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リース取引における貸手の収益認識 : FASB および IASB の議論の動向とその検討

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Academic year: 2021

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(1)リース取引における貸手の収益認識 ── FASB および IASB の議論の動向とその検討── 李 芝 娜. 1.はじめに. 2.リース取引における収益認識の問題点. 2010 年 8 月,米国財務会計基準審議会(FASB). リース取引における貸手の収益認識は,従来,. および国際会計基準審議会(IASB)は,公開草. 実現・稼得過程 ア プ ローチ を 基礎 と す る リ ス. 案「リース」 (以下, 「リース ED」という. )を. ク・経済価値アプローチに基づいて行われてき. 公表した.この公開草案は,リース会計の抜本. たといってよい.この貸手の収益認識をめぐっ. 的な変更を目指した FASB と IASB の共同プロ. ては,少なくとも以下の 2 つの問題点を指摘す. ジェクトによる成果である.そこでは,リース. ることができる.. が, 「特定の資産を使用する権利が,一定期間 にわたり,対価と交換に移転される契約(リー. ⑴  認識規準をめぐる問題点. ス ED, par. BC29) 」と 定義 さ れ, 「リース か ら. 現行のリース会計基準では,リース物件の所. 生 じ る キャッシュ・フ ローの 金額,時期 お よ. 有に伴うリスクと経済価値が実質的にすべて借. び不確実性に関する,目的適合性と表現の忠実. 手に移転するかどうかによって,リース取引が. 性のある情報を,財務諸表の利用者に報告する. 分類されてきた(FASB─ASC Topic 840, pars.. ために適用しなければならない原則を定める. 840─10─25─42 and 25─43; IAS 17, pars. 7 and. (リース ED, par. 4) 」ことが目的とされている.. 8).すなわち,貸手が,資産の所有に伴うリス. リース ED については,とりわけ,収益認識. クと経済価値を実質的にすべて借手に移転する. に関する公開草案「顧客との契約から生じる収. 取引はファイナンス・リースと分類され,それ. 益」との整合性を図りながら,貸手の会計処理. 以外のリース取引はオペレーティング・リース. の変更を提案している点が注目に値する.本稿. と分類されてきた.ファイナンス・リースは,. は,リース取引における収益認識の問題点を指. 事実上,貸手が借手に対して資産の購入資金を. 摘したうえで,従来のアプローチとリース ED. 融通する取引であり,貸手はそれによる利息収. で提案されたアプローチとを比較検討する.貸. 益を認識することになる.一方,オペレーティ. 手の会計問題をとおして,リース取引の実質が. ング・リースは,事実上,貸手が借手に対して. どのような観点からとらえられているのか,ま. 賃貸サービスを提供する取引であり,貸手はそ. た,それが収益認識のアプローチにどのような. れによる賃貸収益を認識することになる.. 示唆を与えるのかを検討することが本稿の目的. こ の リ ス ク・経済価値 ア プ ローチ は,一般. である.. 的 な 収益認識規準 で あ る 実現・稼得過程 ア プ ローチを基礎とする考え方でもある.しかし, FASB と IASB は,2008 年 12 月にディスカッ.

(2) 120 (298). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). ション・ペーパー「顧客との契約における収益. 2004,147─148 頁).. 認識についての予備的見解」 (以下, 「収益認識. このようなリース取引は販売型リースと呼ば. DP」という. )および 2010 年 6 月に公開草案「顧. れ,FASB および IASB では,早くから,製品. 客との契約から生じる収益」 (以下, 「収益認識. 販売益 と 利息収益 の 区分処理 が 規定 さ れ て い. ED」という. )を公表し,この実現・稼得過程. た( FASB─ASC Topic 840, pars. 840─30─30─9. アプローチについて,稼得過程の概念が明確に. and 30─10; IAS 17, pars. 39 and 42).た だ し,. 定義されておらず,それを具体的な状況に適用. 販売型リースにおいて,メーカーが人為的に低. する際にさまざまな解釈の余地が存在すること. い利子率を用いた場合には,リース開始日に認. を問題にした.つまり,経済的に類似の取引が. 識される製品販売益が,その後のリース期間に. 会計上は異なって処理されることがあり,企業. わたって認識される利息収益にくらべて過度に. 間および産業間の比較可能性が損なわれている. 大きくなる.IAS 17 では,人為的に低い利子. というのである(収益認識 DP, pars. 1. 3─1. 6;. 率が用いられている場合には,売上利益を市場. 収益認識 ED, par. IN1) .ま た,財 の 販売 の 収. 利子率が適用された場合の金額に限定するよう. 益認識に関して,財に対する支配の移転のみな. 要求している(IAS 17, pars. 42 and 45).たし. らず,その所有に伴うリスクと経済価値の移転. かに,貸手はリース取引に内在する計算利子率. まで要求することは,支配を基礎とする資産の. を操作することによって,販売益と利息収益の. 定義と矛盾するという指摘もなされている(収. 割合を操作し,収益認識のタイミングを操作す. 益認識 DP, par. 1. 10) .. ることができる.IAS 17 の規定は,そうした. こ の よ う に,リース取引の分類規準および. ケースを考慮したものなのかもしれない.. リース取引における貸手の収益認識規準として. 前述のとおり,FASB や IASB は,早くから,. は,従来,リ ス ク・経済価値 ア プ ローチ が 採. ファイナンス・リースにおける貸手の収益を販. 用されてきたが,近年の FASB や IASB では,. 売益と利息収益とに区分するよう要求していた. それが,その基礎とされる実現・稼得過程アプ. が,その要求は販売取引としての性格が強い. ローチとともに問題視されている.. リース取引によく適合している.ただし,資産 の所有権が移転しないリース取引において,何. ⑵  販売取引としての性格をめぐる問題. が販売の対象とされているのかは検討の余地が. 現行のリース会計基準では,ファイナンス・. ある.. リースの収益は,基本的にリース料総額とリー ス物件の現金購入価額との差額(利息相当額). 3.現行のリース会計基準による貸手の収益認識. をリース期間中の各期に配分することによって. 前節で指摘した問題点を踏まえ,本節では現. 認識されてきた.. 行 の リース 会計基準 に よ る 貸手 の 収益認識 に. ただし,たとえば,製造業者が直接もしくは. ついて確認しておきたい1).FASB─ASC Topic. 連結子会社のリース会社を通じてリースを行う. 840(旧 SFAS 13)では,貸手の観点から,リー. 場合,貸手(製造業者)の利益には製品販売益. ス 取引 が 販売型 リース,直接金融 リース,レ. も含まれることになる.すなわち,メーカーに よるリース取引は,製品販売と融資の 2 つの要 素から構成されている.このとき,製品販売 による利益についてはリース開始日に認識し, 融資による収益については利息法で各期に配 分することが考えられる(中央青山監査法人,. . 1)本稿 の 課題 に とって,リース 取引 に 関 す る ア メ リ カ の 会計基準 と 国際会計基準(国際財務報 告基準)との差異はそれほど重要ではないため, ここでは,アメリカの会計基準を概観することに する..

