒す る場合 もあ れは、その道 もあ る。例 えは、 アフ リカの多言語 国家 の多 くにみ られ るよ うに、憎 しみに満 ちてい たはずであ る、旧宗主国言語の英語が、同 じ国内 の どの言語共同体に も特権を与 えない とい う意味 で、現在では中立言語 としての歓迎を うけている 場合 もあれは、先に も触れたマ レーシアの ように、 国語 となったマ レー語の伸展のために英語 の機能 が縮少 し、民族間の伝達の手段か ら、教科 目とし ての性格を帯び るに至 っている場合 もあ る(Le -ith,1983:212)。次の社会 ・政治的要因 とい うのは、 L2共同体の とる社会 ・政治上の哲学や選択に よ って、英語の地位や、イギ リス英語かア メ リカ英 語か とい った局部形の選択が決定 され るとい うこ とである。 この要因に基づ く英語の親疎性 は、た とえ隣国 どうLであろ うと、かな り食 い違 うもの である。最後の、文化的要因 とい うのは、文化や 宗教上の親疎性に よって、道具 目的 としての英語 に対す る需要が決定 され るとい うことであ る。 こ れは特に、共産圏やイス ラムの世界 とい った、イ デオ ロギーが強 く押 し出 され る地域や、主要宗教 ー 79

(6)

-の理念が伝導 されつつある地域に よくみ られ るも のである。 以上、英語の局部形の分析を通 して世界の英語 の現状をみてきたが、ここで観察できることは、 英語がその数的 ・地理的分布、機能、使用範囲、 社会的地位、親疎性において他の言語にはない多 様性を有 してい るとい うことであ る。特 に英語 の非母語圏におけ る英語の局部形の多様性は言語 史上類をみないものになる。 ところで、言語は真 空に存在す るものではな く、地域や社会階層の生 活 と文化に根ざした存在であるために、英語の局 部形の多様性 も各地域や社会階層のidentityを反 映 していることにな り、 この点でエスペ ラン ト語 やBasicEnglish や NuclearEnglishとも区 別 され ることになる。従 って世界の英語は、広範な 地域や社会階層に及ぶ多数の者が、それぞれの生 活 と文化に基づいた英語の局部形を、国内や国家 間の様 々な用途の伝達手段 として多様に使用 して いるところにその特徴があることになる。

「国際補助 語 と して の英 語」 とは何 か l章では世界におけ る英語の使用状況を、母語 ・第2言語 ・外国語 とい う伝統的な区分に従 って 概観 し、それぞれにおけ る英語の局部形の分析を 通 してその多様性をみた

「国際補助語 としての 英語」の考えも多様な英語の現状認識を出発点 と す る。 しか し、英語の多様性は歴史的にはイギ リ ス英語を出発点 とす るが、 この考えはイギ リス英 語やアメ リカ英語 とい った母語英語を出発点 と捉 えるものではない。世界におけ る英語の現状を、 我々が 1葦で とった視座 とは異なる視座か ら眺め、 それを出発点 とす る。以下、 この考えの提唱者で あるSmith(1983.ト 5a.7-llb. 13-2(九 )の主張 を、随時解説を加えなが らみてい くことに しよう。 Smith(1983a)は、 国内で母語 として使用 され る英語以外の英語を 「国際補助語 としての英語」 と呼ぶ。 この「国際補助語 としての英語」のなかの 「国際」語 とい うのは、異なる国の人々がお互い の意思疎通の 目的で使用す る言語のことであ り、 「補助」語 とい うのは、ある国の国民が国内での 意思疎通の 目的で母語以外に使用す る言語を指す。 従 って 日本の ように、国際語 としての英語の使用 には意義があ って も、補助語 としては意義のない 国もあれば、 フィ リピンの ように、国際語、補助 語のいずれ もほぼ同様に意義のある国もある。す ると一見、国際語は外国語に、補助語は第2言語 に相当す るように思えるが、Smithはその ように 捉えることはせず、む しろ外国語 ・第2言語 とい う呼び方をかえる時期だ と主張す る。 しか し、世 界の英語が母語使用の他に、外国語、.第2言語 と して使用 されている現実 も厳然 と存在 してお り、 「国際補助語 としての英語」の概念を理解す る上 で、これ ら伝統的な区分 との相違を明確にしてお くことは是非必要である。 この点に閑 し、Smith (1983C:17)は 「国際補助語 としての英語」 と同一 概念であ りなが ら、それを もう一歩明瞭に示 した 概念 としで Englishasanlnternationallntr a-nationalLanguage'(以下,EIILと略す)を提案 し、 これ と、第2言語 としての英語(以下.′ESLと 略す)及び外国語 としての英語(以下,EFLと略 す) との相違を次の ように図式化 して示 している。

(7)

Figure2 ENGL

I

SH

NativeEnglish (nativespeakers talkingtoother nativespeakersof thesamecountry)

EnglishasanInternational lntranationalLanguage(EIIL)

Englishasan InternationalLanguage

Englishasan

lntranationalLanguage

AmericanEnglish AustralianEnglish BritishEnglish CanadianEnglish FilipinoEnglish HongkongEnglish IndianEnglish SingaporeanEnglish etc.

AmericanEnglish AustralianEnglish BritishEnglish ChineseEnglish FilipinoEnglish HoneKongEnglish

IndianEnglish JapaneseEnglish KoreanEnglish SingaporeanEnglish ThaiEnglish etc.

