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No pp Formation Mechanism of Thermocline in Lake Waku-ike Hideo OYAGI, Kouhei ICHIMARU and Mayuko NAKAGAWA Received November 17, 2014

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形成され,湖沼の鉛直的環境が決定される (大八木, 2005)。このように,夏季においては強固な密度成層が 形成され,表水層と深水層の性質が異なり,深水層が停 滞し,表水層にのみ部分的な循環が発生する (新井, 1981)。部分循環湖では,水温や溶存成分の差による密 度成層が発達し,深層に停滞継続層が形成される (森, 1980など)。このような密度成層の形成により,湖水は 表水層と深水層の二層に分けられ,両者の水温や水質な どには顕著な差が生じる。また,大気から湖水に供給さ れる酸素や植物プランクトンの光合成で発生する酸素は 湖底に供給されず,深水層の停滞継続層において微生物 による分解で酸素が消費された場合,深水層が還元状態 になると考えられる。このため,深水層では硫黄還元性 細菌の活動によりH2S (硫化水素) が発生することが知 られている (吉村,1937,大八木,2005など)。従来,湖 水の鉛直循環は,湖沼内の栄養物質の循環や混合に大き 1 .はじめに 涌池は,長野県長野市に位置し,落合 (1960) による と1960年 8月の調査において,水深 1∼2mで水温躍層 が形成され,その温度下降率は11.5℃/mであったと報 告されている。また,野崎ほか (1996) も同様に,水温 躍層の高い温度降下率が観測されている。一般的に,日 本の湖沼の水温躍層の温度降下率は,平均3∼5℃/mで 世界においても高く,極めて稀に10℃/mに達すること があるとされている (吉村,1937)。このように涌池の水 温躍層の温度降下率は,夏季において日本の平均値を高 く上回る値が観測され,日本においては最大級のもので あると考えられている。 内陸で周辺が山地に囲まれた涌池においては,鉱泉水 や海水のような高密度の流入水はないため外的な影響に よる密度成層の形成ではなく,水温によって密度成層が

大八木 英夫

・市丸 康平

**

・中川 麻悠子

***

Lake Waku-ike, located in Nagano Prefecture in the central Japan, had been marked for its high vertical temperature gradient. The purpose of this study was to make clear the circulation mechanism of the lake. The vertical profiles of water temperature was measured at the center of the lake from January 2010 to December 2012. In addition, the vertical pro-files of electric conductance, dissolved oxygen and turbidity were measured in 2012. As the results, the maximum value of the vertical temperature gradient, 11.6 ℃/m, was found at the depth of shallow layer on September 2012. Moreover, it is pointed out that it is made the similar phenomenon of thermocline on September 2010, 2011. This value is the top catego-ry in the lake. It is considered that the fact of the high degree of thermocline is caused by a drawdown.

Keywords: Lake Waku-ike, thermocline, water level, vertical temperature gradient

涌池における水温躍層の形成機構

Formation Mechanism of Thermocline in Lake Waku-ike

Hideo OYAGI

, Kouhei ICHIMARU

**

and Mayuko NAKAGAWA

***

(Received November 17, 2014)

College of Humanities and Sciences, Nihon University :

3-25-40 Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan

** NIPPON YUSEI :

*** Tokyo Institute of Technology, Tsuda : 4259 Nagatsuta-cho, Midori-ku,

Yokohama, Kanagawa, 226-8503, Japan

日本大学文理学部: 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40 ** 日本郵政株式会社: *** 東京工業大学: 〒226-8502 神奈川県横浜市緑区長津田町4259

(2)

