Tubular Cardiac Tissues Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Generate Pulse Pressure In Vivo
著者名 ?田 博允
発行年 2017‑03‑23
URL http://doi.org/10.20780/00031935
主論文の要約
Tubular Cardiac Tissues Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Generate Pulse Pressure In Vivo
(ヒト iPS 細胞由来心筋細胞シートを用いた管状心筋組織の構築)
東京女子医科大学大学院 外科系専攻心臓血管外科学分野 (指導:山崎健二教授) 瀨田 博允 Scientific Reports に投稿中
【目的】 近年、補助循環が必要となる重症心不全患者に対して LVAD(left
ventricular assist device)植え込みや心移植が本邦でも進められているが、
合併症の発生やドナー不足の問題が重要な課題となっている。他方で、再生医
療による心不全治療が注目され、臨床応用に向けた研究が進められているが、
自己の不全心の改善というアプローチには解決すべき課題が山積している。こ
のような背景の中で、当施設では、これまでにラット由来心筋細胞シートを用
いた拍動血管の構築に成功し、組織工学による補助循環の可能性を示した。し
かしながら、ヒト由来細胞でのポンプ機能を有した補助循環組織の構築には未
だ至っていない。今回われわれは、ヒト iPS 細胞由来心筋細胞シートを用いて、
静脈周囲に移植することで、拍動血管を作製し、補助循環の可能性を検討した。
【方法】レンチウイルスでαMHC-puro-Rex-neo 遺伝子を導入したヒト iPS 細胞
(201B7 株)を用いた。心筋誘導後、心筋純度を高め、温度応答性培養皿を用いて
心筋細胞シートを作製した。免疫寛容ラットの下大静脈の周囲に、3 枚積層させ
た心筋細胞シートを 2 回巻き付けて、計 6 枚を管状に移植した。移植後、圧測
定にて生理学的特性を、RT-PCR にて成熟度をそれぞれ評価した。
【結果】移植前の cTnT(cardiac troponin T)の心筋純度は 91.2 ± 3.7%(n=5)
であった。移植後 2 週目からエコーで下大静脈周囲に 13 個体中 10 個体に自律
拍動する管状心筋組織の生着を認めた。移植後 4 週目の電位測定では移植心筋
は電位を認め、圧測定において移植心筋前後の下大静脈を遮断して閉鎖空間を
作製することで内部に脈圧を観察できた。閉鎖した下大静脈の内圧を高めると
それに呼応して脈圧も上昇し、Frank-Starling 様の挙動が観察された。移植後
8 週目では最大脈圧は 9.1 ± 3.2 mmHg(n=3)であった。組織切片ではヒトミト
コンドリア抗体陽性の cTnT 陽性横紋構造と vWF(von Willebrand factor)陽性血
管構造を確認した。一方、RT-PCR で各種心筋収縮タンパク(MYL7、MYH6、MYH7、
TNNT2)の mRNA の発現を測定すると、In Vitro の心筋よりも移植後 4 週目、8 週
目の In Vivo の心筋で経時的に有意差をもって亢進していた。ことから、生体
内の環境が心筋の成熟を促したことが示唆された。
【考察・結論】今回、ヒト iPS 細胞由来心筋細胞シートによる管状心筋を作製
し、脈圧を得ることができた。この技術が発展し、Fontan 導管や上行大動脈へ
の移植へ応用することで、第二の機能的ポンプという新たな心室補助治療につ
ながると考えられる。