(これ らの図は音声言語 と文字言語の両方を含む)

Figurelは英語を母語英語 (以下、NEと略す ) と非母語英語に分け、 さらに非母語英語をESLと

EFLに分け る伝統的な区分を示 してい る。 しか し、 我 々が Ⅰ章 で用いた この区分をFigure2と比較 し た場合、FigurelにEnglish forSpeakersofOt h-erLaguages(以下ESOLと略す)の欄 が設 け られ ていることか らわか るように、 これはNEの存在が まずあ って、次にそれか ら派生 した非母語英語の 存在を認め るといった、英語の拡張史を世界の英 語の使用状況にそのままの形で持ち込んだ認識だ と言 って もよく、 ここで基準 となるのは必然的に NEだ とい うことになる。 この ことを英語教育の 観点か らみ るな ら、非母語話者の英語使用が母語 話者のそれに一方的に接近す ることが期待 され る が、他方、英語 の母語話者は非母語英語に譲歩す る努 力は一斉払 う必要がない ことにな る。 これに対 してFigure2では、 まず、NEとEIIL の欄が設け られている。EIILの下位分の うち、

EnglishasanlntranationalLanguage(以下、

Intra-Eと略す)はESLの国内的椀能をほは表わす もの_とみて もよく、ESLの国際的機能はEnglish asanlntranationalLanguage(以下、Inter-E

と略す)の欄に入れ られている。 またIntra-Eの欄 にAmericanEnglish,BritishEnglishな どがあげ られているが、 これはNEではな く、移民や在留 外国人が当地で母語以外に使用す る英語 の ことで あ る。他方、Inter-Eの欄には非母語英語 の他に、 NEも含 まれているが、 この点は注 目に値す る。 すなわちFigure2では、NEに2つ の場 を設け る -

(8)

81-ことに よって、1つは同 じ国内の他の母語話者 と 意思疎通す るための

NE

、 も う

1

つは異な る国の 英語の母語話者及び非母語話者 との国際的な意思 疎通に使用 され る

NE

、NE

に も明確に2つの 機能を認め、後者 を

I

n

t

e

r

-E

1

つ として い る点 である。 ここに従来の

ES

L/

EFL

とい った 区分 と の大 きな違いがみ られ る。従来の

ES

L/

EFL

の 区 分では

、NE

を唯一正統な もの とし、それを基準 として非母語英語を眺め る見方であ ったのに対 し、

Fi

g

u

r

e

2では母語、非母語を問わず、国際的な 目 的で使用 されてい る英語の存在 と価値を新たに認 め、 この英語 も含めた立場で世界の英語を再編成 しようとい うのである。そ うすれば従来の

EFL

の 存在理 由はな くな り

、ES

L

の国内的機能が

I

n

t

r

a

-E

として位置づけ られ、 さらには

NE

に も新たな 役割が与 えられ ることにな る。 これを英語教育の 観点か らみれば、英語の母語話者に も、異なる国 の母語話者や非母語話者 との意思疎通に使用 され る

I

n

t

e

r

-E

の学 習 が課せ られ ることにな る。異な る国の

NE

は勿論のこと、非母語英語にも耳を傾け、 その特徴を知 り、話者の話す内容を理解 しようと す る努力 と、 自分の話す英語を理解 してもらお うと す る努力が母語話者にも求められ るのである。英語 の非母語話者にとって英語の学習 ・習得は抵抗感が 大 き く、並な らぬ努力が必要 とされ るが、これに よ って不公平はかな り是正 されることになる。さらにこ の区分に よって、従来の

EFL

教育か ら

I

n

t

e

r

-E

教 育へ

、ES

L

教育か ら

I

n

t

r

a

-E

教 育 と

I

n

t

e

r

-E

教 育 -、 さらには母語話者に対す る

NE

教 育 (国語教 育)か ら

NE

教育 (国語教育 ) と

I

n

t

e

r

-E

教 育 -と、英語教育 のあ り方が整理 された形で方向づけ られ るし、そのための 目的 と方法がいかにあるべ きか とい う問題の解決 も容易にな るであろ う。 こ の よ うに

EI

I

L

の概念は世界の英語 の使用状況に新 らしい分析を与え、英語教育 の今後のあ り方に も 一定の見通 しを与 えて くれ るわけであ る。 それでは、世界の英語の使用状況に この ような 分析 を与 えた場合

、EI

I

L

の使用 と教育 に関わ る具 体的な特徴は どの よ うな ものにな るのだろ うか。

S

mi

t

h(

1

9

8

3

C.1

5

)

は次の

8

つの部門を設け

、ES

O

Lとの相違を下図の よ うに示 している。

FiguresSOMEDISTINCTlVEFEATURESOFESOLvsEllL

器 18g:undatgDeepth ;?brlfiiccl芸tdnoc;こn Lu::.snegof sptoupduelnat.。n LanguageModel TP:r,fgoertman- Et:Eauca.goers 宝望;uhraasllS ESOL: generalEnglish schoolsub]'ect (a)limiteduseas Nob-natiye educatednatlVe perrOrmanCe (L2--LI) cultureolnatlVe 芸濃 hn出 a E。g.lShf。, (UahitgTel,forJlobs speakers speaker teavtellveofs,eedau諾,ted speakers

Language SpeclaIPllrpOSeS educatlOn CommunlCation: lowprlOrlty

ESOL: generalEnglish medium or forlnternatlOnal Non-native educatednative performance (L2←T Ll) CtlltureoE Englishasa togreaterdepth lnStruCt10n andinternal speakers speakeror levelofeducated intranational(a)natlVe se

LaCnOgnudage 芸nFdLrangethan ling。afranca lnteraCt10nS :a,ulCAtaeldysa:;tkyer.f endaiとvactesdPCsalearkeO,r (T4ー LtI (b,;aPeaa.hers CommunLCat10n: English oflocalvarietyof cotJntrymen

Englishfor highprioTlty English

SpeclalPurposes

EJtL:English generalEngllSh maybemedium rorinternal Nob-natlYe educatednative performancelevel intr8national cultureoflocal aSan OflnStt.uCtlOTl lnteraCtlOn SPeakers speakeror ofeducated (LZ◆ L2) countTymen lntranat10nal Englishfor educatedspeaker speakeroflocal

LiLnguage S阿 lalPurposes llnguafranca Communication: oflocaly8rletyOf v8rletyOfEnglish hlghprionty Etlglish