(3) リース取引における貸手の収益認識(李). (299) 121. 表 1 販売型リースおよび直接金融リースの会計処理 販売型リース リース開始日. リース料受取時 (第 1 回回収日). 直接金融リース. (借)リース総投資額 ×× (貸)売上高 ××   未稼得収益 ×× (借)売上原価 ×× (貸)棚卸資産 ××. (借)リース総投資額 ×× (貸)固定資産 ××   未稼得収益 ××. (借)現金預金 ××   未稼得収益 ×× (貸)リース総投資額 ××   受取利息 ××. (借)現金預金 ××   未稼得収益 ×× (貸)リース総投資額 ××   受取利息 ××. (出所)加藤(2009,設例 4 および設例 5,78─81 頁)を一部修正.. バレッジド・リース,オペレーティング・リー. 計をリース総投資額として資産計上し,それと. ス に 分類 さ れ て い る(FASB─ASC Topic 840,. 最低支払リース料および無保証残存価値の現在. pars. 840─10─25─42 and 25─43) .販売型リース,. 価値合計との差額を未稼得収益とする(FASB─. 直接金融リース,レバレッジド・リースは,い. ASC Topic 840, pars. 840─30─30─6 and 30─9).. ず れ も,ファイ ナ ン ス・リース(FASB─ASC. さ ら に,最低支払 リース 料 の 現在価値 を 販売. Topic 840 ではキャピタル・リースと呼ばれて. 価格として収益計上する.(FASB-ASC Topic. い る. )の 分類規準(所有権移転条項規準,割. 840, par. 840─30─30─10) . この販売価格 (売上高). 安購入選択権規準,経済的耐用年数規準,現在. とリース物件の原価または簿価から無保証残存. 価値規準)を一つ以上満たし,かつ,以下の二. 価値を控除したもの(売上原価)との差額が販. つの規準の両方を満たしているリース取引であ. 売益に相当し,リース開始日に認識されること. る.. になる2).一方,前述の未稼得収益は利息収益. a.最低支払リース料の回収可能性が合理的. に相当し,リース期間中の各期に利息法で配分. に予測されること. b.貸手が負担すべき将来費用の金額につい て重要な不確実性が存在しないこと.. されることになる. 直接金融リースにおいては,貸手は,リース 開始日に,最低支払リース料と無保証残存価値. 本稿 で は,販売型 リース,直接金融 リース,. の合計をリース総投資額として資産計上し,そ. レバレッジド・リースのうち,前二者に焦点を. れとリース物件の原価または簿価との差額を未. 合わせたい.販売型リースとは,貸手に製造業. 稼得収益 と す る(FASB─ASC Topic 840, par.. 者ま た は 卸売業者としての利益(損失)が生. 840─30─30─13).こ の 未稼得収益 が 利息収益 と. じ る リース 取引,す な わ ち,リース 開始日 に. してリース期間中の各期に利息法で配分され. おけるリース物件の公正価値がその原価または. る.リース開始日に売上高や売上原価が計上さ. 簿価よりも大きいもしくは小さいリース取引で. れることはないため,販売益に相当する利益も. あ る( FASB─ASC Topic 840, par. 840─10─25─. 生じない.. 43(a) ) .それに対して,直接金融リースとは,. ここで,販売型リースおよび直接金融リース. 貸手に製造業者または卸売業者としての利益. の会計処理を示すと表 1 のようになる.なお,. (損失)が生じないリース取引である(FASB─. 単純化のため,無保証残存価値はゼロと仮定し. ASC Topic 840, par. 840─10─25─43 (b) ) . 販売型リースにおいて,貸手は,リース開始 日に,最低支払リース料と無保証残存価値の合. . 2)こ こ で は,単純化 の た め,リース 契約 の 交 渉や締結にかかる初期直接費用はないものとする..

