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《実践報告》パフォーマンス課題に基づいたルーブリック作成の試み ―「高度専門職としての教員」育成を目指したルーブリック作成ワークショップの事例を通して―

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Academic year: 2021

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(1)横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 《実践報告》. パフォーマンス課題に基づいたルーブリック作成の試み 「高度専門職としての教員」育成を目指したルーブリック作成ワークショップの事例を通して 達富悠介・石田喜美 1、はじめに 次期学習指導要領(小学校・中学校は、平成 29 年 3 月告示、高校は平成 30 年 3 月告示)では、「主体的 で対話的な深い学び」が求められている。「主体的 で対話的な深い学び」について、平成 28 年 12 月の 中央教育審議会の答申〈1〉では、次のように記されて いる。 学びの成果として、生きて働く「知識・技能」、 未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表 現力等」、学びを人生や社会に生かそうとする「学 びに向かう力・人間性等」を身に付けていくため には、学びの過程において子供たちが、主体的に 学ぶことの意味と自分の人生や社会の在り方を. 図1. 学習評価の方法(西岡,2016a,p.83). 結び付けたり、多様な人との対話を通じて考えを 広げたりしていることが重要である。また、単に. 一口で「評価」といっても、このように様々な評. 知識を記憶する学びにとどまらず、身に付けた資. 価の方法が存在するが、西岡(2016b)は、学習者の「主. 質・能力が様々な課題の対応に生かせることを実. 体的で対話的な深い学び」を実現するためには、こ. 感できるような、学びの深まりも重要になる。. の中でも「知識やスキルを使いこなす力を直接的に 評価するようなパフォーマンス評価」(図 1 右下)を. 次期学習指導要領では、このような学びを実現す. 用いることが効果的であると指摘している。パフォ. るための具体的な授業改善のあり方として、「単元. ーマンス評価は評価の基準としてルーブリックを作. や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら評. 成し、それに基づいて学習者の実演をともなう課題. 価の場面や方法を工夫」することを挙げている。す. を評価する方法である。いわゆる「ペーパーテスト」. なわち、今後は「評価の場面や方法の工夫」と合わ. では測ることが難しい学習者の思考力・判断力・表. せて、目指すべき学習の姿を明確にし、それを追究. 現力等を評価するのに適した評価方法である。. していくことが求められているのである。. ルーブリックとは、成功の度合いを示す数レベル. では、「主体的で対話的な深い学び」を実現する. 程度の尺度と、それぞれのレベルに対応するパフォ. ためには、どのような場面で、どのような評価の方. ーマンスの特徴を記した記述語(descriptors)から成る. 法を行えばよいのだろうか。西岡(2016a)は現在まで. 評価基準表である(西岡 2003)。具体的には、以下の. に提唱されている学習評価の方法を図 1 のようにま. 表 1 のようなものである。. とめている。. 133.