EIIL:English generalErLgllSh international forizlternational NatlVe8nd An yeducated mutual (Lt◆・.・..ーLl) cllltureor aSan

International Englishfor business interact10nS nOn-n8tlYe EngllShspeaker intelligibilityand international spec

lfied ads speakers apprOprlate (Ltー一・一も2) collDtrleS

LangtJage SpecialPtJrpOSeS Sports CommuniczLt10n: (n8tlVeSPCaker. langtJagefor

news hlghpriorlty local.orregional) sltu8t10Tl intern8tlOn81

diplomacy (L1.---Lt)

traVel entert8inment

(9)

以下、各部門におけ る示差的特徴を順次みてい くことに しよ うo まず、ScopeandDepthofLa n-guageTreatmentであるが、 ここでい うScopeと は トピック、文体、言語使用域 の範囲を示 し、De -pthとは読 む、書 く、聞 く、話すの4技能におけ る流暢 さを意味す る。 ここではESOL,EIILともに あま り差はみ られない。ただ しgeneralEnglishに ついては、EFLの授業 よりもESLの授業の方が、 4技能の流暢 さが高度に達す るし、扱われ る トピ ック、文体、言語使用域 もより広範 に及ぶ。 これ は

甘草でみた ように、ESLにはEFLにはない内 在的社会的校能があることに よるもの と思われ る。 また、EIIL環堤では、ESOL環 境ほ ど多様な局部 形を生む ことはないが、機能の点においてはその 道 にな る。 ではその機能の点に関わ る"Officialdom二Pub -licFunctionにつ いては どうだろ うか。公的梯能 を表わす この部門では4つのタイプがそれぞれ独 自の特徴を示 している。 まず、EFL環境 では英語 は教科 目の1つにす ぎないが、ESL環境 では授業 のすべてあ るいは一部の教授媒体 となっているし、 商取引 きのためのlinguafrancaに もな ってい る。 linguafrancaとしての英語について は、 Intra -E環境 とESL環量は同 じとみて よい。ただ、ESL 環境 よ りもIntTa-E環 境 の方が、Iinguafrancaに 教養 のある局部形が使用 され ることが多い。 この ことか ら、Intra-E環境の方がESL環境 よ りも、 国内の意思疎通がはか りやすい環境だ と言える。 Inter-E環境の英語の公的機能は、外交、商 取 引 き、広告、スポーツ、マス コミ、娯楽、旅行のい ずれを とって も、常に国際的なそれ らと関わ る。 例 えばASEAN蔵相会議 やアジア大会で使用 され る英語、 さらには香港 で公演中のフィ リピンの芸 能人に よって使用 され る英語、 日本人観光客 とマ レーシアのみやげ物店の店員 との間でかわ され る 英語 な どがそれである。 次にPurposeofLearningについてみてみ ようo EFL環境では、例えば 日本のよ うに、英語の学習 が一定の職業-の登龍門になっている場合があ っ た り、英語の学習によって就職 の機会が増える場 合 もあ る。 さらに、英語の学習 は高等教育 (大学 教育)を受け る機会を増大 させ ることに もなる。 ただ し、EFL環境 は学習 目的が限定 されているこ とか ら、 4技能が高水準に到達す ることはない。 他方、ESL環境におけ る英語の学習 目的は、国内 的、国際的相互作用に参加できるよ うになること であ り、当然、英語に よる意思疎通は高水準に到 達す る。 また、Intra-E環境 とInter-E環 境 の学 習 目的はESL環境 のそれに類似 していると言える が、Intra-E環 境は同一国の国民同士の相互作用 に限定 されてお り、Inter-E環 境 は異なる国の国 民 同士の相互作用に限定 されているとい う点で違 いがある。 StudentPopulationの部門にについては、ESL, EFL,Intra-Eのいずれを学ぶ学生 もすべて英語の 非母語話者であるが、Inter-E環境 では母 語 話 者 と非母語話者の両方が学生人 口を構成 している。 ここがESL/EFLの区分 と大 き く異 な る第1の点 であ った。上で もふれた よ うに、商業上の書類か ら文学作品に至 るまで、非母語話者や異な る国の 母語話者が書 く英語を読み、非母語話者 の話す英 語をテープで耳にす るとい った学習が母語話者に も課せ られ るのである。

LanguageModelにおけ るモデル とい うのは、 教師 のことではな く、いわゆる 「標準」例 として 教室 で使用 され るテキス トを意味 し、教科書やL Lのテープが これに当た る。従 って教師 も当然 こ のモデルの影響を受け ることにな る。EFL環境で は確立 した局部形が存在 しないため、モデルは常 に教養のある母語話者 であ り、非母語話者 はた と え英語に堪能であって も不適当 とみ なされ る。他 方、ESL環境のモデルは教養のある母語話者か、 それ とも当地局部形の教義のあ る話者 とされ る。

Intra-E環 境はESL環境 と全 く同 じであ るが、In ter-E環境では母語話者、非母語話者を問わず、 教養 のある英語の話者な ら誰で もよいとされ る。 す る とEIIL 環童 ではいわゆ る英語 の 「標準」 が低下す るのではないか とい う懸念が生 じるか も 知れないが、そのよ うな場合には、教師、学校当 局あ るいは共同体の判断の もとに、必要 に応 じて 教養 のある母語話者 (のテキス ト)を使用すれば よいわけである。 LanguageModelと関係があ りなが ら、それ と 同 じでないのがPerrormanceTargetであ る。EFL 環宅 におけ る運用能力の程度 目標は、教養 のある 母語話者の程度に到達す ることであ るが、それは ー 83

(10)

