計測の基礎セミナ
RF/マイクロ波コース
ネットワーク・アナライザの基礎
0
1
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 1Schedule
•ネットワークアナライザセミナ
•測定器を使った実習(ハンズオン)
•質疑応答
2
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 2セミナー内容
1章 ネットワーク測定とは
2章
ネットワークアナライザの測定結果表示とその意味
3章 ネットワークアナライザの構造と動作原理
4章
ネットワーク・アナライザの基本的な使い方
5章 誤差の要因
6章 誤差補正
7章
タイムドメイン
3
1章
4
Network Analyzer Basics15/10/21 Agilent Restricted Page 4
伝送測定
利得・損失 Sパラメータ S21,S12 群遅延 伝送係数 挿入位相 T,t反射測定
SWR 定在波比 Sパラメータ S11,S22 反射係数 インピーダンス・ アドミタンス R+jX, G+jB リター ンロス G, r入射信号
反射信号
伝送信号
R
B
A
DUT(Device Under Test):被測定物高周波デバイスの特性評価
ネットワーク解析とは、回路網の反射、伝送特性を測定すること入射信号と反射信号の
位相と振幅の変化
入射信号と伝送信号の
位相と振幅の変化
高周波、RFまたはマイクロ波デバイスの線形評価は、2つの基本テストに分けられます。 一つはDUTに高周波正弦波信号を入射した場合、反射される信号がどのように変化するのか。 もう一つはDUTに高周波正弦波信号を入射した場合、デバイス内部を伝送した信号がどのように変化するのかを測定しま す。 反射測定と伝送測定のどちらも、入射信号がDUTから反射される、もしくはDUTを通過することにより信号の振幅と位相が どのように変化しているかを測定します。(変化とは、振幅が何倍になったのか、位相が何度回っているかという事を意味し ます。) 信号の振幅と位相の変化を測定すれば、その結果を元に演算を行うことでさまざまなフォーマット(Sパラメータ、SWR、挿 入損失等)でDUTの特性を表現する事ができます。それぞれのフォーマットは、DUTの特性を様々な観点から表現するた めに使用されます。5
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 5信号の位相と振幅のベクトル表記
•ベクトルの長さは信号の振幅
•ベクトルの角度は信号の位相
θ
Mag0°
180°
90°
270°
O A Bt
ネットワーク測定では、入射信号としてサイン波の電気信号を用います。一般的に知られているよ うにサイン波は、振幅と位相の情報を持ちます。ここで、サイン波のベクトル表記についてふれて おきます。図のように線分OAが中心Oの周りを一定の速さで回転している時、垂線ABの長さの時 間変化がサイン波です。 従って、図中の赤いベクトルの長さは信号の振幅、回転している角度が信号の位相情報を表して います。6
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 6DUTでの振幅の変化を測定
入射信号
反射信号
伝送信号
反射測定
DUT
伝送測定
B
R
R
A
入射信号と反射信号の振幅比A/R
入射信号と 伝送信号の振幅比B/R
振幅とは、信号の波の大きさです。高周波デバイス測定ではDUTへ入射した信号がDUTで反射、 もしくはDUTを通過することにより、振幅と位相がどのように変化するのかを測定するということは 既に説明しました。 振幅に関しては、入射信号の振幅に対して反射信号及び、伝送信号の振幅が何倍になるかを測 定します。 上記のスライドのように、入射信号の振幅をR、反射信号の振幅をA、伝送信号の振幅をBとした 場合、ネットワーク測定で必要な情報はこれらの値の比を取ったA/R及びB/Rの値ということにな ります。7
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 7伝送測定における
DUTでの位相の変化を測定
入射信号
DUT
入射信号と伝送信号の 位相差0°①
②
一周期は360° 1/2周期 入射信号と伝送信号の 位相差180° 上記のスライドでは、入射された信号がDUTを通過することにより、位相がどのように変化してい るかを示してます。 ①の例では、DUTへ入射している信号の位相は全く変化せずにそのまま出力されています。この 場合、測定される位相の変化は0°です。 ②の例では、DUTの内部で1/2周期分の位相が回転しています。DUTへ入射される信号と、出力 される信号の位相差は、1周期が360°ですから、DUTを通過する事により180°位相が変化して いるといえます。 高周波デバイスの伝送測定では、このようにDUTを信号が通過する事により変化する位相量を測 定します。8