(2) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 表1. ルーブリックの具体例(西岡 2016b,p.41)〈2〉. ② 予め、数個の観点を用いて作品を採点することを 同意しておく。 ③ それぞれの観点について、一つの作品を少なくと も 3 人が読み、1~5 点で採点する。 ④ 次の採点者に分からぬよう、採点を作品の裏に付 箋で貼り付ける。 ⑤ 全部を検討し終わったあとで、全員が同じ点数を つけた作品を選び出し、それぞれの点数に見られ る特徴を記述する。 ⑥ 意見が分かれた作品を見直す。 なお、「特定課題のルーブリックの作り方」は、 特定の課題に対して学習者のパフォーマンスの事例 が集まった場合に適用できるものである。西岡 (2008)は学習者のパフォーマンスの事例が集まる前. 西岡(2016)をもとに筆者作成. の場合に向けて「予備的ルーブリックの作り方」も 注意したいことは、ルーブリックは学習者のパフ. 提示しているが、本実践では特定の課題に対するパ. ォーマンス課題に基づいて作成されるということで. フォーマンス課題に基づいたルーブリックを作成し. あ る 。 ウ ィ ギ ン ズ と マ ク タ イ (Wiggins &. たため、「特定課題のルーブリックの作り方」を採. McTight2005)が提唱するカリキュラム設計の「逆向. 用した。. き設計」論では、ルーブリックを構成する記述語が (2)本実践で用いたパフォーマンス課題. 「各レベルに分類された作品の数々に見られる際立 った特徴を反映する」ものであるために、「ルーブ. 本実践では、横浜国立大学教育人間科学部開講の. リックを組み立て改訂するプロセスは、生徒のパフ. 授業「初等国語科教育法」(2017 年度春学期・2 年生. ォーマンスの分析に依拠する」必要があると述べて. 対象科目)の受講生によって作成された小学生向け. いる。本来のパフォーマンス評価において、ルーブ. の筆記テストを「パフォーマンス課題」と見なした。. リックは教師に与えられるものではなく、教師が目. そして、これを分析し、教員としての学習評価能力. の前の学習者に合わせて作成するものなのである。. を評価するためのルーブリックを作成する活動を、. しかし、多くの教師にとってルーブリックをパフ. ワークショップ形式で実施した。. ォーマンス課題から作成するということはなじみの. 本パフォーマンス課題において、受講生たちは. あることではない。また、教師としての実践的能力. 2016 年度の「全国学力・学習状況調査」(小学校・国. を高めることを目的としてルーブリックを作成する. 語)を自身で体験し、その評価枠組みについて学習し. 活動を報告した事例は少ない. 〈3〉. 。そこで本稿では、. たのち、同調査をモデルとして筆記テストを作成す. 筆者も参加者として加わった大学院でのルーブリッ. るよう指示された。ここで「全国学力・学習状況調. ク作成ワークショップの実践を紹介し、これを事例. 査」を取り上げた理由は、本調査の解説資料におい. として教師教育におけるルーブリック作成ワークシ. て、「出題の趣旨」「学習指導要領の領域等」「評. ョップの意義について考察する。. 価の観点」「問題形式」が一覧表形式で明示されて いることによる。受講生はこの資料を参照すること. 2、本実践の概要. で、学習指導要領上の指導事項や言語活動と、筆記. (1)ルーブリック作成のモデル. テストの形式・内容との関係を見出すことができ、. 本実践でルーブリックを作成した際は、西岡. それを自身のテストの作成へと結びつけやすい。し. (2008)が「特定課題のルーブリックの作り方」とし. かも、全国学力・学習状況調査は、国立教育政策研. て提示している以下のモデルを参考にした。. 究所のホームページ上で、これまでに実施されたす. ① 課題を実行し、多数の児童・生徒の作品を集める。. べてのテスト問題や解説資料が公開されており、受. 134.

