香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号 71・−73,1987
微生物に.よるグリコシダーゼの生産に関する研究
(第2報)一・種類の誘導物質に.よる複数の
グリコシダーゼの同時誘導生成について*
岩原章二郎,田中 正
STUDIESON MICROBIAL PRODUCTION OFGLYCOSIDASES
Part2.CoordinativeProductionofSeveralGlycosidasesbyanInducer
Sho3iroIwAHARAandTadashiTANAKA
Inthepresenceof aninducer,abacterium,50bstrain,isolatedfromsoil,COOrdinativelyproducedseveralglycosidaseswhichhydrolyzedglycosidehavingglycosidiclinkagedifferentfroInthatofeachinducerused
土壌より分離した一価‡菌(50b菌株)が・−・・h・種類の誘導物質によって誘導物質の結合様式とほ異なる結合様式のグリ コシド結合を分解する複数のグリコシダーゼを同時誘導的に生成することを明らかにした。 緒 前報(1)において土壌より分離した一・細菌(50b菌株)が凡s(7わ〝椚SpM7−1菌株の多糖成分を部分的に分解する ことについて報苦した。多糖分解酵素の生産条件について検討中に−・種類の誘導物質の存在下において誘導物質とは 異なる結合様式のグリコシド結合を分解する多種類のグリコシダーゼが同時誘導的に生成する現象を見出したので報 告する。 実験材料および方法 1.使用菌株および培養方法 50b菌株は前報(1)の方法に従って培養した。 2.酵素活性の測定 酵素活性ほ各種のPLnitrophenylglycosidesを基質として測定した。P−nitrophenylglyco・ SideO5/JmOle,適当畳の酵素液,phosphatebuffer(pH80)100JLmOle,およびCaC1210/JmOleを含む全容1mPの 反応液を30℃で30分間反応させた。反応後02MNa2CO32meを加えて反応を停止させた。生成したP−nitrophenolを 420nmにおける吸光度により定量した。酵素活性1unitは1分間に1JLmOleの♪−nitrophenolを生成するに必要な酵 素畳とした。 3..クロマトグラフィー 培養液中のタン/くク質および酵素の分析はTSK−5PWを用いて行った。 実験結果および考察 1.グリコシダーゼの生産に対する誘導物質の効果 前報においてα−MannOSidaseがα−MethyトD−mannOSide により誘導的に生成することについて報告した(1)。α−Methyl,D−mannOSideの存在下で50b菌株を培養した場合にα −Mannosidaseのほかに多種類のグリコシダーゼが生成していることが明らかになったので,これらのグリコシダー ゼの生成に対する各種の誘導物質の効果について検討した。その結果,Tablelに示すように各種のグリコシド結合 *本研究の一部ほ日本農芸化学会昭和60年度大会(札幌,昭和60年7月)において発表した。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
72 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987)
TablelEffectofinducersontheproductionofglycosidases
Themicroorganismwasgrownonthemediumcontainingeachinducerindicatedfor30hIat28℃with Shaking.After theculture,Cellswere removed by centrifugation Theenzyme activityin the super・
natant was determinedThe reactionmiⅩture COntaining O。5JLmOle of each substrate,Oh2mP of the supernatant,700FLmOle of phosphate buffer(pH80),10jLmOle of Ca++in a totalvolume oflmQ was incubated for30minat30℃
Glycosidaseproduced(munits/mC) Inducer added
(05mg/mの α−Manno− β一Manno− β一Galac− α−Gluco− β−Gluco− β−Ⅹylo− sidase sidase tosidase sidase sidase sidase
6 9 3 9 4 8 7 3 ′2 7 3 2 00 7 1 2 2 5 9 4 0 エリ O 3 0 5 9 4 0 6 5 1 1 2 7 7 0 6 7 9 2 0 7 ∩フ 1 0 5 3 3 6 9 9 3 4 6 5 7 0 4 4 6 3 3 1 3 4 6 0 7 6 0 6 6 0 3 7 5 0 1 5 4 1 4 3 ︵わ っJ q︶ 6 6 6 6 0 3 0 5 0 1 5 4 1 4 4 None α一Methyl−DLmannOSide α−Methyl,D−glucoside β−Methyl−D−glucoside α−MethyトD−galactoside Lactose Isopropyl−β−tllio −D−galactoside 1 0 盲u罠寸︼d.?○︶とち膏再む∈hzu凹 ︵芸〓UdZ 2 3 0 0 ∈u OCN葛.凸.〇 20 Elutionvolume(ml) 30 20 30 Elutionvolume(ml) Fig2 HPLCofGlycosidases