-まず達成 され ることはない とみて よい。教師の側 も生徒がその程度 まで到達できるとは考 えてお ら ず、一応 の程度 目標 と定め られているにす ぎない。 これ と同様の状況はESL環境について もみ られ る が、ただESL環境の場合は、教養 のあ る、当地局 部形話者の程度が 削票とされ ることがあ る。 また Intra-E環境 におけ る運用能力の程度 目標は、In tra-Eが同一国内の相互作用にのみ使用 され るこ とか ら、当地局部形の教義のある話者の程度 とさ れ、母語英語圏-の移民などの場合を除けば、教 養 のあ る母語話者の程度は、Intra-Eの 目標 とし ては不適切 とされ よ う。他方Inter-E環 境 では、 それぞれの状況に相応 しい英語を用いて相互に理 解 し合え ることが 目標 となる。勿論 この基本は英 語で理解 して もらえ ることであるが、それだけで は十分 ではない。聞 き手 と読み手は話 し手 と書 き 手の発す る単語、文 、談話の理解が求め られ ると 同時に、状況に相応 しい文体 と言語使用域 も理解 の対象 となる。 Languagelnteractorsは言語に よる相互作用の 担い手を表わ し、StudentPopulationと同様、 ESOLとEIILが著 しい示差性を示す部門である。 EFL環境では、英語 は原則的に教科 目の1つにす ぎず、そのモデル も教養のある母語話者 (のテキ ス ト) とされ ることか ら、言語に よる相互作用は 非母語話者 と母語話者 の問でなされ ることにな る (L2く→Ll)。 ただ し、 これは実生活上の相互作用 ではな く、英語学習上 の相互作用だ とい うことに なる。 ところでSmithは、EFL環境におけ る相互 作用を (L2・→Ll)のみ に限定 してい るが、 これに は若干 の疑問が残 る。EFLの公的機能は教科 日の 1つにす ぎないが

Ⅰ章でも述べた ように、英語 が国際 コ ミュニケーシ ョンの手段 として使用 され てい る現実 もある。事実、SmithもPurposeof L earningの部 門でCommunicationを挙 げてい る が、EFL国家内では学習の場を除いては英語に よ る相互作用が機能 し得 なかった ことか ら、 この Communicationは 国際的な ものだ とい うことに なる。 このことか ら、母語話者 とだけでな く、異 なる国の非母語話者 との国際的な相互作用(inter nationalL2←ナL2)も加 え られ て よいの ではない だろ うか。次のESL環境において も、教養 のあ る 母語話者 (のテキス ト)がモデルの1つであるこ とか ら、EFL環境 と同様に、非母語話者 と母語話 者 との相互作用 (L2←,Ll)が存在 す る。 ところが ESL環境では もう1つのモデルが、教養 のあ る、 当地局部形の話者になる場合があ ることや、1i n-guafrancaとして使用 され る場合 もあ ることか ら、 同一 国内の非母語話者同士 の相互作用(intranati -onalL2←ナL2)も存在す る。 ここで もSmithは相互 作用を この2種額に限定 しているが、ESL環境 に おいて も国際的な コ ミュニケーシ ョンの存在が考 え られ るわけだか ら、異な る国の非母語話者 との 国際的な相互作用(internationalL2←すL2)も加 え られて よい ことにな る。他方、Intra-E環境 にお け る相互作用は、多民族 ・多言語 国家にみ られ る よ うに、同一 国内の非母語話者同士(intranati o-nalL2◆→L2)に限定 され るが、Inter-E環境 の 相 互作用はすべて異な る国の話者同士 に限 られ る。 す なわ ち、英語を外 国語あ るいは第2言語 とす る 非母語話者 と母語話者(L2←ナLl)、異なる国の非母 語話者 同士(internationalL2く→L2)、そして

ES

L/

EFLの区分では示 し得なか った、異なる国の母語 話者 同士(internationalLl←ナLl)である。 CulturalEmphasisにおけ る文化 とい うのは、 テキス トで題材 として取上げ られ る文化 の ことを 指す。EFL環童では、テキス トとなるモデルが教 養 のあ る母語話者 であ り、それゆ え学習上の相互 作用 も母語話者 との間でな され ることか ら、取扱 われ る文化 も母語話者の文化 とい うことにな る。 この ことはESL環境に も当てはまるが、ただESL 環境の場合は、英語がlinguafrancaとして使 用 され る場合 もあることか ら、国内の少数 グループ の文化が題材 として扱われ ることもある。 これに 対 してIntra-E環境 で扱われ る文化 は国内の文化 に限 られ る。 ここでは多文化 問の共通語 もしくは 中立言語であ る英語が、各文化の側面を論 じる道 具 として使用 され る。 ところがInter-E環境 に お け る文化的重点は、生徒が興味をいだ く特定の国 の文化に置かれ る。例えば、 タイかマ レーシアに 派遣 され る予定の 日本人 ビジネスマ ンの クラスで は タイかマ レーシアの文化に重点が置かれ るとい った具合いである。 しか し目的が明確でない場合 や、生徒が特定の国に興味を示 さない よ うな場合 には、異文化 の学び方や異文化に対す る寛容 さの 育成に重点が置かれ、 この場合に対象 とされ る文

(11)

化 は、近隣諸国の文化か接触の最 も多い国の文化 とい うことになる。 この ようにInter-E環 境 では、 母語英語圏の文化に重点を置 く必然性 もなければ、 何 ら 「西欧化」す る必要 もないのである。 以上、ESOLとEIILとの比較を個 々の点につい てみて きたわけだが、 ここで重要なことは、EIIL

の概念には、従来のNA・ESL・EFLの区分 に よ る 記述では遺漏 していた、あるいは明示 し得なか っ た英語使用 の状況が明示 されてい る点、及びその ことか ら今後の英語教育のあ り方に一定の方向づ けがな され る点である。伝統的な3区分では、多 様 な局部形の使用 と機能を分頴できた点では大 き な意味があ ったが、各種局部形の特徴を もちなが らも、新たな機能を担 っている側面、す なわち世 界で国際語 として校能 している英語 の現状が十分 に記述できなか った。 また多様 な英語使用状況に おける英語教育のあ り方について も、 この3区分 に基づいたあ り方の域を出るものではな く、それ 以上の展望 も十分に示 し得なか った。 しか しI n-ter-Eの存 在を明示的に認めれば、世界におけ る 英語の現状分析 に新たな展開が期待できるし、言 語政策 を含めた今後の英語教育のあ り方に も多大 な示唆が得 られ ることになる。

