A Shaking Culture Improves Chondrogenic
Differentiation of Mouse induced Pluripotent
Stem Cell Constructs
著者
河阪 幸宏
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第19171号
論
文 内 容 要 旨
学籍番号
B5DD5007 氏 名 河阪 幸宏
本研究はマウス iPS 細胞を用いた軟骨再生技術を開発した研究論文である。 生体由来の細胞や MSC の細胞培養における適切な機械的刺激は細胞増殖や細胞分化を促進するということが報告されてい る。しかしながら iPS 細胞における機械的刺激と軟骨細胞分化に関する既存の報告はなく,そのメカニズムも不明である。本 研究では振盪培養による機械的刺激がマウス iPS 細胞の軟骨細胞分化を促進すると仮説を立て,その検証と背景にあるメカニ ズムの探索を目的とした。 マウス歯肉線維芽細胞由来 iPS 細胞から丸底 96 ウェルプレートを用いて細胞構造体を作製した後,低接着性 6 ウェルプレ ート内で軟骨細胞分化誘導を行った。分化誘導時にシーソー型バイオリアクターを用いて細胞構造体に振盪刺激(0 Hz,0.3 Hz, 0.5 Hz)を加え,21 日間の培養の後,細胞構造体の各種評価を行った。 細胞構造体の大きさは静置培養では培養期間中やや減少する傾向にあったのに対し,振盪培養グループでは有意に増大し た。また,組織学的評価から細胞構造体内部は ECM で充実しており,トルイジンブルー陽性領域に囲まれた球状の軟骨細胞様 細胞が含まれていた。組織定量評価からも静置培養と比較して振盪培養グループで有意に軟骨フェノタイプの増加が確認され た。また,リアルタイム RT-PCR の結果より振盪培養を行うことで分化初期の細胞凝集に関わるNcam1,軟骨分化関連マーカーであるSox9, collagen 2a1, collagen 10a1, Aggrecan の有意な発現の上昇がみられ,さらに免疫組織染色では構造体内部 の collagenⅡ,collagenⅩタンパクの集積が促進されていた。これらの結果より,振盪培養はマウス iPS 細胞の軟骨分化を促 進することが示唆された。さらに,振盪培養グループにおいて過去に軟骨細胞分化との関連が報告されている Wnt シグナル, TGF-βシグナル関連マーカーの有意な増加がみられ,本実験における軟骨分化促進の背景にこれらシグナルが関係しているこ とが予想された。Wnt シグナルのアクチベーターである LiCl を分化培養液中に加えると軟骨分化関連マーカー発現の上昇と軟 骨フェノタイプの増加がみられ, 一方でインヒビターである sFRP-1,Dkk-1 を培養液中に添加し軟骨分化を行うと,振盪培 養による軟骨分化促進をキャンセルした。このことからも同過程における Wnt シグナルの重要性が示された。さらに Wnt シグ ナルを促進,抑制することで TGF-βシグナル関連マーカーの発現も同調することも明らかになった。振盪培養はこれらの2つ のシグナルをともに亢進し,相互影響しながら iPS 細胞の軟骨細胞分化を促進したものと考えられる。 本研究により,振盪培養技術はマウス iPS 細胞を用いた新規軟骨組織再生医療における有用なストラテジーとなり得る可能 性が示された。