(4) 122 (300). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). ている.. 契約を調整するかもしれない.こうした問題に. こ の よ う に,FASB─ASC Topic 840 で は,. 対処するため,リース会計基準をめぐっては,. 販売型リースによる収益が販売益と利息収益と. 資産の所有権ではなく,その使用権を販売の対. に区分され,前者はリース開始日に一括して認. 象とする考え方がしばしば提起されている.次. 識され,後者はリース期間中の各期に配分され. 節では,その考え方について検討してみたい.. ることによって認識される.このような販売益 と利息収益の区分は IAS 17 でも要求されてお. 4.G4+1 による提案. り,国際的なリース会計基準の基本的な考え方. G4+1 は,1996 年 に ス ペ シャル・レ ポート. にしたがったものである. その考え方とは, リー. 「リース会計:新たなアプローチ」および 2000. ス取引を販売取引と金融取引から構成されるも. 年にポジション・ペーパー「リース:新たなア. のとみて,それぞれの取引と整合的な収益認識. プローチの実施」を公表した.そこでは,貸手. 規準を適用するというものである. だからこそ,. の収益認識について,現行のリース会計基準で. 販売取引については実現主義が,金融取引につ. 採用されているリスク・経済価値アプローチで. いては発生主義が適用されるのである (角ヶ谷,. はなく,金融商品会計基準で採用されている構. 2002,192 頁) .. 成要素アプローチが提案されている.構成要素. ここで,前節で指摘した問題点にてらして. アプローチとは,資産を構成要素に分解したう. ファイナンス・リースにおける貸手の会計処理. えで,特定の構成要素に対する支配が第三者に. を解釈 し て み た い.ファイナンス・リースに. 移転した場合,その構成要素をオフバランス化. は,前述のとおり,金融取引の側面とともに販. し,留保される構成要素については引き続きオ. 売取引の側面がある.そこでは,貸手の所有す. ンバランスするという考え方である.. る資産が実質的に借手に移転すること,あるい. この G4+1 の提案には,リース取引を一般的. は,貸手の資産の所有に伴うリスクと経済価値. な売買取引とのアナロジーによって処理するの. が実質的に借手に移転することが想定されてい. ではなく,むしろ資産・負債の定義および認識. る.すなわち,販売の対象とされているのは,. 規準との整合性に基づいて処理する考え方が反. 資産の実質的な所有権である. その意味で, リー. 映 さ れ て い る( Mc Gregor, 1996, p. 8, pp. 15─. ス取引と一般的な販売取引とのあいだには共通. 16).G4+1 で は,リース 取引 が 財産使用権 の. 点があり,だからこそ,一般的な販売取引と同. 売買ととらえられ,借手は,財産使用権をリー. じように,リース取引にも実現・稼得過程アプ. ス資産として計上するとともに,その権利に対. ローチが適用され,それにしたがって貸手の収. する支払義務をリース負債として計上する3).. 益が認識される.. すなわち,従来,オペレーティング・リースに. しかしながら,リース取引において所有に伴. 分類されてきたリース取引においても,借手は. うリスクと経済価値が実質的に移転したかどう. リース資産とリース負債をオンバランスするこ. かを判断するのは,しばしば困難であるといわ. とになる.一方,リースに対する貸手の投資は,. れている.前述のとおり,ファイナンス・リー. リース料の受取債権とリース物件の残余持分と. スとオペレーティング・リースの分類にあたっ. いう,それぞれ異なるリスクにさらされている. ては 4 つの規準を参照することになるが,貸手. 2 つの要素から構成されると考えられ,貸手は,. は,借手のニーズに応じて,所有権移転条項や 割安購入選択権を含まないリース契約をあえて 設定するかもしれない.また,経済的耐用年数 規準や現在価値規準を満たさないようにリース. . 3)こ の モ デ ル は「使用権 モ デ ル」と 呼 ば れ, Myers(1962)によって提唱された「財産使用権取 得説」に基づいて開発されたものといわれている..

(5) リース取引における貸手の収益認識(李). (301) 123. それぞれに対する支配の移転に基づいて処理す. ができる.こうした考え方は,実現・稼得過程. ることになる.. アプローチの欠陥を問題視し,資産・負債アプ. G4+1 の提案によると,貸手は,リース物件. ローチに基づく収益認識規準を構築しようとし. の引き渡しという履行行為と引き換えに,リー. て い る 近年 の FASB や IASB の 議論 と 共通 し. ス料を受け取る権利を獲得することから,構成. ている.次節では,そのような収益認識プロジェ. 要素アプローチに基づいて,当該資産の全部ま. クトとの整合性にも配慮して提案されたディス. たは一部の認識を中止し,それを金融資産であ. カッション・ペーパーや公開草案を検討してみ. るリース料受取債権として表示する. また, リー. たい.. ス物件に対する残余持分については,保証の有 無にかかわらず,非金融資産として別個に表示. 5.リース ED による提案. することになっている.このように,リース取. ⑴  使用権モデルの採用. 引を,資産の売買取引あるいは賃貸借取引とし. FASB お よ び IASB は,2009 年 3 月, ディ. てではなく,財産使用権とそれに付随する金融. ス カッション・ペーパー「リース:予 備 的 見. 商品の譲渡取引としてとらえる点がこのモデル. 解」 (以下「リース DP」という.)を公表した.. の特徴である(加藤 2007, 30─31 頁) .. そこでは,リース契約の構成要素(更新オプショ. なお,このモデルでは,通常のサービス契約. ン,購入オプション,変動リース契約または残. やそれに準じる契約(テイク・オア・ペイ契約. 存価値保証)を別個に識別,認識および測定し. など)は契約開始日において未履行契約として. なければならない構成要素アプローチの困難性. 処理するのに対し,リース契約は契約開始日に. が指摘され,複雑なリース契約の会計処理につ. おいて履行契約として処理することになってい. いてこのアプローチを採用しないことが暫定的. る( Nailor and Lennard, 2000, pars. 2.37 and. に決められた(リース DP, pars. 3.32─3.33).ま. 2.39) .そのため,リースがサービス要素を含. た,取引の個々の構成要素を区分する基準は,. む場合には,借手は,リース要素はオンバラン. しばしば,法的定義に依存する4)ため,各国の. ス化し,サービス要素はオフバランスにすると. 法律が異なるとすると,単一の,かつグローバ. いうように,両者を別々に処理することになる. ルに適用できる会計基準を目指そうとすると. (Nailor and Lennard, 2000, pars. 2.41 and 3.5) .. き,このアプローチの採用は極めて困難である. それは,貸手の義務のうち,物件の使用に係る. とみなされた(リース DP, pars. 3.28 and 3.33).. 部分(リース要素)は,その物件の引き渡しが. リース DP は,G4+1 によって提案された使用. 完了すれば履行も完了するのに対し,役務の提. 権モデルを採用しながらも,構成要素アプロー. 供に係る部分(サービス要素)は,物件の引き. チは採用しないことにしたのである.. 渡しが完了した後も継続するものであり,期間. このリース DP は,貸手の会計処理について. の経過とともに履行が完了していくためである (Nailor and Lennard, 2000, par. 2.41) .. は,リース 物件 の 認識 を 中止 す る ア プ ローチ (認識中止アプローチ)とリース物件を認識し. このように,G4+1 は,資産・負債の定義お. たまま受取債権と履行義務を認識するアプロー. よび認識規準を基礎とするアプローチ,すなわ. チ(履行義務アプローチ)を提案した.このリー. ち,資産・負債の構成要素に対する支配の移転. ス DP に 基 づ い て,2010 年 8 月,FASB お よ. に焦点を合わせるアプローチを提案したが,そ のアプローチは,貸手の収益を,リスクと経済 価値の移転ではなく,契約上の権利に対する支 配の移転にしたがって認識するものということ. . 4)たとえば,SFAS 140, par. 9 では,金融資産 の譲渡が法律的な真正売買か否かは,会計上の判 断でなく,法律上の判断であるとしている..