く寄与している。水温成層の発達による停滞層の形成過 程や表面冷却による垂直循環・混合の重要性は,以前か ら指摘されており (新井・西沢,1974),水温躍層の形成 は,湖盆形態および吹送距離などにより,研究が進めら れてきた。そこで,本研究では,涌池における水温躍層 に注目し,その形成機構について水温・水位の連続観測 の結果から考察する。 2 .地域概要 涌池は長野市の西部丘陵地に位置し (図 1), 1847年 5 月8日に北信濃一帯を襲った善光寺大地震 (M7.4) によ り,元来湧き水があった場所に虚空蔵山 (現・岩倉山) の崩落が原因でできた堰止め湖と考えられている。標高 565m,面積0.024 km2,最大水深10.8m (湖心部:(図 2, Loc.1),平均深度6.7m,周辺長0.67 km,肢節量1.13で ある (桜井・渡辺,1974)。なお,現在の湖心部における 最大深度は約9mである。周囲の地質は,虚空蔵山崩壊 堆積物で占められており,集水域には,城下砂岩礫岩部 層や久米路火砕岩部層などの第三紀層及び第三紀の地滑 り地域が存在している (加藤・赤羽,1986)。恒常的な流 入河川と流出河川を持たない閉塞湖であるが,涵養源と しては降雨および湖岸の湧水 (図 2, Loc.2) からの流入 があり,流出としては夏季に灌漑のために行われる取 水 (図 2, Loc.3) が 6月初旬から 8月中旬まで行われる ため,年1∼2mの水位変動が認められる。 3 .研究方法 現地調査は,2002年 6月より開始し,2009年 9月より 湖 心 部 に お い て, 水 温 自 記 録 計 (Onset社製,HOBO U22) を 表 層 ブ イ ( 水 深 0.1m) お よ び 表 層 よ り 2m・ 4m・6m・7mおよび湖底に設置した (図 3 左)。さら に,2012年 3月 よ り, 表 層 ブ イ よ り 0m・1m・2m・ 図1  涌池における集水域 出典:国土地理院の数地理院地図(電子国土web)2 万 5 千分 1 地形図(地図画像)『信濃中条』『稲荷山』

1km

0

長野市

(3)

0

100m

0m

10m

5m

Loc.3

(water gate)

Loc.1

Loc.2

(spring)

湖底から

表層から

湖底

1m

2m

3m

4m

5m

0m(0.1m)

1m

2m

3m

4m

表層から

0m(0.1m)

6m

4m

2m

2009 年 9 月~ 2012 年 3 月

7m

湖底

2012 年 3 月~

図2  涌池における湖盆図 (桜井・渡辺,1976を一部改変) 図3  湖心における水温自記録計の設置方法 (左:2009年 9月∼2012年 3月,右:2013年∼)

(4)

おける,最も大きい温度降下率は,0m∼1mの深度で, 0.5℃/mとなった。しかしながら,これ以深から約 6m の深度付近の深度までおよそ0.1∼0.4℃/mの温度降下 率で水温が低下しているが,水深6mから湖底にかけて は対照的に約0.1℃/mで水温上昇が認められた。 一方,5月・7月・9月・10月には明瞭な水温躍層の形 成が認められたが,3月の水温分布で確認された深水層 部における水温の上昇は,5月・7月・9月・10月におけ る水温分布では認められなかった。特に,7月・9月・ 10月における水温分布は,典型的な夏季停滞期を示し ており,7月・9月・10月における温度降下率は,それ ぞれ5.7℃/m (3.0∼4.0m層),7.4℃/m (2.9∼3.9m層), 11.5℃/m (1.3∼2.3m層) とそれぞれの期間中に顕著な 水温躍層が形成されている。 涌池における2003年の温度降下率やその形成深度は, 春季 (3月) には水深 2∼3 mで約3℃/m,夏季 (8月) にはその年の最大値を示す水深3∼4mで8.9℃/mとな り,秋季 (10月下旬) には水深 5∼6mで 5 ℃/m,11月 中旬では水深7∼8mで 3 ℃/mの温度降下率が観測され た。その深度は,水深1∼2m (4月) から水深 6∼7m (11月) と水温躍層の位置が深くなり,このような変化 3m・4mおよび湖底より上方へ 0m・1m・2m・3m・ 4m・5m ( 最 大 水 深 時 に お け る 水 深 9m・8m・7m・ 6m・5m・4mに相当) に設置した (図 3 右)。また,湖 底部には,水位自記録計 (Onset社製,HOBO U20) の設 置を行った。 これに加えて,2012年には,3月・5月・7月・9月・ 10月 (11月分として10月31日実施) に現地調査を行っ た。湖心部では,水温・DO (溶存酸素飽和度)・EC (電 気伝導度)・濁度・Chl. (クロロフィル) (JFEアドバン テック社製:RINKO Profiler) の鉛直分布を測定した。 照度は,照度計 (Onset社製;UA-002) にて測定した。 4 .結果および考察 4-1 温度降下率の形成深度と最大値について 図4 には,2012年 3月・5月・7月・9月・10月に行っ た水温の鉛直分布図を示す。水温の鉛直分布は,水位の 季節変動があったため,表層0mを各時期そろえて示 し,概ね水深0∼0.1mの表層部で水温が最も高く,湖 底で最低水温を示した。 3月の水温の鉛直分布は,表層水温が5.6℃,湖底水温 が4.3℃となり,その差は,1.3℃であった。この時期に 図4  涌池における水温の鉛直分布の季節変化 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 5 10 15 20 25 30 水 深 (m ) 水温(℃) 2012/3/9 2012/5/19 2012/7/21 2012/9/21 2012/10/31