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 8反射測定における
DUTでの位相の変化を測定
入射信号
反射信号
DUT
一周期は360° ¼周期 ½周期 入射信号と反射信号の 位相差0° 入射信号と反射信号の 位相差90° 入射信号と反射信号の 位相差180° 次に反射信号の位相について見てみます。DUTへ入射された信号は、位相が変化した信号として 反射されます。位相が変化する量はDUTのインピーダンス特性に依存します。 ①の例では、DUTへ入射している信号の位相は全く変化せずにそのまま反射されています。この 場合位相の変化は0°です。 ②の例では、1/4周期分波形が移動していることが解ります。1周期が360°ですから、DUTをで反 射される事により90°位相が変化しているといえます。同様に③の例では、入射した信号が1/2周 期分、つまり180°の位相が変化した状態で反射されています。 高周波デバイスの反射測定では、このようなDUTによって信号が反射されることにより変化する位 相量を測定します。9
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 92信号の振幅と位相の変化を表すベクトル
入射波
*ベクトル
AとBの比S
xxは
・2つのベクトルの振幅の比
・2つのベクトルの位相差
を示す。
入射波
反射波もしくは伝送波
2信号の振幅と位相変化を求める場合、2信号のベクトルの比を計算します。 これは2つのベクトルの割り算(比を取る)の結果は、2つのベクトルの振幅及び位相差の情報を 持つベクトルとなるためです。 上記のスライドに示されるように、 ・Aのベクトルの振幅がMag(A)、振幅がθ1 ・Bのベクトルの振幅がMag(B)、振幅がθ2 の場合、2つのベクトルの比をとった結果のベクトルCは、 ・振幅:ベクトルAとベクトルBの振幅の比(=MAG(B)/MAG(A)) ・位相:ベクトルAとベクトルBのの比(=θ2-θ1) となります。 つまり、ベクトルAがDUTによってベクトルBに変化した場合、ベクトルAとBの比であるベクトルSxx は、振幅が何倍になったか、位相が何度回ったかを教えてくれます。 計算例: ・ベクトルA=0.4∠20° ・ベクトルB=0.8∠50° →ベクトルC=2∠30° ⇒振幅が2倍で、位相が30°回っている。10
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 10ベクトルは実部と虚部の和としても表現される
jb
a
実軸
虚軸
θ
Mag(S
xx)
ベクトル
S
xxベクトル
S
xx=MAG(C)∠θ
=
a+jb
ただし、
a=Mag(Sxx) x cosθ
b=Mag(S
xx) x sinθ
ベクトルであるSパラメータは、振幅と位相という表現方法だけでなく、実部(Real Part)と虚部 (Imaginary Part)の和としても表現できます。一般的にはSxx=a+jbという形で表現され、a=Mag(Sxx) x cosθを実部、b=Mag(Sxx) x sinθを虚部と
呼びます。
11
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 11DUTの特性は位相と振幅から計算できる(反射測定)
実軸
反射特性を示す ベクトルS11反射係数Γ
=
|S11|
∠
θ
jb
a
虚
軸
θ
|S11|リターンロス
=20log
|S11|
Sパラメータ=
a
+
jb
SWR定在波比=
(1+|S11|)/(1-|S11|)
DUTのインピーダンス=[(
a
+
jb
)-Z0 ]/ [(
a
+
jb
)+Z0 ]
入射信号と反射信号の振幅と位相の変化を示すベクトルS11の振幅と位相がわかれば、後は計 算をするだけでDUTの特性を示す様々な形式(フォーマット)で表現することが可能です。後のスラ イドで各パラメータの詳細な意味をご説明しますが、ここでは“DUTで変化する位相と振幅を測定 すれば様々なDUTの特性が解る”という事だけを理解してください。12
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 12DUTの特性は位相と振幅から計算できる(伝送測定)
伝送特性を示す ベクトルS21jb
a
虚
軸
θ
|S21|実軸
伝送係数
T=
|S21|
∠
θ
損失・利得
=20log
|S21|
Sパラメータ=
a
+
jb
挿入位相=
θ
群遅延
=-d
θ
/dw
伝送測定でも同様に、入射信号と伝送信号の位相と振幅の関係が解れば、DUTの様々な特性を 表示することが可能です。各パラメータは、位相と振幅の情報のみを元に計算されていることを理 解してください。13
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 13入射信号
反射信号
伝送信号
DUT(Device Under Test):被測定物Port1
Port2
ネットワークアナライザとは?