(6) 124 (302). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). び IASB はリース ED を公表したのである.. リース料の現在価値と貸手に発生した当初直. リース ED では,貸手は,借手と同じく使用. 接費用の合計額をリース料受取債権として資. 権モデルに基づいて会計処理を行うが,借手の. 産に計上する.. ようにすべてのリース取引に単一の会計処理を. ⃝貸手が借手に課している利子率で割り引いた. 適用するのではなく,リース DP で提案された. リース料の現在価値をリース収益(売上)に. 認識中止アプローチと履行義務アプローチを使 い分ける複合モデルが提案されている(リース. 計上する. ⃝原資産の簿価のうちリース期間中に借手が使. ED, pars. 28─29, BC23─27) .両 ア プ ローチ は,. 用する権利に相当する部分の認識を中止し,. 予想リース期間中または予想リース期間終了後. 貸手が留保している権利に相当する部分は残. における原資産(リース物件)に関する重要な リスクまたは便益のエクスポージャーに応じて 使い分けられる.原資産に関する重要なリスク または便益のエクスポージャーを貸手が留保し ていない場合は認識中止アプローチが,留保し. 存資産として組み替える. ⃝原資産の簿価のうち認識を中止した部分を リース費用(売上原価)に計上する. また,リース開始日後,以下の手続きが必要 である(リース ED, pars. 54─59, B30).. ている場合は履行義務アプローチが適用される. ⃝リース料受取債権については,利息法による. (リース ED, pars. 29, BC14) .ま た,原資産 に. 償却原価で測定し,利息収益を認識する.ま. 対する支配および原資産に関するすべてのリス. た,リース料受取債権に重要な変動があるこ. クと便益が借手に移転する場合には,そのリー. とが示唆されている場合には,リース料受取. ス契約は原資産の売買契約とみなされ,リース. 債権の簿価を見直す.さらに,報告日ごとに. 会計基準 の 適用対象外 と さ れ て い る(リース. リース料受取債権が減損していないかどうか. ED, pars. 8, BC9, BC10) .. 判定し,減損損失があれば純損益に計上する.. この原資産に関する重要なリスクまたは便益. ⃝残存資産については,報告日ごとに減損して. に着目するアプローチは,従来のリース会計基. いないかどうか判定し,減損損失があれば純. 準におけるリスク・経済価値アプローチと類似. 損益に計上する.残存資産は,リース料受取. している.すなわち,リース ED では,使用権. 債権の見直しに伴う変動と減損処理による減. モデルとリスク・経済価値アプローチとの連携. 額を除き,再測定されない. . がみられるのである.この点を踏まえて,以下. ここで,リース ED の付録 B(適用指針)に. では,認識中止アプローチと履行義務アプロー. したがって,認識中止アプローチの基本的な会. チの具体的内容を明らかにしたい.. 計処理を示そう(リース ED, par. B30, ex. 4).. ⑵  認識中止アプローチと履行義務アプローチ. 例:X1 年度の期首に貸手は借手に機械の 10. ⒜  認識中止アプローチ. 年間のリースを行う.年間リース料は CU1,000. 認識中止アプローチが適用される場合,貸手. の後払いで,貸手が借手に課す利子率は 8% で. はリース開始日に原資産の経済的便益を借手に. ある5).また,リース開始日における機械の公. 移転したとみなされる.貸手は,リース開始日. 正価値は CU7,000,簿価は CU5,000 であり,機. に,原資産の簿価のうちリース期間中に借手が. 械の耐用年数は 10 年である.このとき,10 年. 使用する権利に相当する部分の認識を中止し,. 間のリース料を利子率 8% で割り引いた現在価. 以下のように会計処理する(リース ED, pars.. 値は CU6,710 であるから,リース開始日の仕. 46, 47, 49, BC19─BC20) . ⃝貸手が借手に課している利子率で割り引いた. . 5)CU は貨幣単位を表している..