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は2002年にも見られることから,涌池の特徴の一つと 考えられる (大八木,2005)。しかしながら,2012年で は,水温躍層の形成深度は,秋季にむけて深度が増さ ず,より浅層に形成されていることが明らかとなった。 次に,涌池の水温・DO・Chl.・濁度・ECの鉛直分布 の夏季停滞期の特徴を代表的な7月の鉛直分布として図 5 に示した。涌池では,深水層に無酸素層が,4月に生 じ11月中旬まで形成され,それ以降には溶存酸素が湖 底まで供給され,酸素飽和度が回復し,循環が認められ ると報告されている (大八木,2005)。水温躍層の深度 は,溶存酸素の分布と特に関係が深い。温度降下率の高 かった水温躍層を境界に,表水層では130%を超える過 飽和の状態であるが,3.0∼4.0m層以深より溶存酸素量 は,0%となり無酸素層が形成されている。 これに伴い,ECは,表層53.5mS/m,湖底で78.2mS/m となり,硫酸還元反応などにより,ECの上昇が認めら れる。しかし,ECが上昇し始める深度は,硫酸還元反応 が生じる無酸素層となる深度とは一致せず,温度降下率 の最大となる層の上 (約 2m) から上昇する。濁度・Chl. のピークは,2 つあり,1 つ目はECが変化しはじめる 層,すなわち水温躍層の直上 (2.2m) と,2 つ目は温度 降下率の最大となる層中である3.4mに確認された。1 つ目のピークについては,この時期における透明度が 0.7mであり,7月の補償深度はそれぞれ透明度の 2∼2.5 倍の1.4∼1.75mと算出することができる。湖水面から 入った光の量は水中において指数曲線を示しながら低下 するため,湖沼における水面直下の相対照度を100%と した場合,透明度の深さでは約12∼20%になり透明度 の約2∼2.5倍の深さで約 1%をとなり,この深度は,植 物や植物プランクトンによる1日の光合成量と呼吸量が 等しくなる深度である補償深度と近くなることが知られ ている。しかしながら,実際に照度を測定すると,2m でも数%相対照度の値が認められ (図 6),これらの光 の明暗によって関係があると考えられる。一方,2 つ目 のピークは,すでに光が届いていない3.4m層に集中し ているため,水温によって形成される強固な密度成層の 影響によるものであると考えられる。 密度成層についてさらに考察を加える。本稿では, Hutchinson (1957) の水密度表を用いず,計測器によっ て,水温・EC・水圧から計算された水密度を用い,以 図5  2012年 7月における水温・水質の鉛直分布 水温 EC DO Chl. 濁度中レンジ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 50 55 60 65 70 75 80 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5 10 15 20 25 30 水 深 ( m ) 水温(℃) 水 深 ( m ) EC(mS/m) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 水 深 ( m ) 水 深 ( m ) DO(%)・濁度(FTU)・Chl.(μg/L)