「国際 語 と して の英 語」 とは何 か ここでは 皿章 で一定明確にな ったInter-Eの性 格を も う一歩すすめた形で整理 してみ よう。Inter

-E

に多国籍 英 語 の価値を与え、それを全世界の ものが共有す る確立 した存在 と認めるな らは、NE も非母語英語 もInter-Eの各方言 とみ ることがで きる。すなわち、アメリカ英語、イ ン ド英語、タ イ英語 は、それぞれInter-Eの ア メ リカ方言、イ ン ド方言、 タイ方言 とい うわけである。 これは音 韻論で言 う音素 と異音 の関係 と同 じで、異音に相 当す るアメ リカ英語やイン ド英語や タイ英語 とい った英語の各種局部形が、示差性を もつ抽象的な 総体のInter-Eを構 成 していると考 えて よい。 こ の ことと

皿章 で一定明確にな った事柄 とを考え 合わせ ると、inter-Eの性格を次 の よ うに整理す ることができる。 (1) Inter-Eの使用 目的 Inter-Eの使用 目的は多国籍 コ ミュニケ-シ ョ ソであ る。3 す なわち、異なる国の話者問の商業 上の用件や政治的信念、あ るいは文化 を表現す る ための手段 として、 さらには国際的なスポーツ、 娯楽、旅行な どを行 うための伝達媒体 として使用 され る。 (2)Inter-Eの使用者 Inter-Eは異なる国の話者 同士 で使用 され る。 なわ ち、h)異なる国の母語話者同士、払)母語話者 と非母語話者、そ して(C)異なる国の非母語話者同 士、である。 (3) Inter-Eに使用 され る言語 Inter-Eはそれを構成す るいずれの国の英語で もよ く、その媒体は音声言語 と文字言語である。 NEを中心的存在 とす る姿勢か らあ らゆ る国の 英 語を認める姿勢-の視点移動の意義を、Smith (1983b:8,quotedinTongue.1974)は、 シンガポ ールの国連代表、T.T.B. Koh氏の次の発言のな かに求めている。

"

……

whenoneisabroad,inabusortrainor aeroplaneandwhenoneoverhearssomeonespe -aking,Onecanimmediatelysaythisissome onefrom MalaysiaorSingapore.AndIshould hopethatwhenI'm speakingabroadmycount -rymenwillhavenoproblem recognlZlngthatI am aSingaporean."

す なわちInter-Eは、それぞれの所属が確認 で きるアクセ ソ トとそれぞれの地域 の表現や語愛を 多少含んだ英語を許容す るものであ るし、 このこ とはidentity維持 の上か らも重要だ とい うことで ある。 さらに、 このことは非母語英語だけでな く、 NEについて も当てはまる。例えは、アメ リカ英 語 とイギ リス英語のア クセ ン ト、表現、語柔の違 いは明白であるし、イギ リス英語に も多 くの変種 があ ることは よく知 られている。 (4) Inter-Eの許容基準 Inter-Eはそれを構成す るいずれの国の英語で もよい と(3)で述べたが、 これは英語の局部形をす べて認めるとい うことではない。Smith(1983b: 8-9)はInter-Eの許容基準 として、intelligibili -ty,grammaticalacceptability.socialapproprl -atenessの3つを挙げてい る。intelligibilityにつ いては、話者に音韻的に通 じる英語を話す ことと、 聴者 に話者の英語を理解す る努力を払 うことを求 めているが、幸いな ことに互いに異なる発音に多

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85-少 さらされ ると両者はす ぐにmutualintelligibili -tyに 到達す るとしてい る。次のgrammatical acceptability については、話者が仮に文法的に 受容可能でない文を使用 して も容易に理解に至 る 場合が多い としつつ も、それには警鐘をな らして い るC,そ して この受容基準に関 してはStrevens (1980)の指摘を受け入れ、 「標準英語はいかなる アクセ ソ トで もって話 されて もよいが、国際英語 はこの標準を下回るものであ ってはな らない」 と してい る。甘草でみた よ うに、Strevensの標準英 語に対す る考 え方は、母語 ・非母語を問わず標準 英語の多様性 と許容性を認め るものであ った。 ま たInter-EのLanguageModelが 「教養 のあ る英 語」な ら母語話者の もので も、非母語話者の もの で もよか った ことか ら、Smithは 「標準英語」 と 「教養 のあ る英語」をほぼ同一視 してい ると考 え られ る。従 ってInter-Eの文法上の受容基準はr標 準英語」つ ま り 「教養のある英語」の文法 ならい かな るもので もよい とい うことになる。最後のso -cialappropriatenessについては、ユーモアの適 切な使用 と理解に よって 日米経済交渉決裂の危機 を脱 した例をあげ、Inter-Eの使用 には他の どの 言語 とも同様、音韻 と文法だけでな く、社会言語 学的適切 さも必要だ としている。 (5)Inter-Eで扱われ る文化 Inter-Eは どの文化 とも関わ りを もつ必要のな い言語 である。いかなる言語 も性格上国際化 され た時点には、いかな る文化か らも解放 され る

。A

SEAN会議でタイの代表が フィ リピン代表 と英 語で意思疎通を行 う場合、アメ リカ人的になる必 要はない。 日本人がマ レーシア人 との商取引きで 英語を使用す る場合、イギ リスの生活様式を真似 る必要はない。中国が国際的な 目的で英語の刊行 物を出版す る場、イギ リス文学 の背景は必要ない とい うわけである。Inter-Eは、(1)で述べ た よ う に、あ くまで も多国籍 コ ミュニケ-シ ョソの手段 として使用 され るのであ って、そ こに母語英語圏 の文化が介在す る余地はない。 ところが言語 と文 化 は表裏一体をな してお り、それ らは切 り離 して 論 じることのできない ものだ とい う主張がある。 勿論 これは事実であるし