・入射信号に対する反射信号の位相と振幅の変化を測定 ・入射信号に対する伝送信号の位相と振幅の変化を測定 ・これらのデータをもとに、様々な表現方法でDUTの特性を表示する ネットワークアナライザとは、入射信号に対する、反射信号もしくは伝送信号を測定し、振幅及び 位相がDUTでどのように変化したかを測定する物です。 ネットワークアナライザは内部に信号源を持ち、DUTへの入射信号を出力します。 上記のスライドの例では、Port1より信号を出力しています。 DUTから反射された信号は、またPort1へ戻り、測定されます。 DUTを通過した伝送信号はPort2へ到達し測定されます。 DUTへ入射した信号と、測定された信号の比を取ることにより、DUTで変化した振幅及び位相の 情報を得ます。 DUTで変化した振幅及び位相の測定結果を元に、ネットワークアナライザ内部で演算を行い、様々 なフォーマットでのDUTの特性をディスプレイに示します。14
2章
15
入射
反射
反射係数
入射
伝送
伝送係数
=
=
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 15 それぞれのポートに信号を入力すると、反射、伝送信号はどうなるでしょうか?DUT
1 2 Incident Reflected t Coefficien Reflection Incident d Transmitte t Coefficien on Transmissi = =2ポート・デバイスの特性評価
デバイスの線形特性を求める場合、知りたい情報はごく単純です。DUTに正弦波信号が入射した 場合、どれだけの信号がデバイスから反射され、どれだけの信号がデバイスを通って伝送される でしょうか。図の矢印で示すように、この2ポート・デバイスには4つの可能性があります。これら4つ のパラメータがわかれば、このデバイスの線形動作を完全に記述できます。 nポート・デバイスの場合、各ポートに1つの反射係数と、それぞれのポート対ポートに2方向の伝 送係数が存在します。16
Network Analyzer Basics
15/10/21 Agilent Restricted
Page 16
S
2 1
Signal Measured Here
(DUTからの出力ポート番号)
Signal Incident Here
(DUTへの入力ポート番号)
反射測定
=
同じポート番号
;
S
11, S
22伝送測定
=
違うポート番号
;
S
21, S
12Sパラメータの表記
これらの反射係数と伝送係数を定量化して表現するために、S(散乱)パラメータが定義されました。 Sパラメータを使えば回路から出力または散乱される電圧と、回路の入射電圧との比を、簡単に定 量化してまとめることができます。 Sパラメータは常に2つの複素(振幅と位相)量の比となります。Sパラメータの表記では、上記の番 号方式によってこれらの量を識別します。最初の数字は、信号が出力されるテスト・デバイス・ポー トを表わします。言い換えれば、信号を測定するネットワーク・アナライザのポートです。2番めの数 字は、信号が入射されるテスト・デバイス・ポートを表わします。言い換えれば、信号が供給される ネットワーク・アナライザのポートです。例えばSパラメータS11は、デバイスのポート1から出力され た信号と、デバイスのポート1に供給された信号との複素数比から得られた測定値であることを示 します(反射測定)。17
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 17S
11S
21DUT
S
22S
12Port 1
Port 2
2-ポートデバイスは4つのS-パラメータで全ての特性を表せます。2ポート・デバイスのSパラメータ
2ポート・デバイスまたは回路には4個のSパラメータがあります。これらのうち2個は、DUTの入力 ポートと出力ポートからの反射を表しています。残りの2個は、DUTを通る順方向と逆方向の伝送 を表しています。この概念はマルチポート・デバイスにも拡張できます。この場合Sパラメータの数 は、ポート数をnとして、nの2乗となります。例えば4ポート・デバイスの場合、Sパラメータの数は16 個です。18
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 18 Incident Transmitted Reflected Reflected Transmitted Incident DUT Port 1 Port 2 a1 b1 b2 a2 S11 S22 S21 S12 b1 = S11 a1 + S12 a2 b2 = S21 a1 + S22 a2Sパラメータを使用する理由
