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アレルギーの新たな抑制経路の発見~慢性難治性アレルギー疾患の新規治療法確立に期待~

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Academic year: 2021

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平成24年 6月28日 千 葉 大 学

アレルギーの新たな抑制経路の発見

〜慢性難治性アレルギー疾患の新規治療法確立に期待〜

千葉大学大学院医学研究院の中山俊憲教授のグループは、JST 課題解決型基礎研究 支援プロジェクト CREST 等のサポートにより、かずさ DNA 研究所 山下政克室長 らのグループと共同で、免疫を抑制する作用を持つ液性因子の TGF-が、アレルギー 性炎症の発症を抑える分子機構を解明しました。TGF-がアレルギー性炎症を抑える ことは広く知られていますが、その背後にある分子機構についてはよくわかっていま せんでした。 花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎などをはじめとするアレルギー疾患は、世界的に 増加の一途をたどっており、日本でも、国民の約 3 割が何らかのアレルギー症状を示 す状態になっています。アレルギー疾患は根治療法が確立されていないことから、一 旦発症すると慢性化することが多く治療が長期にわたり、患者の肉体的、精神的、経 済的負担が極めて大きいことから、現代医学が解決すべき大きな課題の一つとなって います。 本共同研究グループは、TGF-によって発現が誘導される Sox4 という転写因子が、 アレルギー反応を引き起こすヘルパーT 細胞サブセットである Th2 細胞の産生を抑制 することを見出しました。さらに、Sox4 は既にできてしまった Th2 細胞の機能も抑 えることができることも分かりました。そのため、今後、この仕組みをさらに詳細に 解析し、その制御法を見つけることにより、慢性難治性アレルギー疾患の新しい予防 法や根治治療法を確立できる可能性があります。 〔参考資料〕 1)この画期的研究成果は、2012 年 7 月 1 日 18:00 時(英国時間)に科学雑誌「Nature Immunology」のオンライン速報版で公開されます。

ニュースリリース

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研究の背景と経緯 アレルギー疾患は、国民の3人に1人が罹患しているにもかかわらず、未だに効率 の良い予防法や根治療法は開発されていません。そのため、一旦発症すると慢性化す ることが多く治療が長期にわたり、患者の肉体的、精神的、経済的負担が極めて大き いことから、現代医学が解決すべき大きな課題の一つとなっています。アレルギー疾 患の発症や病態には、CD4 陽性ヘルパーT(Th)細胞サブセットの1つである Th2 細胞 の過剰な活性化が深く関わっています。Th 細胞は免疫反応の司令塔とも言える細胞で あり、産生するサイトカインの種類によって、Th1、Th2、Th17 細胞の少なくとも3種 類に分類されます(図1)。また、免疫反応の収束や抑制に関わる、Treg(Regulatory T)細胞も同定されています。これらの T 細胞は、通常は互いにバランスを取りながら 正常な免疫反応を担っていますが、サブセット間のバランスが崩れて Th2 細胞優位に なった場合に、アレルギー疾患が発症すると考えられています。図2に示したように、 Th2 細胞は、インターロイキン(IL)-4 や、IL-5、IL-13 といったサイトカイン(Th2 サイトカイン)の分泌を介して、IgE 産生や好酸球の遊走・組織浸潤、気道過敏性の 亢進を誘発することから、アレルギー疾患の根幹に位置する細胞であると言えます。 中山俊憲教授らのグループは、この Th2 細胞の分化や機能を制御することによりアレ ルギー反応の抑制が可能となり、将来的には難治性の慢性アレルギー疾患の根治療法 の開発につながると考えて、研究を行ってきました。 ナイーブ CD4 T細胞 Th1細胞 Th2細胞 Th17細胞 IFN IL-4 IL-5 IL-13 IL-17A IL-17F IL-22 T-bet GATA-3 Ror Rort 細胞内病原体排除 自己免疫疾患 細胞外病原体排除 炎症性疾患 自己免疫疾患 寄生虫排除 アレルギー マスター転写因子 産生サイトカイン 免疫応答(疾患) 図1 ヘルパーT(Th)細胞分化と免疫応答・疾患 マスター転写因子:分化を決定づけるために必須の転写因子 抗原( 花粉・ダニなど) Th2 細胞 B細胞 IgE ナイーブ CD4 T細胞 抗原提示細胞 化学伝達物質 (ヒスタミンなど) 肥満細胞・好塩基球 IL-5 サイトカイン ケモカイン 細胞障害タンパク 好酸球 IL-4 IL-13 上皮細胞 平滑筋細胞 神経ペプチド 気道平滑筋の収縮 即時型反応 粘液産生亢進 血管透過性亢進 上皮細胞障害 気道リモデリング 杯細胞過形成 知覚神経刺激 遅発型反応 気管支喘息 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 抗原 図2 アレルギー発症機構の概略