(7) リース取引における貸手の収益認識(李). 訳は以下のようになる.. (303) 125. 計上する. また,リース開始日後,以下の会計手続きが. (借)リース料受取債権 6,710 (貸)リース収益 6,710. 必要 で あ る(リース ED, pars. 31, 37, 39, 41, 44, BC16). ⃝リース料受取債権については,利息法による. (借)リース費用 4,793 (貸)原資産 4,793(*1) *. 償却原価で測定し,利息収益を認識する.ま た,リース料受取債権に重要な変動があるこ. ( 1)CU4,793 = CU5,000 × CU6,710 ÷ CU7,000. とが示唆されている場合には,リース料受取. (公正価値の比率により認識中止部分に配分さ. 債権の簿価を見直す.さらに,報告日ごとに. れる原資産の簿価). リース料受取債権が減損していないかどうか 判定し,減損損失があれば純損益に計上する.. また,リース開始日後は,X1 年度末に①リー. ⃝リース負債については,借手による原資産の. ス料の受け取りと②リース料受取債権に対する. 使用パターンに基づいて償却し,リース収益. 利息(CU6,710 × 8%)を認識する.. を認識する6). ⃝原資産については,そのまま資産計上し,減. (借)現金 1,000 (貸)リース料受取債権 1,000 . 価償却する. ここで,リース ED の付録 B(適用指針)に したがって,履行義務アプローチの基本的な会. (借)リース料受取債権   537. 計処理を示そう(リース ED, par. B28, ex. 1).. (貸)利息収益   537 例:X1 年 度 の 期 首 に 貸 手 は 借 手 に 機 械 ⒝  履行義務アプローチ. の 5 年間 の リース を 行 う.年間 リース 料 は . 履行義務アプローチが適用される場合,貸手. CU1,000 の 後払 い で,貸手 が 借手 に 課 す 利子. は原資産に対する支配を失うことなく,借手に. 率 は 8% で あ る7).ま た,リース 開始日 に お. リース 期間 に わ たって 原資産 を 使用 す る 権利. け る 機械 の 簿価 は CU15,000 で あ り,機械 の. を与えるとみなされる(リース ED, par. B16) .. 耐用年数は 15 年である.このとき,5 年間の. 貸手は,リース開始日に,リース料受取債権お. リース料を利子率 8% で割り引いた現在価値は. よびリース負債を認識し,原資産の認識を中止. CU3,993 であるからリース開始日の仕訳は以下. してはならない(リース ED, par. 30) .すなわ. のようになる.. ち,原資産は貸手の経済的資源のままであり, 貸手 は リース 期間 に わ たって 借手 に 原資産 の 使用を認める義務を負っているとみなされる.. (借)リース料受取債権 3,993 (貸)リース負債 3,993. リース 開始日 に お け る 貸手 の 具体的 な 会計処 理は以下のとおりである(リース ED, pars. 30,. ま た,リース 開始日後,X1 年度末 に ① リー. 31, 33) .. ス料の受け取り,②リース料受取債権に対する. ⃝貸手が借手に課している利子率で割り引いた リース料の現在価値と貸手に発生した当初直 接費用の合計額をリース料受取債権として資 産に計上する. ⃝リース料受取債権の金額をリース負債として. . 6)リース 負債 を,借手 に よ る 原資産 の 使用 の パターンに基づいて規則的かつ合理的な方法で信 頼性を持って償却できない場合には,定額法を適 用する(リース ED, par. 37 ⒝) . 7)CU は貨幣単位を表している..

(8) 126 (304). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). 利息(CU3,993 × 8%) ,③リース負債の償却(便. ける原資産に関する重要なリスクまたは便益の. 宜上,定額法を仮定)によるリース収益(CU3,. エクスポージャーに応じて使い分けられること. 993 ÷ 5 年) ,④原資産の減価償却費(CU15,000. になっている.ただし,リース ED では,ほと. ÷15 年)を認識する.. んどの場合,貸手の事業モデルによって,認識 中止アプローチと履行義務アプローチのいずれ. (借)現金 1,000 (貸)リース料受取債権 1,000 . を適用するのが適切であるかが示されると述べ ら れ て い る(リース ED, par. BC27).そ こ で の例示は以下のとおりである(リース ED, par.. (借)リース料受取債権   319 (貸)利息収益   319 . BC27(a) (b)). ⑴ 貸手の事業モデルが,主に原資産に係る 資金を提供することである場合,この事. (借)リース負債   799 (貸)リース収益 799 . 業の利益は利息収益によるものであり, 事業に伴う主要なリスクは信用リスクで あることから,認識中止アプローチが適. (借)減価償却費 1,000 (貸)減価償却累計額 1,000 . 切である可能性が高い. ⑵ 貸手の事業モデルが,主に原資産をその 耐用年数にわたって複数の借手にリース. ⑶   2 つのアプローチの適用規準. したり,リースの終了後に原資産を使用. 前述のとおり,認識中止アプローチでは,リー. または売却したりすることを通じて,原. ス開始日に,原資産の簿価のうち使用権資産に. 資産の積極運用からリターンを生み出す. 相当する部分,すなわち,リース期間中に借手. ものである場合,履行義務アプローチが. が使用する権利に相当する部分がオフバランス. 適切である可能性が高い.貸手は,原資. 化されるため,それとリース料受取債権との差. 産の使用量または業績に応じた支払いを. 額が利益認識される.そして,リース開始日後. 受けることにより,リース期間中に変動. は,リース料の受け取りにしたがって利息収益. するリターンを生み出すこともある.そ. が認識される.それに対して,履行義務アプロー. のような事業モデルでは,主要なリスク. チでは,リース開始日に,リース料受取債権と. は資産リスクである.. 同額 の 履行義務,す な わ ち,リース 期間 に わ. 前節で述べたとおり,かつて G4+1 が提案し. たって借手に原資産の使用を認める義務がオン. たアプローチは,貸手の収益を,原資産の所有. バランス化されるため,そこで利益が認識され. に伴うリスクと経済価値の移転ではなく,契約. ることはない.このアプローチでは,リース開. 上の権利に対する支配の移転にしたがって認識. 始日後に,リース料の受け取りにしたがって利. するものであった.それに対して,リース ED. 息収益が認識されるとともに,義務の履行にし. が提案しているアプローチは,貸手の収益を,. たがってリース収益が認識されることになる.. 貸手の主要なリスクとリターンの性質にした. このように,認識中止アプローチと履行義務. がって認識するもののようにみえる.そこでは,. アプローチのいずれを適用するかによって,収. G4+1 が棄却したリスク・経済価値アプローチ. 益認識のタイミングは異なる.その点で,両者. が,形を変えて再び現われているようにみえる. を使い分ける判断規準は重要な意味をもってい. のである.. る.前述のとおり,2 つのアプローチは,予想. 一方,第 1 節で述べたとおり,近年の FASB. リース期間中または予想リース期間終了後にお. および IASB による収益認識をめぐる議論で.