Ⅰ章 で もその ように述 べた。 しか し問題は、それ故英語は、 ア メ リカ文 化 かイギ T)ス文化かオース トラ リア文化か ニュー ジーラソ ド文化か カナダ文化 と密接に結合 した も のだ と断定す るところにある。 これ らの国に も多 くの文化があ り、その うちの どの文化 も英語をそ れぞれの手段 として使用で きてい るとい う現実が ある。 この点をSmith(1983b:10)は、言語 と文 化は密接に結合 した ものであるが、 どの言語 もあ る1つの文化 と密接に結合 した ものではな く、それ 故英語を効果的に使用す る上 で、母語話者を真似 る必要はひたす らない、 と指摘 してい る。 (6) Inter-Eの学習者 と学習内容 Inter-Eの学習者 は非母話者のみな らず、母 語 話者 も含む。 また母語話者に課せ られ る学習内容 は異 なる国の母語話者 の英語のみな らず、非母語 話者 の英語 も理解 しようとす る努力 と、 自らの英 語を理解 して もらお うとす る努力であ る。 このた めの効果的方法 としてSmith(1983b:9)は 、 例 えばイン ドやナイジ ェリアでみ られ るような、非 母語話者に よって英語で書かれた文学作品、す な わち"new-literature"を読 む こ とを推 めてい る が、それに加えて、異文化に またが る会話で コ ミ ュニケ-シ ョソが成立 しな くなる点に対す る感覚 を磨 き、誤解が生 じた場合の対応 の仕方を準備す ることも必要であろ う。 さらにSmithは母語話者 の学習内容を、非母語話者や異な る国の母語話者 の英語その ものだけでな く、彼 らの英語の 「使い 方」にまで拡大す る。 アメ リカ人は `assertive'■ であ り、 日本人は`polite'であ り、 タイ人は`shy' であ るか らだ としてい る。同様の ことは非母語話 者の学習内容について も言え、非母語話者 も異な る国の非母語話者の 「教養 のある」英語のバ ラエ テ ィーの豊 か さと、彼 らの英語 の 「使 い方」を認 める寛容 さを身につけ るべ きだ としている。

(

7

)

Inter-E使用上の留意点 Inter-Eを効果的に使用す る上で話者 と聴者 が 留意すべ き点を、Smith(1983b:10-ll)は 次 の ようにまとめてい る。 話 者 用 ・ス ラソグや専門語や比愉的表現は避け、具体例 をできるだけ多 く挙げる。 ・自然なス ピー ドで話す。 ・長いモノログは避けて1文に含 める情報を制限 す る。 ・初対面の聴者にユーモアを混 じえるのは、誤解

(13)

をまね く恐れがあるので注意を要す る。 ・理解確認の質問を時折 り行い、議論の終 りには 要点をパ ラフ レーズす る。 聴 老 用 ・リラックスして平静 さと忍耐を保つ。 ・話者の英語が速す ぎた り不明瞭な場合には、途 中であって も確認す る。 ・自分の理解度を示す ことばを時折 り差入れ る。 ・話者が表現に困 って もせか さない。 ・単語や文の意味が不明確な場合には、パ ラフレ ーズして確認す る。 ・話者の非言語行為に も注意す る。 ・完全に理解 した内容で も要点を確認 し、誤解が 生 じて も解決の方法を至急に探 ぐる努力をす る。 これ らは母語話者 同士 の 日常の会話で も重要な ごとであるが、Inter-E環境では多 国籍 英語であ るが故に一層重要だ とい うわけであ る。

「国際 語 と して の英 語 」 の 概念 評 価 Inter-Eの評価 は、Inter-E教育を行い、I n-ter-Eを実際 に使用す るなかで下 され るべ きもの である。その意味で、Inter-E教育 もい まだ行わ れ て お らず 、英 語 が 国際 語 と して使 用 されて い る現 実 が あ るにせ よ、 それ もSmithの い う Inter-Eを使 用 して い る とい う明確 な認 識も な く使 用 され て い る現 在、Inter-Eは あくま で も仮 説 の段 階 で あ って 、 そ れ に実 証 を抜き に した評価を下す ことは評価を誤 まることにつな が る。 ところが、Inter-Eはあ くまで も国際語 と して機能す ることを 目的 として提案 された もので あ った。 また国際語には国際語 として必要 とされ る条件がい くつかある。従 って この仮説 も、国際 語 として必要 とされ る条件に照 らして評価を下す とい うのな ら、 これはその限 りにおいて評価が可 能にな るのではないだろ うか。そこでここでは、 Inter-Eを、国際語 として必要だ と思われ る条件 の うち、最低限必要だ と思われ る次の2つに照 ら して評価を行 うことに しよう。 1. 中立性 ・公平性の観点から 国際語あるいは世界の共通語は、 どの国や地域 の使用者 に とって も、使用上、中立あるいは公平 だ と認識 され ることが必要であ る。その意味では、 エスペ ラン ト語 といった人工言語や、Basic Eng-lishやNuclearEnglishといった 自然語を縮少 した 言語が国際語 として最 も相応 しい ことは言 うまで もない。 しか しこれ らの言語 には、あ る特定 の文 法や簡略化 された独特 の語東を もつ といった性質 があ る上に、 自然語 とは異 って明確な限界 もあ り、 国際語 としてあ らゆ るニーズに対応できるか ど う か とい う点で問題が残 る。だか らとい って、ある 特定 の 自然言語を国際語 と認めた場合、その中立 性はいかなる理由を もって して も説 明できない。 その点、歴史的偶然に よって英語が国際語の最有 力侯補 の1つ となってい る現在、その国際的機能 を母語英語か ら切離 し、それを独立 した存在 (つ ま りInter-E)として認め ることに よって世界の共 通語 に しようとす る試みは、た とえそれが非母語 話者 に とって外国語であることに変 りはないに し て も、母語話者に とって もあ る意味で外国語だ と い う点で、中立化、公平化の理想に一歩近づいた 発想だ と言 って よい。 ところで、Inter-Eが母語話者 に とって も外国 語であ るとい うことは、非母語話者の立場か らす れば、 より積極的な意義を もつ。 この点に関 し、 鈴木(1975:223)はInter-Eとほぼ同一概念 の 「イ ソグ リック」を提唱 し、それについて次の ように 述べている。 「母国語が通用 しない情況の下で、外国語を使 わ されなが ら、その外国語を どこまで自分 の方に 引きつけ、押 え込む ことがで きるか とい う、一種 の逆説的な矛盾 の、力関係のバ ラソスにおいて成 立す るものがイソグ リックなのであ る。従 って こ ち らの立場が強 く、相手に与 えるものが多けれは 多いほ ど、外国語は こち らに引寄せ られ るのだ。」 要す るに これは、世界的な拡が りと多様な局部形 をす でに有す る英語に、非母語話者が 自主的な立 場で選択的に接 してい く姿勢を とることに よって 英語が よ り身近な存在になるとい うこと、換言す れば、Inter-Eを非母語話者が積極的に使用す る ことに よって、inter-Eと母語英語 との実態的、 心理的距離は広 ま り、その分だけInter-Eの中立 化が促進 され るとい うことである。 このことか ら、非母語話者に とって意義 があ る のは、次の2点においてだ と言える。第一 に、 こ れが非母語話者に大 きな精神的重要性を もた らす 点である。非母語話者が、母語英語、例 えはイギ -