l 高周波における特性を簡単に得られる。 l 既知の測定 (利得/損失,反射係数)と関連があ る。 l カスケード接続回路が簡単に計算できる。 l H, Y, Z パラメータへ変換できる。 l ファイルデータが簡単にCADプログラムに取り 込める 回路(ネットワーク)の動作をモデル化するために、長年にわたって多くの方法が開発されてきまし た。H、Z、およびYパラメータやSpiceモデルは、回路動作の視覚化や予測に役だっています。しか し、回路周波数が高くなるとともに、これらのモデルの多くは複雑で扱いにくいものになります。そ の結果、単純な方法でネットワークをモデル化することが困難になります。 S(散乱)パラメータを使えば、回路からの出力電圧または散乱電圧と、回路の入射電圧との比を簡 単に定量化できます。パラメータをカスケード接続*することにより、個々の回路ブロックのモデル を1つにまとめて、システム全体の動作を予測することができます。 後で見るように、これらの比の測定は高周波でもそれほど困難ではありません。複素短絡電流や 開放電圧といった難しい測定がSパラメータ測定には不要だからです。 Sパラメータは電圧比として定義されるので、利得、損失、反射係数などのおなじみの高周波特性 に結果を容易にマッピングできます。H、Y、Zなどのその他のパラメータ形式への変換も簡単です。 Sパラメータはこのように変換が容易なので、今日の多くのシミュレーション/デザイン・ソフトウェア・ プログラムへのインポートに最適です。 * アプリケーションノート 154 ‘Sパラメータデザイン’19
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 19アッテネータの
Sパラメータ
20 dB (1.1 SWR) (1.2 SWR) 109
.
0
Ð
q
31
.
0
Ð
q
205
.
0
Ð
q
41
.
0
Ð
q
S
21S
12S
22S
11 代表的なデバイスのSパラメータの例をいくつか見てみましょう。ここでは、20 dBアッテネータにつ いて説明します。先に述べたようにSパラメータは電圧比であるため、順方向伝送のSパラメータ S21は当然0.1であり、入射と出力の間に多少の位相シフトが存在します。アッテネータは単なる分 圧器にすぎないので、その逆方向伝送特性S12も同様のはずです。アッテネータの設計目標の1 つはZ0への整合性を高めることなので、反射SパラメータS11およびS22は小さい値になります(そ れぞれ0.09と0.05)。 これらの線形比を測定したら、定在波比(SWR)などの別の一般的な形式に変換したり、利得パラメー タや損失パラメータとしてdB単位で表わすのは簡単です。20
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 20 2N5103 @ 1 GHz°
Ð18
07
.
0
°
-Ð 166
5
.
0
°
Ð54
3
°
-Ð 63
45
.
0
S
21S
12S
22S
11トランジスタの
Sパラメータ
トランジスタのSパラメータは、アッテネータのSパラメータとは大きく異なります。順方向のS21は正 の整数で、デバイスに利得があることを表します。いっぽう、逆方向ではデバイスに損失がありま す。反射Sパラメータは、入射信号が大きな割合で反射していることを示します。トランジスタは整 合性が低いのが普通で、デバイスの入/出力に信号を接続するには整合回路が必要となります。 このことから、この測定を行う意味がわかります。この結果を基にデザイナは、トランジスタ用の整 合回路を作成して、結合またはカスケード接続される回路の信号伝達、利得、安定性を最大化す ることができます。21
Network Analyzer Basics
15/10/21 Agilent Restricted
Page 21
• Log MAG (Insertion Loss)
• Phase
• Delay
•他のフォーマットは特定のアプリケーションで使われる
• Lin MAG
• Real
• Imaginary
S21 (および S12)の一般的な表示フォーマット
DUTで変化する振幅及び位相の情報がわかれば、その情報を元にネットワークアナライザは各 フォーマットに自動的に変換して表示してくれます。それぞれのフォーマットの意味を知っておくこ とはネットーワーク測定において重要です。 伝送レスポンス(S21およびS12)の測定にはさまざまな表示フォーマットが使用できますが、広く用 いられるのはその内のいくつかだけです。LogMAG、位相(および電気遅延)、群遅延などのフォー マットが広く用いられます。その他のフォーマット・オプションも使用できますが、通常は特定の測 定アプリケーションにしか用いられません。例えばLinearMAGフォーマットは、伝送係数の大きさを 単位なしで表示するもので、DUTの時間ドメイン・レスポンスの測定に使用します。なお、DUTを通 る伝送測定の場合、SWRフォーマットやスミスチャート等の有効な使用法はありません。22