(9) リース取引における貸手の収益認識(李). (305) 127. は,リスク・経済価値アプローチが,その基礎. ローチが検討されている(収益認識 DP, pars.. とされる実現・稼得過程アプローチとともに問. 1.17─1.20).た だ し,そ れ は,従来 の 実現・稼. 題視されている.FASB および IASB による収. 得過程アプローチを放棄することを意図してい. 益認識 ED が提案しているアプローチは,リス. るのではなく,資産と負債の変動に着目するこ. クと経済価値ではなく支配に焦点を合わせ,財. とによって従来のアプローチに規律をもたらす. また は サービ ス の支配が移転し,履行義務が. ことが期待されていると述べられている(収益. 充足されたときに収益を認識するというもの. 認識 DP, par. 1.19).リース 会計基準 を め ぐ る. である(収益認識 ED, par. BC60) .リース ED. G4+1 の提案と同じように,基本的には,資産・. は,この収益認識 ED との整合性を考慮して作. 負債の定義および認識規準と整合するアプロー. 成されているはずであるが,認識中止アプロー. チを開発しようとしているのである.. チと履行義務アプローチの適用規準をみるかぎ. 周知 の と お り,FASB 概念書第 6 号「財務. り,支配の移転という概念が一貫して適用され. 諸表の構成要素」では,資産が,「過去の取引. ているようにはみえない.そこで,次節では,. または事象の結果として,ある特定の実体によ. 支配の移転という概念の意味を明らかにしたう. り取得または支配されている,発生の可能性の. えで,リース会計プロジェクトと収益認識プロ. 高い将来の経済的便益(FASB, 1985, par. 25)」. ジェクトとの関係を検討したい.. と定義されている.また,IASB の「財務諸表. 6.リース 会計 プ ロ ジェク ト と 収益認識 プ ロ ジェクト ⑴  概念フレームワークおよび収益認識 ED に おける支配概念 第 1 節で述べたとおり,収益認識 DP および. の作成及び表示に関するフレームワーク」でも, 資産は,「過去の事象の結果として当該企業が 支配し,かつ,将来の経済的便益が当該企業に 流入することが期待される資源(IASB, 1989, pars. 49(a) (b))」と 定義 さ れ て い る.資産 の 定義 に お け る「将来 の 経済的便益」は,企業. 収益認識 ED は,現行の一般的な収益認識規準. に正味キャッシュ・インフローをもたらすもの. である実現・稼得過程アプローチについて,稼. (FASB, 1985, par. 28),あるいは,企業への現. 得過程の概念が曖昧であり,それを具体的な状. 金および現金同等物の流入に直接的にまたは間. 況に適用する際にさまざまな解釈の余地が存在. 接的に貢献する潜在能力(IASB, 1989, par. 53). することを問題にしている.つまり,経済的に. を意味している.. 類似の取引が異なる会計結果をもたらすこと. また,「支配」は将来の経済的便益を獲得す. が あ り,企業間 お よ び 産業間 の 比較可能性 が. る能力であり,それは,通常,法的権利から生. 損なわれているというのである(収益認識 DP,. じるが,権利の法的強制力を不可欠な前提条件. pars. 1.3─1.6; 収 益 認 識 ED, par. IN1) .ま た,. としているわけではないとされている(FASB,. そこでは,財の販売の収益認識に関して,財に. 1985, pars.186─187; IASB, 1989, par. 57).した. 対する支配の移転のみならず,その所有に伴う. がって,リース取引によって借手が使用する財. リスクと経済価値の移転まで要求することは,. 産は,借手がその財産から発生すると予想され. 支配を基礎とする資産の定義と矛盾していると. る便益を獲得することができれば,借手の資産. 指摘されている(収益認識 DP, par. 1.10) .. 8) となる(IASB, 1989, par. 57) .ここで確認す. そこで,FASB と IASB による収益認識プロ ジェクトでは,概念フレームワークの基礎的構 成要素である資産と負債に焦点を合わせ,資産 と負債の変動にしたがって収益を認識するアプ. . 8)ただし,前述のとおり,リース ED では,借 手の資産は財産そのものではなく財産使用権とと らえられている..