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であったと報告されている (大八木,2005)。過去におい ては,その深度は,水温の変化にしたがって,水深1∼ 2m層 (4月) から水深 6∼7m層 (11月) と徐々に深く なっており,このような変化は2002年にも見られるこ とから,涌池の特徴の一つと考えられていたが,9月期 における浅層に水温躍層の極大値が出現し,2012年の 結果は,同様の結果とはならなかった。 4-2 経年変化による水温躍層の変化 長期的な水温の観測に基づいて,涌池における水温特 性と水温躍層の形成について考察する。図8 には,2010 ∼2012年における表層より 0m・2m・4m・6mおよび 湖底の水温を抽出した。大八木 (2005) によれば,涌池 では,最大水深約9mより 1mほどの水位変動が生じる ため,表層ブイからの定間隔による水温の記録は,日 射・気温の影響を受け一年間変動し,表水層の湖水循環 の指標や水温躍層の極大値が得られる深度の形成につい て考察することができると推定される。一方,湖底から の定間隔による水温の記録は,停滞層における熱拡散・ 移流や湖水循環について考察することができる。 本結果によれば,表水層の水温の年変動は,0.5∼ 33.3℃で変化した。また,表水層 0mと水深 2mとの水 温差はほとんど生じないが,水深4mになると水温差が 下の式に基づき安定度を深さ1m毎の密度差を算出し求 めた(吉村 (1937))。 E=d ρ/dz E:安定度(kg/m3/m) d ρ:密度差(kg/m3 dz:鉛直距離(1m) 安定度の極大値の変化は,温度降下率の高く密度変化 が大きい層,すなわち水温躍層の最大温度降下率の深度 の変化を示しているといえる。2012年の結果は,0.02 kg/ m3/m ( 3 月;0.0∼1.0m 層),0.6 kg/m3/m (5 月;2.7∼ 3.7m層), 1.3kg/m3/m (7月;2.9∼3.9m層),2.2 kg/m3/m (9月;1.4∼2.4m層), 0.5 kg/m3/m (10月;3.3∼4.3m層) となった (図 7)。 大八木 (2005) によれば,安定度の値は,2003年 4月 に水深1∼2m層で安定度の極大値が出現しており,そ の値は0.2 kg/m3/mであった。2003年 6月下旬から 9月 中旬には,安定度の極大値は水深3∼4mの層に移行 し,その値は最大で1.6 kg/m3/m (2003年 9月),1.2 kg/ m3/m (2003年 8月) であった。9月下旬には安定度の極 大値の深度は徐々に深くなり,11月中旬には水深 6∼ 7m層となった。このときの安定度の値は,0.2 kg/m3/m 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 水 深 (m ) 減光率(%) 透明度 減光率(表層:100%) 図6  7月の湖心における湖水の照度

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図7  2012年における安定度鉛直分布 0 1 2 3 4 5 6 7 8 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 層 厚 (m ) 安定度(kg/m3/m) 2012/3 2012/5 2012/7 2012/9 2012/10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 m 層 m 層 m 層 m 層 m 層 m 層 m 層 m 層 m 層 図8  2010年 1月∼2012年 3月31日における涌池の水温経年変化 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2010/1/1 2011/1/1 2012/1/1 2012/12/31 水 温 (℃ ) 0m 表層から2m 表層から4m 湖底から上方2m 湖底