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 22S
21同軸ケーブル
周波数 = 30 kHz to 3 GHz一般的な
S21 フォーマット表示の例
伝送測定(S21またはS12)に役立つフォーマットについて知るために、この理想同軸ケーブルの S21測定について検討します。低周波ではケーブルの挿入損失と電気位相長はわずかですが、 周波数が高くなるにつれてケーブルの挿入損失が増加します。この例では、30 kHz~3 GHzの範 囲の周波数を掃引し、測定したS21を複数の異なる表示フォーマットで表示します。23
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 23S
21測定の
Log MAG フォーマットが表示するのは
利得、挿入損失
CH1 S21 log MAG START . 000 030 000 GHz STOP 3. 000 000 000 GHz 0.5 dB / REF 0 dBS21 のLog MAG フォーマット表示
S21=0.5∠30°の場合 S21(LogMag)=20log0.5=-6dB もしくはS21=a+jbの場合 S21(LogMag)= 20log[√(a2+b2)] 周波数(Hz) (dB) 振 幅 比 Log MAGフォーマットは、S21データを表示する際に最もよく用いられるフォーマットです。このフォー マットは通常、DUTの挿入損失または利得を示します。つまり、DUTへ入力した信号の振幅がどれ だけ減少して(もしくは増加して)伝送するかということを示しています。 このフォーマットは、測定されたS21(もしくはS12)の振幅値の20log10を取ることにより計算できます。 単位はdBです。 例えば測定したS21=0.5∠30°の場合、S21(LogMag)=20log0.5=-6dBとなります。また、S21=a+jbといった表現からLogMagの値を計算する場合は、S21(LogMag)= 20log[
√(a
2+b
2)]
となります。
注意すべき点として、デバイスの挿入損失は一般に正の値で表されますが、損失のあるデバイス を通る伝送をネットワーク・アナライザで測定した場合、S21は負の値を取ります(挿入「損失」とい う呼び方にはマイナス符号がすでに含意されています)。一方、DUTが利得を持つ場合、利得は正 の値で表され、測定されたS21も正の値を持つことになります。
24
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 24 CH1 S21 Phase START . 000 030 000 GHz STOP 3. 000 000 000 GHz 100O / REF 0ODUT
を通過すると、どれだけ位相が変化するのかを示す。
位相応答がのこぎり刃形となるのは
?
S21 のPhase フォーマット表示
S21=0.5∠30°の場合
S21(Phase)=30°
位 相 (°) 周波数(Hz) テスト・ケーブルのS21測定結果をPHASE フォーマットで見てみましょう。 このフォーマットは、入射信号と伝送信号の位相差を示しています。 つまり、 DUTを通過することによりどれだけ信号の位相が回転するのかを示しています。 S21=0.5∠30°の場合、Phaseフォーマットでの表示は単純に30°となります。 電気長の長いデバイスの位相を測定する場合、表示されるレスポンスはのこぎり波形になります。 この曲線がのこぎり波になる理由は、アナライザが+/-180度の間で位相を折り返しているからで す。25
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 25 CH1 S21 Phase START . 000 030 000 GHz STOP 3. 000 000 000 GHz 100O / REF 0O なぜ、のこぎり波になるのか? 位相応答は+180°からー180° に入るように折り返される 位相特性の傾き位相特性とは位相長さ
と位相の線形性
+180
-180
測定した位相を
180ºから -180ºまで表示(折り返し)
アナライザのレシーバ・アーキテクチャのために、表示される位相は+/-180°の範囲に制限され ます。位相レスポンスの傾きは保持されるので、情報の損失はありません。このため、デバイスに よる電気遅延を求めることができます。アナライザは、位相が-180°より小さくなると位相レスポン スを折り返し、測定データに360°を加算します。 PHASEフォーマットは通常、2つのデバイス間の位相の違いを比較したり、周波数に対するデバイ スの位相線形性を調べるために使用します。位相レスポンスが線形でないデバイスをシステムに 使用すると、信号歪みの原因となるおそれがあります。26