(14)

87-リス英語を うま く使用できるよ うにな るためには、 結果的に、非母語話者 の独 自性を様 々な部分切捨 てて修正 し、 自分を英国的な枠 に押え込 まなけれ ばな らないことを意味す る。仮 にその習得に成功 した として も、結局は借物の域 を出ない。なぜな ら、イギ リス英語の正誤判定権はあ くまで もイギ リス英語の母語話者が所有 しているか らである。 つ ま りこれは、イギ リス人の土俵で相撲を とるこ とであ り、非母語話者には、 自分の思想や文化を 思 う存分表現す ることができない とい う不公平感 が残 る。 ところがInter-Eの積極的使用は この不 公平感 を完全にではないに しろ、かな りの部分払 拭 して くれ る。勿論、非母語話者に とってInter

-E

の使用は、 自分の母語使用 と比較 した場合、先 に も述べた よ うに測 り知れない努力を必要 とす る。 しか しInter-Eの積極的使用に よ り、英語 の母語 話者 も自分の土俵か ら出る、いや土俵か ら引 きず り出され る点に意義があ る。母語話者に とって、 英語 らしくない英語を聞か され、理解 しよ うと努 力す ることは喜びで もなければ容易なことで もな い。イ ソ ド人や アラブの人々の英語は捲舌で分 り に くい とか、スペイ ソ語系の人の英語はSとZの 区別がないな どとい う批判を よく耳にす る。 しか しこれは、 これ らの人 々の使用す る英語を、母語 話者 の規範性か らのみ批判 しているか らである。 つま りInter-Eの積極的使用は、正誤判定を 下す 唯一基準を母語話者か ら奪い取 ることを意味す る。 なぜ な ら、Inter-Eは英語に して母語 英語に非 ざ る言語 であ るか らである。 第二 の意義 として、非母語話者の言語使用に経 済性を もた らす点を挙げ ることができる。非母語 話者 同士が意思疎通を行 う場合、例えは、イギ リ ス英語を仲介 としなければ相互に理解 し得ない と 考 えるのは不経済であ る。仮に 日本人が必死に英 国的な発想に支 えられた純粋 なイギ リス英語を習 得 しよ うと、発音や慣用的表現に して もできる限 り習熟 した としよう。同様の ことを他方 タイ人 も 目標 として努力す る。その結末に、両者が このイ ギ リス英語の枠組のなかでや っと意思疎通ができ るとい うのは実に無駄 な ことではなかろ うか。 こ れは例 えば、あ る日本人がタイのある人 と会 って 話 しを したい と思 う時、双方がわ ざiっざロソ ドン に行 って、そ こでは じめて用が足 りるとい うよう な ものであ る。それ よ りも日本か ら直接 タイに行 く航空便があ るわけだ し、その方が よ り経済的で あ る。 この 日本 とタイを直接結びつけ る近道、 こ れが 日本人 とタイ人が、英国的な ものを抜 きに し て、直接交流で きるInter-Eだ と考 えることが で きる。 この よ うにInter-Eは、特に非母語話者の積 極 的使用に よって、あ る規範に基づいた 「統一」を それぞれが対等の立場で参加できる 「連合」- と 変 えてい こ うとす るものであ り、国際語の中立化、 公平化を実現 してい く上で希望の もて る意欲的な 試みであ ると同時に、各話者のidentityを維 持 し てい く上 で も有効な手だて とな る。 またInter-E の積極的使用に よって世界の各文化が均質化す る のではな く、む しろ、それに よって各文化を伝達 し、文化間の相違を説明す る手段が提供 され る。 従 って、母語話者の生活様式を真似 ようとす るよう な非母語話者がな くなることになるし、母語話者 も、 有効 な英語局部形の存在の認識 と、効果的な英語使 用が母語英語 とその文化に接近することではないと の認識を深めることにもなる。 この ような意味で、 Inter-Eの提案 は、 言語 と文化のchauvinism を 排 し、言語 と文化の相対主義を実現す る上 での画 期的な- 提案 と受け とめ ることができる。 2. inteHgibHityの観点か ら 多様化、多極化を起 して しまった英語が世界の 共通語 として機能 してい る側面に照点をあて、そ れを独立 した存在 とみなすな らば、 このInter-E は規範性が弱 ま り許容度を大 き くせ ざるを得ない 状態にな ってい るとい うことにな る。国際語であ るとい うことは、同時に偏狭な純粋性を保 ち得な い とい うととである。非母語話者が、 自分に とっ て外側の存在である英語 を、借 り着だ とい う意識 を もたず、それを完全に主体的に 自信を もって使 用す るとき、それは、 自ず と、そ こに現われて く る使用者 の母語の影響 と、彼の個性が横溢 した言 語になるか らであ る。 この ことは、上で述べた よ うに、国際語の中立化、公平化、 さらにはiden -tityの維持 とい う点か らは重要な ことであ った。 ところが これは当然、Strevensの懸念の(2)に もあ った、英語 に よる国際的相互理解が維持できるの か とい う問題、つ ま りintelligibilityの問題 につ き当たる。

