Fabrication of freeze-dried bioengineered bone
grafts using genetically modified induced
pluripotent stem cells
著者
近藤 威
号
52
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
歯博第881号
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論 文 内 容 要 旨
骨補填材や骨関連成長因子の利用は骨再生治療において非常に有用である。しかしながら,既存の 技術は,低い成功率や安定性,限られた材料源など多くの欠点を有している。そのため,幹細胞を用 いた骨再生アプローチが近年,注目を集めている。中でもinduced pluripotent stem cell(iPS細胞)は 自発的に三次元的な組織・器官を形成する自己組織化能を有するため,試験管内での骨組織作製を実 現するための幹細胞源として骨再生治療への応用に期待が高まっている。しかし,未だ骨への効率的 な自己組織化は達成されていない。また,iPS細胞を生きたまま移植すると奇形腫を形成する危険があ るため,臨床応用に向けて造腫瘍性の回避も重要な課題となっている。
遺伝子組み換え技術を用いた特定の遺伝子発現制御は,iPS細胞の分化をコントロールする上で非常 に有効である。本研究では骨形成蛋白質であるBone morphogenetic protein-2(BMP2)の発現をドキ シサイクリン(テトラサイクリン系抗生物質)の添加によって自在に制御する遺伝子組み換え技術に 着目し,この技術を組み込んだiPS細胞を原材料に試験管内で骨組織に類似したバイオエンジニア骨を 作製した。 始めに,テトラサイクリン制御性BMP2発現システムをpiggyBac transposonベクターを用いてマウ ス歯肉線維芽細胞由来iPS細胞に遺伝子導入し,iPS-tet/BMP2を樹立した。細胞株選択後,この細胞が ドキシサイクリンの添加によってBMP2遺伝子および蛋白質を発現することを確認している。次にiPS-tet/BMP2を振盪培養下にて28日間骨芽細胞分化誘導した。骨芽細胞分化誘導中期より,ドキシサイク リンの添加によってBMP2を強制発現させることでiPS細胞の骨芽細胞特異的遺伝子の発現が有意に促 進され,組織学的な石灰化および著しいカルシウム含有量の増加が確認された。また,BMP2の発現 を伴う骨芽細胞分化誘導によって得られた三次元構造体は頭蓋骨と同様の元素組成を示した。 28日間の骨芽細胞分化誘導後,iPS細胞由来三次元構造体を凍結乾燥することでiPS細胞由来骨補填 氏 名(本籍) : 近こん 藤どう 威たける(宮城県) 学 位 の 種 類 : 博 士 ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号 : 歯 博 第 8 8 1 号 学位授与年月日 : 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件 : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻 : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻
学 位 論 文 題 目 : Fabrication of freeze-dried bioengineered bone grafts using genetically modified induced pluripotent stem cells
(遺伝子組み換え技術を応用した iPS 細胞由来凍結乾燥バイオエンジニア 骨補填材の開発)
論 文 審 査 委 員 : (主査)教授 鈴 木 治
- 19 - 材を作製した。凍結乾燥後であってもBMP2を発現させたグループのiPS細胞由来骨補填材は有意に豊 富なBMP2蛋白質を含有していた。最後にこのiPS細胞由来骨補填材をラット頭蓋骨欠損部に埋植する ことで,骨再生能を評価した。ドキシサイクリン非添加群では術後12週経過しても十分な骨再生は認 められなかったが,BMP2発現群では術後3週でiPS細胞由来骨補填材の周囲に新生骨の生成が見られ, 12週ではほとんど完全な骨再生が確認できた。また,埋植したiPS細胞由来骨補填材は吸収,置換され ており,腫瘍の形成は認められなかった。 以上より,本研究ではBMP2の発現を制御することで試験管内においてiPS細胞からバイオエンジニ ア骨を誘導した。また,これを凍結乾燥することで腫瘍を形成しない,高い骨再生能を有するiPS細胞 由来骨補填材を作製することに成功した。本技術は既存の骨補填材に代わる新たな骨再生材料として 骨再生分野の発展に大きく貢献することが期待される。
審 査 結 果 要 旨
骨再生技術における要素技術として足場となる骨補填材,あるいは骨関連成長因子の利用は有用で あり,再生医療分野において鋭意検討されている。しかしながら,既存技術は成功率や安定性,材料 源などに課題がある。Induced pluripotent stem cell(iPS細胞)は自発的に三次元的な組織・器官を 形成する自己組織化能を有する幹細胞源としてその応用に期待が高まっている。しかしながら,臨床 応用に向けて造腫瘍性の回避と骨への効率的な自己組織化技術の開発は未だ達成されていない。遺伝子組み換え技術を用いた特定の遺伝子発現制御は,iPS細胞の分化をコントロールする上で有効 である。本研究では骨形成蛋白質であるbone morphogenetic protein-2(BMP2)の発現をドキシサイ クリン(テトラサイクリン系抗生物質)の添加によって自在に制御する遺伝子組み換え技術に着目し, この技術を組み込んだiPS細胞を原材料に試験管内で骨組織類似のバイオエンジニア骨を作製した。 方法として,テトラサイクリン制御性BMP2発現システムをpiggyBac transposonベクターを用いて マウス歯肉線維芽細胞由来iPS細胞に遺伝子導入し,iPS-tet/BMP2を樹立した。次にiPS-tet/BMP2を 振盪培養して骨芽細胞分化誘導した。分化誘導中期からドキシサイクリンの添加によりBMP2を強制 発現させることで骨芽細胞特異的遺伝子の発現の促進,石灰化およびカルシウム含有量の増加が確認 されただけでなく,分化誘導細胞が造る三次元構造体は頭蓋骨と同様の元素組成を示した。 次に,骨芽細胞分化誘導後,iPS細胞由来三次元構造体を凍結乾燥することでBMP2蛋白質を豊富に 含有するiPS細胞由来骨補填材の作製に成功した。このiPS細胞由来骨補填材の性能評価としてラット 頭蓋骨欠損部埋植による骨再生能を調べた。ドキシサイクリン非添加群では骨再生は認められなかっ たが,BMP2発現群では術後3週でiPS細胞由来骨補填材の周囲に新生骨の生成が見られ,12週までに欠 損のほぼ完全な骨修復が達成された。重要な点として,iPS細胞由来骨補填材は新生骨とほぼ完全に置 換されただけでなく,腫瘍形成を認めなかった。 以上のことから,本研究はBMP2の発現制御により試験管内においてiPS細胞由来バイオエンジニア 骨の誘導技術を確立したこと,凍結乾燥を導入することで腫瘍を形成しない安全性かつ骨再生能を有 するiPS細胞由来骨補填材の作製に成功している。本研究の所見は既存の骨補填材に代わる新たな骨再 生材料を提供するのみならず,iPS細胞由来バイオエンジニア骨の臨床応用可能性,さらには骨再生と 安全性に関する科学的根拠を提示したものと評価できる。従って,本論文は歯学の学位に相応しいも のと判断する。