(3) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 講生はそれらのすべての資料を参照することができ る. 〈4〉. 成者の氏名は事前にすべて削除し、作成者が特定さ れないように配慮した。課題には A1から A20 まで. 。. 本パフォーマンス課題では、具体的には、次のよ. の番号を振り、匿名性を確保した。. うな指示が提示された。. 本実践の流れは以下の(Ⅰ)から(Ⅲ)の通りである。. 課題 1 (Ⅰ)パフォーマンス課題を採点する. 次期学習指導要領(小学校学習指導要領)の「第 2 国語」の中から、指導事項をひとつ選. 1 コマ目の活動では、「特定課題のルーブリック. び、その指導事項の到達度について評価するため. の作り方」のうち②から④に示されている活動を行. のテスト問題を作成してください。. った。. 章第 1 節. なお、テスト問題は、A 問題(「知識」に関する. まず、本実践に参加する学生 11 名に、20 個の課. 問題)1 題、B 問題(「活用」に関する問題)1題か. 題を採点する観点について共有した。ここでは、 「学. ら構成されるものとします。. 習指導要領の指導事項に基づいた問題(A 問題およ び B 問題)を作成することができているか」を観点と. 課題2 「課題1」で作成したテスト問題の出題意図およ. した。「初等国語科教育法」ではこの観点に加えて、. び解答について、A 問題・B 問題それぞれ 600 字. 「学習指導要領の指導事項を問う問題(A 問題およ. 程度で解説してください。なお、解説には以下の. び B 問題)としてふさわしいか」の観点でも評価が行. 内容を必ず含んでください。. われたが、本実践では採点の観点は1つに限定した。 次に、その観点に基づき、課題を 1~5 点で採点し. ①「指導事項」のどの部分(内容)について、どの ように評価しようと考えたか?. た。採点した点数は付箋に記入し、課題の裏に貼付. ②どのような「言語活動」を取り入れたか?. した。そうすることで、他の学生の採点結果が見え. ③児童の解答にどのような誤答が生じることが. ないようにし、採点に影響を与えないように配慮し. 想定されるか?そう考える理由は何か?. た。また、採点する際の資料として学習指導要領の 系統表を配布した。約 1 時間採点を続け、ひとつの. このように、「全国学力・学習状況調査」をモデ. 課題につき平均6名程度の採点が行われた。. ルとした筆記テストを作成することの他、①学習指 導要領上の指導事項との関係性、②言語活動との関. (Ⅱ)評定が分かれた課題を協議し、課題にみられる. 係性、③児童のつまずきについての予想を、別のレ. 特徴を記述する. ポートで解説を加えることが求められた。この授業. 2コマ目の活動では「特定課題のルーブリックの. で学んだ学習指導要領の指導事項の内容や国語科に. 作り方」のうち⑤から⑥に示されている活動を行っ. おける言語活動、その評価の方法などに関する知識. た。. や技能を活用することが求められている点で、この. 事前の作業として、それぞれの課題についての採. 授業の期末課題はパフォーマンス課題であるといえ. 点を集計し、点数のモードと中央値を導き出し、そ. るだろう。. れぞれの課題の評定を決定した(本稿末資料)。そし て、評定が安定している課題として、A16(評定 1)、. (3)実践の流れ. A3 と A5(評定 2)、A9 と A17(評定 4)、A10(評定 5). 本実践は、90 分×3コマ(計 270 分)で行った。参. を選出した。また、評定が分かれた課題として A4. 加した学生は横浜国立大学大学院教育学研究科に所. と A14、A15 を選出した。. 属する大学院生 11 名であり、このうち現職教員 4. 2コマ目の活動では、参加した学生を 3 グループ. 名である。. に分け、課題にみられる特徴を記述した。それぞれ. 事前の作業として「初等国語科教育法」で提出さ. のグループには、以下の表 2 のように課題を配分し、. れたパフォーマンス課題を収集した。収集された課. 高い点数で安定している課題と低い点数で安定して. 題が 120 件を超えたため、本実践に参加する学生数. いる課題、評定が安定していない課題をひとつずつ. を鑑み、その中から筆者が無作為に 20 件を選別し本. 担当するようにした。なお、評定が分かれた課題に. 実践の対象とした。また、課題に記載されていた作. 135.

(4) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) ついては、各グループで協議し判定を確定させた上. テゴリー化を行った。この際は、文字を大きく. で特徴を記述した。. 印字するため、カードではなく、A4 サイズの用 紙に印字した。そして、ルーブリックの記述に. 表2. 各グループの担当課題. 合うように、カテゴリー名を決定した。 その後、グループを3つに分け、カードに印字 された同じ評定の記述についてカテゴリー化を 行い、カテゴリー名を決定した。. 協議の結果、グループXが担当した A15 は評定 3、 グループYが担当した A14 は評定 2、グループZが 担当した A4 は評定 2 で確定した。 それぞれの課題に見られる特徴の記述の具体例と して、グループYは担当した課題A3(評定2)に見 られる特徴を次のように記述した。 図2 抜粋 1. グループで協議しカテゴリー化をしている様. グループ Y による記述. 子. ・B 問題。指導事項 5・6 年生エ「自分が聞こうとす る意図に応じて」は OK。指導事項の 1/4 カバーして いる。 ・A 問題。指導事項 5・6 年生ウ「自分の考えが伝わ るように表現を工夫すること」は OK。指導事項の 1/2 カバーしている。 ・話し手と聞き手の場面設定が現れている。 ・生徒の言語生活の場面があまり想定されていない。 (Ⅲ)記述を抽象的な記述へと書き換え、ルーブリッ クを完成させる 図3. 前コマで「特定課題のルーブリックの作り方」の. グループで協議しカテゴリー名を決定してい る様子. 手順は一通り終わったが、各グループの記述はそれ ぞれの課題に限った特徴を表したものだった。その. 以上の作業によって、以下のようなルーブリック. ため各グループの記述からひとつのルーブリックを. を完成させることができた。. 作成するためには、一段抽象的な記述へ書き換える. 表3. 必要があった。そこで、3 コマ目の活動では、川喜 田(1967)による KJ 法を援用した手法を用いて、同一 の評定の記述をまとめて抽象的な記述へと書き換え る作業を行った。 具体的には、前コマで得られた記述を一文ごとカ ードに印字した。そして、同じ評定のカードを内容 によって分類しカテゴリー化した。以上の作業は次 の流れで行った。 KJ 法の手法を理解するため、評定4の課題 A9 と A17 についての記述を全体の協議によってカ. 136. 完成したルーブリック.