(10) 128 (306). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). べきことは,FASB および IASB による現行の. 的または間接的に獲得することができると述べ. 概念フレームワークにおいて,支配の本質が将. られている(収益認識 ED, par. 27).. 来の経済的便益を獲得する能力ととらえられて. このように,概念フレームワークにおける支. いる点である.. 配の概念も収益認識 ED で提案された支配の概. 前述のとおり,FASB と IASB は,リスク・. 念も,いずれも,将来の経済的便益を獲得する. 経済価値 ア プ ローチ に よ る 収益認識 は,支配. 能力,すなわち潜在的なキャッシュ・フローを. を基礎とする資産の定義と矛盾すると指摘して. 獲得する能力を意味している.. いる.すなわち,財の販売による収益は,財 の所有によるリスクと経済価値の移転ではな. ⑵  収益認識 ED における「支配の移転」の意義. く,財に対する支配の移転によって認識される. 前述 の と お り,FASB と IASB の 共同 プ ロ. べきだというのが両審議会の主張である.そこ. ジェクトによって提案された収益認識モデルで. で,2010 年 6 月 に 公表 さ れ た 収益認識 ED で. は,所有に伴うリスクと経済価値の移転よりも,. は,支配の移転に基づく収益認識規準が提案さ. 支配の移転に重点が置かれている.そうするこ. れている.具体的には,まず,顧客対価に基づ. とにより,資産の定義および認識規準と整合的. いて履行義務を測定し,そのうえで,履行義務. な収益認識モデルとなり,また,財またはサー. を充足したときに収益を認識することが提案さ. ビスの移転をめぐる判断がより整合的になると. れている.履行義務は,企業が顧客に約束した. されている(収益認識 ED, par. BC60(a) (b)).. 財またはサービスを移転することによって充足. ここで,収益認識 ED が支配の移転という概. され,それは,顧客が財またはサービスに対す. 念をどのようにとらえているのか確認しよう.. る支配を獲得したことを表わす(収益認識 ED,. 収益認識 ED では,企業が財またはサービスの. pars. 25 and B44) .. 支配を顧客に移転したことを示す指標として,. 問題は,財またはサービスに対する支配の意. 以下 の も の が 挙 げ ら れ て い る(収益認識 ED,. 味であるが,収益認識 ED では,財またはサー. par. 30).. ビスの使用を指図し,かつ,そこから便益を. ①顧客が無条件の支払義務を負っている.. 享受する能力と定義されている(収益認識 ED,. ②顧客が法的所有権を有している.. 9) pars. 26 and BC62) .この提案における財ま. ③顧客が物理的に占有している.. たはサービスの使用を指図する顧客の能力と. ④財またはサービスのデザインまたは機能が. は,残存する耐用年数にわたって資産を使用す. 顧客に固有のものである.. る現在の権利または顧客の活動の中で資産を. なお,これらの指標はいずれも,単独で,顧. 消費する現在の権利を意味する(収益認識 ED,. 客が財またはサービスの支配を獲得したかどう. par. 27) .また,資産からの便益を享受する顧. かを決めるものではないとされている(収益認. 客の能力とは,資産から生じる潜在的なキャッ. 識 ED, par. 31).. シュ・フローのほとんどすべてを獲得する現在. 仮に,これらの指標をリース取引に適用して. の権利を意味し,顧客は,資産の使用,消費,. みると,従来のファイナンス・リースは支配の. 売却,交換,質入れ,あるいは保有などの多く. 移転を伴う取引と判断される可能性が高い.ま. の方法で資産からのキャッシュ・フローを直接. ず,指標①については,借手はリース契約を解. . 9)支配には,他の者が財又はサービスの使用 を指図したり便益を享受したりすることを妨げる 能力も含まれる(収益認識 ED, par. 26).. 約しない限り,この義務を負うと考えられる. したがって,解約不能なリース契約であれば, この指標は満たされることになる.指標②につ いては,従来の所有権移転条項規準や割安購入.

(11) リース取引における貸手の収益認識(李). (307) 129. 選択権規準と関連するが,リース開始日に支配. 手の会計処理が以下のように解釈されている.. が移転するといえるかどうかについては判断. 貸手に認識中止アプローチを適用する場合,借. を要するかもしれない.指標③については,従. 手に対して貸手が移転する資産はリース物件を. 来の経済的耐用年数規準や現在価値規準と関連. 使用するための個別的な権利(discrete right). するが,借手はリース契約の条項に違反しない. と み な さ れ る(リース DP, par. 10. 16).貸手. 範囲で自由にリース物件を使用できるはずであ. はこの資産を借手に移転し,借手はその支配を. り,この指標は満たされるといってよいであろ. 獲得していることから,貸手は履行義務を充足. う.指標④については,リース物件が借手の特. しており,リース物件の使用権販売を表わす収. 別仕様になっているリース契約であれば満たさ. 益を認識することになる(リース DP, par. 10.. れることになる.. 16).それに対して,貸手に履行義務アプロー. このように,支配の移転を判断するための指. チを適用する場合,貸手はリース期間にわたっ. 標は,従来のリスク・経済価値アプローチにお. て 借手 に 対 し て サービ ス,す な わ ち,リース. ける判断指標と密接に関連しているようにみえ. 物件を使用する継続した権利(ongoing right). る.しかしながら,FASB および IASB による. を提供しているとみなされる(リース DP, par.. 収益認識プロジェクトの意図は,リスク・経済. 10. 25).そのため,収益は,借手に対する履行. 価値アプローチよりも資産の定義と識別規準に. 義務を貸手が充足するのに応じて認識される,. 依拠したアプローチを開発することであった.. すなわち,収益はリース期間にわたって認識さ. また,リース会計プロジェクトの意図も,従来. れる(リース DP, par. 10. 25).また,貸手は,. のファイナンス・リースとオペレーティング・. リース期間にわたってその債権に生じる利息も. リースの分類をめぐる問題を解決するために,. 収益認識することになる(リース DP, par. 10.. 財産使用権という概念に基づく会計基準を開発. 25).このように,リース取引を財産使用権の. することであった.そこで,次項では,リース. 移転取引とみたとしても,それが貸手にとって. ED において支配の移転という概念がどのよう. 個別的な権利の譲渡を意味するのか,それとも,. に機能しているのか検討してみたい.. 継続的な権利の提供を意味するのかを判断しな ければならないのである.. ⑶  リース ED における「支配の移転」の意義. そして,前述のとおり,認識中止アプローチ. 前述 の と お り,FASB お よ び IASB に よ る. と履行義務アプローチの使い分けにあたって. リース会計プロジェクトでは,リース取引が財. は,リース物件に関する重要なリスクまたは便. 産使用権の移転取引とみなされ,借手は,すべ. 益のエクスポージャーに着目することになって. てのリース取引において,財産使用権をリース. いる.さらに,リース ED では,貸手の事業モ. 資産として計上するとともに,その権利に対す. デルによって,認識中止アプローチと履行義務. る支払義務をリース負債として計上する. 仮に,. アプローチのいずれを適用するのが適切である. 借手と貸手の会計処理がミラーイメージでなけ. かが示されると述べられており,そこでは,貸. ればならないとすると,貸手も,すべてのリー. 手の主要なリスクとリターンの性質に焦点が当. ス取引において,原資産の簿価のうち財産使用. てられている.すなわち,認識中止アプロー. 権に相当する部分をオフバランス化し,それと. チと履行義務アプローチのいずれを適用するか. リース料受取債権との差額を利益認識すること. は,貸手にとってのリース取引の実質によって. になる.すなわち,すべてのリース取引に認識. 決められているといえる.貸手がリース物件に. 中止アプローチを適用することになる.. 係る資産リスクを負担しない場合には認識中止. ところが,リース DP やリース ED では,貸. アプローチが適用され,負担する場合には履行.