(15)

この点に関す るSmithのガ- ドライ ソは 「教養 のある英語」であ り、それであれは母語話者の も ので も、非母語話者の もので もよ く、それはまた いかなるアクセ ン トで もって話 されて もよい とい うものだ った。事実、SmithandRafiqzad(1983 :49-58)は 、 アジア11ヶ国出身の 「教養のある話 者」1,386人を被験者 とす る、intelligibilityに関 す る精練 な調査を行い、その結果、教養 のある英 語 に、音韻 と語柔の レベルで多様性があ って も、 文法 レベルで統一性があるのな ら、それはいかな る英語であ って も通 じると期待で きる、 との報告 を行 ってい る。 また、同様の主張はKachru(19 85:24)に もみ られ る。 ところが、 ここに問題が2つある。 まず、 「教 養 のある英語」 と言 うが、 ここで言 う 「教養 のあ る」 とい うことの中味は一体何なのか とい うこと である。 その中味の幅が広けれが広 い程、intell -igibilityの確保は困難になる。Smithは この調査 を行 うにあた り、 「教養 のあ る」 ことの中味を、

`Educatedherereferstoformaleducati on,u-suallyuptoandincludingthetertiarylevel,I

としている。 しか し、教養があるか否かの判断を 公教育の段階を基準に して測 ることが可能なので あろ うか。 この点に閑LBoadi(1971:53-54)が、 ガーナでは数年前 まで、8年 ない し10年の初等教 育 を受けた大部分の者が教養 のある者だ った との 報告を行 ってい ることか らもわか るよ うに、 この 基準は時代や地域や社会発展の程度に よって左右 され る相対的な ものであ り、その意味で これは一 定 の基準を設定 しに くい問題であることは事実で あ る。 しか し一定の基準の設定は、Inter-Eのin telligibility維持 の点か らは ど うして も避けて通 れ ない問題 であ り、 この点に関す るSmithの もう 一歩踏み込 んだ説 明がほ しか った ところである。 なお、例 えば第2次世界大戦後独立 した`New Nation'におけ る基準を考 えてい くような場合に は、Plattetal.(1984:164-166)の指摘 す る次の 3点は考慮 に入れ る必要があるだろ う。 ・その国や地域 の英語局部形の発達の程度(連続 体 において援能面で どの程度確立 した ものか)0 ・その国や地域の社会的、経済的要因、及び 「教 養 のあ る」 といわれ る者が どこで教育を受けたの か 。

「教養 のあ る話者」のなかに母語話者がいるか 否か。 次に、Smithはこの調査にあた り、 「教養のあ る英語」がほぼ常に同 じ文法を有 してい ることを 前提 としてい るが、はた してほぼ同一文法の所有 が今後 も維持で きるのか とい うことである。なる ほ ど、現在の国際舞台では、Smithの い う 「教義 のあ る英語」がそれぞれのアクセ ソ トで もって話 されてお り、それに よってintelligibilityが維 持 されてい るとい う現実がある。 しか し Trudgill (1982)の調査に もあるよ うに、母語英語の各標準 形に も、僅かではあるが文法上の差異があ る。 ま してや非母語英語、なかで も英語を基盤 とす るク レオール話語については、多様な文法形式が生 じ る。例 えば、英語に よる義務教育 とい う政策が と られた西イン ド諸島の ク レオール話語に して も、 その文法は、 くだけた話 しことばを含めた場合、 イ ングラン ド英語のそれ とはかな り異な る。以下 Trudgill(1982:99)の調査に従い、西 イ ソ ドクレオ ールの特徴をい くつかみてみ よう(カ ッコ内はイ ソグラソ ド英語)0 ・文脈や数量詞か ら明確な場合、名詞 の複数標識 の欠如。例rivebook(`fivebooks') ・名詞 の所有形標識の欠如。thismanbrother (`thisman'sbrother')

・動詞 の3人称 の-Sの欠如。Helikeit(`Heli -kesit')

・等式型の文 と進行相の文におけ る連結詞 の欠如。

Sheverynice(`Sheisverynice')Hegoi ngho-menow (`Heisgoinghomenow')

・形式的有標受動構文の欠如。Thatthingusea lot(`Thatthingisusedalot')

・動詞の時制標識の欠如。 これに代 って副詞を用 いるか、迂言的にdoを用いるか、 あるいは 他 の 不変化詞 (例 えは過去時制にbin)を用い るかす る。

Hewalkhom lastnight Hedidwalkhomelastnight

Hebinwalkhomelastnight)

(`He・walke dho-mel早stnight') ・Heiseasytoannoyの ような文において、 イ ソグラン ド英語では主動詞(iseasy)の文法上の主 語(he)は従位動詞(annoy)の意味上 の 目的語 と解 され る。従 って、この文はItiseasyforpeople toannoybimと言い換 え るこ とがで きる。西 イ ー 89

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