(5) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 3、本実践から考察できる意義. はがきコンテスト」への応募を呼びかけるポスター. 以下、本実践を事例として、教師教育におけるル. から必要な情報を読み取る設問をA問題に出題して. ーブリック作成ワークショップの意義について次の. いる。. 3つに分けて考察する。 まず、本実践に参加した学生がルーブリックにも. 会話 1. グループYによるディスカッション. っていた「与えられるもの」という認識を変化させ. A 中心となる語とかって、どういうこと?. る機会となったことが考えられる。本実践に参加し. B いつ、どこで、だれがとかじゃないの?. た学生のうち、パフォーマンス評価の評価基準とし. A うーん、全部じゃない?って思う。応募する時っ. てルーブリックを知っている学生は多かったが、同. てさ。. 時にルーブリックに対して「すでにある既成のもの. B まあ、ポスターとしては全部だよね。. を授業で使う」という認識をもっている学生も多か. C 知識問題として問うなら、そういうことの練習な. った。本実践で、西岡(2008)の提示する「特定課題. んじゃない。. のルーブリックの作り方」に沿って、実際のパフォ ーマンス課題からボトムアップ的にルーブリックを. 以上の会話は、学習指導要領の「中心となる」と. 作成した体験によって、ルーブリックに対して「そ. いう文言に着目し、課題A9の設問が「中心となる. れぞれの学習者の実態に合わせて作成することがで. 語や文を見付けて要約すること」に合致しているか. きるもの」という認識をもつことができたと考えら. どうかが話し合われている。本実践が学習指導要領. れる。. 上の文言の一つひとつに着目し、意味を精査する活. 次に、以上のことと関連して、本実践に参加した. 動を導いたことを示唆する場面であるといえるだろ. 学生が、同様の手続きで教育現場でも他の教員と共. う。. 同的にルーブリックをつくることが期待できる。本. このように、教師教育においてパフォーマンス課. 実践では、これまでルーブリックをつくったことが. 題に基づいたルーブリックを実際につくる活動に期. ない学生でも、西岡(2008)の提示する「特定課題の. 待できる教育的意義は大きい。しかし同時に、本実. ルーブリックの作り方」に沿うことでルーブリック. 践から考察できる活動上の課題もある。. を作成することができることがわかった。また、ル ーブリックを協働的に作成するためには、西岡. 4、本実践から考察できる課題. (2008)の提示する作り方に加えて、KJ法を援用し. まず、本実践では一応ルーブリックを完成するこ. た手法によって各グループの記述を抽象的な表現へ. とができたが、より厳密なルーブリックを作成する. と書き換えることが有効であることも本実践で明ら. ためには、活動を始める前にルーブリックに求めら. かになった。本実践に参加した学生が教育現場に戻. れるポイントなどを詳細に提示する必要があること. った際に、同様の手続きによって協働的にルーブリ. が考えられる。先述のように、KJ法を援用した手. ックを作成してみようとすることが期待される。. 法によって各グループの記述を抽象的な表現へと書. 最後に、本実践で扱ったパフォーマンス課題が学. き換えることによって、それぞれの課題にみられる. 習指導要領に基づいて全国学力・学習状況調査の設. 特徴からルーブリックを作成することができたが、. 問を作成する課題であったため、学生が学習指導要. 本実践で作成したルーブリックをそのまま教育現場. 領の文言についてディスカッションする機会となる. で活用することは難しい。すべての観点に評定1か. ことも明らかになった。. ら評定5までの記述が揃っているわけではなく、ル. 2コマ目のパフォーマンス課題にみられる特徴を. ーブリックとしての完成度は決して高くない。教育. 記述する活動で、課題A9を担当したグループYは. 現場で実際に活用することができるルーブリックを. 次のような議論を行っていた(会話 1)。なお、課題. 作成するためには、活動を始める前にルーブリック. A9では、学習指導要領の「C読むこと」「(ア)目. で扱う観点を提示し、その観点に合わせてパフォー. 的を意識して、中心となる語や文を見付けて要約す. マンス課題の特徴を記述するなどの工夫が必要とな. ること」(第 3 学年および第 4 学年)を問うため、 「絵. るだろう。. 137.