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であり,表層水温が0.5∼4.2℃ (2010∼2011年冬季),1.3 ∼4.6℃ (2011∼2012年冬季) の間となることから,逆列 成層が形成され,年に2 回の湖水循環が生じることが示 唆された。 また,水温自記録計による計測結果から,水温躍層の 温度降下率の最大値が認められる特定の深度の考察は難 しいが,その値が今まで計測していたよりも高くなる可 能性を示唆することができた。さらに,2010年および 2011年,2012年の 9月期に生じている 4m層における水 温の急激な低下が毎年生じており,また,2012年期の み,2m層の水温の低下も同時期に生じていることが明 らかとなった。本結果について,さらに考察を進める。 図9 は,2012年の水深 0m・1m・2m・3m・4m・湖 底から上方2m・湖底の水温を示した。まず,5.0℃/m 以上の温度降下率が認められる層は,1∼2m層で 4月上 旬に認められ,2∼3m層では 5月上旬,3∼4m層では 5月中旬より認められる。 1∼2m層では,最大5.5℃/mの水温降下率が 5月上 旬に認められたが,5月中旬以降から 9月上旬まで5.0℃ /m以上の温度降下率は確認されず,その平均は概ね 2.0℃/mであった。2∼3m層では, 1∼2m層の高い水 生じてくる。水深2m∼4mの層では,前述のとおり, 水温躍層の温度降下率の最大値が検出される深度であ り,その差異は,各年8月下旬から 9月上旬に 2∼4m層 で13.4 ℃/2m (2010年 )・16.4 ℃/2m (2013年 )・16.2 ℃ /2m (2012年) と算出された。この場合,層厚が 2mと 設定されているため,単純に計算すると,6.7℃/m, 8.2℃/m,8.1℃/mと算出することができる。大八木 (2005) によれば,3∼4mの深度に最大の温度降下率 8.6℃/mが 9月に観測されており, その時の 2∼3mの温 度降下率が2.0℃/mであった (2003年)。さらに,前述 の2012年 9月では,1.3∼2.3mの深度で11.5℃/mとなっ ていることから,単純に半分の値とならないことが考え られ,1m毎の温度降下率については過去の資料を上回 る値が得られる可能性がある。しかしながら,自記録計 の設置状況も勘案し,今後も観測が必要であると考えら れる。 一方,湖底水温は,年間を通じて3.5∼12.3℃の間で 変化し,夏季停滞期 (水温躍層が形成される 4月∼11 月) において2010・2011・2012年と共通しており,0.01 ∼0.02℃/日で上昇した。冬季停滞期には,最低水温が 4.1℃ (2011年 1月・2012年 1月),3.5℃ (2012年12月), 図9  2012年 1月1日∼12月31日における水温変化 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2012/1/1 2012/12/31 水 温 (℃ ) 0m 表層から1m 表層から2m 表層から3m 表層から4m 湖底から上方2m 湖底

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温降下率の水温躍層が確認できなくなる5 月上旬より 5.0℃/m以上の水温躍層が形成され,水温躍層の形成深 度が深くなったといえる。その値は,5月中旬までに平 均5.9℃/m,最大6.7℃/mの温度降下率が 1 週間ほど維 持された。しかしながら,5月下旬より以降5.0℃/m以 下の温度降下率の層となり,7月下旬まで平均3.3℃/m の温度降下率でとなった。しかし,7月下旬以降,再び 5.0℃/m以上の水温躍層が形成され,8月下旬まで継続 された。3∼4m層では,5.0℃/m以上の温度降下率が認 められる水温躍層が維持される期間が他の層にくらべ最 も長く,5月中旬より 9月上旬まで5.0℃/m以上の温度 降下率を維持し,平均7.5℃/m,最大12.6℃/m (8月30 日) の値となった。例年であれば,以降,秋季循環期ま で,このような構造が維持され,表水層が冷却するにし たがって,4m層の水温の急激な低下はあるものの,そ の急激な低下は2m層まで影響を及ぼすことなく,湖水 循環が生じていく。 9月1日から 7日までの 1∼2m層の温度降下率の平均 は,0.8℃/mである。しかし,9月10日以降,同じ深度 で5.0℃/m以上の温度降下率が観測され,9月17日に は,最大値である11.3℃/mの温度降下率が確認された。 2012年 9月20日の現地調査では,11.5℃/m (1.3∼2.3m 層) と浅い深度で温度降下率が検出された (図 4 の 9月 のデータ参照)。2∼3m層では,9月上旬以降から 10月 中旬まで平均7.1℃/m,最大10.9℃/m (9月8 日) の温 度降下率が認められる水温躍層が形成され,3∼4m層 では,本観測期間の最大値となる11.6℃/mの温度降下 率が9月1日に観測されている。3∼4m層の水温は, 5 ℃/m以上の温度降下率が観測された 5月中旬の7.1℃ から最高水温13.7℃ (9月上旬) までの間, およそ0.05℃/ 日であるため,水温躍層における温度降下率の増大は, 表水層 (3m以浅) の温度上昇によるものであると考え られる。ここで,図10に,涌池における 2012年 (3月∼ 12月) および2013年 (1月∼12月)における湖水位の変 化を示す。2012年の水位は 5月下旬に最も高く,約 9m に 達 す る 水 位 が 観 測 さ れ た。 一 方,2013年において は,約6.9m∼8.9mで変化し,水位が高い時期は,9月 以降に出現した。前述のとおり,涌池では,6月以降水 田の灌漑用水として湖水を利用しており,水位は低下し ていく。通常であれば,9月上旬には,水利用を終え, 水位は回復する (2013年の水位変化が涌池における一般 的な水位の季節変化を示す) が2012年には異なる様子を 図10 2012・2013年における湖水位の変化 (2012年 3月∼12月) 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 1/1 12/31 水 位 (m )