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研究の内容 抑制性サイトカインである TGF-は、T 細胞の活性化や増殖を直接阻害したり、Treg 細胞を誘導したりすることで急性のみならず慢性の炎症も抑制することが知られてい ます。また、TGF-は、Th 細胞サブセットの中でも Th2 細胞の分化や機能を強く阻害 することが報告されていましたが、その Th2 細胞選択的な作用の分子機構については 明らかになっていませんでした。そこで、本共同研究グループは、TGF-の Th2 細胞 選択的抑制の分子機構を解明することが、新たな慢性難治性アレルギー疾患の制御法 の開発につながると考えて研究を行いました。 まず、Th2 細胞を TGF-処理することで新たに誘導される遺伝子を検索し、sry 型転 写因子のファミリーに属する転写因子 Sox4 を新たに同定しました(図3)。この分子 は、iPS 細胞誘導で有名な Sox2 と同じファミリーに属する転写因子です。 TGF-による Th2 細胞からの Th2 サイトカイン産生抑制への Sox4 の関与について、ノ ックダウンアッセイで検討したところ、Sox4 のノックダウンで TGF-による Th2 サイ トカイン産生の抑制が部分的に解除されました(図4)。このことにより、Th 細胞を TGF-刺激することで誘導される Sox4 が、TGF-による Th2 細胞の分化・機能の抑制 に関わっていることが世界で初めて明らかになりました。 アレルギー疾患における Sox4 の関与について、さらに詳しく解析するため、研究グ ループは、T 細胞特異的に Sox4 を過剰発現したマウスと T 細胞特異的に Sox4 を欠損

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したマウスを使って、マウスを卵白アルブミン(OVA)誘発マウスアレルギー性気道炎 症(マウス喘息モデル)の発症と病態について検討を行いました。OVA で免疫した後、 経気道的に OVA を吸入させて喘息反応を誘導したところ、期待通り、アレルギーの指 標である気道肺胞洗浄液中への好酸球浸潤や気道過敏性の亢進が、Sox4 の過剰発現マ ウスでは強く抑制され(図5)、逆に欠損マウスでは症状の亢進が見られました(図6)。 この実験により、Sox4 が個体レベルでもアレルギー反応の抑制に関わっていることが 証明されました。 また、研究グループは、Sox4 のアレルギー抑制の分子機構についても解析し、Sox4 の作用の一部は、Th2 細胞の分化とアレルギー疾患発症を制御する転写因子 GATA-3 の 機能の抑制を介して発揮されることを見いだしました(図7)。 卵白 アルブミン 免疫 免疫なし 野生型 Sox4欠損 野生型 Sox4欠損 メサコリン (mg/ml) 肺抵抗値 A B 野生型 免疫 Sox4欠損 免疫 野生型 免疫なし Sox4欠損  免疫なし C 図6 Sox4ノックアウトマウス(欠損マウス)では、マウスアレルギー性気道炎症モデルの病態が増悪する A、マウス肺の組織学的分析(炎症細胞浸潤):Sox4欠損マウスでは細気管支周囲への炎症細胞浸潤が顕著に増加した B、Sox4欠損マウスでは、アレルギー炎症で誘導される気管支からの粘液産生(矢印の濃い紫部分)の亢進が増悪する C、Sox4欠損マウスでは、アレルギー炎症に伴う気道過敏性の亢進が増悪する 3 10 100 250 125 0 * ** GATA-3 Sox4 Th2細胞分化 Th2サイトカイン産生 アレルギー発症 アレルゲン TGF- 抑制 促進 図7 研究成果の概略図 Sox4は、TGF-によって発現が誘導されます。一方、Sox4の発現は、アレルゲン(抗原)刺激によって低下することも 今回の研究から明らかになりました。TGF-と抗原刺激のバランスによって発現が調節されたSox4は、Th2細胞分化の マスター転写因子GATA-3機能を阻害することで、アレルギーの発症を抑えることが今回の研究で新たに分かりました。

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今後の展開 Sox4 の作用を促進した場合でも、Th2 細胞の機能のみが阻害され、その他の Th サブ セットの機能には今のところ顕著な障害は見いだされていません。また、今回の研究 成果から、慢性的なアレルゲンの曝露により Th 細胞が持続的な刺激を受け、Sox4 の 発現が長期間にわたって低下することが、アレルギーの慢性化を引き起こす原因とな るといった新たな炎症の慢性化の仮説も提唱できます。これらのことから、今後、Sox4 や GATA3 を創薬ターゲットとして研究を発展させ(図 8)、人為的な発現調節を可能に することが、新規のアレルギー予防法だけでなく、発症後時間が経過し慢性化してし まった難治性アレルギー疾患の治療法開発につながることが期待されます。 アレルゲン ( 花粉・ダニなど) Th2 細胞 B細胞 IgE ナイーブ CD4 T細胞 抗原提示細胞 化学伝達物質 (ヒスタ ミンなど) 肥満細胞・好塩基球 IL-5 サイトカイン ケモカイン 細胞障害タ ンパク 好酸球 IL-4 IL-13 上皮細胞 平滑筋細胞 神経ペプチド 気道平滑筋の収縮 即時型反応 粘液産生亢進 血管透過性亢進 上皮細胞障害 気道リモデリング 杯細胞過形成 知覚神経刺激 遅発型反応 気管支喘息 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 抗原 図8 アレルギー発症機構の概略と今回の発見(Sox4によるTh2細胞機能抑制) GATA-3 Th2サイトカイン産生 Sox4 Th2 細胞 アレルゲン TGF- 創薬ターゲット 今回の発見

参照

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