(6) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 次に、パフォーマンス課題に基づいてルーブリッ. について自覚的になる機会として機能するだろう。. クを作成することは時間と労力が大きく必要になる. 今後は、同様の事例を重ねて詳細に検討すること. ことも明らかになった。本実践では、90 分×3 コマ. で、教師教育におけるルーブリック作成ワークショ. (計 270 分)に加えて、授業時間外の準備にかかった. ップの意義について明らかにすることができると考. 時間も少なくなかった。また、本実践ではパフォー. える。稿を改めて論じたい。. マンス課題の数を 20 個に限定したが、それでも 1. 付記. コマ目の授業における採点の作業は大変なものであ. 本実践は、横浜国立大学大学院教育学研究科による. った。教師教育においてこのような活動を行う際や、. 開講授業「国語カリキュラム演習Ⅱ」内で行ったも. また同様の活動を教育現場で行う際には、よりコン. のである。. パクトな手続きによってルーブリックを完成させる 工夫が求められる。この点については、さらなる実. 〈1〉平成 28 年 12 月の中央教育審議会「幼稚園,小. 践の検討が必要である。. 学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導 要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」. 5、まとめ. 〈2〉西岡(2016)は、渡邉久暢教諭(福井県立若狭高等. 本稿では、教師教育におけるルーブリック作成ワ. 学校)の国語科の実践を紹介する中で、渡邉教諭が作. ークショップの意義について考察し、またこの活動. 成したルーブリック(表 1)を紹介している。. 上の課題についても考察した。本実践から示唆され. 〈3〉 教師教育においてルーブリックを作成する活. た意義と課題は次の点であった。. 動を報告している事例として牧野治敏(2017)があ. 〈本実践から考察した教育的な意義〉. る。牧野は、大学3年生の対象に、大学生が自身. ルーブリックを「与えられるもの」ではなく、学. の模擬授業を評価するルーブリックを作成した実. 習者の実態から作成するものであると認識を変. 践を報告している。. 容したこと. 〈4〉国立教育政策研究所「教育課程研究センター. 教育現場でも同様の手続きによって、教員同士の. 「全国学力・学習状況調査」」. 協働的な作業によってルーブリックを作成する. http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakury. ことが期待できること. oku.html(最終アクセス 2018.02.19). パフォーマンス課題が全国学力・学習状況調査を 模した課題の作成であったため、学習指導要領の. 参考文献. 文言を丁寧に読み深めることができたこと. Wiggins & McTight(2005) 『 Understanding by Design,Expanded 2nd Edition』( =西岡加名恵・訳. 〈本実践から考察した活動上の課題〉 完成度の高いルーブリックを作成するためには、. (2012)『理解をもたらすカリキュラム設計―「逆. ルーブリックで扱う観点を提示するなどの工夫. 向き設計」の理論と方法』日本標準).. が求められること. 川喜田二郎(1967)『発想法』中央公論新社.. 大きな時間と労力が必要となるため、よりコンパ. 西岡加名恵(2003)『教科と総合に活かすポートフ ォリオ評価法―新たな評価基準の創出に向け. クトな手続きを考案する必要があること. て』図書文化.. 本稿で考察した以上の点は、本実践の試験的な活. 西岡加名恵(2008)『「逆向き設計」で確かな学力. 動を事例としたものであるため、ここでの知見を即. を保証する』明治図書.. 座に一般化することはできない。. 西岡加名恵(2016a)『教科と総合学習のカリキュラ. また、本実践ではパフォーマンス課題として「初 等国語科教育法」の受講生が作成した、全国学力・. ム設計―パフォーマンス評価をどう活かすか』. 学習状況調査をモデルとした筆記テストを採用した. 図書文化. 西岡加名恵(2016b)『「資質・能力」を育てるパフ. ため、教師の評価方法をメタ的に捉える機会となっ た。学習者の学力を測定することを目的とした筆記. ォーマンス評価. テストそのものを評価することは、教師が「評価」. う充実させるか』明治図書. 138. アクティブ・ラーニングをど.

(7) 横浜国大国語教育研究 No.43(2018) 牧野治敏(2017)「ルーブリック評価を導入した授 業改善の試み 模擬授業を評価するルーブリッ クを学生自身が作成する実践」『大分大学高等 教育開発センター紀要』第 9 号, pp.77-84. (横浜国立大学大学院教育学研究科・横浜国立大学) 本稿末資料. 139.

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