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 26 STOP 3. 000 000 000 GHz CH1 S21 delay START . 000 030 000 GHz 5 ns / REF 1.0 ms表示フォーマット名は
郡遅延(
Group Delay
)
位相応答から計算するS21のDelay フォーマット表示
Tg = -dΦ/dω
周波数(Hz) 遅 延 (s) 位相ひずみのもう1つの有効な測定に群遅延があります。DELAY フォーマットを使用すると、アナ ライザはDUTの群遅延を測定することができます。群遅延は、デバイスを通る信号の通過時間の 尺度です。DUTの位相と群遅延には数学的な関係があります。 群遅延Tg=-dφ/dωの関係があります。遅延は、伝送位相レスポンスの傾きの尺度です。先に説 明したように、デバイスが電気的に長い場合、位相の傾きが大きくなり、得られる平均通過時間ま たは平均遅延も大きくなります。DELAYフォーマットは測定レスポンスの線形な傾きを除去するの で、位相歪みを測定するためのもう1つの方法として使用できます。27
Network Analyzer Basics
15/10/21 Agilent Restricted
Page 27
• Log MAG (Return Loss)
• SWR
• Smith Chart
• Polar
他のフォーマットは特定のアプリケーションで使われる
• Phase
• Delay
• Lin MAG
• Real
• Imaginary
S11 (および S22)の一般的な表示フォーマット
S11とS22の測定にはさまざまな表示フォーマットが使用できますが、広く用いられるのはその内の いくつかだけです。LogMAG、SWR、スミス・チャート、極座標などのフォーマットが広く用いられます。 その他のフォーマット・オプションも使用できますが、通常は特定の測定アプリケーションにしか用 いられません。例えばLinMAGフォーマットは、反射係数の大きさを単位なしで表示するもので、変 換パラメータや時間ドメイン・データに使用します。28
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 28Z
INDUT
H PORT 2 PORT 1S
11 W = 50 O Z S11値は ZINがどれだけ 50 ohmに近いかを表します0
S
then
50
Z
if
IN=
W
11=
o 11 INthen
S
1
180
Z
if
= short
=
Ð
1 1 11 + -= O IN O IN Z Z Z Z SDUTの入力インピーダンスに依存するS11
DUTの反射係数ΓまたはS11を測定する場合、反射信号の量はDUTの入力インピーダンスに依 存します。S11は、DUTのインピーダンスと測定システムの特性インピーダンスZoとの違いを示す 測定値です。ほとんどの高周波テスト機器は、50Ωの特性インピーダンスを持ちます。一部の低 周波アナライザには、CATVアプリケーション向けの75Ω特性インピーダンスの構成が用意されて います。DUTが50Ω終端の場合、S11の振幅は0。DUTがショート回路の場合、信号がすべて反射 され、S11の振幅は1 (0 dB)、位相は180°となります。29
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 29R = 50 Ohms
L = 50 nH
S
11DUT
周波数 = 30 kHz to 3 GHz 理想的な直列 R-L 回路S11 フォーマットを表示の例
反射測定(S11またはS22)に役立つフォーマットについて知るために、この単純なR-L回路のS11測 定結果について検討します。インダクタLのインピーダンスは低周波ではきわめて小さく、回路から はショートに見えます。インダクタが短絡しているとDUTは50Ω終端に見えるため、反射係数の大 きさは非常に小さくなります。高周波ではインダクタのインピーダンスが非常に大きくなり、DUTは オープン回路に見えるようになります。この場合、反射係数が非常に大きくなります。この理想回 路に対して、周波数を30 kHzから3 GHzまで掃引し、複数の異なる表示フォーマットでS11を測定し ます。30
Network Analyzer Basics
15/10/21 Agilent Restricted Page 30
R = 50 Ohms L = 50 nH
Z
INL
j
R
jX
R
ZIN
=
+
=
+
w
30 kHzでは
W
»
+
=
50 j
0
.