2012年

2013年

(10)

り,前述の2m・3m・4m層における水温変化や水温躍 層の温度降下率について,水位変動を考慮しながらさら に考察する必要がある。そこで,温度降下率の最大値が 確認される要因として,以下のとおり考えることができ る。 1 ) 湖底より最大水位時 (約 9m;5月中旬) における 水深4m以深では,温度降下率の高い水温躍層に よって強固な密度成層が形成され,表水層と深水 層が明瞭に分けられる。 2 ) 深水層における水温上昇は,0.011℃/日 (湖底)・ 0.017℃/ 日 (湖底より 2m上方) であり,非常に ゆっくりとした水温上昇で,9月末まで変化が生 じない。 3 ) 9月上旬における急激な水位低下により,表水層 を測定している温度の測定位置が低下していく (湖面からの深度は変わらない)。 示すことが明らかとなった。2012年の水位変化は,例年 と異なり,9月以降に約6.2mにまで急激に水深が低下 し,湖底の露出が認められた (写真 1・同時期の通常時 の風景は,写真2)。涌池では,水田の灌漑用水として 湖水を利用しており,その期日・量は取り決められてお り,降水・湧水による流入はあるが,6月∼8月の水位 低下の平均0.01m/日である。2012年 9月の水位は,9 月4日の0.15m/日の水位低下をスタートとし,9日間で 1.78m (平均0.20m/日) ほど低下しており,9月上旬の 1 週間の急激な水位低下は異常であるといえる。これ は,聞き取り調査の結果,涌池の水質浄化事業の一環 で,湖底泥を浚渫するため,水の抜き取り作業をしたこ とによるものであった。この時は,大八木 (2005) で指 摘されている,通常目視できない水面下に湧き出ている であろう湖底湧水地点も確認された (写真 3・4)。 した がって,水位の環境が例年と異なることがあきらかであ 写真1  涌池の風景(2012年 9月:筆者撮影) 写真2  涌池の風景(2003年11月:筆者撮影) 写真3  湖底湧水地点(通常は水面下)   (2012年10月:筆者撮影) 写真4  湖底湧水地点(通常は水面下)   (2012年10月:筆者撮影)