(12) 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 2 号(2011 年 8 月). 130 (308). 義務アプローチが適用される.. いことを示唆している.. このように,2 つのアプローチの使い分けを 決めているのは,本質的には,リース物件に関 するリスクであり,それは,事業モデルにおけ るリスクとリターンの性質に着目しなければ, 支配の移転という概念が有効に機能しないこと を示唆している. 7.おわりに 現行のリース会計基準では,リース取引に金 融取引の側面と販売取引の側面があることを 認めたうえで,貸手がリース物件の所有に伴 うリスクと経済価値を実質的に移転する場合に は,一般的な販売取引と同じように,実現・稼 得過程アプローチにしたがって収益が認識され る.しかしながら,かつて G4+1 が提案したア プローチでは,リース物件の所有に伴うリスク と経済価値の移転ではなく,契約上の権利に対 する支配の移転にしたがって収益が認識される ことになっていた.すなわち,リスク・経済価 値アプローチよりも,資産・負債の定義および 認識規準と整合的なアプローチが志向されてい たのである.このような動向は,近年の FASB と IASB による収益認識プロジェクトにもみら れるものである. ところが,2010 年に FASB および IASB に よって公表されたリース ED では,リース物件 に関する重要なリスクまたは便益のエクスポー ジャーに焦点を合わせることによって,認識中 止アプローチと履行義務アプローチが使い分け られることになっている.貸手の収益認識のタ イミングを決めているのは,本質的には,貸手 の主要なリスクとリターンの性質であるといっ てよい.使用権モデルが採用されているとは いえ,そこでは,かつて G4+1 が棄却したリス ク・経済価値アプローチの概念が重要な意義を 持っているのである.そしてそれは,資産・負 債の定義および認識規準と整合的な収益認識ア プローチを開発しようとする場合でも,企業の 収益稼得過程に着目する意義は決して失われな. 参考文献 FASB(1976)Statement of Financial Accounting Standards(SFAS)No. 13: Accounting for Leases. (日本公認会計士協会国際基準委員会訳『米 国 FASB 財務会計基準書 リース 会計・セ グ メント会計他』 (1985)同文館. ) ──(1985) Statement of Financial Accounting Concepts(SFAC)No. 6 Elements of Financial Statements.(平松一夫・広瀬義州訳『 FASB 財務会計の諸概念(増補版) 』 (2002)中央経 済社. ) ──(2010)Accounting Standards Codification (Topic 840) : Lease.(企 業 会 計 基 準 委 員 会 訳 『公開草案「リース」 』 (2010)企業会計基準 委員会. ) IASB(1989)Framework for the Preparation and Presentation of Financial Statements.(企 業 会 計基準委員会訳『国際財務報告書(IFRS) 2010 』 (2010)中央経済社. ) ──(2003)International Accounting Standards No.17(Revised), Leases.(企 業 会 計 基 準 委 員 会訳『国際財務報告書(IFRS)2010 』 (2010) 中央経済社. ) ──(2008)Discussion Paper: Preliminary Views on Revenue Recognition in Contracts with Customers.(企業会計基準委員会訳『ディス カッション・ペーパー「顧客との契約におけ る収益認識に関する予備的見解」 』 (2009)企 業会計基準委員会. ) ──(2009)Discussion Paper: Leases: Preliminary Views.(企業会計基準委員会訳『ディス カッ ション・ ペーパー「リース: 予 備 的 見 解」 』 (2009)企業会計基準委員会. ) ──(2010a)Exposure Draft: Revenue from Contracts with Customers(企業会計基準委員 会訳『公開草案「顧客との契約から生じる収 益認識」 』 (2010)企業会計基準委員会. ) ──(2010b)Exposure Draft: Leases(企業会計基 準委員会訳『公開草案「リース」 』 (2010)企 業会計基準委員会. ) McGregor, W. ed(1996) , Financial Accounting Series, Special Report, Accounting for Leases: A New Approach ─Recognition by Lessees of Assets and Liabilities Arising under Lease Contracts ─, FASB. Nailor, H. and Lennard, A.(2000) , G4+1 Position Paper: Leases: Implementation of a New Approach, IASC. 加藤久明(2003) 「リース・オンバランス化論の.

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