Conditions for the chromatography were the same as thosein Fig1”One−mP frac・ tionswerecollectedandenzymeactivitywas deterTnined according to the method de・ scribed in the text
…−−− :α−Glucosidase,−−・−.:β−Glu・ COSidase,+:β,Galactosidase,−・ L:α一Mannosidase,−・・−: β−Man, nosidase, :β−Ⅹylosidase Fig1HPLCofprOteinsintheculturemedia
Themicroorganismwasgr■OWnOnthemedium(100mD
in500−mCErlenmeyerflask)inthepresenceorabsenceof methy−D−mannOpyranOSide for30hr at28℃with shak− ingThe ce11s were removed by centrifugationThe Supernatant WaS COnCentr■ated to aboutlme by ultra・ filtration− The concentrate was10aded on a colmn ofTSK−5PWequilibratedwithO1Mphosphatebuffer,pH 60and elutedwithlinear gradient of NaClin O1M
phosphate buffer,pH 60.Proteinin the eluate was
determinedbymeasur■ingofabsorbanceat230nm
:prOteinspr.oducedintheabsenceofinducer, :prOteinsproducedinthepresenceofα一methyl −D−mannOpyranOSideasaninducer
73 岩原章二郎,田中 正微生物によるグリコシダー・ゼの生産に関する研究 を萌するイヒ食物それぞれの存在下において菌を培養した場合に誘導物質の結合様式とは異なるグリコシド結合をも分 解する複数の酵素活性が同時に認められた。誘導物質無添加の場合にほいずれの酵素活性も微弱であった。このこと
はq・種類の誘導物質によって複数の酵素が同時誘導的に生成したことを示すものである。α−Methyl−D−galactoside
はいずれの酵素の生成に対しても効果を示さなかった。また,いずれの誘導物質の存在下においてもα一Galactosidase の生成は認められなかった。 2.培養液中のタンパク質および酵素のHPLCによる分析 前述の実験結果から一・種類の誘導物質に.よって複数 の酵素が同時誘導的に生成するものと推定される。しかし,誘導的に生成する一種類の酵素が複数の酵素活性を示す ことも考えられる。この点を確かめるため,誘導物質を添加して培養した場合に.生成するタンパク質および酵素を HPLCで分析しFiglおよびFig2に示す結果を得た。Fig1に示す−ように,誘導物質としてα−Methyl−D−man・ nosideの存在下で療養した場合には明らかに無添加の場合に比較して多種類のタンパク質の生成が認められた。他の 誘導物質を用いた場合にもはぼ同様の結果が得られた。Fig2に示すように,それぞれの酵素ほ不完全ながら相互に 分離することが明らかとなった。このことほ−・種類の誘導物質の存在下で多種類のグリコニンダー・ゼが同時誘導的に生 成したことを示すものである。 酵素の誘導的生成については,大腸菌におけるβ−GalactosidaseのLactoseやIsopropyl−β−thioLD−galactoside などのようなその酵素の基質または,その構造類似物質による誘導的生成についてよく知られている。この現象にっいてのpL連の研究からJacob and Monnod(2)により提唱されたオ・ベロ:/説が酵素の誘導機構として一・般に認められ
ている。一般的には酵素の基質またほその構造煩似物質が誘導物質として作用する。本研究で得られたような−・種類 の誘導物質によりその結合様式とは異なるグリコシドをも分解する酵素を複数同時誘導的に生成する現象に/ついては 今までに知られておらず興味ある現象である。この現象は,リプレッサ・−が各種の誘導物質に.対して親和性をもって おり,しかもそのリブレッサ・−が複数の構造迫伝子群を支配していると考えればオペロン説で説明できる現象である。 また,一般に自然界においてほ一種頬の結合様式をもった多糖またはオリゴ糖が単独で存在していることはまれであ り,むしろ多種類のグリコシド結合をも、つた多糖の混合物の状態で存在していることがほとんどである。したがって, −・種類のグリコシドに.よって,存在が予想される他のグリコシド結合をも分解する酵素を同時誘導的に生成すること は微生物が多糖を利用するための合理的な機構であるように考えられる。このような現象が微生物に一般的なもので あるか,50b菌殊に特異なものであるかどうか,またこの現象がどのような磯作によるものであるかなどの問題につ いては現在検討中である。 引 用 文 献 (1)岩原章二」弧 田中正,木口幾夫,斉藤誠,′本誌, (2)Jacob,Fand Monnod,J,/MolBi−ol.3, 39,65(1987)小 318(1961) (1987年5月27日受理)