009
50
ZIN
“マッチング良好”3 GHzでは
W
»
+
=
50
j
942
j
942
Z
IN “オープン回路”例
周波数依存項入力インピーダンス
Z
INの計算
DUTの入力インピーダンスは、振幅と位相、あるいは実数部と虚数部によって表現できます。イン ピーダンスの実数部は抵抗Rと呼ばれ、虚数部Xはリアクタンスと呼ばれます。リアクタンスは、測 定周波数におけるデバイス特性に応じて、誘導性にも容量性にもなります。理想インダクタのリア クタンスはωL、理想キャパシタのリアクタンスは1/ωCです。リアクタンスは通常、インピーダンス の周波数に依存する項で、多くのデバイスでは測定周波数に応じて誘導性にも容量性にもなりま す。例えば、チップ・キャパシタは低周波では容量性ですが、周波数が自己共振点を超えると、リー ドやパッケージのインダクタンスがキャパシタ自体の容量よりも大きくなるため誘導性に変わりま す。 上記の直列R-L回路の場合、30 kHzではリアクタンスは非常に小さく(X=0.009Ω)、回路の入力イ ンピーダンスは回路抵抗の50Ωにほぼ一致します。この付近の周波数ではDUTは50Ω終端で、 システムの特性インピーダンスとよく整合したデバイスです。周波数が増加するにつれ、R-L回路 はオープン回路に近づきます。3 GHzではインピーダンスは約942Ωで、非常に反射の大きいDUT となります。31
)
(
log
20
)
(
10 11dB
=
r
S
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 31 STOP 3. 000 000 000 GHz CH1 S11 log MAG START . 000 030 000 GHz 5 dB / REF -20 dBS11を dB で表したものは
Return Loss
です
マッチング良好 S11 < -35 dBマッチング悪い
S
11~ 0dB
S11のLog MAG フォーマット表示
S11=ρ∠θの場合 S11(LogMag)=20logρ 周波数(Hz) (dB) 振 幅 比 Sパラメータに対して最も広く用いられる表示フォーマットの1つがLog MAGフォーマットです。S11ま たはS22測定でLog MAGフォーマットを選択した場合、その値は通常DUTのリターン・ロスと呼ばれ ます。 このフォーマットを計算するには、S11の測定結果の振幅の20 LOG10を取ります。 例えば測定したS11=0.5∠30°の場合、S11(LogMag)=20log0.5=-6dBとなります。 また、S11=a+jbといった表現からLogMagの値を計算する場合は、S11(LogMag)= 20log[√(a2+b2)] となります。 注意すべき点として、リターン・ロスはdBで表わされるスカラ量です。リターン・ロスの定義にはマイ ナス符号が含まれているので、リターン・ロスの値は常に正です(ネットワーク・アナライザで対数 振幅フォーマットを使ってS11またはS22を測定した場合、結果のマイナス符号を無視するとリター ン・ロスが得られます)。リターン・ロスは、反射信号が入射信号より何dB下にあるかを示す値と考 えることができます。リターン・ロスは、無限大(Zoインピーダンスの場合)から0 dB(オープンまたは ショート回路の場合)のあいだで変化します。 この単純なR-L回路の場合、Log MAGスケールでS11を測定すると、低周波では非常に良好な整 合性が見られます。低周波でのDUTの入力インピーダンスは約50Ωです。S11の測定値は、30 kHzで-35 dBより上です。周波数が増加するにつれ、S11の値が-35 dBからほぼ0 dBまで増加す ることがわかります。0 dBのS11は、DUTによる完全反射を表わします(全反射の場合、反射係数r = 1)。この例では、周波数が増加するにつれて、回路の誘導性部分が非常に大きくなり、反射デ バイスとなることがわかります。32
Network Analyzer Basics 15/10/21 Agilent Restricted Page 32 STOP 3. 000 000 000 GHz定在波比:
SWR 又は
VSWR
マッチング
良好
SWR =1.0002
マッチング悪い
SWR > 100
CH1 S11 SWR START . 000 030 000 GHz 10 / REF 1S11 のSWR フォーマット表示
S11=ρ∠θ°の場合
SWR=(1+ρ)/(1-ρ)
D U T Emax EminSWR=E
max/E
min周波数(Hz) SWR DUTからの反射を表示するためのもう1つの非常に一般的なフォーマットが、SWR(定在波比)フォー マットです。この無次元の値は、伝送ライン上に存在する定在波の最大電圧レベルと最小電圧レ ベルとの比を表わします。この定在波は、2つの信号(DUTへの入射信号とDUTからの反射信号) が同じ伝送ライン上を反対方向に進行することによって生成されます。多くのデバイスでは、メー カによってSWRまたはVSWRの値が指定されています。 この例の場合、上の図のように低周波では約1.0のSWRを示します。低周波ではDUTが良好な 50Ω終端のように見えるからです。より高い周波数では、インダクタが非常に大きなインピーダン スを持ちはじめ、回路は反射デバイスになって、SWRが100を超えます。