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温躍層の形成とその深度について考察を行った。涌池で は,5月頃に水温躍層が約 4mの深度に形成され,それ 以深では明瞭な停滞層となり,水質変化に大きな影響を 与える。また,その深度が,表層からの取水により湖水 位が低下する時期に通常は1mほど低下する。結果的 に,水温躍層の厚さが薄くなり,温かい表水層と冷たい 深水層によりその深度が近くなることで,水温差が大き くなり,水温躍層の温度降下率の最大値が検出されたと 考えられる。特に,2012年における,涌池の浄化事業に よる水位は,より浅層部に最大の温度降下率が得られた 要因となっていえる。一方,春季循環期から夏季停滞期 に移行時における水温躍層の形成いついて湖盆形態や気 象情報を整理し,湖沼の水位観測とともにさらに解析を 進める必要があることを今後の課題としてあげられる。 謝辞 終わりに,常日頃から絶えずご指導,ご鞭撻を賜わり,本 稿を草するに際しても貴重な示唆をいただいた日本大学文理 学部地球システム科学科の森和紀教授に心より感謝を申し上 げる次第です。また,調査に同行し貴重な示唆をいただいた 秋葉義彦氏および丹佑太氏に心より感謝を申し上げる次第で す。また,査読者および編集委員の方々には貴重な意見をい ただきました。ここに記して厚くお礼を申し上げます。 本論文は,日本大学文理学部自然科学研究所2009年度・ 2012年度・2013年度個人研究費および文部科学省学術研究 助 成 基 金 助 成 金 (基盤研究 (C)) 課題番号50453866,代表 者:濱田浩美)によって行なった. 4 ) 表層から 4m層は,短期間 (約 1 週間) の水位低 下により,夏季における停滞層に相当する層 (湖 底より2m上方) まで降下する。 5 ) 水の抜き取り作業は,表水層より取水するため, 表層部には,湖水が混合しないまま継続し,高温 のまま表水層が取り残され,停滞層 (深水層) の 低温との差によって温度降下率の高い層が観測さ れる。 以上のようなメカニズムによって温度降下率の最大値 が形成され,水温躍層の深度の変化が考えられる。加え て,2011年・2012年の 4m層の水温低下は,2012年ほど の水位低下が生じたわけではないと推測できるが,水位 低下の影響を受けていることが考えられる。それは,温 度降下率の最大値が,水田への取水を終える8月下旬お よび9月上旬に検出され,これまでの資料 (吉村,1973・ 野崎,1996ほか) で水温の鉛直観測によって 3∼4m層 の付近で確認できることからも示唆される。水温躍層の 温度降下率の最大値および形成深度は,さらに水位の挙 動を加えることで明らかとなった。しかしながら,涌池 の春季における水温躍層の形成要因について,特に風の 影響や地形・気象的要因・湖盆形態および涌池周辺の地 形などの地理的条件についてより詳細に明らかにする必 要があると考えられる。 5 .おわりに 本研究では,水温躍層の温度降下率が高いことで知ら れる涌池において,水温・水位の継続的な観測から,水 新井 正・西沢利栄(1974):『水温論』.共立出版,297p. 新井 正(1981):水文特性からみた部分循環湖.部分循環 水域の維持機構と物質代謝(その2) 文部省科学研究 費総合研究A,pp.3-17. 大八木英夫(2005):涌池における湖水の理化学的特性とそ の形成機構.日本水文科学科学会誌, 35 (2), pp.65-80. 落合照雄(1960):涌池の現状について.陸水学雑誌,21, 3-4,pp.221-228. 加藤碵一・赤羽貞幸(1986):5 万分の 1 地質図福「長野」, 地質調査所. 桜井善雄・渡辺義人(1974):『信州の陸水』.環境化学研究 参考文献 会,194p. 野 崎 健 太 郎・ 高 橋 辰 也・ 坂 井 正・ 渡 辺 義 人・ 中 本 信 忠 (1996):夏期の涌池における栄養塩類と植物プランクト ンの垂直分布.環境科学年報,17,pp.63-68. 森 和紀(1980):海水交流に伴う水月湖の塩素変化.ハイ ドロロジー,10,pp.40-46. 吉村信吉(1937):『湖沼学』.三省堂,426p.

Hutchinson,G.E. (1957) : A Treaties on Limnology –Vol.1;

Ge-ography, Physics, and Chemistry–, John Wiley and Sons,

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参照

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